王城であるヴァランシア宮殿で、王族と貴族による宮廷会議が開かれていた。話題になっているのは、毎年ビーストマンの襲撃を受けている竜王国への援助である。いつもなら形ばかりとして、僅かな物資や金銭を送る事で済ませていたのだが、今年は戦士長ガゼフ・ストロノーフを団長とした義勇軍の派兵が、貴族派の強引な上奏によって可決された。
竜王国との間にあるバハルス帝国へ考慮し、王国正規軍の派兵は行わず、冒険者を中心とした少数の義勇軍の派兵。戦士長不在による国民の不安を防ぐ為、極秘の出兵。さらに義勇軍は国と関係ないという建前の為に、ガゼフ・ストロノーフに、リ・エスティーゼ王国に伝わる五宝物の装備を認めないという、ガゼフを陥れるがごとき内容に、国王ランポッサ三世は怒りを禁じえないと同時に、そんな死ねというのに等しい事を、信頼する部下へしなければならない事に懺気の念がたえない。
ククク…さすが八本指。うまく貴族共をのせてくれたようだ。この出兵は俺の希望を叶える為に、八本指を使って貴族共にはたらきかけたものだ。この出兵での目的は２つ。同時期に竜王国へ派遣されるだろう、スレイン法国の特務聖典へのコネ作りと、屈強なビーストマンどもを狩りまくってレベルアップする事だ。スレイン法国へは俺が人類に必要な存在だとアピールする事で、暗殺の標的にされる事を防ぐ。また周辺国家で最大の国力を誇るスレイン法国のエリート部隊に知己を得られれば、何かと役に立つだろう。ビーストマン狩りは絶対にやるべきだ。ザコモンスターや一般兵をいくら倒したところで、俺のレベルはそうそう上がらないだろう。ナザリックがこの世界へ転移してくる将来に備えて、少しでもレベルアップしなければならない。
ビーストマンとの激戦区に赴くのだから、相応の準備が必要だ。連れていく部下は厳選した１０名、こいつらは俺が直々に鍛えた事もありミスリル級冒険者くらいの実力はある。そして以前の一件から俺の下僕扱いになった六腕のゼロを連れていく事にした。強くなる事を求めているゼロにとっても好都合だろう。さらに俺は、八本指に命令して『あの男』を探させる事にした。
～エ・ランテル下町の某所にて～
「アダマンタイト級といわれる六腕にスカウトされるとは光栄だ。だが八本指は俺を満足させてくれるような待遇を用意できるのかい？」
「もちろんアングラウス殿には、最高の待遇をご用意しております。金銭は勿論、武具やマジックアイテム等で不自由はさせません。アングラウス殿をスカウトする事は、我が主が強く望まれた事ですので…」
「ほう…六腕のリーダーといえば、素手の戦闘ならガゼフさえ凌ぐという闘鬼ゼロか…」
「いえいえ…ゼロ如きがガゼフ様を凌ぐなどとんでもない。そしてアングラウス殿をお求めになっているのは、我ら八本指の真の首魁である、ガゼフ・ストロノーフ様でございます。」
「はあっ！？ガゼフが八本指？どういう事だ！」
かつて御前試合の決勝戦でガゼフ・ストロノーフに敗れて以来、ガゼフを超える強さを求める為に、傭兵団の用心棒として過して来たブレイン・アングラウス。当然、自分を倒した男の事は噂ではあるがよく知っていた。バハルス帝国との戦争では、帝国最強の四騎士の一人を破り、王からの信頼も厚く、平民からは絶大な人気を誇る。そんなガゼフが王国の裏社会を牛耳る八本指、それも首魁だとは信じられない。ブレイン自身は清廉潔白な身ではないと自覚している。傭兵団に所属したのも人間相手の実戦に事欠かないと考えたからで、これまでも多くの冒険者や兵士を手にかけてきた。
そんな自分が八本指に誘われるのは十分考えることだし、魅力も感じている。しかし自分を破ったガゼフ・ストロノーフという男は、強いだけでなく、高潔で勇者のような男ではなかったか？これは自分を陥れるワナなのか？もしそうならこいつらを生かしてはおけない！ガゼフを侮辱する事などブレイン・アングラウスが許さない！いいだろう、王都へ行けばハッキリする事だ。それに御前試合から１年余り、あの時は僅差で敗れはしたが、あれから強くなった俺とガゼフの差がどうなったか知るのも悪くない。王都へ行ってやろうじゃないか！
～王都ヒルマの店にて～
「キャー♪戦士長様の、ちょっといいトコ見てみたい～♪」
「よ～し、戦士長頑張っちゃうぞ～♪」
「俺に勝った戦士長が王都の娼館にドハマリしてアヘ顔ピースしてるなんて…」
この後、ブチ切れて襲いかかってきたブレインをボコボコにして、無茶苦茶セッ○スした。