GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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65話 絆の刃

 

 

コッ コッ コッ

作戦指令室は、突然の荒神の出現に、騒然としてしまう。

このまま押し切られれば、『終末捕食』は・・。

そんな時、戸惑うばかりのその場所へ、懐かしい怒号が響き渡る。

ダァンッ!

「何を狼狽えている!?まだ戦闘中だぞ!?」

《っ!?》

部屋に響き渡るその声に、フェルドマンすらも背筋を伸ばして、立ち尽くす。

そんな中、ヒバリと榊博士だけは、笑顔に顔を綻ばせる。

「ツバキさん!?」

「間に合ったんだね?」

そんな二人に小さく頷いて見せてから、雨宮ツバキは即座に周りへと指示を出す。

「戦闘の出来ない者は、後ろに下がらせろ!負傷者には手を貸すように、連絡を回せ!」

「は、はい!」

「ヒバリ!中に向かった者に、カメラを持たせてある。信号を読み取って、スクリーンに展開しろ!それと、私の端末に情報を送れ!」

「はい!すぐに!!」

最近ではレンカが立っていたデスクの前に立ち、ツバキは自分のタブレット型端末に送られてきた情報に、素早く目を通す。

そんな彼女の側に、フェルドマンが駈け寄る。

「雨宮ツバキか?どうしてここへ?」

「・・・それは、『閉じ込めていたのに』という意味を含めて、仰っているのか?」

「なに!?」

その発言に疑問を口にしてすぐ、ツバキはフェルドマンを黙らせるように、鋭い視線で彼を射抜く。

「私と奴を遠ざけていたのが、本部だというのはわかっている。言いたいことは山ほどあるが、まずはこの問題を解決してからで、構いませんか?」

「・・・・わかった。君に、任せる」

それっきり黙ったフェルドマンに一礼してから、ツバキはヒバリの持ってきたインカムを手にしてから、指令室の全員に声を掛ける。

「希望を捨てるな!あいつが向かった今、作戦は必ず成される!全ゴッドイーターに回線を繋げ!極東に、英雄の帰還だ!!」

 

 

勝利を確信した瞬間にユウが現れたことで、ラケルは何とも言えない恐怖に囚われる。

そして、そんな彼の後ろから、六人のゴッドイーター達が姿を見せる。

「お~お~。こりゃまた、でっけぇなー、おい」

「エイジスのノヴァと同じぐらいかしら?」

「うぇ~。あんま思い出したくない出来事っすね」

「結局あの時は、シオに助けられたしな・・」

「でも今回は、そうもいかないですしね」

「ふん・・・。的がデカい分、こっちの方が有利だ」

白で統一した制服を身に纏う、最強のゴッドイーターの部隊。

「独立支援部隊クレイドル、隊長の神薙ユウ。以下六名・・・。戦闘に参加させてもらうよ」

ユウを中心に集まったクレイドルが、ラケルに余裕の笑みを見せながら立ち塞がる。

『こ、この・・タイミングで・・』

ラケルが後退りを始めると、ユウは全員に指示を出す。

「じゃあ、みんな!手筈通り、よろしく!」

《了解!!》

そう言ってクレイドルが散開し、ラケルへと交戦を始めると、ユウはすぐ側で座り込んでいるヒロに、目線を合わすよう屈んでから声を掛ける。

「ヒロ。話す時間が勿体ない状況なのは、わかるよね?ただ、聞かせて欲しい。他のみんなも、まだ・・・やれる?」

そんな彼の言葉に応えるように、ブラッド全員が応えるように、立ち上がって見せる。

《はい!やれます!》

「そう。良かった・・・。じゃあ、無理させるけど・・・、倒すよ」

そう口にしてすぐに、ユウは手早く指示を出す。

「ギルとシエルは右方へ、ナナと・・えっとリヴィは左方へ。気を引いてくれるだけでいいから、時間が欲しい。危ない時には、クレイドルに任せてくれていいよ。君達は疲弊してるしね。とにかく、死なない事!いいね!?」

