精霊は海兵へ   作:カミカミュ

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ちょっと、欝展開注意


3話 何度も何度も…

 

 

+-+-ガープ-+-+

 

 

先日ワシが拾った少女ヨシノ。

 

報告によれば、新兵と混ぜて訓練させているが、身体能力は高く。本人はたんたんと訓練をしているだけ。夜に一人能力を使った訓練をしている報告も出ている。助けたときに能力の一端を見せてもらったが、身体能力も含め三等兵で訓練させてばかりいるのはもったいない。能力訓練は小さな事しかしていない。恐らくだが効果範囲が広く、訓練自体を躊躇っているのではないだろうか?

 

ならばさっさと実戦を経験させて階級を上げてやればいいじゃろ。ヨシノの能力テストに海賊に出会えば実戦経験。その後は、暇を見つけてワシが稽古をつけさせれば六式や覇気も使えこなせるじゃろうて。

 

ヨシノを見つけ、小脇に抱えながらワシの船に乗せる。実戦経験させると言うと多少驚いておったが心配するなといっておいた。しかし、まじめじゃのう・・・大人しくしとけばいいのに新兵だからとアチコチ掃除を始めおったわい。

 

しばらくすると、前方に海賊船が現れたらしい。ワシは対応しようとする兵士の音を聞き首をかしげるヨシノをそのまま海賊船に投げてやった。周りから「中将!?」といった叫びが聞こえてくるが見た限り海賊船一隻程度の人数なら大して問題ない、ハズじゃ。まっすぐと空を飛んでいくヨシノを眺めておると途中、空中で停止した。月歩でも使ったのかと目を凝らすが普通に飛んでおった。驚いた・・・まさか空を飛べるとは、しかしワシの驚きはすぐに消え、さらに凄まじい現象が起きた。

 

氷結傀儡(ザドキエル)と言っておったかの?3m程のウサギだったはずのあれが50mを越す巨大さで現れた。ヨシノもあの大きさは予想外だったのか目をパチクリしながら驚いておる。そのまま気づいたかのように海賊船を指差す。何かの合図をこちらに送っているのかと思ったが違う。

 

感じる・・・ビリビリと空気が震えておる。海賊船の真上辺りのの空が歪む。

 

そして、歪みきった空間が雫の様に落ちた。そして起こるは海軍の最新兵器でも実現不可能な巨大な爆発。ドーム上に広がるソレは海水を消し飛ばし、海底を抉る。

 

始めに試す能力の確認はしとった、だが何じゃこの威力は!!じょじょに広がる破壊の嵐が軍艦に及びそうになるとヨシノは氷結傀儡(ザドキエル)で軍艦を守り、嵐が過ぎるのを待つ。数十秒続いた破壊は収まり、甲板に降りてきたヨシノは謝罪してきた。本人もまさか味方を巻き込みそうになるほどの事をする気はなかったらしく、何度も頭を下げてきた。結局は発生させたのはヨシノだが、守られもしたのだ。気にするなとヨシノに言ってやる。海賊のやつらには同情する。たまたま通りかかったこの海域であれほどの爆発に巻き込まれたのだ、哀れとしか言いようがない。

 

再度謝ろうとするヨシノだが、その言葉は途中で止まり先程の爆心地へ振り返る。未だにゴウゴウと海水が流れ込むその場所にキラキラと光輝くクリスタルのようなものが浮かんでおった。

 

 

「な・・・んで・・・こんなところに・・・霊結晶(セフィラ)が・・・!!」

 

 

ヨシノはクリスタルを霊結晶(セフィラ)と呼び、目を見開きながら何かを堪える様に体を震わせている。ヨシノとセフィラとやらに何があったのか分からぬが一旦ここを離れて――。

 

 

「あ・・・あぁ・・・どうして、ですかっ?・・・なんで・・・十香さ・・・ん・・・が・・・」

 

 

横にいたヨシノが涙で顔を濡らす。ボロボロと涙を流しながら苦しそうに名を呼ぶ。気のせいか先程までと比べ口調が変わっている気がする。ワシが通常通りに思考していたのはここまで、突然ヨシノから光が溢れる。

 

 

