私立湾田高校に通う高校2年生瀬戸一貴は同じクラスの葦月伊織に1年生の頃から恋心を抱いていた。そんな彼に葦月と二人で「新入生ようこそパーティ」の実行委員をやるという幸運が訪れる。徐々に葦月と打ち解けてきた頃、突然に彼を想う幼馴染み秋葉いつきが現れる。「葦月への想い」と「いつきの想い」の間で一貴は揺れ動く事となった。

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 ふと、「望まれたもの書いてみるのはどうだろうか」と思ったので、以前活動報告でタイトルだけ書いた没プロットの中で、見たいと言われていたものの一つを引っ張り出してきました。
 素は中編プロットだったものを、超圧縮して短編にしてあります。
 中編だとヒロインはドドリア・オルコットさんでした。
 中編プロットの初期段階だとガメラ・ボーデヴィッヒさんが親友枠でした。


IS世界では洋物のAV女優がオゥイエスじゃなくてアァイエスとか喘いでる想像をすると吐き気がしますね

 その男は、怒髪天を衝く男であった。

 いや、それを髪と言っていいのかも分からない。

 とにかくその男の頭から生えているものは、天に向かって真っ直ぐに伸びていた。

 その男は、織斑一夏や篠ノ之箒の幼馴染であった。

 だが、その男を見てそうだろうと思う者は、誰一人として居なかった。

 

「……」

「……」

「……」

 

 IS学園の生徒達が、『彼』のクラスメイト達が、何かを言いたげな顔で押し黙っている。

 言いたい。でも言ったら何かが終わりそう。そんな緊迫感に締め付けられ、動けない。

 何も言おうとしていないのは、織斑一夏、織斑千冬、篠ノ之箒……すなわち、『彼』を幼少期から知る者達だけであった。

 皆の視線は、彼の頭部に向いている。

 

 彼の頭部には、巨大なドリルが生えていた。

 

「よっこいせっと」

 

 男がみじろぎする。

 瞬間、頭のドリルが天井の蛍光灯を全て薙ぎ払った。

 同時、ドリルの回転が凄まじい量子効果を生む。

 『トンネル効果』である。

 

 あらゆる物質には隙間が存在する。物質とは見方を変えれば波の集合体である。

 よって、壁に体当りした人間が壁を通り抜ける可能性はゼロではない。

 これがトンネル理論だ。

 ドリルによって発生した量子力学に基づくトンネル効果によって、破砕された蛍光灯の欠片は校舎の壁をすり抜けて校舎の外に飛んで行き、轡木十蔵の作業服だけを切り裂いた。

 

「何故だ」

 

 十蔵の呟きをよそに、一年生のクラスでは先生が名前を読んで、生徒が自己紹介をする流れが始まっていた。

 

「……(まき) 真樹雄(まきお)

 

「はい。お久しぶりです、織斑さん」

 

 真樹雄と呼ばれた少年が、挨拶をすべく立ち上がる。

 その瞬間、頭部のドリルが天井を貫いた。

 一つ上の階で椅子に座り、余裕ぶった笑みを浮かべていた二年生・黛薫子のスカートを椅子ごとドリルが貫通する。

 

「ファッ!?」

 

 そして真樹雄は、深々とお辞儀する。

 一年生の教室天井と前の黒板が回転するドリルに全て粉砕され、ドリルの回転の摩擦熱がスカートを引き裂きながら発火させ、吹っ飛んだ瓦礫は全てトンネル効果で校舎外へと飛んで行き、着替えた轡木十蔵の新しい作業服とその下の下着だけを引き裂いていった。

 

「何故だ」

 

 燃えるクラスメイトのスカートを見て、クラスメイトは壮絶な顔で驚愕する。

 

「ふ、フレアスカート……?」

「フレアスカート……!」

「フレアスカートだ!」

 

「何!? なんなの!?」

 

 迂闊な行動は炎上する。どこの世界でもそれは同じだ。

 

 炎上している二年生の教室をよそに、一年一組の教室もまた、大騒ぎになっていた。

 

「て、天井が!」

「黒板が!」

「ドリルかすったあ!」

「礼儀正しい破壊者が現れてしまった!」

 

「槇。お前、頭を下げたらこうなるとは思わなかったのか? 頭の回転悪くないか?」

 

「何を申されますか千冬さん。我輩の計算速度は世界ギネスの記録を取っていますよ」

 

