東方書迷録   作:SunoA

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借りパクはやめましょうね




第1話〜借りパクはやめて下さい〜

「邪魔するぜー」

 

昼食も済ませた昼下がりにそんな声と共にお客さん。

 

「いらっしゃいませー………ってお前かよ」

 

やってきたのは白黒の魔法使いこと霧雨魔理沙。一応うちの常連ではあるがお客さんではないね。

 

「なんだよいきなり失礼な奴だなー。客なんだからもーちょっと愛想良くしろよな」

 

「客ってのはちゃんと料金を払う人の事を言うんだよ」

 

そう、こいつは基本料金を踏み倒す。ちゃんと払ったことの方が少ない、てかないかも知れない。その癖飲み食いして挙句に貸し出した本を返さないんだから手に負えない。客というよりはどちらかといえば盗賊だ。せめて本は返してよ、仕入れるの大変なんだから。

 

「まぁまぁそのうち返すからさ、そう怒るなって」

 

「一体何年先になるやら………」

 

思わずため息がでる。でももう慣れたけどね。どうせ返ってくるなんて思ってないから。まぁこういう考えがまだ甘いのかも知れないけど。

 

「で、今日は何しにきたの?」

 

「ちょっと探し物があってな〜。あ、アイスティーで」

 

「料金は?」

 

「ツケで」

 

うん、まぁ知ってたよ。そうだと思ったよこのやろー。ていうか喫茶店でツケってなんだよ。文句を垂れながらも用意するあたりやっぱり俺は甘いんだと思う。ついでに自分の分のもいれる。コップに注ぎ魔理沙と自分に豆菓子とともに差し出す。

 

「ん、さんきゅ」

 

「で、探し物ってのは?」

 

「前読んだ本の続きだな」

 

あー、あれか。

あれは確か………

 

「あー悪いけど今は貸し出し中だからないね」

 

「えー!なんだよそれ聞いてないぞ!」

 

カウンターから身を乗り出してそんなことを言う。だって言ってないしね。ていうかそもそも魔理沙が店にこないと言うこともできないじゃん。

 

「まぁいいや。で、それはいつ返ってくるんだ?」

 

「昨日貸し出したばっかだから1週間後だな」

 

「長!それまで私に待てって言うのかよ!」

 

「いやそれくらい待てよ」

 

そんなこと言われても貸し出したもんはしょーがないじゃん。基本早いもん勝ちみたいなもんだし。世界は君を中心に回ってるんじゃないんだからもう少し我慢とか気遣いとかを覚えてほしい。

 

「まぁ返ってきたらキープしとくよ」

 

「絶対だからな?忘れんなよ?」

 

「はいはい」

 

というかなんで俺が怒られなきゃならないのか。別に俺何も悪いことしてないよね。理不尽にも程がある。

 

「 まぁこの機会になんか新しいのでも読んでみなよ」

 

流石に紅魔館の図書館までとはいかないがここにだってそれなりの量の本はある。大体は外の世界の本だけど。暇潰しには十分過ぎるだろう。

 

「とはいえバトル物は大体読んじまったしな〜」

 

「いやもうちょっと他のジャンルも読めよ」

 

てか年頃の女の子がバトル物ばっか読んでるってのもどうなのよ。

もうちょっとなんかあるんじゃない?こう恋愛系とか青春系とかさぁ。まぁそれはそれで似合わない気がするけども。

 

「なんか失礼なこと考えてるだろ」

 

魔理沙がジト目を向けてきた。

 

「いや、魔理沙って恋愛物とか読んでるイメージないなーっておもって」

 

「やっぱ考えてんじゃねーかよ」

 

そうはいっても事実だから仕方ない。あーでも部屋でもがきながら読んでたりしそうかも。足とかバタバタさせながら。それはそれで可愛いかも知れない。

 

「じゃあ読んでたりするの?」

 

「全く読まないな」

 

読まないんかい。予想通りじゃんかよ。よくそれで失礼なこととか言えたよね。その自信はどこから出てきてたの?少しでも可愛いとか思った気持ちを返して欲しい。

 

「前アリスに勧められて読んでみたけど私には合わなかったな。だってなんかむず痒いじゃんあーゆーの」

 

んーわからなくもないけどそういったのがいいんじゃないかな?俺もそっち方面は読まないからよくわかんないけど。だって男でそういうの読んでるって、なんか、ねぇ?

