周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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乗るしかない、このビッグウェーブに

~エ・ランテル~

 

 エ・ランテルでスレイン法国からの査察団受入れ準備をしていたガゼフにメッセージが届いた。「アインズ・ウール・ゴウンと名乗る貴族が行政特区カルネへ来訪」のメッセージに、ガゼフはいよいよ来るべき時が来た事を実感した。

 

 ついにアインズ様の登場だ。この日に備えて考えられるだけの準備をしてきた。まさかこのタイミングで来るとは思わなかったが…。ナザリック移転予定地周辺には、分かり易く看板を設置したし、最初に訪れるだろうカルネ村の魔改造も間に合った。あそこには「対アインズ様用応対マニュアル」を渡したロウネを執政官として派遣している。へたなヤツを派遣して、アインズ様の地雷を踏みぬいて「悲鳴と呪詛以外、もはや聞きたくないぞ」なんて事になったら帝国は滅亡する。

 

 行政特区カルネについてはスレイン法国からクレームが来たが、レエブン侯の仕業で押し通した。ツアーさんとの二股もつっこまれたがレエブン侯の仕業で押し通した。全てはレエブン侯の陰謀だったのだ。そのせいでレエブン侯は大変な事になっているらしいが必要な犠牲だった。

 

 ジル様には「このままでは帝国は滅亡する!」と必死に説得して理解を得る事が出来た。辺境の遺跡で発見された「乃須寅堕無素の予言書」に書かれてあったと説明し、詳しい事は「オレにだって…分からない事ぐらい…ある」で誤魔化した。それでも判ってくれたジル様は理想の君主だ。さすがジル様、略して「さすジル!」所詮ガゼフは王国では評価されない項目でしたからね。

 

 ロウネに説明した内容は「すごいローブを着た仮面の魔法詠唱者」「漆黒の全身鎧の戦士」「イケメンでナイスミドルの老執事」…etcが現れたら、VIP対応のうえで、相手の要望に可能な限り応えるというものだ。多少怪しまれても、俺の事をアピールして興味を引く事が目的だ。俺の生存フラグ確立の為に、モモンガ様とはどうしても話し合いたい。用意したアレを渡せれば何とかなるはずだ…

 

~ナザリック地下大墳墓~

 

 行政特区カルネで得た情報を守護者に説明したモモンガは、今後の指針を語った後に、自らはモモンガの名を棄て「アインズ・ウール・ゴウン」と名を変える事を宣言した。アインズが語った内容は「ナザリックの安全を最優先」「当面は周辺国と敵対しない」「周辺国との外交チャンネル確立」「資金・物資の獲得手段の確立」「さらなる情報収集」である。

 

 そして明後日に控えた、プレイヤーと思われる「ガゼフ・ストロノーフ」との接触には万全の態勢で臨む事が決定された。アインズに同行するのは守護者統括アルベドを始めとした、最強クラスのNPC7名(アルベド、デミウルゴス、ヴィクティム、アウラ、マーレ、コキュートス、シャルティア)からなる最強の布陣。全員がワールドアイテムを所持したうえで、ゴッズ級装備を整えた「これなんてナザリックドリームチーム?」である。

 

 留守のナザリック地下大墳墓を預かるのは、アインズに直接創造された唯一のNPCであるパンドラズ・アクターである。この度の重大局面を受けて宝物殿より解放されたのである。このパンドラの補佐にはセバスとプレアデスが付き、ナザリック有する数々のアイテムの使用も許可されている。さらに地表部にガルガンチュアを第四階層から移動させて配置、万一の際には最強NPCルべドの起動まで許可するという、アインズ不在時にナザリックへ侵攻されても、援軍到着まで十分に堪え切れる体制だ。

 

 アルベドを始めとした守護者達からは「ガゼフの拉致・抹殺」が進言されたが、アインズはこれを強い口調で却下した。ガゼフ以外のプレイヤーだって居るかもしれないので、無暗に敵対する愚は冒せない。それにここはゲームの世界ではない。故郷から遠く離れた異境の地で、同郷の人間に会えるかもしれないのだ。これはプレイヤーのアインズとしてではなく、日本人鈴木悟としての決定だったのかもしれない。

 

 それでもアインズはガゼフに対して、最大限の警戒をしている。ロウネからの情報では「古今無双の剣技と第六位階の魔法すら使いこなす最強の戦士」とのことだが、プレイヤーがその程度の強さのはずはない。おそらく手の内を隠しているのだろう。超位魔法やワールドアイテムを切り札にしている可能性もある。だからこそのナザリックドリームチームだ。

 

~行政特区カルネ~

 

 いよいよアインズ様とのご対面だ。絶対に無礼は許されない。少しでも粗相があればヤンデレ守護者統括を始めとした面々から、OHANASHIされてしまうだろう。ここは下手っ…何があっても…ひたすら下手!

 

 ちなみに面会の同行者は3人?いる。心の友ニグンサンとクアイエッセお兄ちゃん、そしてあのツアーさん(鎧)である。法国の二人はともかく、何故にツアーさんまで居るのか説明すると、ツアーさんは査察団に毎回、オブザーバーとして参加しているのだ。帝国内ではどちらも武力行使をしない事を約束してもらった。以前の会談で仲直りとはいかないものの「お互いに不干渉(但し番外席次ちゃんが出てきたら全面戦争)」という事になったからだ。

 

 それからツアーさんとは定期的に会うようになったので、訓練がてら鎧モードのツアーさんと戦ったけど、毎回フルボッコ状態です。全力全開のガゼフストラッシュでも、ちょっと傷が付く位でした。アレは反則ですわ。おかげでレベルアップ出来たけどね。

 

 俺は行政特区からメッセージが着た時点で、エ・ランテルに滞在中の双方に「プレイヤーが来たぞ~」とぶちまけた。ここまで来たら隠し様がないからだ。当然大パニックになった。

 

「ガゼフ殿ぉぉぉ~!神が、神が降臨されたとは真ですかぁぁ!?」×2

 

「やべー 実質敵対したらやべーわー それどこ情報?それどこ情報よー?」

 

 そういった訳で、とにかく全員で行ってみようか?という事になりました。プレイヤーなんて世界的危機ですもんね、乗るしかない、このビッグウェーブに。

 

 という事で3人と1体は指定された場所(ナザリックと行政特区の中間地点)へ向かうのだった。

 


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