周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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ラナー王女!きさま!知っているなっ!

 竜王国でビーストマン撃退の任務に就いた俺達は、スレイン法国の陽光聖典とともに各地で壮絶な戦いを1ヶ月にわたり繰り広げた。厳しい戦いの連続だったが、一人の戦死者をだす事もなく、王都へ逃げる難民をビーストマンの群れから守りぬいたり、陥落した都市に囚われた住民を救出したりと、八面六臂の活躍で、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフの名声は竜王国に於いて不動のものとなった。ブレインやゼロ達もなかなかのレベルアップを果たし、俺自身も心の中でテレレ~テッテッ~♪とファンファーレが鳴ったような気がした。陽光聖典隊長のニグンサンとも心の友といえる間柄になり、幼い女王に惜しまれながらも、俺はリ・エスティーゼ王国への帰途についた。

 

~ヴァランシア宮殿、王の執務室~

 

「ガゼフよ!よくぞ生きて帰って来た。このランポッサ三世、お前ならこたびの困難な任務、必ずやり遂げると信じておったぞ!ドラウディロン女王からも感謝の書状が届いておる。」

 

「全ては陛下の御威光の賜物、そして我が部下達の献身の結果でございます。」

 

「すまぬな。お前達の功に大きく報いてやりたいのだが…貴族派の意向を無視すれば、この国は立ちゆかぬ…」

 

 このジジイ!ロハで済ませる気マンマンじゃねーか!いつも無茶振りかましといて、ボーナスのひとつも出しやがらねーとは…俺なんて、今回連れて行った連中には、ポケットマネー(八本指は俺の財布)から金貨300枚の危険任務手当と1週間の特別休暇を支給したんだぞ!やっぱこの国はオワコンだわ。

 

 王への報告を終えて、竜王国への遠征中に溜った書類を片付けようと、王城内にある執務室向かっていたら、金髪のガキに呼び止められた。

 

「ガゼフ戦士長でいらっしゃいますね。私はラナー王女に仕えるクライムというものです。王国の英雄である戦士長様にお会いできて光栄です。我が主であるラナー王女が、戦士長の武勇伝をお聞きしたいとの事です。お疲れのところを恐縮ですが、王女の応接室までお越し頂けないでしょうか?戦士長を労う為に、お茶とお菓子をご用意しております。」

 

 こいつクライムじゃん。超絶美少女のラナーのお気に入りで、原作9巻でも、デミウルゴスから生存フラグを保障されて、将来安定の勝ち組…チッ、どうせならコイツに憑依したかったぜ。変態王女のバター犬なんて、俺達の業界では御褒美です。そういえばラナー王女とは会った事はなかったはずだ、『黄金の姫』なんて言われるくらいだ。一度くらい見てみてもバチは当たらないだろう…

 

~ヴァランシア宮殿、ラナー王女の応接室~

 

「戦士長様は国民から大変愛されていますのね。戦士長様の身の周りをお世話する、()()()()()()がたくさんいらっしゃるそうで…それに王国の為に身を粉にして尽くす戦士長様に感銘を受けて、様々な篤志の援助をしてくださる()()()()()や、()()()()()()()()()命を捨てることも厭わない勇敢な部下が大勢いらっしゃる。私はなんの力もない飾りだけの第三王女…私に力を貸してくれるのは、このクライムと少ない友人のみ…」

 

『お前、娼婦のねーちゃんおつまみしまくってるだろ』

 

『お前、八本指から賄賂貰ってるよね』

 

『お前、部下を私兵にしてるだろ』

 

『この事、バラされたくなかったら分かってるよね』

 

 どうみてもバレバレです。本当にありがとうございました。ヤバいヤバい!俺のしてる事、ぜーんぶバレてるじゃん!ヒルマの店で遊んでる事はともかく、八本指関係はマズイ!そうだよ!ラナーって超腹黒くて作中でも屈指の頭脳チートだったじゃん!俺に何かさせたりタカる気マンマンじゃねーか!とにかく言質をとられるのはマズイ。

 

「ハハハ…私は一介の戦士長。過分な評価を頂いているようですが、王国最高の冒険者チームに比べれば、私などたいした事はありませんよ。おお!そういえばアダマンタイト級の冒険者ともなると、一度の依頼で数百枚の金貨を報酬として受け取るとか!?」

 

 こちらも『青の薔薇』が冒険者組合のルールを破って、王女の頼みを聞いている事を示唆して牽制する。誰もがテメーの掌で踊らされると思うなよ!それにしてもラナー王女はヤバ過ぎる。王国にいるのも潮時だな。やはり帝国へ行くのが賢明だろうか。優秀な人材を引き入れる事に対価を惜しまない、太っ腹の皇帝陛下なら俺を喜んで迎え入れてくれるだろう。もったいないが八本指関係は切り捨てたほうがいいかもしれん。まあブレインとゼロくらいは連れて行けば役にたつだろう。ヒルマ?知らない子ですね。

 

 王宮を後にした俺は、八本指の幹部に招集をかけた。王国を見限りバハルス帝国へ出奔する事、近い将来、王国は帝国に併合される可能性が高い事を伝え、「優秀な皇帝の統治下では今までのようにやりたい放題できないんだから、君達も将来の事を考えなさい」と言ってやった。

 

 すると全員が俺に付いて行きたいと言ったので、「堅気になるならいいよ」と言ったら、全員が了承した。今後の事を相談し、全員が帝国へ移住するのではなく、八本指の組織を合法的なシノギ『飲食業』『不動産』『人材派遣』『民間軍事会社』『物流業』などに変えて、王国内で地盤を固めていく事にした。

 

 チャンスは3ヶ月後にカッツェ平野で開催予定の王国VS帝国、伝統の一戦。そこにジルクニフ皇帝が来ていれば、その場でFA宣言だ。原作でも戦場で直接ガゼフに声をかけたという描写があったから、成功の可能性は高いはず…希望の未来にレディゴーだ!

 


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