帝国歴194年下火月18日、カッツェ平野帝国軍本陣にて、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスとガゼフ・ストロノーフの邂逅が果たされた。
「卿がガゼフ・ストロノーフか。余がバハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。」
「初めて御意を得ます。このガゼフ・ストロノーフ、本日只今よりバハルス帝国の旗を仰ぐ所存、ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクス陛下に永遠の忠誠を。」
「周辺国家最強の戦士といわれる卿を旗下に迎えられる事は、余にとっても望ましいことだ。卿の忠誠に対して、余は最大限に報いる事を約束しよう。まず卿に「帝国征威大将軍」の職を授けよう。この地位は帝国全軍において、余に次ぐもので、余にのみ責任を負うものとする。」
その場にいた帝国の諸将と側近に激震が走った。いかにガゼフが評価されているのかに、羨望と納得、少しの嫉妬を感じた。最高幹部である帝国8軍の将軍、四騎士を超えるナンバー2の地位である。
「待遇に関しては、帝国へ帰還してから詳細を詰めるとして、卿の望みは全て叶えると約束しよう。もちろん卿に付き従う者たちも悪いようにしない。」
「陛下のご寛容に厚く御礼申し上げます。しかし周辺国家最強などと…かのスレイン法国には私を凌ぐ戦士が、少なくとも2人おります……失礼しました。このような場でお話しする事ではありませんな。」
「…!?た、大変興味深い話だが、確かにそうだな。近いうちに詳しい話を聞かせて貰うとしよう。」
この男は今何と言った!自分より強い戦士が2人だと!?ジルクニフや帝国の面々は驚愕した。どういう事だ!?問い詰めたい気持ちを抑えて、ジルクニフは話を続ける…
「レエブン侯からの提案は、一つだけ不可解な点があったが、戦略的にも戦術的にも納得のいくものだ。さすが王国の黒幕と言われることはある。それとも黄金と呼ばれる姫の発案かな?」
「概ねはそうですが、私が強く希望した事案も御座います。」
「卿は強者であり智者でもあるか。エ・ランテルで時間をとって詳しく話を聞かせて貰おう。」
「マイン・カイザー(我が皇帝)の御望みとあらば…」
これらの遣り取りは、改めてジルクニフの度量の大きさを知らしめるとともに、ガゼフの謙虚さと忠誠、そして軍事だけでなく、政治にも見識がある事を周囲に大きく印象づける事になった。そしてガゼフがもらしたスレイン法国の秘密の一端は、ジルクニフの戦略に小さくない影響を及ぼすことになった。
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さっすが~、ジル様は話がわかる!ランポッサに出来ない事を平然とやってのけるっ!そこにシビれる! あこがれるゥ!てーいこく、てーいこく、うーるーわーしーの~~♪ジルクニフ様…ありがとうございます……ありがたいお言葉をいただき…このガゼフ…感無量!…勇気100倍です……!
それにレエブン侯もうまくやってくれているだろうし、ラナー王女も今頃は王都から脱出している頃だろう…ここまでえげつないシナリオを描いた2人にドン引きだよ。クライム君もすっかり変わってしまった…あの童貞坊やが、今じゃ「ラナー様の御言葉は全てに優先する!」だもんな。ホントに鎖に繋いでるのを見た時は信じられなかったよ。尻尾と耳も着いてたし…
ラナー王女か…彼女はクライムの為なら、どこまでも残酷になれるんだろうな。