ラナー王女の部屋に週1ペースで御呼ばれしている。しかしムフフな展開なんて一度もない、いつもの3人による作戦会議だ。関係ないけど、ラナー王女はバターが大好物らしいという噂を聞いた。バターは高カロリーだから気をつけたほうがいいと思う。関係ないけど、この前クライム君と喋ってる時に、歯の隙間に金髪の縮れ毛が挟まっていた。エチケットには気をつけたほうがいいと思う。関係ないけど、レエブン侯の奥さんが二人目を妊娠したそうだ。今度は娘がいいそうです。家庭円満でなによりだと思う…ケッ、リア充どもめ!
~とある場所での秘密会議※プライバシーの為、音声加工済み~
「M&Aにより、経営内容が二重の意味で、大幅に健全化した『エイトフィンガーズ・コーポレーション』ですが、王国への影響は良いものばかりではありませんね。」
「王国に蔓延していたライラの粉末と呼ばれる麻薬の激減や、違法な娼館の相次ぐ廃業は、ほとんどの国民に歓迎されましたが、それらの主要な顧客であった貴族や大商人等の富裕層は、不満を抱えていますな。僅かな在庫や粗悪な類似品に以前の相場の数倍の値がついているそうです。また平民の若い娘が行方不明になる事案が多発している都市もあるそうです。」
「王都をはじめとした主要都市の犯罪率は軒並み減少しています。大幅に治安が改善されましたが、エイトフィンガーズ・コーポレーション進出の影響で、中小商店の倒産が相次いでいますね。その影響で中産階級の資産が激減、景気の悪化が懸念されますわね。」
「農村部は、八本指からの利益供与を失った貴族による、凄まじいまでの収奪、いや略奪によって、地獄のような状況にあるそうです。収穫した農作物への税率は九十九公一民、あらゆる財貨を没収され、労働可能人口が根こそぎ労役に動員されている有様です。農民達は食べられるものなら、雑草や木の根、皮まで食べて飢えを凌いでいるそうです。モンスターの肉を食べて毒に中った者や、未確認ですが食人の噂も…」
「嘆かわしい事です…あら?お茶が冷めてしまいましたわ。取り替えて貰わないと…っメイドが居ない事を失念していました。困りましたわ…お茶受けのお菓子も減っていますし、丁度よい時間ですし、昼食にしましょう。」
聞きましたか皆さん!この二人、王国の現状を憂うような事を言ってますけど、リ・エスティーゼ王国の売国奴ランキングBEST3にランクインしてるんですよ!※ちなみに100まであるランキングの内訳は90%が貴族、しかも王族や六大貴族、王国最強の戦士まで含まれる有様。
ラナー王女の最後の発言は素なんだろうけど、レエブン侯がドン引きしてたわ。まあ他の貴族も似たようなもんだけどな…
~とある会議での王国貴族の発言~
「パンがなければ土を食べればいいじゃない」
「うちの領土は草まではOK」
「平民って畑に水を撒くと生えてくるんじゃないの?」
まさに「生きていられるだけありがたいと思えムシケラども!!」ってやつだ。「ビーストマンの食糧庫」と言われる竜王国の難民キャンプとどっちがマシなんだろう?これだけ圧政を敷かれても、生きてる事に感謝してる、リ・エスティーゼ王国民はマゾに違いない。
もちろん俺は、富める者の義務として様々な慈善活動を行っている。俺の屋敷には100人近いメイドが働いている。みんな農村から逃げてきたり、王都で物乞いをしていた様な娘ばかりだ。衣食住は無料、オヤツと昼寝付きで、俺とイチャイチャするだけの簡単なお仕事だ。
強制はしないが、部下にも慈善活動を奨励している。ブレインは「俺も農村の出だからな…コイツらをほっとけないんだ」とか言って20人くらいの子供を引き取って面倒みている。ヒマを見ては剣を教えてるみたいだが、全員が十歳未満の幼女だった。ちなみにエドストレームも20人くらいの男児を集めて「将来の六腕ね!」とか言っていた。
他の連中も色々とやってるらしいので、エイトフィンガーズ・コーポレーションの評判は爆上げ状態で、連日ストップ高を更新しているが、それとは反対に、王族や貴族への評判は紐無しバンジーのストップ安だ。ランポッサ三世陛下は、会議で遺憾の意を表明していたが、いつものお約束で口だけだ。実態は「朕はタラフク食ってるぞ ナンジ人民 飢えて死ね ギョメイギョジ」だ。今年こそゴールしていいよね…