周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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全てはレエブン侯の陰謀だったんだよ!①

 昨日に続いて、王宮へ昼メシを食いにいった。クライム君が特訓のせいでボロボロになって帰って来たせいで、かまってもらえなかったラナー王女が不機嫌だった。レエブン侯には昨日の件で遺憾の意を表明された。チッ、反省してま~す。

 

「青の薔薇の皆さんは組合からの依頼で、トブの大森林にあるという、ゴブリン集落の調査へ赴かれているそうです。アダマンタイト級の冒険者といえども、絶対安全とは限りませんし…依頼に失敗した冒険者が行方不明になる事も多いと聞きます…私、心配です…」

 

「ラ、ラナー殿下…」

 

「ハハハ…冒険者の仕事というのは命がけになる事も多いそうですからな。御友人を心配する王女の心労は察するに余ります。そうですな、巡回任務の一環と言う事で、部下を率いてトブの大森林周辺へ行ってみましょうか。」

 

「まあ!戦士長様はなんて義侠心溢れる御仁なのでしょう!そういえばラキュースさんから、今回の任務で調査する予定の場所を聞いていたんです。地図はどこだったかしら…」

 

 この娘ヤバ過ぎるよ!これって青の薔薇を消せって事だよな!?昨日の事で、俺にとって青の薔薇が邪魔になりそうだからか?まあ自分の手駒を切り捨ててでも、俺に配慮してくれるのは有難いが、怖すぎるぞ!!

 

「最後にひとつ戦士長様にお伝えしなければいけない事があるのです。青の薔薇のイビルアイさんの事なのですが…」

 

「みなまで仰らなくとも分かっております。」

 

「まあ!戦士長様はどこでそれを?」

 

「私にも色々と伝手がありますので…」

 

 こちらには原作知識というチートがある。ラナー王女ばかりにアドバンテージを取らせるわけにはいかない。こちらの手札を積極的に晒すことはないが、立場を理解させる必要はある。

 

王宮を辞した俺は、六腕全員を引き連れてトブの大森林へ向かった。ちなみに不死王デイバーノック君は、任務中の不幸な事故で殉職しちゃってたので、新メンバーとして『剣鬼ブレイン』を加入させた。いやだってアンデッドに効く復活魔法とか知らないし!

 

 青の薔薇で要注意なのはイビルアイだけだ。他のメンバーは六腕の連中で何とかなるだろう。イビルアイ相手でもブレインとゼロの二人掛りなら行けそうだが、他の四人はザコだからな~。バリバリ現役のアダマンタイト級には勝てないだろう。イビルアイは俺が直接仕留めるしかないな。

 

~トブの大森林奥地~

 

 ニグン・グリッド・ルーインは憤慨していた。ガゼフとの交渉を無事に済ませ、法国からのもう一つの指令であった、トブの大森林に生息するゴブリンの調査に赴き、小規模ながらゴブリンの集落を発見して、ゴブリンを全滅させかけたところで、その場に現れた冒険者から横やりが入ったのだ。逃げようとするゴブリンの幼生を駆除しようとしたニグンに対し、その冒険者どもはこともあろうにゴブリンの幼生を庇ったのだ!「まだ子供だから」「人間の集落から離れている」などの世迷言をほざく冒険者、それも人類の希望であるはずのアダマンタイト級冒険者の青の薔薇に、ニグン・グリッド・ルーインは怒りを禁じえなかった。

 

 形勢は極めて不利だ。今回の任務は調査が主な目的だったので、率いる部下は10人のみだった。王国に同行していた漆黒聖典のクレマンティーヌは、体調不良で宿に待機していた。彼女がこの場にいれば、相手がアダマンタイト級の冒険者でも後れをとる事もなかっただろう。部下達に死者こそ無いものの、戦闘可能な部下は僅か数名、絶体絶命のニグンが己の信仰する神へ祈った時、奇跡はおこった。

 

「私は王国戦士長ガゼフストロノーフ。この場は私が預かる!双方、直ちに戦闘行為を中止していただきたい!」

 

