問題児たちと不死身の少年が異世界から来るそうですよ?   作:桐原聖

10 / 12
 ものすごく間が空いて申し訳ございませんでした。
 久し振りに書いたので所々文章がおかしくなってるかもしれませんが、温かい目で見守ってください。


問題児たちと不死身の少年が火龍誕生祭に行くそうですよ?
小林が死ぬために動き始めたそうですよ?


「・・・林さん。起きてください小林さん!」

 

 近くで誰かが叫んでいる。でも無視した。

 

「本当は起きてるんでしょう!?起きてください小林さん!」

 

 無視した。

 

「小林さんがその気なら、こちらにも考えがあるのですよ!」

 

 無視した。何かが飛んでくる音がしたが、無視した。

 

「主殿。いい加減起きて貰えないだろうか」

 

 レティシアの言葉に、小林は起き上がった。溶鉱炉の中から。

 

「何の用だ、駄ウサギにレティシア」

 

「だ、駄ウサギ!?この″箱庭の貴族″である黒ウサギを、駄ウサギ呼ばわりするとは何ですか!?」

 

 怒った黒ウサギが小林に詰め寄る。だが溶鉱炉の熱気に耐えかねたのだろう。すぐに元の場所に戻った。

 

 何故小林が溶鉱炉で寝ているのか。事の発端は、二日前の出来事にある。

 

――二日前――

 

「なあ、黒ウサギ」

 

「はいな、何でございましょう?」

 

「僕はどうやったら死ねる?」

 

「そ、それは難しい質問ですね。小林さんはどうしたらご自分が死ねると思いますか?」

 

「知らん。だから聞いてるんだ」

 

「そ、そうですよね」

 

「毎日白夜叉の紹介でギフトゲームを受けてるけど全然死ねないぞ。強い相手と戦えば僕は死ねるんじゃなかったのか?」

 

「え、ええと、それはですね・・・。あ、そうだ!小林さん、寝ている間ギフトはどうなっているんですか?」

 

「さあな。知らん」

 

「で、ですよね・・・。ま、まあとりあえず駄目元でやってみましょう。ひょっとすると小林さんが寝ている間、ギフトは切れているかもしれませんよ?」

 

「分かった。じゃあ早速今日からやろう」

 

「分かりました。ではまず、この前小林さんがギフトゲームの賞品としてもらってきた″溶鉱炉″というのに入って寝てみるのはどうでしょう?」

 

「あれか。あれで死ねるのか?」

 

「元々中に入っていたあの熱い液体に、業火の恩恵を持ったギフトを入れておきましょう。そうすれば小林さんでも死ぬかもしれませんよ?」

 

「分かった。僕は今日からあの中で寝ればいいんだな」

 

「まずは一週間様子を見ましょう。それで駄目なら、別の方法を考えましょう」

 

――そして今に至る。当然、小林は死んでいない。

 

「落ち着け黒ウサギ。主殿も、それ以上煽るのはやめてあげよう。黒ウサギが可哀想だ」

 

「そうだな。それで、何の用だ」

 

「そ、そうでした。実は、あの問題児様方がこんな置手紙を残していったのデス」

 

 その時の事を思い出したのか、黒ウサギが悔しそうに小林に向かって手紙を投げつける。飛んできた手紙は小林に当たる寸前、切断されて溶鉱炉に落ちた。

 

「ああッ!」

 

「駄ウサギ、お前馬鹿なのか?」

 

「黒ウサギには悪いが、私も今回は主殿と同じ意見だ」

 

「ひ、酷いですレティシア様・・・」

 

 泣き崩れる黒ウサギをよそ目に、小林はレティシアに聞く。

 

「で、何の用なんだ?」

 

「ああ、実は主殿たちが北で行われる″火龍誕生祭″に行ってしまってな。そして祭りを黙っていた罰として今日中に主殿たちを捕まえられなければ三人ともコミュニティを脱退すると言っているんだ。」

 

 相当焦っていたのだろう。少し説明力に欠けたレティシアの言葉に小林は驚くが、すぐに重大な事態に気が付いた。

 十六夜たち三人は強力なギフト保持者だ。その三人が抜けてしまえばコミュニティは衰退する。それは別に構わないのだが、そんな衰退したコミュニティを狙う魔王がどこに居るだろうか。

 

「すぐに十六夜たちの元に向かうぞ、黒ウサギ」

 

 小林は泣き崩れている黒ウサギに声を掛けた。黒ウサギの速度は一度見た事がある。十六夜たちに追いつける可能性が一番高いのは黒ウサギだろう。

 

「へ?は、はい分かったのですよ。では黒ウサギは先に十六夜さんたちの所に向かっておきます」

 

 言うが早いか、黒ウサギは凄まじい跳躍力で飛び立っていった。その姿を目で追いながら、レティシアは小林の方に向き直る。

 

「さて、私達も行こうか、主殿」

 

 しかし小林は、きょろきょろと辺りを見回し、

 

「いや、先に行け。何か変な感じがする」

 

「そうか?なら私も一緒にここで待機していた方がいいのではないか?」

 

 レティシアの言葉に、小林は首を振る。

 

「僕のギフトは周りを巻き込む。いいから先に行け」

 

「分かった。多分大丈夫だと思うが、気を付けて」

 

 そう言うと、レティシアは翼を顕現させ、飛び立っていった。その姿が見えなくなった事を確認すると、小林は後ろを振り返った。

 

「誰だ」

 

「おや、気づいていたのか。流石、″無傷の帝王″だな」

 

 するとどこから現れたのか、褐色色の女が立っていた。肌を大胆に露出させており、二本のツノのような物が生えている。

 

「もう一度聞く。誰だ」

 

「ああ、これは失礼。自己紹介が遅れた。私は″一本角″頭首、サラ=ドルトレイク。

 以後お見知りおきを。″無傷の帝王″」

 

「サラっていうのか。僕は小林。で、何の用だ?」

 

 小林が聞くと、サラは軽く微笑んだ。

 

「君と同盟を組みたいと思ってね、小林君」

 

「は?」

 

「以前から君の噂は聞いているよ、小林君。″ペルセウス″の元魔王を倒し、さらにその後のギフトゲームも連戦連勝。神仏と戦っても傷一つつかないその無双ぶりは、まさに″無傷の帝王″。そんな君と、同盟を組みたいと思ってね」

 

 突然まくしたてるサラに小林は混乱する。

 

「そんな物、いきなり言われて分かるわけないだろ」

 

「確かにそうだな。では、火龍誕生祭が終わるまでに返事をくれ。我々と同盟を組めば、

・・・君は死ねるかもしれんぞ」

 

 そう言い残すと、サラは小林に向かって火球を放った。″TRICKSTAR″の能力で霧散させるものの、一瞬視界が塞がれる。視界が開けた時、サラの姿は見当たらなかった。

 

「何なんだ、あいつ」

 

 小林はつまらなそうに言うと、とりあえず″サウザンドアイズ″に向かうことにした。

 




すみません。問題児と黒ウサギの鬼ごっこを書くかは分かりませんが、書いたとしても小林は鬼です。(黒ウサギが小林に触れる事が出来ないので)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。