周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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帝国英雄伝説⑥ 魔術師、キレる

 帝国歴194年上水月15日、ガゼフ・ストノーフの「バハルス帝国征威大将軍」への任官が布告された。周辺国最高の英雄が遇されるのに相応しい事柄は、帝国の貴族、平民を問わず歓迎された。またエリアス・ブラント・デイル・レエブン元王国侯爵がバハルス帝国侯爵に叙された。帝国へ併合されたリ・レエブンはそのままレエブン侯の領地として安堵された。

 

 この布告の1週間ほど前に、帝都アーウィンタールの一等地にある屋敷が、新しい主人を迎えた事を知るのは皇帝と一部の側近達、ガゼフとレエブン侯のみであった。

 

~バハルス帝国大魔法詠唱者の塔~

 

「よく来て下さった、ストロノーフ将軍。このフールーダ・パラダイン、ストロノーフ将軍のような強大なマジックキャスターに御会い出来て、感激の極み。」

 

「私のほうこそ、人類最高のマジックキャスターであるフールーダ・パラダイン様と会うのを楽しみにしておりました。それと私の事はガゼフで結構です。」

 

「私もフールーダで構わないとも。では早速だがガゼフ殿が習得している魔法についてなのだが…」

 

 さすがフールーダ、魔法にかんしては1ミリもブレない。周辺国家最強(笑)の戦士をマジックキャスターと呼ぶとは…俺の本業は一応戦士職なんだけどな(笑)マジックキャスターはあくまでも副業だ。トリップ当初は魔法を使える事に感激していたものだが、やっぱり男の子としては必殺技の魅力には勝てなかったのだ。

 

 俺も子供の頃は「ア○ンストラッシュ」や「か○はめ波」を散々まねしたものだ。「ガゼフストラッシュ」が出来たときは本当に嬉しかった。次のレベルアップではぜひとも「がぜはめ波」を覚えたいものだ。ちなみに竜王国でレベルアップした時に覚えた「ガゼフバスター」をゼロで試したら大変な事になった。

 

「私には、相手がどの位階までの魔法を使えるかを感知するというタレントがある。しかしどんな魔法を使えるかまでは分からないのだ。ガゼフ殿が第五位階魔法を使える事までは分かるのだが…」

 

 こうなるだろうと分かっていたので、俺はあらかじめ用意していた「使える魔法リスト」をフールーダへ渡した。いちいち説明するのは面倒だからな。フールーダは「ほほう…」とか「これはっ!?」とか言いながら、リストを読みふけっている……もう1時間位経ったんですが、帰っていいですかね?

 

「素晴らしい!素晴らしいですぞガゼフ殿。魔力系魔法と信仰系魔法の両方を、ここまで高位階で極めるとはっ!しかしガゼフ殿はどのようにして、これだけの魔法を身に付けたのだ?こう言ってはなんだが、王国にはまともなマジックキャスターはいなかったはず…王国には何か特殊なマジックアイテムでもあったのか?いやでもそんな事は…」

 

 そこに突っ込まれるのも分かっていた。俺はレベルアップすれば自動で魔法を覚えられるチートだからな。これについては誤魔化し様がない。さすがにレエブン侯の仕業にも出来ない。原作のアインズ様も「魔法の深淵なんて、俺に聞かれても困る」だったしな。まあこの世界には多少理不尽でも許される、都合のいい設定があるから大丈夫だ。

 

「タレントです。」

 

「は?」

 

「タレントのおかげです。」

 

「タ、タレントとはいったいどういう…」

 

「魔法を司る神の御加護とでもいいましょうか…ある日突然、魔法が使えるようになって、それ以降も定期的に使える魔法が増えるのです。ここ数年は頻度も落ちてきて年に1度位になりましたが…」

 

 まあウソは言っていない。チートもタレントも一般人からすれば同じようなもんだ。ある日突然、魔法が使えるようになったのは事実だしな。レベルアップも年に1回すればいいほうだし…

 

「くぁwせdrftgyふじこlp」

 

 なんかフールーダが狂った。

 

「そ、そんなっ…!バカなっ…!なんでこんな…あってはならないことがっ…!どうして…なんで…そんな…そんな羨ましい事が…ガゼフの身ばかりにっ…」

 

「お、落ち着かれよフールーダ殿…(うわあ…なんだかすごい事になっちゃたぞ…)」

 

「ぐっ…!うううっ…!くっ…!しかし…しかし…殺してどうなるっ…!?発散してどうするっ…!?ガゼフを殺しても…何も変わらんっ…儂が魔法の深淵を見れんことに…!」

 

 フールーダのいきなり「殺してでも うばいとる」にドン引きする。そこはせめて「ゆずってくれ たのむ!!」だろう。それにタレントは奪えないし、譲れないだろう…常識的に考えて。まあ「ねんがんの チートをてにいれた」俺はフールーダを許してやろうじゃないか…寛容な精神で…

 


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