その光に視界が埋め尽くされると――

 

 

 

 

 

 

 

――ワシは石造りの巨大な建物が並ぶ街にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街は人々で溢れ、見たこともない乗り物が道を走る。

 

男が小型の何かに耳を当て叫び、若い女たちが食べ物片手に談笑しながら歩き、青年が太陽の暑さにタオルで汗をぬぐう。鞄を背負った子供たちが笑いながら走って行き、巨大な乗り物が音を立て走行する。

 

何だここは、辺りを見回し様々な音や匂いで眩暈がする。しばし、呆然としていると警戒音が町中に響き渡る。人々は慌てながらも近くの建物へと逃げていく。建物は扉が閉まると地下へと収納されてしまった。瞬く間に人々や乗り物は地上から消え、空が落ちてきた。

 

身構えるが半径3mに満たない小規模の爆発。記憶にある爆発とはまるで違った。爆発が収まり雨が降り出す。そして爆心地にはヨシノがいた。

 

ビクビク怯えながら辺りを見回し、建物の陰に隠れるように走る。途中で段差に躓いたのかドシャと転んだのを見て、ワシは手を貸そうとヨシノに触れようとした。だが、ヨシノに触れることは叶わず手が通り抜ける。そこでワシはようやく気づく、今見えているここは現実ではないのだと。ようやく冷静になったワシはとりあえずヨシノを追うことにした。

 

建物の間を縫うように走っていたヨシノだが、建物の影を出た瞬間ヨシノがいた地面が爆発した。ワシは慌てて近寄ると、吹き飛ばされ地面に何度も叩きつけられたヨシノが立ち上がるところだった。立ち上がったヨシノには空から何度も攻撃が飛んできた。空を見上げるとそこには奇妙な装備に身を包み、空に浮く少女や女性たちがいた。そして、その中の白色の髪の少女が喋る。

 

 

「ハーミット、今日こそは世界のため人々の平和のために死んでもらう」

 

 

ハーミットそう呼ばれたヨシノは少女たちの砲撃を避けきれず、壁に叩きつけられる。やめろと叫ぶが彼女たちにもヨシノにも声は届かない。何度も攻撃を受けるヨシノだが、決して自分から攻撃を仕掛けようとはしなかった。

 

景色が歪む、今度は別の場所だった。雨の中トボトボと歩くヨシノの背に砲撃による爆発が起こる。慌てて立ち上がり、空へと身を踊らせ攻撃を避けていくヨシノ。

 

 

 

場面は次々と変わっていく、ヨシノがどれだけ攻撃されても彼女は自ら攻撃をすることはしない。どこの場面からだっただろうか、彼女の左手には眼帯をしたウサギのパペットを身に着けるようになった。手を伸ばせば届く距離にいるのに、触れないもどかしさと悔しさが胸を支配する。そして、次の場面へ。

 

いつもとは違い爆発を起こさずに現れることができたヨシノ。上手くいったことに小さくガッツポーズをとる姿はかわいらしい。その後も攻撃が来ないことに楽しげにぴょんぴょんと雨の中をはねる姿が見られる、が。

 

 

――ずるべったぁぁぁぁぁぁぁぁんッ!

 

 

音を付けるならこのぐらいだろうと言う勢いで転んだ。あまりの勢いに左手のパペットがすっ飛んでいった。そこに現れたのは一人の少年。転んだヨシノに慌てて駆け寄り抱き起こす。パペットも拾いに行ってくれた心優しき少年にホッと一息。

 

だが、ヨシノの瞳に浮かぶのは恐怖の色。少年はパペットを握りながら困った顔をしている。先程までの光景を見ていたガープは苦い顔をしている。出現すれば攻撃され、逃げれば攻撃され、怯えても関係なしに攻撃されたヨシノの精神ダメージはひどいものだ。

 

何とかパペットを受け取ったヨシノは、自分では喋ることはせずにパペットを操る。軽い口調で喋るパペット――よしのんは口早に繰り出す言葉で少年を翻弄して、逃げるようにその場を去って行った。

 

