東方書迷録   作:SunoA

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ぺったんこーぺったんこー。


第5話〜不毛な争い〜

「ねぇこの本はどこー?」

 

「えーっと、確かそこの棚だったかな」

 

「どこの棚?」

 

「今いるとこの右側」

 

「ほいよー」

 

今日は大晦日。今年最後の日。今年1年の感謝を込めて朝から大掃除の最中。そんな中今日も今日とて萃香が来たのでついでに手伝ってもらっている。

 

「それにしても昨日に続いて今日も掃除の手伝いをさせられるとはねぇ」

 

萃香がそんな文句を言う。

まぁ昨日霊夢の手伝いに駆り出されたばっかだもんね。今日ばかりは手伝ってくれることに感謝します。お客さんがなかなかこないとはいえ貸本屋なだけあって物は多い。店にだしてある物に裏にしまってある物まで合わせると相当な量がある。

 

「終わったよー。次はー?」

 

棚の整理を終わらせた萃香が言う。

 

「んーじゃあ裏の片付け手伝って貰おうかな」

 

裏にも結構な数の本があるからね。萃香と共に本が閉まってある奥の部屋にいく。ドアを開けると少し埃っぽい匂いがした。それなりに掃除はしてるつもりだけどやはり表に比べると少し手入れが疎かになってしまう。

 

「でも昨日の納屋に比べると大分マシだね」

 

「まぁそりゃあね」

 

流石にあそこまでになるまで放置したりはしない。特に本なんてデリケートな物を扱ってるんだから当然と言えば当然かも知れないんだけど。

 

「で、ここで何すればいいの?」

 

なんか今日は随分と積極的に働いてくれるんだね。どうしたの?頭打った?まぁありがたいんだけどね。その分早く終わるし。

んーそうだなぁ……

 

「取り敢えず埃取りしてそれから虫干しかな」

 

「何それ?」

 

「本についてる埃をとってから日光に当てて風を通すんだよ」

 

そうすることで湿気やカビ、虫の害を防ぐことができる。まぁ予防みたいなもんだけどこれが割と効果あるんだよね。前にやったのが梅雨明けの晴れた日だったから今みたいな乾燥期に入ってる時にもう一度やるのが1番効果がある。

 

「へ〜。随分手間がかかるんだね」

 

「まぁそんなもんだよ」

 

本の手入れってのはめんどくさいもんなんです。怠ったら取り返しがつかないことになりかねないし。外の世界の本だから貴重だし、簡単に次のを取り寄せるなんてこともできないからね。

 

「じゃあさっさとやろうよ。取り敢えず埃をとればいいんだよね?」

 

「そだね。ゴミ袋はここに置いとくからこれに入れといて」

 

「ほいよー」

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「夜はやっぱ霊夢んとこいくの?」

 

ひと段落して萃香と軽めの昼食をとってるとそんな質問がでてきた。

 

「まぁいくつもりではあるよ」

 

それに間に合わせる為に朝から大掃除してるんだしね。昼から始めたんじゃ絶対間に合わないもん。それににとりの屋台に行く約束もしちゃったし。

 

「このペースで間に合うの?」

 

乱雑に移動されてる棚や山積みになってる本を見ながら萃香が不安そうに言う。

 

「まぁ間に合うでしょ。あとは店の棚を戻して本を閉まって床を掃除するだけだし」

 

1人だとちょっと大変かも知れないけど今は萃香も手伝ってくれてるのだしあと数時間もすれば終わるだろう。

 

そんな話をしてると店の入り口からガチャガチャと言う音と話し声がした。ありゃ、誰か訪ねてきたのかな?

