外道屋のドラゴンボール   作:天城恭助

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ミスターサタンは嘘ついて英雄になったけど、イーヴィさんはほぼ自演。


22 偽りの英雄

 ピッコロ大魔王を倒してすぐに国王から世界を救った英雄として称えられた。ついでに国王の側近の一人は私のことを知っており、サインを求められたりした。

 これによって、テレビの出演依頼が激増した。しばらくするとCMのオファーなんかも来た。全て受けるのはめんどくさいので適当にいくつか選んで出演するとこれでなかなかの人気者になれた。

 東の都では、私の銅像が建ったりした。また、外道屋の入社希望者も激増し、売上も倍増。お金の面で見ればうはうはだ。

 ここまでは嬉しい出来事なのだけど、悟空のことが気掛かりだ。一旦、テレビ出演は全て蹴って、天界に向かうことにした。

 

 

 天界に着くと、悟空の姿が見え一安心した。傍には、ミスターポポが居た。

 

「どうも、こんにちは」

「おす」

 

 ミスターポポが右手を挙げて挨拶する。

 

「お、イーヴィ!」

「やあ、悟空。元気にしてた?」

「あぁ! 今、ポポを倒すために修業してんだ!」

「そっか。頑張ってね」

「もちろんだ!」

 

 私はポポの方を向く。

 

「さて、ポポさん」

「わかってる。お前、神様に用があるんだろ。こっちへ来い」

 

 ポポに連れられ神殿の方へ歩くと神様の姿が見えた。

 

「こんにちは、神様」

「よく来た。まずは、ピッコロを倒してくれたことに礼を言う」

「礼を言われるようなことじゃないよ。私にとっては片手間だからね」

「しかし、解せん。お前はピッコロと初めてあった時点で倒せたはずだ。わざわざ若返らせて、負けたふりまでして、一体何が目的だったのだ」

「私はできるだけ好感度の高い有名人になりたいんだ」

「何故だ?」

「私の力は、私に関する記憶や人々から向けられる感情が強いほど強くなる。そのために必要なの」

「わたしが見るに、お前の力は既に世界最強と言っていい。そこまでして、何故更なる力を求める」

「神様は私が世界最強と言うけど、まだまだ上がある。現時点でそれが地球に居ないと言うだけの話。別に私は最強を目指しているわけではないけど」

 

 そう。飽く迄、悪人を除いた主要人物が殺されるのを防ぎたいだけだ。ただ、それを行うのにはかなりの力が

必要になる。現実でもこれほど力を求めることはなかったし、必要でもなかった。それだけ、後のこの世界は滅茶苦茶強いやつらが出てくる。

 

「わかった。それで、お前は何のためにここに来たのだ? 修業をしに来たわけではあるまい」

「あの世に行って、界王様に会いたい」

「界王様だと!? 界王様に何の用があるのだ」

 

 神様さっきから質問ばっかりでうざいな……ドラゴンボールしか利点のないナメック星人のくせして。もうピッコロさんと合体してればいいよ。そんなこと言わないけど。

 

「会いたいだけ。本当にそれだけ」

「わかった。ピッコロを倒してもらったんだ。その願い聞き届けよう。私に触れろ」

 

 神様の肩を掴むと瞬時にあの世に来た。

 あの世に来ると神様は閻魔大王に事情を話した。

 

「ふむ……待っておれ。神宮寺イーヴィ……神宮寺イーヴィ……しかし、生者が界王様に会いに来るとはな」

 

 閻魔帳をめくって私の名前を探しているようだ。

 

「私、最初から機械に魂宿っているようなもんだからある意味生きてはいないかも」

「何!? では、死んでもここに来ることはないかもな」

「それで、界王様に会いに行くのは許可してもらえないの?」

「……よかろう。界王様に会いに行くといい」

「ありがとう。閻魔様」

「案内人を呼んでやるから、あっちから出て待っておれ」

 

 私は蛇の道の方へ歩いていく。

 案内人に連れられて蛇の道までたどり着いた。

 

「さて、頑張るかな」

「くれぐれも蛇の道から落ちないように気を付けてくださいね。下は地獄で落ちたら帰ってこれません」

「問題ないよ」

 

 私は蛇の道を飛んで行った。

 確か、百万キロあるはずだけど、全力を出せば半日で行けるでしょ。

 

 

 思った通り、半日で着いた。今更だけど、あの世では私の力の減退あるいは消滅することはないようだ。この世と分断されている世界であるならば私は消えていてもおかしくなかった。神様が一緒だったから消えるとはなかっただろうけど。理由はわからないが、この世とあの世は意外と密接な位置にあるのかもしれない。宇宙中から魂が来るという割には魂の数が少ないような気もしたし、案外銀河ごとぐらいに別れてるんじゃないかな?

 

 小さな星で界王様を見つけた。てか、界王星ほんとちっさ!

 

「界王様~!」

「なんじゃ、お前」

「私は神宮寺イーヴィ。挨拶しにここまできたよ」

「それだけのために蛇の道を渡って来るとは随分と物好きじゃのう」

「あと、一つお願いが」

「なんじゃ?」

「多分、数年後に私の知り合いをここに連れてくるので修業をつけてあげて」

「いいじゃろう。そやつにギャグのセンスがあればな!」

「それじゃ、また今度」

 

 私は蛇の道へと戻った。遠くから界王様が小さく「なんじゃったんじゃ、あいつ」と聞こえた。

 




イーヴィさんは蛇の道を半日で渡りました。正直、これでも遅いかなとか思ったけど、時速にしたら滅茶苦茶な速度なのでなんとなくこれぐらいにしました。

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