「全員で青の薔薇を抑えろっ!俺は負傷者を回復する。<魔法効果範囲拡大(ワイデンマジック)><大傷治癒(ラージキュアウーンズ)>!!」
「バカなっ!第四位階っ、それも魔法効果範囲拡大だと!?そもそも何故戦士長が魔法を!?」
「ありがたいガゼフ殿!各員傾聴、回復次第、炎の上位天使を召喚して彼らを援護せよ!」
「ヒャッハー!汚物は消毒だ~!!」
「マズイ!このままじゃ数で圧倒的に不利に…」
青の薔薇との激闘が始まった。ニグン達を回復させた事によって、数の上では俺達が圧倒的な有利だ。事前の指示どおり、ブレインとガゼフがイビルアイを抑えて、残り4人がラキュース達を相手にする。最初は苦戦していたが、ニグン達の援護によってこちらが押し始める。
「<聖なる爆発(ホーリーバースト)>」
「ぐわああああーーッ」
「イ、イビルアイーーッ」
うまくイビルアイに弱点である聖属性魔法を喰らわせる事が出来た。イビルアイが怯んだ隙に、ラキュース達を一気に攻め立てる。ヤツが抜ければ青の薔薇の戦力は激減する。ブレインは息も吐かせない連続攻撃で、ラキュースの動きを封じ込めているし、ゼロの猛攻にガガーランは防戦一方だ。残り4人もロリ双子を圧倒している。
「ニグン殿、あのマジックキャスターは聖属性が弱点です!パワーを<聖なる爆発(ホーリーバースト)>に!」
「いいですとも!」
「ダブルホーリーバースト!!」×2
「ギャアアアアーーッ!!」
「これでトドメだっ!ガゼフストラッシュX!!!!!」
「ギャアアアアーーッ!!」
イビルアイを倒され、それぞれも重傷を負った青の薔薇は遂に降伏した。治療もされないまま、武装解除のうえで完全に拘束された青の薔薇の面々が、俺を睨みつける。
「もう抵抗しません…少しでいいので回復して下さい、このままでは仲間達が…」
「ガゼフ殿、私としても彼女達に思うところはありますが、神に仕える者として、無暗に命を奪うつもりはない。彼女達がアダマンタイト級冒険者の使命を自覚し、人類の為に奉仕する事を誓ってくれるのでしたら、寛大な処置をお願いしたいのですが…」
何だかんだいっても、ニグンサンは甘いね~。いや人類を守る事が最優先で、その為なら自分の意思をおさえられるのか…。だがクライアントの要望はサーチ&デストロイだ。それに俺の将来の為にも、こいつらに生きててもらっては困るんだ。
「ニグン殿には伝えていなかったのですが、実はレエブン侯から極秘に、青の薔薇の抹殺指令を受けているのです。」
「なっ…それはどういった理由で!?」
「レエブン侯が!?何故私達を?」×5
「レエブン侯って誰だ?」
「最近ガゼフの旦那がよく会ってる貴族だぜ。色々頼まれてるらしい。」
「バカ貴族がガゼフさんにイチャモンつけても庇ってくれてるそうだ。」
「昨日ブッ殺したババアもテロリストで、レエブン侯からの情報だったらしいぞ。」
困った時のレエブン侯。とりあえずレエブン侯のせいにしておけばごまかせる。本当に便利なヤツだ(笑)
「王国にもガゼフ殿が信頼できる貴族がおられるのですな。しかし六大貴族であるレエブン侯が何故、一冒険者パーティを排除せねばならないのでしょうか?」
「アルベイン家はレエブン侯と対立した事はないはず…いやでもまさか…」
「ラキュース殿の実家の事は関係ない。レエブン侯が危惧されているのはイビルアイ殿の事だ。ここまで言えばわかっただろう!青の薔薇っ!」
「なっ!!どうしてそれを!?」×5
俺はイビルアイの仮面を引き剥がす。真っ赤な瞳と、人間には無いはずの鋭い犬歯が露わになる。
「こっ、これは!まさかヴァンパイア!?」
「ただのヴァンパイアではありません!彼女の正体は伝説の国堕し!かつて一国を滅ぼした邪悪で恐るべきヴァンパイアなのです!」
「「「「「な…なんだってーー!!」」」」」
「イビルアイは私達の大切な仲間よっ!過去の事なんて気にしないわっ!」
「鬼リーダーの言うとおり。イビルアイは仲間。吸血鬼でも構わない。」×2
「仲間の素姓や過去を詮索しないのが冒険者の仁義ってヤツだ。このチビッ子の過去がなんだろうと、人間じゃなかろうと、コイツは青の薔薇の一員だ!」
「み、みんなありがとう…ありがとう…。私はどうなっても構わないっ!だから他の皆の命は助けてくれー。」
ククク、ここまでくればアダマンタイト級冒険者の抹殺に対して、文句をつけられる事はないだろう。青の薔薇は行方不明扱いにし、トブの大森林に潜伏していた国堕しは、陽光聖典によって討伐された事にすれば、スレイン法国にもたっぷりと恩を売れる…
「分かって戴けただろうか?全ては王国に潜む国堕しを倒す為の、レエブン侯の策略だったんだよ!」
「「「「「な…なんだってーー!!」」」」」
~数ヵ月後~
行方不明となったアダマンタイト級パーティー『青の薔薇』捜索の為、王国に残されたもう一つのアダマンタイト級パーティー『朱の雫』を中心とした合同チームが、トブの大森林に派遣されたが、懸命な捜索にもかかわらず、その行方や一切の痕跡は発見されなかった。
スレイン法国は近隣諸国に、かつて一国を滅ぼした伝説のヴァンパイア『国堕し』をトブの大森林で発見、これを討伐したと発表した。また国堕し討伐の指揮を執った陽光聖典隊長ニグン・グリッド・ルーインと隊員10名に、スレイン法国名誉勲章を授与した事を発表した。