周辺国家最強(笑)の戦士   作:生コーヒー狸

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王国戦士長に俺はなるっ!

「いつもオーバーロードを応援してくれる貴方に大サービス!!オーバーロードの世界に御招待~~」

 

いきなりこんな事を言われても、何が何だかわかりません?

 

「今回選ばれたラッキーマンは、新潟市在住の高橋正樹さん26歳(ニート)。オバロ信者としては…フムフム…理想郷時代からの読者で、なろう移転後もしっかりお気に入り登録、二次創作もかたっぱしから読んで毎日更新チェックと、なかなかの信者さんですね~」

 

 どうやら俺はオーバーロードの世界へ行けるらしい。大好きな作品の世界へ行けるのは嬉しいが、あの世界は主人公であるモモンガ様の慈悲にあずかる事ができなければ、たとえ読者からの人気があっても容赦なく死亡フラグがたつやさしくない世界、特にナザリックに敵対する、される陣営に属そうものなら破滅へ一直線だ。

 

「単行本も全巻購入していますが、特典付きのものは未購入と…これはいけませんね~マイナス1点と、アニメも視聴していますが、BDは購入せず…これはマイナス2点、うーんこのクラスの信者だとポイントは…」

 

 なにやら不穏な言葉が聞こえてくる。

 

「あなたがどんな信者かわかりました!あなたの作品への熱意に敬意を表しまして、名無しのモブキャラではなく、名有りキャラへ憑依させてあげましょう!」

 

「ちょっと待ってくれ!そこはプレイヤーのチートオリ主になって人類の救世主とか、オリジナルな至高の41人としてモモンガ様と同時に転移してナザリックのナンバー2とかじゃないのかよ?」

 

「あー、オリ主になって転移がよかったんですか?それだと必要ポイントがかなりかかっちゃうんですよね~、あなたのポイントだと、せいぜい戦闘力0.5ガゼフの冒険者ってところですけど。」

 

だめだだめだ!0.5ガゼフ程度じゃ、せいぜいオリハルコンかミスリルランクの冒険者だ。あんな死亡フラグ乱立の修羅の世界で生き抜ける気がしない。ナザリックの守護者クラスなら「私の戦闘力は53万ガゼフです。」とか言ってきそうだし。

 

「オリ主って意外と難しいんですよー。スレイン法国で傾城傾国を使われて、対ナザリック人間兵器にさせられたり、ナザリックにいっても、アンデッドになって「生物として合格するチャンス」を失ったりとかありますからね。そう簡単にチーレムとか出来ませんよ。」

 

 確かにそうだ。いくらチート能力があっても中身は一般人だ。国のトップにいるような奴らを相手取っては、いいようにあしらわれる事もあるし、せっかく異世界にいけるのなら、そこでテンプレにしたがって可愛い女の子を侍らせたチーレムは男のロマンだ。

 

「わかった。そうそうオイシイ話はないってことだな。それなら俺はどうなるんだ?名有りキャラといっても大勢いるじゃないか。」

 

 できれば人間種、それもイケメンで金持ち、さらに戦闘力も欲しい…って、そんなキャラ、オバロにいたか?まずいぞ!人間種の登場キャラなんてほとんどがザコのやられ役か敵キャラじゃねーか!

 

「そうですねー、無難な現地の人間キャラってとこですね。いきなりリザードマンとかデスナイトにされてもお困りでしょう?さてさて誰がいいでしょうかねぇ…おやぁ?あなた「千殺」とか「空間斬」みたいな、カッコイイ二つ名が似合いそうな雰囲気ですねぇ。」

 

「や、やめてくれっ。六腕なんて勘弁してくれっ!!六腕なんて二次創作業界じゃニグンと並ぶ、咬ませじゃねーか!?」

 

「いやいや、六腕なんてかなり恵まれてるほうですよ~。腐りきった王国で甘い汁を吸いまくりのエリート犯罪集団の大幹部!現地人としては破格の戦闘力とかなりおいしいポジションじゃないですか~。そこにオプションでチートをつければ充分イケますって。」

 

「チート!?チートがあるのか!?」

 

「もちろんありますよ~。そのまま手ぶらで送り出すなんて事はいたしません。能力アップやタレント、アイテム等をプレゼントしちゃいます!」

 

 それならなんとかなるか?そうだ!たとえナザリックに敵対する国や組織のキャラになっても、原作のクレマンティーヌのように出奔すればいいだけだ!そのうえで情報等を対価にして、原作のなるべく初期の時点でナザリックに投降すれば無下にされないはず…いやいやナザリックじゃ人間なんてゴキブリ以下の存在だ。それならシャルティアの眷族にしてもらって門番勤務、可能ならペットとしてヴァンパイアブライドに交じって…。いやまずい、下手したらデミウルゴス牧場の従業員にされるかもしれん!リスクがでかすぎるぞ!やはり原作でも生存が保障されてる、それもナザリックに敵対しない陣営のキャラだ!誰だ?誰なら大丈夫なんだ?