外のプレートはclauseにして置いたはずだけど。ドアの前には移動させた棚があって中には入れない。今日は休みの予定だったし誰かくるなんて思ってなかったからその辺りに気が回らなかった。

 

「すいませーん。ちょっと待ってくださーい」

 

そんな声をかけて棚を移動させようと立ち上がった時だった。

 

物凄い音と共にドアごと棚が粉々に吹き飛んだ。

 

「「・・・・・・・・は?」」

 

俺と萃香がその有様をみて固まってると1人の少女が入ってきた。

 

「ちょっと、あんなとこに置いてあったら邪魔じゃない。お邪魔するわよ」

 

そんなことを言いながら入ってきたのは我儘お嬢様の天人こと比那名居天子だった。いやお邪魔するわよじゃねーよ。何してくれてんのお前。今待ってって声かけたじゃん。それくらい待ちなさいよ。

 

「あぁもう何してるんですか!すいませんすいません!うちの総領娘様が!」

 

そう言って後ろで頭を下げてるのは天子のお付きの永江衣玖。うん、君は気にしなくていいよ。悪いのは全部そこの我儘お嬢様だから。謝るべきなのはそいつだから。

 

「お前は何してくれてんだよ。余計な仕事増やすなよ」

 

漸く片付きそうって時になんで更に仕事増やすかね。萃香が凄い顔してるよ?というかどうすんだよその粉々の棚。もう使えないじゃんか。

 

「てか何しにきたんだよ」

 

「今年最後の日だから顔を覗きににきてあげたんじゃない。何よその嫌そうな顔は」

 

「今すぐおかえりください」

 

「なんでよ!折角この私がきてあげたのよ⁉︎」

 

いや知らんがな。まずきてくれなんて頼んでない。余計な仕事が増えるだけだから本当に帰って欲しい。

 

「そうだ早く帰れ!」

 

俺に続いて萃香も言う。萃香さん激おこじゃないですか。まぁ萃香が片付けてたとこがまた汚されたんだから怒るのも当然だけど。

 

「何よ!別にあんたの家じゃないでしょちんちくりん!」

 

「誰がちんちくりんだこのぺったんこ!」

 

「なっ⁉︎あんたの方がぺったんこでしょうが!」

 

おっと萃香と天子が不毛な言い争いをしだした。どっちともこれ以上ないってくらいぺったんこなんだから決着なんてつかないだろうに。みてていたたまれなくなるからやめなよ。

 

「衣玖!貴女もこいつの方がぺったんこだと思うわよね!?」

 

「いや!お前の方がぺったんこだ!」

 

「え、私ですか!?」

 

衣玖さんに思いがけない飛び火が飛んできた。これはまた不憫な。助けを求めるようにこっちを見てくるけど目をそらすことしかできない。俺にはどうしようもないです。力になれずにすみません。

 

「え、えっと………」

 

「「どっち⁉︎」」

 

悩んでる衣玖さんに2人が詰め寄る。本当やめてあげなよ。もう泣きそうになってるよ?

 

「え、えっと………2人とも……変わらない……と思います………」

 

 

 

 

 

 

 

 

---------------

 

「なんで私がこんなこと……………」

 

「お前が汚したんだから当然だ」

 

現在4人で店の掃除中。

まぁ自分が散らかしたんだから手伝うのは当然だよね。

あの後どうなったかって?別に何もありませんよ?ただ2人して泣きそうになってたくらいです。

 

「どうせ小さいわよ私は……」

 

何か独り言が聞こえるけど知らない。てか下手に突っ込めば余計店を壊されかれないし。別にそんなこと気にするよなことでもないと思うんだけどねぇ。そんなの人それぞれだし。あっ、俺がそういう趣味って訳ではないですよ?断じて。

 

「すいません……」

 

そして何故か衣玖さんが謝る。いや別に君が謝る必要はないと思うよ?寧ろかなり頑張ったと思う。

 

「で、結局天子は何しにきたの?」

 

多少無理矢理感があるが話題を変える。

 

「だから今年最後だから顔を見にきてやったのよ」

 

随分と上から目線だね。天子に変わらず天人は殆どこんな感じらしいけど。まぁ他の天人なんて見たことないからなんとも言えないんだけどこいつが偉そうなのは確かだ。

 

「そう、じゃあもう用事は済んだね。お帰りは後ろの扉だよ」

 

