第3次スーパーロボットα外伝〜仕組まれた滅亡〜   作:リバーサクラモード本格的だよ

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かなりネタバレフレーズがありますが、気にしないでください!それでは、どうぞ。


番外編2 振り下ろさせないその右手

 

ー美空町ー

ー陽昇学園ー

ー保健室ー

 

ポタポタポタポタと聞こえてくる

点滴の音か…目は開くかな…

恐る恐る目を開いた。

 

レスター『う…うう…ここは…』

 

俺は見知らぬ天井を見た。

俺は確かあの時…子どもを助けようとして…

どうなったんだ…

 

俺はゆっくりと寝ていたベッドから体を起こした。

どうやら俺はあの子を助けようとして怪我を負って陽昇学園の保健室のベッドで寝ていたらしい。

 

タクト『よう、大変だったなレスター、もっとも傷はヴァニラのナノマシンで直したから大丈夫だ。お前もお前が助けたあの子ももな。』

 

横をふと見るとパイプ椅子に座っていた私服のタクトがいた。

俺の顔を見たら、椅子から立ち上がり横にあるカーテンを開けた。

そこには俺とぶつかった少女がいた。

点滴をしてゆっくりと安らいだ表情で目を閉じて休んでいた。

 

レスター『大丈夫なのか…』

 

俺はどうにも気になって仕方がなかった。

あの判断が良かったのか?

完璧な判断はしっかりとマットを持ってきて下に敷いてダメージを防ぐのが正しかったと思う。

だが、マットがなかった以上、俺がマット代りになるという。

判断としては間違っていた。

でも、結果が全てだと思ってるから…

どうなんだ…

 

タクト『ああそれなら大丈夫、この子とお前の点滴もとりあえず不思議がられないためだけであって傷は完璧にヴァニラが治したから、痛みも無いだろう。保健室のゆき先生は今は校長と話しをしていて、関先生は小山ちゃんの保護者と話し、ヴァニラはジャックと共に魔法堂で店番をしてもらっている。』

 

それを聞いて俺は体を見回して、傷がないことを確かめてゆっくりとベッドに寝転んだ。

 

レスター『それならよかった。それでどれみたちはどうした?』

 

タクト『勿論いるに決まってるだろう、来てどれみちゃん、はづきちゃん、あいちゃん。』

 

ガラガラ

 

部屋の外にいたどれみとはづきとあいこはゆっくりと扉を開けて部屋に入ってきた。

少し震えた表情でこちらを見ていた。

 

あいこ『レスターはん…本当に大丈夫なん。痛みとかないんか?』

 

レスター『ああ、大丈夫だ。ヴァニラのナノマシン治療には後遺症や痛みもないから問題ない、心配かけたな。』

 

はづき『ごめんなさい…私たちが魔法でよしみちゃんを助けていたら…』

 

レスター『同じ学年の奴が死のうとしていたんだ、冷静でいられたほうが異常だ。気にする必要はない。お前たちは友達が死のうとしていて冷静でいる奴が正しいと思ってるのか?』

 

どれみ『それはそうだけど…それにしてもなんでよしみちゃんは飛び降りというとしたんだろう?』

 

タクト『本人から話しを聞くしかないだろう。ヴァニラからはPTSDの可能性もあるから慎重にことを進める必要があるんだよ。』

 

よしみ『う〜〜ん…あれ…』

 

小さな声が聞こえてきた。

少女がゆっくりと体を起こして目を開けた。

少し混乱している様子でこちらをチラチラ見ている。

 

よしみ『私は…死のうとしたんじゃ…なんで…死んでないの…』

 

どれみ『レスターさんがよしみちゃんを助けたんだよ…なんで死のうとしたの…』

 

よしみ『で……』

 

どれみ『え…よしみ…ちゃん…』

 

よしみ『なんで死なせてくれなかったのよ!私は死にたかったのに!なんで死なせてくれなかったの!私はもう…生きているのがいやなの…辛いの…苦しいの…』

 

よしみちゃんが手で点滴の注射を引き抜こうとした時にあいこがその手を強く掴んだ。

 

あいこ『な…なんでそないこというんや!!生きているのが辛いやて!そんなこといっぱいあるわ…うちだって…お母ちゃんが働いている有料老人介護施設でまだ生きたいと思っている人が死んでくのに…よくそないなことできるな!』

 

よしみ『私は大好きだったパパとママのところに行きたいだけ…私のパパとママはスーパー戦隊に殺されたのよ!』

 

はづき『えっ!そ、そんなことないわ!スーパー戦隊の人たちが戦いの最中仕方なく巻き込まれただけよ。悲しいけど…事故なのよ…』

 

よしみ『違うわ!私のパパとママは1992年のバンドーラ戦争のときにスーパー戦隊の一人ドラゴンレンジャーのロボットが壊した瓦礫の下敷きに潰されたのよ!』

 

タクト『ドラゴンレンジャー…7年前にいた恐竜戦隊ジュウレンジャーの一人か…資料で見たことがある。』

 

よしみ『あいつは言ってたわ!俺がこの星の支配者だって!笑いながら町を破壊していったわ…それなのにあいつはスーパー戦隊として戦ってみんなにもてはやされたわ…その気持ちがあなたにわかる!』

 

あいこ『そ、それは…うちにはよしみちゃんの気持ちはようわからん…でも!それが自殺することとは関係ないはずや!』

 

よしみ『あなたには絶対わからないわ!あなたはパパがいて…ママが生きている…それに比べて私は…』

 

ダンダンダン!ダンダンダン!ダンダンダン!