次の日も少年と会う。名はイツカ シドウというらしい。彼はヨシノのことを気にしており、奇妙な装備の女たちの目を掻い潜ってヨシノに会いにきていた。なかなか根性のある少年である。そこからよしのんとイツカの会話が弾み、楽しそうにしている姿がしばらく続いた。ここでガープが驚いたのがあれほど人間不信していたヨシノがイツカに話しかけようとしたことである。震える唇でオドオドしながら言葉を発しようとした。

だが、ここまでであった。突然壁が崩壊し、あの白い髪の少女が現れた。イツカに気づいていないのか高火力の兵装でその場を爆発させる。砂塵が舞い視界が悪くなったところで白い髪の少女は誤ってイツカの方へと光る剣を突き刺そうと動いた。

 

 

「だ、だめ・・・ッ!!」

 

 

か細く消え入りそうな声が響き、イツカを庇いヨシノがその身に光る剣を受けた。いままでどんな砲撃にも耐えてきたヨシノの装備を食い破った武器は最新装備だったのか、まぐれの一撃が偶然装備を破ったのかは分からない。

 

だが、その一撃でヨシノの命は散った。

 

最後に「・・・私に・・・優しくしてくれ・・・てありが、とうござ・・・いま、す」そう、言い残して光となって消えた。

 

残ったのは少年の悲痛な叫び声。

 

これは、あんまりなのではないのか。

 

 

 

 

 

気がつけば自分の船の甲板の上。先程の光景に頭を痛めながらヨシノを見る。そこには遠くで輝いていた霊結晶(セフィラ)がヨシノの目の前にあった。

 

今度はそれが輝きだし、光が収まるとヨシノは涙を流しながらゆっくりと倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+-+-四糸乃-+-+

 

 

気が付いたら私は街の中にいた。

 

街に人影なく、警戒音だけが響き渡っている。何かあったのかと身構えていると、私の横を青髪の少年が焦った顔つきで息を切らせながら走りぬけた。

 

その少年は五河 士道だった。

 

私は士道の焦った顔が気になり後を追う。そして、空が歪んでいるのが見え、士道を止めようとするが声は届かないまるで聞こえてないかのように無視され、手を伸ばして士道を掴むが私の手はすり抜けてしまった。そこでようやく気づく、今ここで私が見ているものは霊結晶(セフィラ)が見せる過去の記憶。干渉することはできない世界だと知る。

 

呆然とする私をよそに空が落ち、まばゆい光の後に爆音が響き、衝撃波が辺りを襲う。士道はギリギリ無事だったらしく、私の近くまで衝撃波により転がってきた。爆発が収まり、砂塵が引くと街の風景は跡方もなく消え、巨大なクレーターが出来上がっていた。

 

――あぁ、【俺】は知っているこの景色を・・・。

 

クレーターの中心には金属で出来た大きな玉座と、玉座の肘掛に足をかけて立つ少女がいた。膝まであろうかという黒髪に紫色の鎧とドレスを混同したような衣服を身に纏う少女は気怠そうに首を回し、士道に気がついた。士道は目の前の光景に混乱しているのかその場から動こうとしない。そして、少女は玉座の生えた柄の様なものを握ると、一気に引き抜く。

 

引き抜かれたのは、幅広の大剣。大剣は幻想的な輝きを放っており、一目見ただけで只ならぬ気配を放つソレは十香の精霊。十香はゆったりと剣を振りかぶり、横薙ぎに振る。とっさに士道のほうに視線を向けるが偶然頭を下げたのか飛んできた斬撃を避けていた。最高の技量による剣撃によって繰り出される一撃。その一撃により、崩壊した街並みに現在精霊である私でも冷や汗が流れる。

 

そして、十香は一瞬で士道の目の前に移動し、崩壊した街並みを見て混乱している士道を観察している。十香に気づいた士道は驚愕に目を見開き、逃げ出そうとした。

 

 

「――おまえも・・・か」

 

 

そこに少女の酷く疲れたよな、声が響く。顔も悲しそうにしており、諦めが見えた。精霊として顕現し、自分の意志とは関係なしに街を破壊する。空間震と精霊としての力を恐れられ、こちらに戦う意志がなくとも殺意を向けられる。

