問題児たちと不死身の少年が異世界から来るそうですよ?   作:桐原聖

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 また一か月近く開けてしまい、非常に申し訳ございません!
 このペースが限界かも・・・


小林が″火竜誕生祭″に行くそうですよ?

小林は、″サウザンドアイズ″に向かった。

 

「おや、また貴方でしたか」

 

 小林を見て、女性店員が迷惑そうな顔をする。

 

「白夜叉に会いたい。白夜叉は居るか?」

 

 白夜叉ほどの実力者ならば、北側に連れていってくれるだろう。北までの距離はどれくらいか知らないが、歩くのは面倒くさい。小林はそう考えた。

 

「現在白夜叉様はいません。どうやら″ノーネーム″の皆さまを連れて、北側に向かってしまったようです」

 

「お前は行かないのか?」

 

「私はこの店を守るのが仕事ですから。むしろ白夜叉様が居ない今だからこそ、この店を守らなければ」

 

「そうか。分かった」

 

 言いながら小林は店の中に入る。

 

「だから、うちの店は″ノーネーム″お断りで」

 

「うるさい」

 

 店員の言葉を容赦なく切り捨てた小林に怒ったのだろう。店員が竹箒を構える。だが小林に攻撃が効かない事を思い出し、構えを解く。

 

「何がしたいか知りませんが、好きにしてください。貴方は白夜叉様のお気に入りみたいですし、どうにかなるでしょう」

 

 その言葉を聞き逃し、小林は店に展示されていた商品を手に取った。薄い板のような物で、中心に星が描かれている。何かの儀式に使えそうだ。

 

「これは何だ?」

 

「ああ、転移陣ですね。これを使えば好きな場所に転移できる代物なのですが・・・・一度しか使えない上に、場所は選択できても細かい位置までは選べないという、三流のギフトです」

 

「これを使って、十六夜たちの所まで行けるか?」

 

 小林が聞くと、店員は溜息を吐いた。

 

「行けますよ、一応。ああもう、好きにして下さい。私は責任を取りませんから」

 

「分かった」

 

 小林は転移陣を足元に置いた。瞬間、赤い光が展開し小林と店員を包み込む。

 

「え?」

 

 店員が間抜けな声を出した瞬間、小林と店員は転移した。

 

 

 小林と店員は、確かに転移した。

 

 黒ウサギの真上に。小林の″TRICKSTAR″の能力で、黒ウサギが吹き飛ばされる。

 

「な、何事ですかーー!」

 

「今だ、逃げるぞお嬢様!」

 

「分かったわ、十六夜君!」

 

 どうやら二人は黒ウサギから逃げていたらしい。二人が逃亡する。

 

「ようやく来たか主殿、十六夜と飛鳥を追うぞ!」

 

 十六夜と飛鳥を追いかけてきたと思われるレティシアが、小林に叫びながら空から二人を追う。後には、小林と店員が残された。

 

「僕はあいつらを追う。お前はどうする?」

 

「私は北側に繋がった店舗に戻ります。では失礼」

 

 言うなり店員は立ち上がると、小林に背を向けた。

 

「ああ、じゃあな」

 

 小林が言うと、店員は首だけ振り向いて言った。

 

「貴方は怪我をしないでしょうから言わなくてもいいでしょうが、一応。お気を付けて」

 

 そこには、先ほどとは違い、わずかな優しさが込められているような気がした。

 

「ああ、行ってくる」

 

 言うと、小林は走り出した。

 

 

 

 

 小林は人込みが苦手だ。小林の近くに来た人間は怪我を負ってしまうからだ。

 なので裏路地を通らなければならず、捜索は困難を究めた。

 小林が探し始めて約一時間。二人はおろか、レティシアや黒ウサギも見つからない。

 その時、後ろから声を掛けられた。

 

 「おい、お前」

 

 振り向くと、そこには三人のチンピラが居た。

 なぜ見てすぐにチンピラと分かったかと言うと、元居た世界でも同じような服装のチンピラが居たからだ。確かヒデちゃん、とか言ったか。よく覚えていない。

 

「怪我したくなければ大人しく金目の物を出せ」

 

 チンピラの一人が脅すように言ったが、むしろ怪我したい、というか死にたいので、進んでチンピラに向かって歩く。

 

「何だこいつ?死にたいのか?」

 

 だから死にたいのだ。小林はチンピラの前に立った。チンピラの方が身長が高いため、自然と見上げるような形になる。

 

「おいお前、やる気か?」

 