とはいえ後ろの扉なんてもう吹き飛ばされてないけど。冬の冷たい空気が室内に直で流れてくる。寒いったらありゃしない。

 

「なんでよ!本当に失礼な奴ね!」

 

「いやいきなりドア吹き飛ばす奴を歓迎する奴なんていないとおもうけど。みてよこれ。風が直で流れてくるじゃん」

 

ドアがあった場所を指差して言う。このままの状態で冬を過ごすのは流石にキツすぎる。まぁ夏でも嫌だけど。

 

「何よそれくらい。要は風を防げばいいんでしょ?」

 

そういって地面を盛り上げて入り口を塞いだ。いや、確かにそれなら雨風は凌げるかも知れないけど違うそうじゃない。俺が言いたいのはそういうことじゃない。

 

「はぁ……まぁいいよ。片付けくらいは手伝えよ?」

 

「だから今やってんじゃない」

 

「本当すいません……」

 

一向に悪ぶれないねこの子。さっきからずっと謝ってる衣玖さんを見習いなよ。我儘な主人を持つ従者ってのは本当大変だと思う。少なくとも自分はごめんしたい。いつもお疲れ様です。

 

「もう早く終わらせるわよ。手を動かしなさい」

 

いや誰のせいでこうなったと思ってるの?少なくとも君が吹き飛ばしたりしなければもう少し早くなったと思うよ?まぁ言ってても仕方ないんだけどさぁ。この子人の話聞かないし。

 

「はぁ…………」

増えた仕事とこれからのことを思うとため息がでた。

 

 

 

 

 

------------------

 

「漸く片付いた………」

 

漸く店の掃除が終わった。時計の針は17時を指している。ということはあれからもう3時間も掃除してたことになる。それでも予定よりは大分早いけれども。

 

「みんなお疲れ」

 

労いの言葉を変えてみんなに飲み物を出す。

 

「やっと終わった〜」

 

「お疲れ様です」

 

「手伝ってあげたんだから感謝しなさい」

 

萃香は朝から手伝ってくれてたんだし本当助かった。これは今度何か奢らないといけないかな。

衣玖さんもテキパキと作業を進めてくれてあっという間に終わらせてくれた。ここまで早く終わったのも衣玖さんのおかげって言うのもあるだろう。天子の巻き添えなのにありがとね。

そして1番偉そうな天子はどっちかと言えば邪魔してたよね。頼んだのと違うことばっかするし最後には1人ずっと漫画読んでたよね。一体何を手伝ったというのか。

 

「じゃあ私達は一足先に神社にいくことにするわ。また後でね」

 

「随分早くいくんだね。まだ夕方だよ?」

 

「だからよ。並ばなくても済むじゃない」

 

あーなるほどそういうこと。まぁ確かに屋台で並ぶのってめんどくさいよね。

 

「なら裏口から出なよ。表は壊れてるし」

 

てか君が壊したんだけど。

 

「ん、わかったわ。いくわよ衣玖」

 

「わかりました総領娘様。すいません、扉と棚の修理費は改めて持ってきますので」

 

「ん、了解。衣玖さんはそんなに気にしなくてもいいよ。悪いのはあいつなんだし」

 

「そういう訳にはいきませんよ。ではまた」

 

そうして2人は神社に向かっていった。

先程まで騒がしかったのが嘘のように静かになる。

 

「涼はいつ頃いくの?」

 

「んー7時頃かな?」

 

今いってもまだ早いしね。別に屋台でいっぱい買う予定もないし。

 

「なら私は少し寝たいかな。奥の部屋使っていい?」

 

「ん、いいよ。時間になったら起こすよ」

 

そういって萃香は奥の部屋に入っていった。本当にご苦労様でした。

 

「俺も少し寝るか……」

 

朝少し早かったし疲れもあって少し眠い。

そうして俺は椅子にもたれて目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 




今回は天子と衣玖さんに登場してもらいました。
この2人は割と好きだったりします^ ^

次回は博麗神社で年越しって感じだと思います

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