周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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冒険してもいい頃

「……そういう訳だ。私以外のギルドメンバーは「リアルの世界」でそれぞれの人生を歩んでいる。ユグドラシルはあくまで娯楽の為に存在した世界。お前達NPCもその為に創造された。そして彼らはユグドラシルを必要とはしなくなってしまったが…それはお前達が自らの役目を全うした事だとも言える。」

 

 守護者をはじめとしたNPC達を集めたアインズは、彼らにユグドラシルの真実を告げる。ガゼフの野郎が彼方此方(竜王とか皇帝とか)に様々なメタ発言を吹聴したので、彼らに隠し通す事が困難と考えたからだ。

 

「それではアインズ様も、何れはリアルへと御帰りになられるのですか!?」

 

 守護者統括であるアルベドが、皆を代表して問いかける。自分達のアイデンティティに関わる事や、絶対と信じていた自分達の創造主すら超えた存在(運営)の事も驚きだが、最も重要なのはアインズのこれからの動向だ。最後までナザリックに残り、今も自分達を導いてくれる慈悲深い支配者にこれからも忠誠を尽くしたい…しかしその為にアインズ自身の幸せを犠牲にしなければならないのなら…

 

「私はリアルへは帰らない。帰還方法も不明だしな。それにナザリックを造った41人は、私を除いて引退してしまったが……ナザリックに殉じる者が一人くらいはいてもいいだろう。」

 

 これは最後までユグドラシルに執着した鈴木悟の本心だ。リアルに未練などないし仲間達は去って行った。それでも己の半生をかけたといっても過言ではないナザリックが残っている。それを棄てるなんてとんでもない!いったい幾ら課金したと思っている!?○千万だぞ!ユグドラシルは終了しましたで済むかっ!データは全て抹消されます、無効になりますで納得できるかっ!?

 

 アインズの言葉にNPC達は歓喜の涙を流す。これからもアインズはナザリックの支配者として、自分達を導いてくれるという圧倒的な安心感が心を満たしていく。

 

「原因は不明だが、消滅する運命にあった我々が、こうして新たな世界で存在している。それならこの状況を最大限に楽しもうじゃないか。あいつのようにな…」

 

 転移直後の不安は消え去っていた。自分達の脅威になりうる存在はほとんどいない、何より同郷?の人間があれだけやりたい放題にやっているのだ!それなら自分も楽しまなければ勿体無いだろう。そもそも「冒険」に憧れてユグドラシルを始めたのだから、この世界を冒険してみよう!

 

「アインズ様がお望みになるのなら、ナザリックの守護者、シモベの全てを動員してお役に立たせていただきます。バハルス帝国は既に冊封下にあり、近隣最大の国家であるスレイン法国についても時間の問題です。大陸にある他の国についても、ご命令とあらば即座にアインズ様へ捧げさせて戴くことも可能でございます。」

 

「待て待て。私がしたいのはそういった事ではない。無論ナザリックの繁栄は望むところではあるが、私の望みは征服や侵略といった俗なものではないのだ。」

 

 ここでアインズはガゼフからの助言?を思い出す。

 

「世界征服という言葉は絶対NGですよ!少しでもそんな事を示唆する言葉を聞かせたら、デミえもんあたりが深読みして大変な事になりますからね!まずはチュートリアルという事で冒険者とかどうですか?トブの大森林に丁度いいヤツがいるんです。それかアゼルリシア山脈でフロスト・ドラゴン狩りなんてどうですか!ドワーフ国なんてのもありますよ!」

 

「お、おう…(デミえもんてデミウルゴスの事か?)」

 

 アインズだって世界征服なんて、これっぽっちもやる気はない。リアルではしがない営業マンだったし、ナザリックの支配者という地位だっていまだに持て余しぎみなのだ。

 

「スレイン法国の件が落ち着いたら、私はこの大陸を「冒険」してみようと思う。私達がユグドラシルを始めたのも、未知の世界を冒険したいと思ったからだしな。こうして未知の世界に来たのだから、私は色々な場所を見て回りたい。その為にはお前達の協力が必要なのだ。私の留守の間、ナザリックを守る者、私の供をする者など様々な面での協力を頼むぞ。」

 

 アインズとしてはナザリック、今ではアインズ・ウール・ゴウン魔導国だが…その運営・管理はアルベドやデミウルゴスあたりに任せて、自分は外の世界へ冒険に行きたいと思っている。ただユグドラシルではずっとソロ活動だったから、何人かのNPCを連れて行きたいと考えている。ユグドラシルのシステムでは拠点外でNPCを連れての活動が不可能だったが、この世界ではそれも可能だ。

 

 ユグドラシル末期では、ナザリック地下大墳墓へ攻め込んで来るようなプレイヤーはいなかったので、せっかく強化したNPCを披露する機会がなく寂しい思いをしていたのだ。それに久々のパーティープレイに期待しているというのもある。

 

「畏まりました。それがアインズ様のお望みとあらば。」

 

 アルベドが代表して答える。NPCの総意としては、出来ればアインズにはナザリックに支配者として控えていて欲しいが、今までも至高の方々は外の世界で様々な事を行っていて、自分達はナザリック地下大墳墓の守護・管理を担って来たのだ。そして多くの至高の方々がナザリックを去ってからは、アインズは独りで外の世界へ行っていた。それを思えば、これからは自分達もアインズの供として役に立つ事が出来る(当然NPC全てがアインズの供をしたいと望んでいる)のだから、喜ばしい事だろう。

 

「うむ、これからの事について詳しい相談したいので、アルベドとデミウルゴスは私の部屋に来てくれ。」

 

 冒険に旅立つ勇者というものは、様式美として最低限の装備とはした金を渡されて、魔王討伐に行かされるものだが、アインズは勇者ではなく大魔王だ。だから最初から最高クラスの装備に潤沢な資金、さらにパーティーメンバーだってより取り見取りだ!とある勇者なんてオープニングで故郷の村が滅ぼされたうえで、幼馴染の美少女が自分の身代りで殺されるという悲惨な旅立ちだとういうのに、なんと恵まれた境遇だろうか!

 

 こうしてアインズの冒険の旅が始まる事になったのだった。

 




この作品ではユグドラシルの延長で、アインズが拠点の外で活動する事に対して、NPCが止めたりはしない設定という事でお願いします。

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