外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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42 セルゲーム

 セルゲームまでの間、何をしていたかと言えば、まず16号の修理。ロボットなので壊れても私の目標的には壊されてもOKとしておこうと思ったが、未然に防げそうなものを防がないというのも気分が良くないので、16号には爆弾を取り除いたことを教えた。そうすれば、セルと共に自爆なんて考えもしないわけで。ついでに、思考回路(脳みそ)を少し弄らせてもらった。元の世界でもAI作っていた経験があったからドクターゲロとは違ってこの手の作業は大得意だ。これで悟空を殺すという目的は消失した。消す必要もなかったかもしれないけど、今後も存在するなら消しておいた方がいいでしょ。

 

 

 3日後には、軍がセルに攻撃を仕掛けたことによって軍は壊滅させられ大量の死人が出た。そのことから悟空はドラゴンボールが使えないかとナメック星まで行き、デンデを連れて帰って来た。私はデンデを助けたこともあったので、悟空から呼び出しされた。ドラゴンボールが復活したのを見届けた後、他にもやりたいことがあるとさっさと帰った。

 

 

 あとは、取材の応対だ。私は一応武道家としても名が知られているためセルゲームに参加するか、否かを問われた。ミスターサタンに一番大きな期待を寄せられているわけだが、私もそれなりに期待されているようだ。

 

 

 ちなみに悟空と悟飯は9日間を超サイヤ人のまま下界で過ごした。そして、セルゲームの3日前にはラディッツの娘が誕生し、地球が滅亡間近かもしれないというなかではあったが、仲間たちが盛大に祝った。この娘は悟空にとっては姪、悟飯にとっては従妹にあたるので特に喜んでいたように見える。名前はパースと名付けられていた。名の由来は……パースニップと呼ばれるセリ科のニンジンに似た根菜だろう(wikipedia情報)。そんなものは作者の勝手な事情であって、この世界の住人によるところではないとメタ的なことを考えてしまうが、それは野暮というものだろう。そんなこと言ったらブルマ一家は全員下着だからね。現実だったら残念すぎるにも程がある。深く考えない方がいい。

 

 

 さらに言えば、ラディッツも一応精神と時の部屋に入り超サイヤ人を超えたサイヤ人いわゆる超サイヤ人第2段階というやつにはなれるようになっていた。ついでにある技を使えるようになれと社長命令を出したのだが、1年での習得は無理だった。むしろ、使えたらおかしいレベルの技ではあるが便利だしいつか使えるようにさせたい。

 

 

 そしてセルゲームが行われる運命の5の26日を迎えた。

 ベジータを除き、神様の神殿に仲間が集まっていた。ここでデンデが直したドラゴンボールがポルンガの様に複数回生き返らせることはできないことが発覚する。悟空は普段通りだけど、一応指摘するか……悟空が「早く行こう」と言った後に私は呼び止めた。他の仲間には先に行かせ、悟空だけを神殿に残した。

 

「一体どうしたんだよ、イーヴィ」

「ねぇ、悟飯が切り札なんでしょ」

「……やっぱ、イーヴィには隠せねぇな。別に隠すつもりもなかったけど、驚かせたかったんだ」

「確かに、悟飯が怒りをきっかけにしてセルをも上回る力を発揮するのは私も間違いないとは思うわ。その選択は武道家や戦士として考えるには正解かもしれないけど、一人の父親としてはどうでしょうね」

 

 悟空は戦士としては一流かもしれないけど、父親としては三流だろう。どうにも悟空は人間味に欠けるところがある。別に悪いことではない。でも、良いことでもない。この性格を矯正するつもりは欠片もないが、ピッコロに指摘された時動こうとしたし、考え直していたのだろう。どうせ考え直すぐらいなら今のうちに言った方がいい。

 

 悟空は迷ったのか考え込む仕草をする。

 

「……オラはセルを倒すにはそれしかねぇと思ってる。やってみなきゃわかんねぇけど、多分オラはセルに負けるからな」

「託すのは悪くないと思うわ。悟飯も理解してくれるでしょうけど、他の人からみたら虐待のそれと同じようなものよ」

「それならイーヴィにはなんかあんのか?」

「私を誰だと思っているの? 元悪神にして、外道屋社長よ。できないことなんてない。私は私が最大限楽しむ為の方法を取るまでだよ。そして、仲間は死なせない。私にはそれができるだけの力も手段もある」