「ああ、分かった。お前はただ頭が悪いだけなんだな」

 

 そうだ、彼は悪くない。

 悪いのは彼の頭だ。彼の頭のドリルなのだ。ドリルが悪い。

 むしろ、頭を下げたくらいで校舎が壊れてしまうこの世界の方が悪いと言える。

 彼がアホというわけではない。たぶん。

 

「我輩が悪いのか、一夏」

 

「うーん、俺から言わせてもらえば、一番悪いのは束さんじゃないかな」

 

「なんだ、我輩は悪くないのか。難しい話だ」

 

「でも正直、頭が悪くて頭がドリルな人は初対面だと気持ち悪いと思う」

 

「気持ち悪い。成程、それは想定外であった」

 

 槇真樹雄、自重を覚える。

 織斑一夏は直接的に何かを言うより数倍効果のある言葉で、真樹雄の今後の蛮行の被害を三割ほど減じてみせた。

 篠ノ之箒は、姉が面白半分で脳と直結するドリルを付けた幼馴染への罪悪感、そして関わりたくないという理性から、フォローを放棄し他人のフリをしていた。篠ノ之放棄。

 

「えー、では、クラス代表を……その……決めたいと……」

 

 副担任の山田真耶さんが胸の山を揺らしながら、頭部のドリルが自動で回っている生徒に気圧されている。

 気圧されるあまり、今日進めるはずでなかった案件まで進めてしまう。一回転すると強制的に前に進まされてしまうドリル効果だろうか。

 

 名前も山田。胸も山だ。

 山はドリルに掘られるもの。すなわち、天敵である。

 山ウンテン田真ウンテン耶先生に促され、市販弁当は嫌いなものから先に食べる千冬がそれを止めず、クラス代表決定という面倒事が先に回される。

 

(この人でいいんじゃないか)

(この人でいいんじゃないか)

(この人でいいんじゃないか)

 

 だが、このドリルを見た後で、誰を代表に選べというのか。

 東京タワーやスカイツリーを前にして、二階建ての家が代表を名乗れるものか。

 怒髪天を衝く。ドリル天衝。昇天ペガサスMIX盛りでさえこの本物のドリルには届くまい。

 

「納得できませんわ!」

 

 しかし、それに反逆する偉大な反逆者が居た。

 グレートブリテン及びアイルランド連合王国、アナグラムして抜粋して『ドリル連合王国』という名を持つ、局所的にはイギリスと呼ばれる国の代表候補生である。

 名を、セシリア・オルコットと言った。

 ドリルが見せつけてくる圧倒的高さに、セシリアは気位の高さで対抗した。

 

「そんな頭のおかしい男がクラス代表になどなったら!

 『うわあ、一年一組ってああいうのが居るクラスなんだ』

 とか思われますわ! クラスを名乗る度に『ああ、あの……』とか絶対言われますわ!

 絶対に耐えられません! やめてくださいまし! その頭のおかしい男だけは絶対に!」

 

(確かに)

(確かに)

(確かに)

 

「初対面の男に頭がおかしいなどと失礼な。我輩でなければムシャクシャしていたぞ」

 

「あなたがしているのはムシャクシャではなく無茶苦茶ですわ!」

 

「貴女が謝らないのであれば、頭に昇った血がこのドリルまで上がることになるであろう」

 

「え、そのドリル血が通ってるんですの……?」

 

「体の一部に血が通っていないものなどおらぬ。そうでなければ化け物だ」

 

「その理屈だとメガネにも血が通ってることになりますが!?」

 

 彼の頭部のドリルは、メガネ以上に彼の体の一部となっている。

 「メガネは体の一部」と言う者も居るが、それは所詮朝起きた時「あれーメガネメガネ、メガネどこ行った?」となってしまう程度のもの。見失うのであればそれは真に体の一部ではあるまい。

 朝起きた時「ドリルドリル、どこ行った?」とならないこれは、まさしく体の一部。

 日々シャンプーリンスコンディショナーで手入れまでされている、彼の血肉の一部なのだ。

 

「どうやら貴女は、我輩と違って頭の回転が悪いようだ。

 これを使って、少しは頭の回転を速くするといい。どうぞ」

 

 そう言って、槇真樹雄はセシリア・オルコットに微笑み、贈り物を渡す。

 

 『算数ドリル』だった。

 小学一年生用と書いてあった。

 