まぁ今度アリスにでも聞いてみよう。

 

「まぁ恋愛物が駄目なら何にする?」

 

「そうだなぁ……。涼は今何読んでんだ?」

 

「推理物とか?」

 

「よくあんな複雑なの読めるな………」

 

いいじゃん推理物。好きなんだよこのシリーズ。

読んでてほんと飽きない。

 

「ほんと何かないかなー」

 

「何かって言われてもねぇ…………あっ」

 

「思いついたのか?」

 

「いや、なんでもない」

 

「何か思いついたんだろ?言えよ」

 

いや、一応そういうジャンルがまだあったなーって思って。店とは関係無い私物だけど。最近読んで無いから店に出そうと思ってすっかり忘れてた。でも魔理沙に貸したらほぼ返ってくる見込みはない。そんな訳で極力教えたくはない。

 

「いや、だからなんでもなi、はいまってー。取り敢えずそれを下ろしなさい」

 

無言で八卦炉をこっちに向けないでよ。多少霊力あっても基本ただの人間なんだからそんなん食らったら死んでしまいます。いやマジで。

 

「言うか?」

 

「……………はい」

 

結局こうなるんだよ。本当嫌になっちゃうね。理不尽な現実に涙が止まらない。

 

「いや、まだそのジャンルの奴があったなって思って。俺の私物だけど」

 

「本当か⁉︎ならそれ貸してくれよ‼︎」

 

魔理沙が目を輝かやかせてる。

ここで断わったらどんな顔するんだろうね?

少しみてみたいが今度こそマスパが飛んでくるからぐっとこらえる。

 

「まぁ貸してもいいけど………」

 

「いいけど?」

 

「ちゃんと返せよ?」

 

最大の問題はこれだ。ちゃんと返ってくるかどうか心配でならない。そんなポンポン持ってかれるとキリがない。てかまず今までの返しなさいよ。

 

「わかってるって。次はちゃんと持ってくるよ」

 

なら目を逸らさないで欲しい。本当死活問題なんだよ。ただでさえお客さん少ないんだから。なんであるって言っちゃったんだろ。数秒前の自分を恨むよ。

 

「じゃあ持ってくるから待ってろ」

 

まぁ言っちゃったからには持ってこない訳にはいかないかな。引き下がってくれるとも思えないし。下手にゴネて暴れられても困る。

 

「はいよ〜」

 

そう言って手をひらひらさせている。凄えいい笑顔してる。まぁその顔が見れただけいいのかなって思ってみたり。そんなことを思ってる自分に嫌気がさしたり。

 

持ってきた本を紙袋に入れて渡す。

 

「やった!ありがとな!」

 

「どういたしまして」

 

本当この数分のやり取りだけで凄い疲れた。毎度毎度こんなんばっかだよ。嫌んなっちゃうね。

 

「じゃあ私はそろそろいくとするかな」

 

「お、今日は早いんだね」

 

「この後少し用事があるからな………ってなんだよその嬉しそうな顔は」

 

おっとまた顔にでてたか。ダメだなほんと。隠すの下手過ぎ。

 

「じゃあまたくるぜ」

 

「はいはい。気をつけてね」

 

カランカランと音が鳴り、店が静かになる。

 

「はぁ………」

 

無意識にため息がでる。

 

本………返ってくるといいなぁ…………。




今回は魔理沙さんに登場して貰いました。
キャラ的にやはり出しやすいです。

それではまた次回

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