 

 死なせないのは死なせたくないという思いとかではなく単なる目標でしかないけどね。私にとってこの世界はどこまで行っても漫画の中の世界でしかない。この世界をゲームとして楽しむのが一番の目的だ。

 

「なら、イーヴィが倒しゃいいじゃねぇか……」

「私にとっては戦うことは目的じゃないって前にも言ったでしょ。それに戦いたいのは悟空でしょ」

「ははは、まぁな。そろそろ行くか」

 

 みんなから少し遅ればせながらの到着だ。すでに、ベジータと16号は既に居て、おまけにサタンやカメラマン、名も知らぬアナウンサーもいる。

 テレビカメラの方に手を振っておく。

 

 16号がこちらに近づいてきた。16号の最終的な調整はブルマたちに任せていたから、神殿には連れて行かなかったんだよね。

 

「改めて礼を言わせてくれ。ありがとう、イーヴィ」

「まぁ、私の趣味みたいなところもあるしいいって。それよりも」

「ああ」

 

 悟空が16号に手を差し出し「お互い頑張ろうな」と握手を求める。

 

「お前を殺す」

「?」

 

 悟空はなぜこの場でそんなことをいうのか理解できていないといった感じだ。というか、普通理解できない。

 

「すまない。これはイーヴィが、これを言われた相手は死なないおまじないだから言えと言われてな」

 

 ある意味間違ってないけど、本音はただ、中の人ネタやりたかっただけです。ごめんなさい。絵面はなかなかに面白かったよ。

 

「意味わかんねぇ……どうしてこんなことさせたんだよ」

「私が面白いからいいの」

 

 これに嘘はない。

 

 

「さてと! 早速、オラから戦わせてもらおうかな!」

「え!? いきなり悟空さんから始めなくても……」

「好きにしろ。どっちにしてもフィニッシュを決めるのはこの俺だ……」

「か、勝手に順番を決めるんじゃないっ!」

 

 全然目立っていなかったサタンが声をあげた。

 

「ミスターサタンが、先手? 別にいいんじゃない?」

「イっイーヴィさんっ!ど、どどうしてここに!」

 

 あら、かなりビビっている様子。というか、今まで見えてなかったんだろうか?悟空たちの陰になっていたとか?

 

「どうしても何も、セルゲームに参加することはテレビを通して言ったわよ」

 

「これはこれは、イーヴィさんではないですか! あなたもセルゲームに参加するのですね! これほど頼もしいこともありません! で、そちらの方々は?」

 

 アナウンサーが話しかけて来た。名前は知らない。

 

「彼らは、心強い味方さ。天下一武道会の優勝者も居るよ。それ以外の大会に出ていないだけで実力は私が保証するよ。名前は個人情報だから秘密ね」

 

 

 正直、ここは漫画で読んでいてイラっときたのでさらっと原作改変。

 

 

「時間だ。どいつからでもいい、さっさと出ろ」

「当然俺だ。俺に決まっている」

「おめえ、殺さ「がんばれ、サタン」なんだよ、イーヴィ」

 

 私は、サタンを止めようとする悟空の言葉を遮った。

 

「サタンが戦ってくれたほうが、都合がいいんだ。試したいこともあるからね。16号、身体預かって」

「わかった」

 

 私は機械の身体からサタンの身体へと乗り移る。抜け殻となった機械の身体は16号が受け止めてくれた。

 

 

「一体何をする気なんだ、イーヴィさん」

「俺にも何をするかは皆目見当もつかん。この身体自体は神宮寺イーヴィと似ているかもしれないが、性質は全くの別物だ」

 

 

 16号がクリリンの質問に答えていた。

 

 

