周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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帝国英雄伝説⑤ 英雄の新しい仕事

「卿の話は大変興味深いものだった。「スレイン法国」「竜王国」との関係改善については、卿の案に基づいて進めさせる事としよう。予算と人員についても考慮する。アーグランド評議国の『プラチナム・ドラゴンロード』との交渉は、卿に全て一任する。いかにロウネが優秀な秘書官でも、大陸最強のドラゴン相手の交渉は荷が勝ちすぎるだろうからな。」

 

 ガゼフからの提言は帝国にとって必要な事であり、ジルクニフにも納得出来るものであった。多くの「神々の至宝」と「神の血をひく戦士」を擁するという法国の実態を知れば、表立って敵対する事など出来ない。人類に敵対的な種族を駆除する事も、バハルス帝国にとって悪い事ではない。ドワーフやエルフ等についてはバランス感覚に注意していけばいいだろう。

 

 竜王国を保護する事によって、ドラウディロン・オーリウクルス女王との友好関係を強固なものとする。ジルクニフはあの「若作り婆」が好きではなかったが、竜の血を八分の一とはいえ引いている彼女は、最強のドラゴンと言われるアーグランド評議国永久評議員『プラチナム・ドラゴンロード』と繋がりがある。王国の向こう側に位置する評議国とは交流が殆どないので、将来の隣国との友好関係構築に丁度良いし、『プラチナム・ドラゴンロード』と友誼を結べれば、法国への牽制になる。必要な事とはいえ、法国に遜りすぎるのは、ジルクニフにとってあまり好ましい事ではない。

 

「私の愚案をお聞きいれ戴き、幸甚の至りです。陛下の信頼に応える為、微力を尽くします。」

 

 よし!ツアーとの交渉権ゲットだ。アイツはナザリック並みにヤバイからな。「動く黄金聖衣」だけでも無理ゲーなのに、本体に至っては情報が殆どない。法国のてまえ表立って仲良くは出来ないが、コネが出来るだけで十分だ。原作を読んだ限りでは、この世界の者同士の争いには興味が無い様だし、ババアの件もばれてないはずだ。交渉の余地は十分にある。竜王だけに「世界の半分をお前にやろう」なんて展開はあるのだろうか?

 

「話は変わるのだが、卿との会談を強く希望している者が2名おるのだが…」

 

「それは主席魔導士フールーダ・パラダイン翁と帝国四騎士"重爆"レイナース・ロックブルズ殿の事でありましょうか。」

 

「察しが良いな…まあどちらも有名な話だからな。」

 

フールーダが求めるのは「魔法の深淵を覗きたい」という事のみ。第五位階の魔法を使えるガゼフに興味をもつのは当然だ。レイナースは、自分が受けた呪いの解呪についてだ。高位の回復魔法を使えるガゼフなら或いは…と考えての事だ。フールーダはともかく、レイナースについては注意が必要だろう。仮にガゼフが呪いを解いた場合、彼女はどうするのか?敵対する事はありえないが、彼女の能力は惜しい…

 

「フールーダは純粋な魔法談義を望んでいるだけだ。支障のない範囲でつき合ってやればよかろう。ただレイナースについては…卿には彼女の呪いに対して、何か手段があるのか?」

 

「今の私では、何のリスクも無しには不可能でしょう。」

 

「何がしかの代償が必要になるが、不可能ではないという事か…詳しい内容を聞かせて貰おうか。」

 

「簡潔に申しますと、一度殺して生き返らせる。それだけです。」

 

「そ、それはっっ!!??」

 

 当たり前のように、死者の蘇生を語るガゼフにジルクニフは驚愕を禁じえない。高位の回復魔法を使うとは聞いていたが、よもや<死者復活/レイズデッド>とは!?帝国にとって悲願の一つだった死者の蘇生手段の確保に、ジルクニフは満足する。

 

「呪いというものは本質的に、魅了や混乱といった状態異常と一緒です。ですから『死』という、もっと強い異常で上書きしてしまえば、呪いは打ち消される事でしょう。但し<死者復活/レイズデッド>の魔法には、触媒として莫大な黄金が必要になります。また身体が弱いものは、復活時の肉体的負担に耐えられず灰になります。そして復活に成功した場合も、肉体能力の低下がありますので、はじめの二つはともかく、最後の一つは陛下にとって問題ではありませんか?」

 

 一人の紳士として、レイナースの事は助けてやりたいと思っていた。呪いを解く事に全てを懸ける彼女は、呪いさえ解いてやれば、エンディングまで選択肢無しで一直線のチョロインだ。ジル様の不興を買いたくないので、勝手にやったりはしないけどね。

 

「そうか…<死者復活/レイズデッド>といっても、無条件という訳にはいかないのだな。よし、その件については帝国へ戻ってから検討するとしよう。」

 

 

 帝国歴194年上水月14日、バハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが帝都アーウィンタールに凱旋した。帝国の勝利に歓喜する臣民の「ジーク・カイザー・ジルクニフ!」の大合唱が帝都中に響き渡った。

 


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