周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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少し作風が変わってますが気にしないで下さい。
しばらくすると元にもどります。


帝国英雄伝説① 皇帝ばんざい!

 後世の歴史家は語る。

 

「人類史上、最高の名君と讃えられた、バハルス帝国7代皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスが存在しなければ、現在この大陸に人間種は存在を許されなかったであろう。それほどまでに彼の功績は偉大である。無論、彼一人では、その偉業を達成する事など不可能である。彼の皇帝には終生の友、己の半身ともいえる勇者が存在した。その名はガゼフ・ストロノーフ、『人間を愛し、守護する者』と言われた男である。」

 

~帝都アーウィンタール皇城~

 

「結論を述べるなら、余はレエブン侯からの提案を…一部に忿懣な部分もあるが…受け入れ、彼らとそれに連なる者たちを、厚く遇する事を決めている。」

 

「あのガゼフ・ストロノーフを帝国へ迎え入れられるのでしたら、多少の譲歩も致し方ないでしょう。軍部としては全面的に陛下を支持いたします。」

 

「帝国の藩塀である我ら門閥貴族から観ても、レエブン侯は堅実で仁智に富んだ貴族の鑑。彼の御仁ならば帝国の発展と安寧に、貢献して頂けるでしょう」

 

「帝国の非生産人口(穀潰し)が1名と1匹増加し、今後、数十年に亘る大赤字確定の公共事業を新規採択…ああ、その為の独立行政法人の設立も必要になりますな。財務部門としては好ましくないのですが、「採算性は皆無でも必要な事」というのが公共の福祉の理念でありますからな。」

 

 帝国の軍部、門閥貴族、官僚の全ては皇帝の決定に異を唱えなかった。これは決して独裁者に追従しているのではない。これが帝国にとって必要な事だと理解しての事である。この程度の事が理解出来ない者の存在を許すほど、ジルクニフは暗愚でも寛大でもない。だからこそジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスはバハルス帝国の歴史上最高の名君と呼ばれているのである。

 

「レエブン侯からもう一つ、大胆で合理的な提案がある。軍部と政務部門の協力が必要になるが、検討に値する非常に魅力的な内容だ。この提案をうまく実行できるかが、今後の帝国の興亡に重大な影響を及ぼす事を肝に命じるのだ。」

 

~エ・ランテル~

 

 帝国歴194年下火月20日、バハルス帝国皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスはエ・ランテルの土を踏んだ。リ・エスティーゼ王国の、いや周辺国家の交易の要であるエ・ランテルに、バハルス帝国皇帝が訪れるのは、帝国の歴史上初の出来事である。

 

 王国戦士長ガゼフ・ストロノーフを従えて、堂々たる佇まいでエ・ランテルの正門をくぐったジルクニフを迎えたのは、帝国四騎士筆頭"雷光"バジウッド・ペシュメル、皇帝付筆頭秘書官ロウネ・ヴァミリオン、王国六大貴族筆頭エリアス・ブラント・デイル・レエブン侯の3名、そして沿道を埋め尽くすエ・ランテル市民の大歓声である。

 

「「「「「ジーク・マイン・カイザー!」」」」」

 

「「「「「ジーク・カイザー・ジルクニフ!」」」」」

 

「エ・ランテルの市民が、陛下の事を『我が皇帝』と呼んでいますぜ。ここは王国有数の都市のはずなんですがねぇ。」

 

「ははは…余も驚いている。余はアーウィンタールの臣民からは『鮮血帝』と呼ばれて畏れられているのだがな。」

 

 側近達とともに、エ・ランテル中央に位置する貴賓館に居を定めたジルクニフは、バジウッド達からエ・ランテル進駐についての報告を受ける。

 

「都市長のパナソレイ・グルーゼ・デイ・レッテンマイアは、エ・ランテルの予算の大半と私財を持って、家族と側近を連れて逃亡しました。エ・ランテルの行政は大混乱に陥っておりますが、レエブン侯の尽力で混乱は徐々に回復しております」

 

「冒険者組合長プルトン・アインザック、魔術師組合長テオ・ラケシルの2名も子飼いの冒険者や部下を連れて逃げちまいました。冒険者組合も魔術師組合も、俺たちじゃあ勝手が分からないもんで、後手にまわっちまいました。どっちにも兵を1個中隊ずつ張りつかせてるんで、残された連中が何かをやらかす事はないと思いますがね。」

 

「ギグナル・エルシャイという神官が中心になって、関係者が神殿内に立て篭もっている模様です。部下が交渉中ですが、財産と身の安全が保障されない限り、市民への治療行為を拒否すると通告してきました。この事態に乗じて、いくつかの薬品店が、在庫の売り渋りや便乗値上げを目論んでいる模様です。」

 

「バルド・ロフーレという商人の主導で、食糧品カルテルが結ばれた影響で、都市内の食糧品の価格が高騰しております。帝国軍の兵糧と、レエブン侯に提供して頂いた物資を放出する事で、市民への影響を抑えておりますが、食糧不足は深刻な域に達しています。」

 

 信じられない事にエ・ランテル上層部の全ての人間が、市民を見捨てて己の私利私欲と保身に走るという、エ・ランテルの歴史に凄まじい汚点を残す蛮行に、ジルクニフは激昂した。

 

「バジウッドーーっ!!!その恥知らずの大罪人どもを、余の前に引っ立てろぉぉ!いいか!生きたままだぞっ!ありとあらゆる苦痛を与え、生れて来た事を後悔させてくれるわぁぁっ!!」

 




暴虐と絶望の嵐が吹き荒れるリ・エスティーゼ王国を救う事を誓い合った3人の男女
二人の男達は王国の為、あえて裏切り者の汚名を受ける
そして王都に残された王女に八本指の魔の手が迫る!
混乱に陥ったエ・ランテルを救う為、奔走する帝国皇帝

次回、帝国英雄伝説② 未定

帝国の歴史がまた1ページ

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