 当然、セシリアはキレた。これ以上無いくらいにキレた。

 え(E)えい、ゆ(U)るせん! もう許せん! 理性崩壊EU崩壊! というレベルであった。

 

「むきゃああああああっ! 決闘ですわ!」

 

「ああ! 代表候補生特有の腕力で算数ドリルが引きちぎられた!」

「凄い! 地味に凄い!」

「頑張れオルコットさん! ドリルス、じゃなかったイギリスの意地を見せるのよ!」

 

 かくして。

 

 真樹雄とセシリアの決闘は始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、数分後。

 アリーナにて、セシリアは地に伏せることになる。

 勝敗が決したアリーナに視線をやりながら、千冬と真耶は偏頭痛を感じていた。

 

「頭のドリルを前に向けて飛んで突撃するだけで勝ってしまいましたね、織斑先生」

 

「ああ、そうだな、山田先生」

 

「あのドリル、レーザーを巻き込んでましたけど一体どうやったんでしょう……」

 

「海に渦潮ができると、海上の海水や船はそこに巻き込まれるだろう?」

 

「ええ、そうですね」

 

「……」

 

「え? もしかして今ので説明終わりですか?」

 

 真樹雄はドリルを回してウィンウィン浮いている。

 

「それにしてもどうやって飛んでるんでしょう。

 彼のIS、そういう機能が付いているようにも見えませんが」

 

「ヘリコプターと同じように、頭部のドリルが回っていただろう。山田先生」

 

「ええ、そうですね」

 

「……」

 

「え? もしかして今ので説明終わりですか?」

 

 ドリルで飛ぶ。ドリルで防ぎ、ドリルで攻める。かくもおそろしきはドリル万能論か。とりあえず回っておけばどうにかなるのは、ウルトラマンにも通じる何かがある。

 じゃあその身に纏ってるIS何にも使ってねえじゃねえか、とは誰もが思っていたが口にはしなかった。ドリル武器を持つ生徒会長に対し「会長もあんくらい出来るんだろうなすげえや」という尊敬が集まっただけである。

 

「弾く螺旋と引き寄せる螺旋。ドリルとは突き砕くもの。ゆえに弾く螺旋……」

 

「織斑先生? 織斑先生? 本気でどうしました?」

 

 直線のレーザー攻撃をいくら撃っても、この男には通用しなかった。

 セシリアは倒れたまま、その事実を噛みしめる。

 全ての直線が、この男の螺旋に飲み込まれていった。

 彼女の直線的な生き方と攻撃は、対に位置する螺旋には届かなかったのである。

 

「何故わたくしが……こんな男に……!」

 

「イギリス出身! 金の長い髪! お嬢様キャラ!

 それだけ恵まれたものを持っていながら!

 髪をちょっと螺旋状にするだけで完全にドリルにしないその姿勢が!

 怠慢だと言っているんだ! 貴女の髪はドリルになりたがっているというのに!」

 

「―――!」

 

「貴女は頭をドリルにしなかった。我輩はした。勝敗の原因なんてそこにしかないのだ!」

 

 一夏の反対は千冬。白騎士の反対は黒騎士。やせ我慢の反対はデブ大暴れ。ゆるゆりの反対はガチホモ。対になるものでこそ対抗できるというのは、この世界にも共通する法則だ。

 だが、セシリアの直線は真樹雄の螺旋に阻まれた。

 ならば、もはや残された道は一つしか無い。

 

 対になるものではなく、同種のものを―――

 

 

 

 

 

 一ヶ月後。

 "鍛え直してきますわ"と単身ギアナ高地に向かったセシリアは、ようやく戻って来た。

 金髪銀髪がクラスに増えていたが、もはや彼女の眼中にはない。

 戻って来たセシリアを見て、槇真樹雄は嬉しそうにほくそ笑む。

 

「とうとう至ったか、セフィロトの頂点―――王冠(ドリル)の域に」

 

「ええ」

 

 セシリアの髪は、これ以上無いと言っていいレベルのドリルになっていた。

 織斑一夏は、見慣れた光景に乾いた笑いを漏らす。

 篠ノ之放棄は罪悪感でゲロを吐いていた。

 

「な、なにこれ!?」

「ひ、引き寄せられる……オルコットさんに!」

「この力は一体!?」

 

「螺旋だ! 螺旋の力だ! 槇さんのドリルは円錐型の螺旋! 弾く螺旋!

