周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

6 / 43
へ、変態、この変態男! 少しは恥を知りなさい!

「人類を守るという崇高な使命を果たしておられる、スレイン法国の皆様と轡を並べて戦う事が出来るとは!このガゼフ・ストロノーフ、感激でありますぞ!無辜の竜王国の民の生命と財産を守る盾として、暴虐なビーストマン共を打ち倒す剣として、法国の皆様とともに戦いましょう!」

 

 竜王国への救援の為に遣わされたニグン・グリッド・ルーインは困惑していた。ニグンにとってリ・エスティーゼ王国というのは、人類の危機的状況を知りもせず、安全な地で愚かな内ゲバに勤しむ、存在自体が許されない国家であり、そんな国の愚王に認められた位で、周辺国家最強などと持て囃されているガゼフ・ストロノーフなど、神の血をひいた真の英雄である『神人』の存在を知る自分からしたら、井の中の蛙もいいところと心の中では嘲笑っていた。

 

 それがどうであろう!聞けば竜王国の惨状に義憤を覚え、義勇軍として竜王国へ馳せ参じたという。理解のない王国上層部の横やりによって、王国戦士長でなく一個人として、自分に賛同した僅かな手勢のみを引き連れて来たというのだから、救援といいつつもしっかりと高額な対価を受け取っている法国よりも、よほど人道にのっとっているではないか?

 

 ガゼフ自身の強さも凄まじい!ニグンが知る『神の血を覚醒させた神人』である漆黒聖典の戦士達を凌ぐほどの、強者のオーラを漂わせている。ガゼフの腹心と紹介された2名、モンクの男は知らないが、刀を武器にしている男は、かつてガゼフと戦ったというブレイン・アングラウスだろう。この2名も準英雄級の強さの自分に匹敵するだろう。部下の兵達もミスリル級冒険者位の強さはありそうだ。自分が率いる陽光聖典は、全員が第三位階魔法を使える一流のマジックキャスターだが、彼らもまた一流の戦士だろう。これは是が非でも生きて本国へ帰り、上層部へ報告するべき案件だ。

 

 ククク…まさかニグンサンが来てるとはね…ここでしっかりと人類の守護者ガゼフ・ストロノーフをアピールしておけば、スレイン法国の『殺すリスト』に名前が書かれる事も無いだろう。ブレイン達にもその辺りはしっかりと言い聞かせてある。ちなみにこいつらは俺が第五位階の復活魔法を使える事を知っているので、死ぬ気で戦ってくれるだろう。デキル男は部下への慈悲を惜しんではいけないのだ。ここでしっかりと名前を売っておけば、竜王国を通して隣国のバハルス帝国にも俺の事が伝わるはずだ。そうすればジルクニフ陛下からのドラフト指名も間違いなし!さーていっちょ頑張りますか!

 

~スレイン法国首都、土の神殿~

 

 スレイン法国では、国外で活動している自国の部隊を定期的に魔法によって監視している。現在、竜王国に派遣されている陽光聖典もその対象だが、その陽光聖典に同行している、リ・エスティーゼ王国からの義勇軍が法国上層部の間で話題になっていた。

 

「強すぎますな。普通の人間ではありえない、このガゼフ・ストロノーフという男、間違いなく神の血を覚醒させた者でしょう。」

 

「百年の揺り戻しも近い…ぷれいやーという事も考えられるのでは?」

 

「"占星千里"の予言にはなかった。それに強いといっても、第十一席次の見立てでは第一席次には劣るとの事だ。」

 

「それでも神人である事は疑いようがない。神の血を覚醒させた者はすべからく法国の下で、人類の為に戦って貰う必要がある。」

 

「そうですな。陽光聖典が帰還しだい、詳しく話を聞き、法国へ迎える事を考えましょう。」

 

 こうしてスレイン法国の上層部に、王国最強戦士ガゼフ・ストロノーフの名が知られる事となった。法国の重要監視対象となったガゼフは、定期的に魔法によって監視される事になるが、ガゼフの所業を知った一部の神殿関係者(主に若い巫女)から八欲王に連なる大罪人として、漆黒聖典による抹殺を奏上される事になる。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。