 

ガン!

 

物凄い爆音のノックの音がして、初老のおじさんが扉を力強く開けて部屋に入りこちらに向かってきた。

目はギロリとこちらを睨みつけてよしみちゃんの前に立った。

すると右手を高く挙げ

 

一条『この馬鹿ものがああ!』

 

右手を振り下ろして頬を叩こうとした。

しかし、俺が咄嗟に腕を掴んで引っ張ったくのを止めた。

 

一条『何をする、離さんか!貴様には関係ない!』

 

レスター『お前!いくらこの子の保護者とはいえ自殺しようとした子に殴りかかるとはどんな神経してるんだ!』

 

仕方なくおっさんは手を下ろした。

 

一条『くっ…私は一条…一条驥だ…この子の保護者で児童養護施設の施設長だ。』

 

はづき『お父さんとお母さんがいないから…施設に預けられたの…』

 

よしみ『ごめんなさい…帰ります。』

 

よしみちゃんはベッドから起き上がり出て、靴を履いた。

 

一条『ふんっ!余計な仕事を増やしやがって!すぐこい!』

 

一条はよしみちゃんの腕を引いて保健室の扉を開けて出ていった。

その時にチラリとこちらを見たよしみちゃんの左目には涙が少し出ていた。

どれみたちはよしみちゃんの後ろ姿をただ見てるしかなかった…

 

どれみ『よしみちゃんも…スーパー戦隊を恨んでいるんだ…』

 

スーパー戦隊を恨んでいるという人間はどれみの両親や知り合い、クラスの友達など沢山いる。

しかし、本来はスーパー戦隊と悪の組織との戦いによる不意の事故によるもので実際には怒りをぶつけようのない被害者たちがスーパー戦隊に苦情を言うことで悲しみを紛らわせている逆恨みにすぎない。

しかし、よしみちゃんの場合は事故ではなく明らかなる他殺である。

そのため、この場合はスーパー戦隊を恨むのは仕方がないと思われる。

 

あいこ『うちの父ちゃんと同じようにスーパー戦隊を恨んでいるんか…でも、あの子の場合特殊やなあ…』

 

タクト『スーパー戦隊と敵との戦いではなくスーパー戦隊同士の戦いで両親を失ったのか…』

 

レスター『1992年7月17日に起きた”沿岸沖恐竜型ロボット大量破壊事件”(恐竜戦隊ジュウレンジャー 21話 守護獣大あばれ)多数の死者を出した被害者の中に小山よしみの両親がいたのだろう。あの事件は…明らかな殺人破壊衝動があったためスーパー戦隊が恨まれても仕方ないが…』

 

はづき『なんでそんなことに…悲しすぎるわ…』

 

あいこ『せやけど…その両親が死んだことと自分が自殺しようとすることは別のはずや!さっきのあのおっさんが原因かもしれへんな…』

 

タクト『…亡き親に対する強い感情とあの涙…施設ぐるみでの虐待かもしれないな。』

 

どれみ『そ、そんなのないよ!だって児童養護施設っていうのは家で暮らせない子どもを預けるところじゃないの!それなのになんで虐待なんか…』

 

タクト『…ネットにある様々な匿名のデータを調べて見た結果、児童養護施設で虐待が行われることがないわけじゃないよ。肉体的・精神的・性的に虐待をしている施設だってあるんだ。

児童養護施設の施設長があんなんだよ…それに1975年から度々起きている人類の危機…6年前の泥人形戦争、5年前、1年前に起きた妖怪騒動などにより、この世界の人々の心は荒んでいるんだよ…実際にそういう資料はあるが…見ないほうがいいよ。』

 

あいこ『もういやや…なんでみんなで協力できん?本当にソレスタルビーイングがやっている戦争根絶をした世界がこんなになるんか…知りたくないし…聞きたくなかったわ……タクトはんの世界はザールによる支配…パドックはんの世界は地球が三つに分かれて魔女対魔法少女の戦いにデスガリアンからの侵略に比べたらまだええかもしんないけど…』

 

タクト『だけど、多分よしみちゃんはそんな世界でもダメだろう、これからもその生活は変わらないようだね。』

 

はづき『そ、そんなぁ…よしみちゃん…可愛そう。』

 

どれみ『そうだよ!絶対よしみちゃんが可愛そうだよ!あいちゃん、はづきちゃん!私たちの魔法でよしみちゃんが暮らす施設に行こうよ!』

 

あいこ『せや!絶対になんとかせなあかん!行こうや!』

三人は懐から魔女見習いタップをだし、

 

ポポポーポポポー

 

どれみ、あいこ、はづきは魔女見習いの姿に着替えた。

 

レスター『おい!余計なことは…』

 

喋ろうとしたレスターの口を俺は右手で押さえた。

 

タクト『どれみちゃんたちがやろうといったんだから、やらせてやるべきだよ。ただし…嫌な物を見るかもしれないから覚悟してね。』

 

どれみ『うん、行こう!』

 

どれみ、あいこ、はづきは箒にまたがって保健室を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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