「ガゼフ戦士長がこんな場所に何故!?」

 

「ガゼフのおっさんよぉ…アンタと一緒にいる連中、どっかで見た事あるんだが、どういうこった?」

 

「おお!ガゼフ殿ではないですが!私は部下とともにゴブリン集落の調査を行っていたのです。そこへ冒険者達が現れて、私達の任務の妨害を!」

 

「何が調査だ!テメーらのした事は虐殺だ!それにスレイン法国の特殊部隊が、トブの大森林で何してやがるんだ!」

 

「これは冒険者の問題です!国が冒険者へ介入するのは組合の理念に反します!ガゼフ戦士長が関わることではないと思いますが!?」

 

 うーん、どっちもツッコミどころだらけだ。ニグンさんもテンパってるな(笑)王国にきたついでに他の任務も請負ってたみたいだが、ハッキリ認めちゃマズイでしょ。ラキュースにしても、王国の冒険者が法国の神官とトラブったらどうなるか位わかれよ!それにニグンはあくまでも神官で、冒険者じゃないだろ!脳筋なの?バカなの?死ぬの?

 

 まあとりあえず公僕の義務とクライアントの依頼を果たすとしようか。

 

「どちらも冷静になってくれないか。まずは順番に答えよう。私達は巡回任務の一環でこの場にいる。同行しているのは私の部下で、王国の正規の兵士なのだから、見覚えがあるのも当然だろう。」

 

「「「俺たちゃれっきとした王国戦士長サマの部下だぜ~」」」

 

「…なっ!!」×5

 

「スレイン法国の神官であるニグン殿は、正式な手続きで入国している。入国許可証の保証人はレエブン侯だ。また王国辺境の村落へ赴き、布教にあたる事もレエブン侯が許可を出している。神官戦士でもあるニグン殿は、モンスターの脅威に晒される無辜の民の為、進んでモンスターの駆除を買って出てくれたのだ。感謝こそすれ、批難される云われはないだろう。」

 

「そ、その通りですぞ、ガゼフ殿!ある村の住民から、村を襲うゴブリンに悩まされていると懇願され、あくまで善意で行った事なのです!」

 

「それでも!まだ子供の、それも無抵抗のゴブリンを殺すなんて!人間と友好関係にある、害のないゴブリンだっているんです。それにこんな奥地の集落のゴブリンが人間の集落の脅威になるとは思えませんっ!」

 

「まだ言うか貴様っ、ゴブリンなど人類の脅威にしかならない、滅ぼすべき存在をっ!人類のおかれた状況を分かって言っているのか!?」

 

「落ち着かれよ!ゴブリンの善悪の定義についての論争に興味はない。はっきりしているのは、リ・エスティーゼ王国にはゴブリンを殺す事を罰する法律はないという事だ。というより銅級や鉄級の冒険者は、積極的にゴブリンやコボルトなどを討伐して報酬を得ているのではないのか?だいたい青の薔薇の皆さんは、ゴブリン集落の調査に来ているではないのか?調査には当然、可能なら討伐という意味も含まれるのだと思うが、ラキュース殿、アダマンタイト級冒険者として、そして王国貴族として、この点についてはどう考えられますか?」

 

「たとえ亜人だろうと、命のある生き物ですっ!私は人間として、例え法で許されていても、こんな残虐な事は認められませんっ」

 

「さすが鬼リーダー。そこにシビれる憧れる!ヒューヒュー♪」

 

「ラキュースの言うとおりだ!青の薔薇は人間だろうが亜人だろうが、弱いヤツの味方だぜ!」

 

「もういいだろうラキュース。戦士長はどうあっても私達を悪人にしたいようだ…それなら冒険者の流儀を、そこの戦士長と神官ずれにレッスンしてやろうじゃないか!」

 

 さすがにイビルアイはこちらの思惑に気付いたようだな…どの道、一戦交える為に来たんだ。やってやろうじゃないか…

 


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