周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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全回に続きトンデモ展開になります。


神々の黄昏

 西暦21××年、世界は深刻な環境汚染につつまれていた!一部の富裕層を除いて、人々は絶望と貧困に苛まれていたが、人類の数少ない娯楽として「DMOO―RPG」というものがあった。西暦2126年に発表された「ユグドラシル」は圧倒的な造り込み、奥深い設定、異様なほど広い自由度で人気を博していた。

 

 鈴木悟も「ユグドラシル」にハマった一人だった。スケルトンのアバターでゲームを始めた当初は、「異形種狩り」という他プレイヤーからのPK行為を受けていたが、それを助けてくれた後の友人とその仲間達で結成した「ナインズ・オウン・ゴール」が後のアインズ・ウール・ゴウンの前身だった。

 

 ユグドラシルが始って10年、最盛期には41人という少数でありながら、ギルドランク9位を誇ったアインズ・ウール・ゴウンも、多くのメンバーが引退し、残った僅かなメンバーも、ギルド長である彼を除いて殆どログインしないという状態だった。

 

 そんな状況でも、鈴木悟のユグドラシルへの熱意はあまり衰える事は無かったが、惰性に陥っていた部分がある事も事実だ。去って行ったメンバーに思うところが無いわけではなかったが納得もしていた。10年も経ったのだ。アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーには二つの条件があった。「異形種」であることと「社会人」であることだ。現実世界での10年という月日は短いものではない。新入社員が役職者になり部下を持つようになる、恋人同士が夫婦になり子供が生まれる、それ位の時間が経ったのだ。

 

 悲しい事に鈴木悟の現実世界での立場は10年間で殆ど変化がなかった。家族も既に失い、恋人もいない彼にはユグドラシルが全てだった。友人すらユグドラシルの中にしか居なかったのだ。そんな彼の身に2つの重大事があったのは、ユグドラシルのサービス終了から1年半前の事だった。

 

 西暦2136年、ユグドラシルの運営会社は「ヴァルキュリアの失墜」以来4年振り、そして最後となる大型アップデート「神々の黄昏」を発表した。職業と種族の追加、ワールドエネミーの追加などに加えて、レベルキャップシステムと課金システムの大幅な改編がされたのだ。

 

 レベルキャップは大幅に緩和され、それまでの100から何と255(条件有)まで引き上げられた!そして課金システムに至っては、運営による「一部の未発見ワールドアイテム」のオークション、拠点NPCレベルポイントやレベルアップに必要な経験値さえ、課金すれば入手可能というバランス崩壊や拝金主義の誹りを免れない内容だった。このヤケクソともいえる「神々の黄昏」は、その言葉通りユグドラシルの最後を予見した、運営の最後の徒花だったのだろう。

 

 鈴木悟はこれに飛びついた。去って行ったメンバーが戻ってくる事を期待した為だ。全員にメールを送り、アップデートに備えて情報収集に勤しんだ。全てのメンバーからは返信があったが、それらは現況報告に始まり、今までの疎遠を詫びるものや、リアルでの交流を促すものであり、改めてユグドラシルに取り組もうというものは少なかった。鈴木悟の胸中には様々な感情が込み上げたが、それでも友との友情が確認できたことに満足した。彼らには彼らの立場、人生があるのだ。寂しい事は確かだが、自分は見捨てられている訳ではないと知った。それに何人かは復帰を約束してくれたメンバーもいた!それならギルド長として皆のサポートに抜かりがあってはいけないと、久々の廃人モードになった鈴木悟に幸運?が舞い込んだ。

 

 鈴木悟は現実世界でギャンブルにのめり込む様な事はしなかったが、ささやかな楽しみというか夢として、毎月数千円だが宝くじを買っていた。そんな彼のPCに当選を通知するメールが届いた。

 

「お♪久しぶりに当たったじゃないか♪今度は4等の一万円位当たったか?……って何じゃこりゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

『おめでとうございます!!貴方は2等の20,000,000円に当選しました!』

 

 まさかの高額当選に鈴木悟は驚愕する。そして様々な欲望が込み上げてくる。

 

「これだけあれば仕事なんて辞めて…いやいや何を馬鹿な!これで一生暮らしていく事なんて出来ない。そうだ!引越しはどうだ?もっと良いアーコロジー…は無理だ、上流階級向けのアーコロジー入居には億単位の保証金が必要と聞く…」

 

「そうだ!本物の肉や魚を一度でいいから食べてみたかったんだ!ステーキ、焼き肉、寿司、天麩羅etc…前に家族で食べたバナナをもう1度食べてみるのも…待てよ!?」

 

 鈴木悟の心に馬鹿げた、それでも魅力的な考えが浮かびあがる…普段の比較的穏やかで冷静な彼にはあり得ないはずの考え。ユグドラシルへの情熱が再燃し廃人モードになっていた彼に湧いた一攫千金の報が、彼の理性の箍を緩ませる。彼はかつてユグドラシルの課金ガチャに、ボーナス全額を投入するという暴挙に及んだ事があったが、今回はそれの比ではない、数年分の年収に匹敵する額を投じようというのだ!?

 

~1ヶ月後~

 

 ユグドラシルの大型アップデート「神々の黄昏」が実装されてから、鈴木悟は有給休暇を取得してまでのめり込んだ。さすがに退職という一線は越えなかったが、5日間の休暇でログイン時間が100時間に及ぶ廃人ぶりであった。

 

 まずはオークションでワールドアイテムを3つも落札し、ナザリック地下大墳墓の拠点NPCレベルポイントを倍近くまで増強した。自身も大量課金によるレベルアップで様々なクラス、スキルを取得して、総レベル150という凄まじいパワーアップを果たした。自分の年収に匹敵する額を課金したところで、若干の冷静さを取り戻した(復帰したメンバー数名の説得、咎立もあった)鈴木悟は、ナザリック地下大墳墓の強化に乗り出すことになる。NPCの強化やギミックの増設に、帰還したメンバーは若干、引き気味ではあるが相談にのってくれたし、不在メンバーの中にもメールでアドバイスを送ってくれる者が居たので、ナザリック地下大墳墓の強化の強化は着々と進んでいった。

 

 その後アインズ・ウール・ゴウンは幾つかのイベント…ワールドエネミー討伐、希少アイテム入手などを達成したが、鈴木悟以外のメンバーはユグドラシルから去って行った。あまりにもゲームにのめり込む彼と他のメンバーとの格差が、無視できないレベルに達したからだ。さすがにメンバーに課金を強制したり、肩代わりを申し出るほど鈴木悟は厚かましくは無い。それでも彼は満足だった。少しの間だが嘗ての栄光が戻って来た事が嬉しかったのだ。

 

 西暦2138年、ユグドラシルの運営会社がサービス終了を発表した時点で、アインズ・ウール・ゴウンのギルドランクは12位であった。実働メンバーが1名きりでありながら、ワールドアイテムの所有数は16、ギルド長にして唯一の実働メンバーであるモモンガは総レベル179にして「ワールド・オーバーロード(世界を超越する大魔王)」の称号を贈られた、ユグドラシル最強の一角に数えられる存在だった。

 




という訳で
ウルトラスーパーDXガゼフになって準備していたのに
ウルトラスーパーDXモモンガ様が来たでござる

このオチを書きたくて、この作品を始めたんです。
この後の展開は人類オワタ\(^o^)/ で
何も考えていなかったりします

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