 

「まずはあなたが憑依するキャラを決めましょう!このダーツであなたが憑依したいキャラの場所を狙って下さい。」

 

 突然目の前に現れたのは巨大なダーツの的だ。東京の友達な公園のアレを思い浮かべてもらえばいいだろう。そこには俺が憑依することになるキャラの名前が描かれているのだが…

 

『カジット・デイル・バダンテール』

『フェメール伯爵』

『グ』

『ダイン・ウッドワンダー』

『イグヴァルジ』

『ベリュース隊長』

…etc

 

「ふざけんじゃねーっ!どいつもこいつも死亡確定のザコキャラじゃねーかよ。しかも人間じゃねーのも混じってんぞコラ!いくらなんでも『グ』はねーだろうが!!ていうか的の半分以上が『ベリュース隊長』とかクソゲー過ぎじゃねーか!」

 

「あなたが六腕は止めてくれといったので差し替えたんですよー。それにナザリック所属の生存確定のボーナスキャラだって入ってるじゃないですかー。ほら『恐怖公』とか『ザリュース・シャシャ』とか!」

 

 いくらナザリック所属で勝ち組が確定しているといっても無理だ。恐怖公だけはない。栄えあるナザリック地下大墳墓第三階層領域守護者であり、至高の四十一人によって直接創造された、名誉あるNPCだがゴキブリである。

 

 ザリュースも無理だろう。たとえリザードマン最強戦士、レアキャラの嫁がいるといってもトカゲだ。ナザリック最高幹部の一人であるコキュートスに認められ、アインズ様も一目置く原作では現地キャラ屈指の勝ち組キャラでもトカゲである。いくら俺が上級紳士でもトカゲ(クルシュ)相手は無理です。俺はノーマルなんです

 

「…ラッキーゾーン」

 

「はい?何ですかそれ?」

 

「ラッキーゾーンをお願いしますっ!こんなの絶対おかしいです!無敵のワールドアイテムで何とかして下さいよーっ!」

 

「言ってる事は意味不明ですが、内容に不服があるということは理解出来ました。しかしこれ以上の変更は認められません。観念して決めて下さい。」

 

 ちくしょう…希望は、希望はないのか…俺は絶望に打ちひしがれながら的を見つめる。的はベリュース『6』にその他が『4』といったところか。ベリュースは論外として、少しでもマシなものはないかと目を凝らすと…

 

『ガゼフ・ストロノーフ』

 

 本当に、本当に狭いスキマの様なスペースにその名があった。来たっ…最後に残された希望っ…地獄に齎された蜘蛛の糸っ、周辺国家最強戦士!王国民の希望の星、まごうことなき勇者!

確かにニグンにボロクソにやられたり、王国貴族から疎まれたり、最後はモモンガ様に殺されたりと、作中でガゼフは碌な目にあっていないが、それくらい充分に挽回できる。原作どおりなら9巻までは生存が保障されているし、死亡フラグだってモモンガ様へ恭順してしまえば、はれて現地産のレアキャラとして、リ・エスティーゼ王国などという、将来性ゼロで従業員(国民)を酷使するブラック国家から、シモベの功績を正当に評価して、福利厚生もバッチリのナザリックという超優良ホワイト企業へトラバーユ可能だ。のるしかない、このビッグウェーブに!

 

「早くして下さい。いつまでもダラダラしてるとベリュースにしちゃいますよー。」

 

「待ってくれ!やる、やります。王国戦士長に俺はなるっ!」

 

 俺は祈りを込めてダーツを放つ。狙うは『ガゼフ』ただ一点。心の中では怒涛のガゼフコールが流れる。

 

「ガゼフ!ガゼフ!ガゼフ!ガゼフ!ガゼフ!ガゼフ!ガゼフ!ガゼフ!」

 

 俺の祈りを込めたダーツは、見事に『ガゼフ』へと突き刺さる!やった、俺はやったぞ!。

 


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