 だけどオルコットさんの髪のドリルは逆円錐の螺旋! 引き寄せる螺旋!

 海上の渦潮が船を吸い寄せて飲み込むように、我々は引き寄せられているッ!」

 

「皆! 気を付けて!」

「ロッカーじゃ軽いわ! 柱にしがみつくのよ! 持って行かれるわ!」

「ああ! 通りすがりの用務員の轡木さんの服だけが引き剥がされてすっ飛んでいく!」

 

「何故だ」

 

 セシリアの髪が周囲の物を引き寄せ、髪の中で粉砕していく。

 その力に応じるように、真樹雄のドリルが回転し、相殺していく。

 コリオリの力に従い、北半球では大きな回転は自然と反時計回りになり、南半球では時計回りになるという。

 洗面所の流れ出る水が作る渦程度では、コリオリの力は働かないと言われている。

 つまりこの二人の頭部は、既に台風と同等のものになっているということだ。

 

 頭部の外側に渦巻く嵐。

 ハリケーンVSハリケーン。

 こいつら頭おかしい(物理)。

 

「改めて勝負を挑みますわ」

 

「受けて立とう。我輩の誇りにかけて」

 

 どちらかが負けてもそれだけでは終わらない、一度負けたなら次の公式戦でリベンジを誓う、そんな学生らしい再戦が始まった。

 

 

 

 

 

 アリーナでの戦いは、以前のような一方的なものではなくなっていた。

 戦いはまだ序盤だが、以前の真樹雄とセシリアの戦いがベジータとヤムチャの戦いであるのなら、今の戦いはベジータと悟空。

 ちゃんと戦いが成立しており、セシリアのレーザーはドリルに弾かれるどころか、ドリルごと彼を押し込んで後退させていた。

 

「くっ」

 

「以前のわたくしと同じだとは思わないでくださいませ!」

 

 その秘密は、セシリアのレーザーの回転にある。

 

「織斑先生、あれは一体!?」

 

「レーザーを回転させて威力と圧力を引き上げているようだ」

 

「何故回転させたらレーザーの威力と圧力が上がるんですか(正論)」

 

「日本には古来よりこういう言葉がある。

 両手攻撃で二倍の威力、二倍ジャンプで二倍の威力、回転させ三倍の威力、というものがな」

 

「―――!?」

 

「レーザービットの数は六、ライフルを合わせて七。

 よって威力倍加率は三の七乗倍。―――攻撃力は、単純計算で2187倍だ」

 

「脳味噌に剥離剤(リムーバー)でも食らったんですか?」

 

 ドラゴンボールで例えるならば、セシリアは埃を巻き上げるだけの技を魔貫光殺砲にまで昇華させたようなものだ。

 気円斬然り、とりあえず回しておけば威力は上がる。

 回転とはそういうものなのだ。

 

「よかろう! ならば我輩も札を一つ切るとする!」

 

 セシリアのギアナ高地での修行の成果を見て、彼もまた新しい札を切る。

 

「ドリルのパワーが上がった!? 織斑先生!」

 

「懐かしいな、現役時代の私もよく使った手だ。

 地球の自転の力を使う。

 地球の回転の力を攻防に乗せるのだ。

 地球の回転周期がやや遅れるが、瑣末なことだろう」

 

「豪快な瑣末ですね」

 

 気を付けの姿勢で頭部のドリルを前に向け、真樹雄は飛翔する。

 自転の力を取り込んだ頭部ドリルは、既にお台場ガンダムの半分くらいにまでそのサイズを増していた。

 

「―――切り札は、最後まで取っておく。それがわたくしの流儀!」

 

 瞬間。

 セシリアは切り札を切り、レーザーの威力を更に乗算化させる。

 飛翔したドリルは、レーザーの圧力を受け、そこで止まった。

 

「今度はレーザーのパワーが! 織斑先生!」

 

「懐かしいな、現役時代の私もよく使った手だ。

 地球の自転利用は地に足を着けなければならない。

 モンド・グロッソではそのせいで、徹底して上空での戦いを強いられたものだ。

 だから、そうなった時は地球の公転の力を使った。

 地球の公転の力を攻防に乗せるのだ。

 地球の公転周期がやや遅れるが、瑣末なことだろう」

 

「その内地球が太陽に飲み込まれませんかそれ」

 