 私はちょうど、カプセルからカバンを取り出したところに乗り移った。サタンと受け答えするのも面倒なので意識を刈り取って、身体を奪う。

 さて、カバンだけだして放置するのもどうかと思うし拾って、上に放り投げる。落ちてきたところに拳を立てて殴りつけた瞬間に指を折り二連撃を加える。カバンごと瓦は砂のように粉々になった。理論的には一撃目で物体の抵抗を消して二撃目に抵抗のなくなったところに攻撃を加えることでその攻撃は抵抗なく全体に伝わるというものだ。要は二重の極みである。疑似科学だけどその辺は、マンガの世界だからツッコミはなしで。

 

「!?」

 

 この場にいる人間の全員が驚いていた。瓦を割ること自体は、この場にいるほとんどが指一本で可能だ。だが、一発で文字通り粉々にすることができる者はいないだろう。

 

「さて、お試しといこうか」

 

 ダッシュでセルに近づく。

 

「貴様、イーヴィか!」

 

 私と分かった瞬間に迎え撃とうとしているようだ。

 

 サタンの身体能力はただの一般人にしては少し強いレベルだ。こんな身体じゃ、勝ち目がない。だから、これは練習だ。神の力を戦闘で使うことは滅多にしないから肩慣らしといったところか。

 

 セルが払うように手刀をしてくる。これにあたると多分、死ぬ。私ではなくサタンが。

 サタンを死なすわけにもいかないのでスウェーバックの要領で避ける。勢いつけすぎてブリッジになってしまったが、そのまま蹴り上げてセルの顎を掠めた。

 

「ちっ、猪口才な」

 

 原作でのサタンに対する攻撃と違い、力はそんなに入っていなくとも若干殺意が含まれているので当たるとたぶん死ぬ。でも、こっちの攻撃はクリーンヒットしてもダメージ1あるかもわからん。無理ゲーです。

 

 次、試しの一発を入れて降参しよう。クリリンの時に使ってもよかったんだけど、そうするとそのまま続けて闘わないといけない状況になっただろうからやらなかったんだよね。

 

「はぁっ!」

 

 見え見えなストレートと思いきや、蹴り上げをしてきた。こんなのくらったら死んじゃう!肘でセルの膝の横を叩き避ける。神としての力を籠めて、全力で腹パンする。でも、セルは仰け反りもしなかった。むしろ、私の手の方が痛いぐらい……

 

「やはり、その程度か……」

 

 先ほどより速い手刀が当たり、そのまま吹き飛ばされてしまった。近場の岩山に激突し、奇しくも原作と同じように吹き飛んでいた。

 

「痛っーーー!」

 

 死ななかったのは、ギャグになっているからなのか、運が良かったからなのか、思ったより丈夫だったからなのか。ホント、死んだかと思った。

 

 場外負けしたことによってアナウンサーが絶望しているようだ。

 

「ミ、ミスターサタン……な、なんで負けてしまったのですか?」

「少し滑ってしまってな。でも、ただで負けたつもりもない」

「そ、それはどういう……?」

 

「おい! セルの様子がおかしいぞ!」

 

 仲間の誰かがそう言った。

 セルは俯き、咳き込む。その後、少量ではあるが血を吐いた。

 

「相手の体内に送り込んだ力を爆発させることで内臓にダメージを与えた」

「さ、さすがは、ミスターサタン!」

 

 セルは私を睨みつけた。

 

「やってくれたな……! 神宮寺イーヴィ!」

「また後で闘おうじゃないか」

「ちっ……はあああああ!」

 

 セルは内臓を再生させたようだ。

 ダメージを与えるというよりは力の使い方を思い出すことが目的だったからそれは達成した。元の身体に戻るとしよう。

 

 

「……? あだ、あだだだ……?」

 

 

 サタン自体は意識を失っていたので記憶が全くなく、痛みだけが残っていたようだ。

 

 

 

「さて、今度こそオラの番だな」

 

 

 

 その後、セルと悟空の闘いは原作と寸分も違わなかった。私がセルに与えたダメージなんて欠片も影響していなかったようで、少しばかりショックだったりもする。

 




悟空とセルの闘いは飛ばします。ピッコロの時はちょくちょく手を出してたから書きましたけど、セルとの戦いでは少しも変わりそうもないので。


というわけで、次回は「おめえの出番だぞ、悟飯!」から始まります。

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