俺は原作やアニメを見たから知っている。十香は純粋に笑い、年頃の少女らしく恋をし、嫉妬だってする。感情豊かな彼女が全てを諦めた表情をしているのが酷く悲しく思える。

 

士道は十香をジッと見つめ、震えた喉で声を発する。

 

 

「――君、は・・・」

 

 

 

「・・・名、か・・・そんなものは、ない」

 

 

どこか悲しそうにその声が響く。

 

この時はまだ名のない彼女。四糸乃は自身の名を知っていたのに十香が知らないのは疑問だが、後に士道が名付けることになる。

 

しばらくすると、ASTたちが空から攻撃をする。しかし、ソレを十香は許さない。見えない力で砲撃を止めると握りつぶし空で爆発する。砲撃や光の攻撃が次々と繰り出されるが、十香の周りに壁があるかのように攻撃が一切届かない。逆に十香が振るう斬撃は次々と空に放たれ圧倒的なのがわかる。

 

だが、十香の顔は余裕でも笑顔でもなく、悲しそうにしているのが伺える。そこに、白い髪の少女、鳶一折紙が刃で打ち合う。そこで私の視界は閉ざされる。次に視えた景色はでは、十香と士道が抉れた建物中で話し合ってる場面で始まる。話し合いの中で十香が士道に名を決めるように提案した。

 

そこでようやく彼女は『十香』と名を貰う。士道が名を呼ぶとそこで初めて十香が笑った。だが、次の瞬間には爆音と振動が響き渡り、視界が途切れた。

 

そして、次に現れた場面では士道と十香が楽しそうに食べ物を食べたりしながら街中を散策する光景だった。こうして笑っていると年相応の可愛らしい少女で安心する。時間は進み、夕暮れ時の公園を二人が歩く。その公園の周りには複数で待機し、殺気を含んだ気配を感じる。1キロほど離れた場所にキラリと光るものを発見した。そこには鳶一が腹這いになりライフルのスコープを覗いている。私は深く溜息をつく。あの無邪気に笑っている十香が見えないのか、殺そうとするしかないのかと考え、手を出そうにも手出しできないことに拳を握る。分かっていても干渉出来ないのが酷く悔しい。彼女が引き金に指をかけたところで、私は目を閉じる。

 

 

「あ――――」

 

 

撃った彼女が漏らしたのはそんな声。隣にいた日下部燎子だったか?…も呆然とする彼女を揺さぶり必死に逃げようとしている。焦りがヒシヒシと伝わる。私は士道たちに視線を戻すと、血だまりに倒れる士道の姿と災厄に身を包む十香がいた。その後は原作と同じだった。怒りと悲しみに身を任せ、巨大化した剣で切り掛かる十香。公園が一瞬で戦場へと変わり果てた。私は士道の元へと帰ってくる。夥しい量の血が撒き散らされ、その中に士道は目を閉じられ息を引き取っていた。傷口には十香の上着がかけられ、血に染まっている。

 

そして、士道の中に眠る琴里の精霊の力が吹き出す。士道の傷口が燃え出し、傷は塞がっていく。そして士道が息を吹き返す。蘇ったことに混乱していたイツカが消えた。それと同時に十香の破壊行動によって公園全体が崩れる。最後に見たのは十香と士道が抱き合い、口づけをしたところまでだった。

 

そして視界が変わる。そこで私は目を見開く。十香は先ほど見ていたドレスではなく、闇色の鎧に実体の無いドレスに身を包む反転した十香。だが十香は地面に倒れ、胸元にはASTの武器であるレイザーエッジが突き刺さっている。そこへ右腕を無くし、腹を抉られ、左目から血を流す士道が覚束無い足取りで歩いてきた。左手に持った鏖殺公(サンダルフォン)がガランと音を立て地面を転がり、十香の目の前に膝をつく士道。周りを見回せば、背中を袈裟切りにされ倒れる四糸乃。手を繋ぐ首の無い二人の少女。白いドレスを血と泥で染め上げ倒れ伏す紫紺の髪の少女。壁に寄りかかるようにしている魔女のようなつば折れ帽子で血濡れの顔を隠す緑の髪の少女。胸を抉られ四肢の無い灰色の髪の少女。先程まで生きていた士道も静かに倒れ、息絶えた。