 自転パワーを超える公転パワー。

 セシリアは勝利を確信したが、真樹雄はその上を行く。

 

「回り道大いに結構。……だが、円周率への理解が甘かったな」

 

「! そんなっ!?」

 

 公転の力を宿したレーザーを、ドリルはいとも容易く粉砕した。

 

「こ、今度は一体……!?」

 

「懐かしいな、現役時代の私もよく使った手だ。

 銀河だ。銀河の回転を攻撃に乗せるのだ。

 私もあれを編み出したのは、束に仕置きした時だったな……

 地球から離れ、太陽系の力で戦いを挑んでくる束を倒すにはあれしかなかった。

 銀河系そのものの回転周期が遅れるが、瑣末なことだろう」

 

「瑣末という言葉を辞書で調べ直した方がいいのでは……」

 

 IS(I am Spin)の本質的な力勝負で負けたセシリアが地に落ちる。

 だが、先日のような無様な撃墜ではない。

 どこか気品を感じられる、誇らしい敗北という言葉が似合う撃墜だった。

 

「隠し玉は、まだおありか?」

 

「……いいえ、ここから逆転できるようなものは、何も」

 

「では我輩の勝ち、であるか」

 

「ええ、今日は勝ちを譲りましょう。……ですが、次は譲りませんわよ?」

 

「次も我輩が勝つだけだ。我輩は強い」

 

「まったく、頭が硬い殿方ですこと」

 

「違う。我輩は凡人よりも頭がよく回るだけである」

 

 試合終了。よって、イベントのお約束が始まる。

 

「無人機だ!」

「ゴーレムだ!」

「アリーナのシールドを突き破って落ちてきた!」

 

 そしてゴーレムは登場直後、頭を振った真樹雄のドリルに突き刺さる。

 

「刺さった!」

「綺麗に刺さった!」

「何しに来たのあれ!?」

 

 だが、これで終わるゴーレムではない。最初の一機は囮だ! とばかりに、本命のゴーレム二機がアリーナに殴り込んで来たのだ。

 

「数で攻めるか、面白い」

 

 だが、真樹雄のドリルが伸びると、その二機もあえなく貫かれてしまう。

 真樹雄のドリルは興奮するとより硬く、より大きくなる!

 

(ドリル)に刺さったゴーレム……!」

「一番上が長男で、真ん中が次男で、下が三男……!」

「だんゴーレム三兄弟っ……!」

 

 観客までもがヒートアップ。

 それにつられて真樹雄もヒートアップ。

 ドリルの回転もスピードアップ。

 周囲の全てがライズアップ。

 そして想定被害規模がパワーアップ、そんな流れ。

 

「うおおおおおおッッッ!!」

 

 ドリルの回転が嵐を引き起こし、しかもアリーナのシールドに一瞬でも穴が空いてしまったせいで、その嵐にシールドも巻き込まれてしまう。

 やがてアリーナそのものが分解され始め、全ての観客やアリーナの破片までもが嵐に巻き込まれていった。

 "優れたエンターテイナーは観客まで巻き込む"という言葉がある。

 

 そういう意味では、槇真樹雄は世界最高のエンターテイナーだった。

 

「うわあああああッッッ!!」

 

 なお、織斑千冬だけは巻き込まれず現在進行系で仁王立ちである。

 そのパワーでどうか助けて暮桜、と皆思っているが、千冬は"どうせ死なんだろ"くらいの気持ちであった。

 

「生徒会長、同じドリル使いなんですから責任取ってどうにかしてくださいよ!」

 

「今の私、更識策無。打つ手無し」

 

「ファック!」

 

 終焉を迎える、アリーナの外側。

 そこには、もはや服を着るだけ無駄だという結論に至った全裸の轡木十蔵が、アリーナと嵐を眺める姿があった。

 

「日本海は、『極東の海』とも呼ばれる。

 東の海(イーストブルー)に伝わる、由緒正しき(ことわざ)……」

 

 戦慄と共に、彼は呟く。

 

「『恋はいつでもハリケーン』……!」

 

 ハイスピード学園ドリルラブコメの正しい形がここにある。

 

「見るがいい、世界よ。これが日本、これがIS学園だ―――!」

 

 

 

 

 

 ―――fin.

 

 

 




 頭がおかしいという言葉を作者に対し気軽に使ってはいけません。本当に頭がおかしい人達ってのはこういう主人公達のような人を言うんですよ


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