降参した理由をヤムチャやクリリンに質問されたが、悟空に言った通りだ。力を使い果たしたというのは、嘘だけど。
悟空に結構な大怪我をさせてしまったが、ヤムチャが仙豆を持ってきていたので、悟空に食わせた。悟空は仙豆のことは知っていたが、回復することまではこの時点で知らなかったので驚いていた。ついでにクリリンも驚いていた。
まだ、仙豆は3粒残っているから安心して、天津飯に大怪我させられる。さて……あの身体に戻るとするかな。
私の生身の身体は霧散して消えた。
「あれ、イーヴィさん?」
私の意識はディザルムの中に入った。元に戻っただけともいう。
「探してもどこにもいないよ」
武舞台の方から、ディザルムが出てくる。というか、私――イーヴィだ。
「イーヴィさん? いや、ディザルムって人か?」
「ディザルムとイーヴィは同一人物だよ」
「どういう意味なんですかね?」
「俺に聞かれても……」
「もう次の試合が始まるからまた後で」
悟空はなんとなく感づいていただけあって私の言葉でわかったようだった。ヤムチャとクリリンは何が何やらといった感じだ。
『それでは第五試合をはじめます』
私と天津飯が武舞台へと上がる。
「女がここまで勝ち上がってくるとはな」
「ここまで来たら、そんなのは関係ないと思うけど?」
「! お前、喋れたのか」
ディザルムは、ここまで一度も喋っていない。誰かに話しかけられても無言だった。それを天津飯は見ていたのでちょっと意外に思ったようだ。
「私がしゃべったのがそんなに意外?」
『いえ、私もはじめて聞きましたが驚きましたよ。随分とイーヴィ選手とそっくりですね』
「双子の妹だからね」
まぁ、嘘だけど。
『それに表情豊かになりましたね』
「今は、お姉ちゃんがいないからね。私、お姉ちゃんが苦手だから」
これも(ry
「……さっさとしてくれ」
『おっと、これは失礼しました。それでは、はじめてくださいっ!』
私は棒立ちで天津飯を待つ。
「またそれか。俺はあの老人のようにはいかんぞ」
ジャッキー――亀仙人より速い連続攻撃を私にしてくる。それでも私は、片手で全て止めた。天津飯は一旦後ろに下がった。
「どうしたの? それで終わり?」
「なるほど。やはり相当な達人のようだな。ならば倍ならどうだ」
四妖拳かな?
天津飯は力を籠める。
「ぐ……ぬぐぐぐぐ……! おおおーーーー!!」
天津飯の肩甲骨の辺りが盛り上がり、腕へと変貌した。
「まるで、ビックリ人間だね」
「いつまで余裕でいられるかな?」
また連続攻撃を仕掛けてきた。さすがに両手を使いはしたが、一撃も当てさせなかった。
天津飯はまた、私から距離を取った。
「解せないと言った表情だね。私はまだ一度も攻撃してないのに」
「そうだっ! なぜ、攻撃しない!」
「手加減しないと一撃で終わらせてしまいそうだからね」
「な、なんだとぉーっ!」
自分で言ってて、何か変なテンションになっているのがわかる。こんなこと言うつもりじゃなかったのに。なんていうか、おちょくりたいのだ。しばらく私のアイデンティティをこなしていなかったせいかうずうずしているのだ。その状態で現在対峙しているのがたまたま天津飯だった。それだけの話。決して、天津飯を貶めようと考えているわけではない。
「ほら、全力できなよ! 叩き潰してあげる!」
生身の身体に意識を移したことが影響しているのかもしれない。冷静にこんなこと考えてられるけど、表層意識じゃどうにもならない。
「でやぁーーーーっ!」
私は既に防御すら放棄していた。天津飯の渾身の一撃が顔に当たる。
「どうだっ!」
「なにが?」
当然、ダメージはない。
「!? 何故だ! どうして効かない!」
「単純な話だよ。私が強い、それだけ」
本当はこんなことをしたいわけじゃないんだけど、どうも思い通りに動かせない。
「これで終わりにするよ」
右手を前に出すと光が収束する。ぜ、全力で手加減しないと……殺しちゃう。
「はぁっ!」
「くっ!」
右手から光線が放たれる。天津飯は咄嗟にガードをする。だが、光線が天津飯に当たることはなかった。天津飯の手前に穴が開くのに留まった。
「……調子悪い。休む」
私は光線が出る方向を下に向けていた。あのまま天津飯に当てていたら殺してしまっていた。
私は、武舞台から降りた。
『な、なんと! ディザルム選手、場外負けだ! 圧倒的優勢だったのにも関わらず自ら降りた!』
「ちょっと寝てくる」
会場は、唖然としたまま次の準決勝が始まろうとしていた。
イーヴィさん、闇堕ちフラグ?