 チンピラの一人が言うと同時、残りの二人が拳を構える。面倒くさいが戦うしかないのか。小林がそう思っていると、チンピラの一人が拳を振りかぶった。

 

「おりゃあ!」

 

 変な掛け声と共に、小林に殴りかかる。だが拳ごときで怪我をするなら小林も苦労はしない。チンピラの右肘から先が切り裂かれる。鮮血と共にチンピラの右腕が地面に落ちる。

 

「う、うわあああああ!」

 

「畜生、何だこいつ!」

 

 残ったチンピラの二人が小林から距離を取り、ナイフを抜く。

 

「死ねえ!」

 

 チンピラの一人が小林にナイフを突き出す。″TRICKSTAR″の能力で、ナイフは切り口と柄できれいに二分される。

 

「く、くそっ!」

 

 チンピラがナイフを構えなおした、その時――

 

「そこまでだ、お前ら!」

 

 何者かが小林とチンピラの間に割り込んだ。ツインテールの髪と白黒のゴシックロリータの派手なフリルのスカートという、変わった格好だ。しかし変わっているのは格好だけではない。

 少女は何故か、火の玉の上に乗っていたのだ。いや、よく見るとそれは巨大なカボチャだ。

 

 少女はビッ、とチンピラに向かって指を突き出し、言う。

 

「おいお前ら、三人で一人を攻撃するなんてどうかしてるんじゃないか?おまけに子供相手にナイフまで使ってさ。お前ら、どこのコミュニティだ?この″ウィル・オ・ウィスプ″が成敗してやる!」

 

 十六夜が聞いたら大爆笑しそうだな、と思いながら小林は少女を見た。チンピラたちはしばらくポカン、としていたが、我に返ると腹を抱えて大爆笑した。

 

「はは、『成敗してやる』だって!今時誰も言わねえよ!」

 

「お前も災難だな。こんな奴に助けられて!」

 

 チンピラに爆笑されて、少女の頬が真っ赤になる。少女が叫ぶ。

 

「やっちまえ、ジャックさん!」

 

「分かりました、アーシャ」

 

 カボチャが返事をすると同時、ランタンから業火が迸る。業火は四方八方に広がり、裏路地を包み込む。あっという間にチンピラは飲み込まれ、小林にも業火が迫って来る。

″TRICKSTAR″の能力が、小林を守る。今回ばかりは小林もこの能力に感謝した。流石にカボチャの放った炎で死ぬのは御免だ。

 

「よっしゃー全部焼き払ったぜチクショウ!あれ、あの子は?」

 

「私の炎で焼き尽くされてしまったでしょう。流石にあの攻撃を喰らって生きているはずが―――」

 

「生きてるぞ」

 

 焦った声で言うカボチャの言葉を遮り、小林は声を掛けた。ツインテールの少女が驚いたように言う。

 

「お、おい。なんで、ジャックさんの攻撃を受けて耐えてるんだ?」

 

「こんな攻撃で死ねるなら僕はとっくに死んでる」

 

 小林が言うと、少女が息を飲んだ。どうやら小林の能力について検討がついたようだ。その時、カボチャが何かに気が付いたように言う。

 

「私の攻撃を喰らっても無傷、私達が来たとき足元に落ちていた右腕、そしてこの気配、まさか貴方、″無傷の帝王″では?」

 

「さあな。そんな奴僕は知らない」

 

 確かに、小林は本当に知らない。″無傷の帝王″という通称を小林本人は知らないし、サラがそれらしい言葉を言っていた気もするが、よく覚えていない。

 

「なあジャックさん。″無傷の帝王″って何だ?」

 

「文字通り、どんな攻撃をくらっても無傷でいる、最強のギフトを持っている者の事ですよ。

失礼ですが貴方、所属コミュニティは?」

 

「ノーネームだが」

 

 小林はぶっきらぼうに答えた。さっさと十六夜たちに合流したい。

 

「私達は″ウィル・オ・ウィスプ″と言います。名前だけでも覚えておいていただければ光栄です。機会があればぜひ私達のコミュニティを見に来てください」

 

 突然態度が変わるカボチャを不思議に思いながらも、小林は「分かった」と返事をした。

 

「貴方も早くここから出た方がいい。もうすぐ異変に気が付いた″サラマンドラ″のコミュニティが来てしまいます。では失礼」

 

 言うなりカボチャはツインテールの少女を抱えると、飛び立って行った。小林はそれを見ながら首を傾げた。

 

「何でサラとかいう奴といい、カボチャといい、なんで僕を自分のコミュニティに呼ぼうとするんだ?」

 




 次回、今度こそ本当に鬼ごっこ!

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