「勝ったけど、最後は?」
「ふん! やるのう……ここまで勝ち進んだのはお前さんが初めてじゃ。だが、ここまでじゃよ。わしらの5人目はとんでもない達人でのう。ひっひっひ……やっと出番が来たぞよ」
奥から狐の面を付けた男が現れた。少し笑いそうになる。
「私、降参するわ!」
占いババを含めて全員が驚く。最初からこうするつもりだったけど。
「次の選手とは悟空に戦って欲しいの」
「なんでオラなんだ?」
「戦えばわかるわ」
狐の面を付けた男――孫悟飯の方を向いて、ウインクしておく。表情は見えないが、お辞儀している。
悟飯は、占いババに場所を変えることを提案し、外に移動する。悟空は悟飯のことに気づいていないようだが、なんとなくわかっているようだ。
私がどうして降参したのか、みんなに聞かれたが、見てればわかると押し通した。
悟飯の方は占いババに悟空のことを話しているようだ。楽しみだと言っているのが聞こえた。ついでに、私の方にも視線が向いた気がする。
「試合まだー?」
「よーし、では次の試合を始めるぞよ。どちらかがまいったというまでじゃ。無理じゃと思うが、もしもこれで小僧が勝てたならドラゴンボールとやらのありかを占ってやるわい」
その後のやり取りは大体原作通りだ。でも、この二人の戦いは感慨深いなぁ……みんなが戦いに驚いているなか、私は涙目になっていた。
亀仙人が、悟飯の正体に気づき、みんなに教える。
「しかし、イーヴィさんはこれをわかっていたのか?」
「私は何でも知っているからね」
「ドラゴンボールの場所は知らないのに?」
ブルマにそんなツッコミされた。
「知っていることと知らないことがあるのっ」
「何、当たり前のこと言っているのよ」
そりゃそうだ。
「いって~っ!!」
あ、悟空の尻尾が切れた。悟空はそのことに怒ったが、悟飯が降参した。そして、悟空に正体を明かした。感動の再会というやつだ。悟空が泣くのは、全体通してこことピッコロ大魔王倒した時だけじゃないかな。
「孫くんが泣くなんて……」
「珍しいものが見られるって言ったでしょ」
「それにしたって、なんでこうなることがわかるのよ」
「わかっていたからとしか言いようがないわ」
ブルマにすごい疑惑の視線を向けられたが……諦めてくれたようだ。原作知識持っていることに関して隠しているわけじゃないけど、話す必要もないでしょ。
悟飯が私に挨拶をした。
「理由はわかりませんが、悟空と戦う機会を設けてもらいありがとうございます」
「いえいえ、私はあなたと悟空の戦いをみたかっただけですから」
他のみんなにも挨拶をして、どうやらもうあの世に帰ってしまうようだ。
「では、みなさんもいずれあの世でお会いしましょう」
一言二言交わした後、消えた。
「じいちゃん! オラ、今度また尻尾はえたら尻尾も鍛えてもっともっと強くなるからな!」
「ほれ! 占ってやるぞよ。7個目のその球がある場所じゃったな」
占いババが「ほーいほいほいのほいさっさー」と呪文を唱える。占いババの占いがすごいことは知っているが、マヌケっぽくて少し笑いそうになる。
走っている車の中にあることがわかった。知ってたけど。
「場所は?」
占いババが方向を指さしこの方向に200キロだと言う。
「それじゃ、取りに行ってくる」
「もう行くの?」
「すぐ帰ってくるから、話でもして待ってて」
飛んでいけばすぐだ。ピラフ一味相手に手こずる要素もない。ってか、もう着いた。
車の前に降りて、立ち止まる。
「ハロー」
ピラフが顔を出し切れた。
「バッキャロー! 死にてぇのか!」
「ドラゴンボール頂戴」
「ど、どうしてそれを? レーダーには映らないはず……」
「ピラフ様! こ、こいつ、衛星映像であの小僧と一緒にいたやつですよ!」
「一体、何の用だ!」
「さっきも言ったじゃない。ドラゴンボール頂戴」
「なんで貴様なんぞにやらなければならんのだ」
「仕方ないな。私に勝てたら私が持っている5個のドラゴンボールをあなたにあげる。その代り私が勝ったらそのドラゴンボールを頂戴」
ピラフ一味が相談を始めると自信満々に乗る。
「約束だぞ。嘘ついたら針千本飲ませるからな」
「ほら、来な」
「ふはははは! いくぞっ!」!
ピラフ一味は、ホイポイカプセルを投げると、マシンが出てきてその中に乗り込んだ。
「がははは! どうだっ! 降参するなら今のうちだぞ! このピラフマシンはとんでもないパワーなのだぞ!」
「そーなのかー」
「むむむ……信じてないな。よし、マイ! このピラフマシンの恐ろしさを思い知らせてやれっ!」
なんかまごついてるので、マシンの致命傷となる位置に突きを入れた。
「な、何ぃ!? だが、このピラフマシンに傷をつけただけのようだな!」
「いや、既に終わったよ。3秒後にはボンッ!! だ」
私が科学者かつ強い力持っているからこそできる遊び……もとい技だ。機械の致命となる部分だけを掠るように攻撃することによって時間差で破壊する。機械に対してのみ使える北斗神拳みたいな技。名付けて北斗鋼鉄爆砕破。なんてね。
「そんなわけ……へっ?」
私の宣言通りぶっ壊れた。ドッカーンと爆発を伴って。
「生きてる~? 生きてたらボール頂戴」
マシンの残骸の中で倒れているピラフを見つけた。
「ほら、私勝ったよ。ボール頂戴」
「はい……」
「それじゃ、バイバイ」
占いババの宮殿へと帰ると、みんなは3年後の天下一武道会に向けて頑張ることにしたそうだ。ヤムチャやクリリンは亀仙人のもとで修業。悟空は一人で世界を巡って修業するらしい。
「ちょっと待った。ヤムチャは亀仙人さんのもとで修業する必要ないわ」
「ど、どうしてだ?」
「戦ってないから気づいてないかもしれないけど、あなたの力は今の悟空に近いのレベルにあるはずよ。だから、カリン塔へ行くことをオススメするわ。その方が強くなれる」
悟空が亀仙人のもとで修業しない理由は、強くなったからだ。それに近いレベルなのにヤムチャがそれより低いところで修業するのはおかしいだろう。
「イーヴィさんがそういうなら、その方がいいかもしれんのう」
「わかりました。目指してみます。カリン塔を」
「イーヴィさんはこれからどうするんですか? やっぱり、悟空と同じ様に修業ですか?」
私はなにをしようか正直迷っているが……今、決めた。
「私はやりたいことがあるから修業はしないかな。それにこの身体で修業しても強くなれないし」
機械の身体じゃ、科学力が上がらなければ強くなれない。それに地球の素材だけじゃ、どんなに足掻いても限度があるだろう。と言っても、今でも次の武道会に余裕で優勝できるだけの力があるのだが……
「でも、次の大会に出るんだろ。イーヴィ」
悟空がそう聞いてくる。
「そうするつもりだけど、場合によってはでないかもね。努力はするつもりだけど」
「一体、何をする気なんですか?
「それはヒ・ミ・ツ。ほら、さっさと修業を始めないと私には勝てないわよ」
悟空は歩きで世界を巡り、亀仙人たちは占いババに一言言われて走って帰ることになっていた。私は飛べるから関係ない。かわいそうなのでブルマとプーアルは私が抱えて西の都まで飛んで行ってあげた。
イーヴィさんは今後も勝てる勝負で勝とうとしないことがよくあると思われます。