 

そこから風景はノイズが混じり、次々と悲惨な光景を私に視せる。

 

場面はすべて十香や四糸乃、狂三・琴里・折紙・八舞姉妹・美九・七罪・二亜達が死に絶えていく場面だった。永遠と続くような光景だったが、視界全体を眩い光で覆われた。

 

気がつけば私は甲板に立っていた。私の側にあった霊結晶(セフィラ)は役目を終えたとばかりに光の粒子となって四糸乃の体に吸い込まれていった。

 

 

 

 

私の中に十香の霊結晶(セフィラ)が入り込み、四糸乃の霊結晶(セフィラ)と混ざり合った瞬間、景色が明滅し、涙が零れ、足元がフラつき倒れる。近くにいたガープさんが私の異変に気づき近寄ってきたが私の意識はその程度のことにはピクリとも反応しない。理由は・・・。

 

 

四糸乃と十香の感情が洪水のように流れ込んできたからだ。

 

 

諦め 驚き 楽しみ 悲しみ 怒り 苦悶 いらだち 不安 慈悲 軽蔑 満足 敗北 落胆 欲望 希望 絶望 失望 嫌悪 困惑 熱中 嫉妬 羨望 多幸感 興奮 恐怖 罪悪感 幸福 憎悪 恐怖 敵意 恥 情緒不安定 侮蔑 激昂 孤独 寂しさ 憧れ 愛 傲慢 激怒 残念 拒絶 羞恥心 人見知り 衝撃 悲痛 悪意 善意 同情 哀れみ 苦しみ 驚愕 執念 心配 熱意

 

 

二人が感じてきた様々な感情。その中でも負の感情が私の胸を締め付ける。私の心拍数は急激に上がり、鼓動がうるさい。冷汗が噴き出し、吐き気がする。

 

そこで私の意識は途絶えた。

 

 

 

次に目を覚ますとマリンフォードにある医務室だった。私の服装は霊装のままだったのだが違和感を感じ手を見る。そこには十香の霊装のガントレット部分が装着されていた。十香と全く同じというわけではなく、闇色の部分が深緑色へと変わっていた。気のせいか・・・いや、気のせいなどではなく霊力も増えている。

 

これは確実に霊結晶(セフィラ)を吸収した影響だろう。だが私には強くなった高揚感などは全くない。二人の精霊の死の記憶と感情を一身に受けたのだ。精神的なダメージが酷い。未だに痛む胸を抑えながら思考する。

 

恐らくだが、私が知っている『デート・ア・ライブ』の原作とは違う時空で進んでいった・・・パラレルワールドで死んだ四糸乃と十香の記憶を私が追体験したものなのだろう。どういった因果か私の魂は死して偶然この世界に流れてきた四糸乃の霊結晶(セフィラ)に憑依したらしい。そして、別の世界で死んだ十香の霊結晶(セフィラ)もこの世界に流れ着いた。

 

もしかすると、ほかの精霊の霊結晶(セフィラ)もこの世界に来ている可能性はある。だが、私はそれを探す気にはなれない。霊結晶(セフィラ)に封じられた精霊の記憶と感情が余りにも辛く、悲しすぎるから・・・。偶然死んだ私とは比べ物にならない。彼女たちの一生は戦って負けて、守ろうとして守りきれず、後悔と死の恐怖の中に溺れて消えていった。偶然に偶然が重なって死んで行く彼女たち。

 

そこで私はふと思った。事故で死んでしまった私。そんな平凡な私でも死してなお漂う彼女たちの霊結晶()を受け止めるくらいはできないだろうか?受け止めるなどと簡単に考えたが、きっと死ぬほどキツいはずだ。軽く深呼吸をする。だけど、災害として恐れられ、死んでしまった彼女たちを私の身で受け止め、その力で人を救うことはできないだろうか?昔憧れた漫画やアニメの主人公たちのようには行かないかもしれない。手を汚すことになるだろうし、辛いことだってたくさんあるはずだ。せっかく海軍に入ったんだ自分なりの正義でも見つけてやっていこうか。

 

 

 

 

 


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