《了解!!》

四人が走り去った後に、ヒロと二人になってから、ユウは優しく微笑みながらヒロの頭を撫でて喋りかける。

「ヒロ。1番無理させるけど、構わない?」

「・・はい!でも・・・、僕は左腕が・・」

「右腕1本で、たった1撃。それだけで良いよ」

「え?」

ユウの言葉に驚くヒロの後ろに回り、彼の背中を軽く叩いて笑って見せる。

「大丈夫。・・・みんなが、繋いでくれるから」

「みんなって・・・」

『極東全員という意味だ、神威ヒロ』

無線に知らない女性の声が入り、ヒロが困惑していると、ユウは自分のインカムからその女性へと声を掛ける。

「ツバキさん、準備の方は?」

『丁度今、済んだところだ。いつでもいけるぞ、ユウ』

「了解です。じゃあ、始めます。・・感応制御システム、起動」

そう言ってから、ユウは神機を前に構えてから、胸の辺りに手を当ててから深呼吸をし、口を開く。

「感応現象、『発』」

パリッ パリリッ ドゥォーーーンッ!!

 

作戦指令室でヒバリからインカムを借りたツバキは、無線を極東のゴッドイーター全員に声を張る。

「作戦指令室、雨宮ツバキだ。貴様等、準備はいいな?諦めることも、死ぬことも許さん!これは命令だ!いいな!?」

『《了解!!》』

そう言ってから、インカムを口元から降ろして、榊博士、フェルドマンと視線を移動させてから、ユノとサツキに目を止める。それから優しく微笑んで、自分の側へと目配せする。

「あ、の~・・・。やっぱり、怒られちゃいます?」

「そんなにビクビクするな、サツキ。こんな時に、お前に説教をしてどうする?」

「あ・・あはは~」

サツキが顔を引きつらせている隣で、ユノが何故と言ったように目を向けているのを感じて、ツバキは目の前のスクリーンを指差す。

「もうすぐ、ユウに持たせたカメラが起動する。映像が入ったら、自分の目で確認するがいい」

「自分の・・・目で、ですか?」

そう話している間に、スクリーンに映像が入り、最上層の様子が映し出される。

「・・・兄さん。良かった・・・、来てくれた。・・・・・え?」

「・・・なにこれ・・。ユウ・・・の、これって」

二人が驚いてると、遅れて入ってきたリッカが頭を掻きながら、溜息を洩らす。

「はぁ・・・。本当に、最悪!・・・でも、二人には最高でしょ?」

 

ユウの神機から電流のようにオーラが溢れ出すと、それはユウの身体に伝わり、そして背中に集まって形を成していく。

「・・・ユウさん・・。これって・・・」

「これが、僕の・・・切り札かな?」

目の前で見せられているヒロは、驚きに何度も瞬きを繰り返し、自分が見ているのが夢ではないことを確認する。

そして、ユウから発せられたオーラが、一度弾けたように光を放つと・・。

パッァン!

「ふぅ。・・・安定したみたいだね」

『ははっ。みたいだな』

「・・・へ?」

ユウの肩の上に、一人の女性が浮いていたのだ。

しかも、聞き違いでなければ・・・喋っている。

「え?はれ?・・・えっと・・、誰?」

切迫した戦闘の最中、ヒロが困惑していると、オーラで透き通った女性の方が、手を振って挨拶してくる。

『おっす、ヒロ!あたしは、神楽ミコ!ユウの心臓やってる、元嫁だ!よろしくな!』

「・・・えぇ!?」

軽いノリで挨拶をされて、ヒロは更に困惑してしまう。

そんな彼を笑い飛ばしてから、ミコはユウの視線の先を追って、ラケルへと目を向ける。

『またけったいなのを相手にしてんな、ユウ。倒せんのかよ?』

「僕一人じゃ、キツいだろうね。でも、今日はヒロがいるから、何とかなるよ」

『そうかい。じゃあ、あたしも気張ろうかね!』

「うん。お願いするよ」

そう言ってから、呆けているヒロの肩に手を置いて、ユウは話し掛ける。

「色々疑問が尽きないだろうけど、今は目の前に集中してね、ヒロ」

「あ・・・は、はい!」

「リッカ?いるよね?リンクデバイスを、全てのゴッドイーターから、ヒロに・・」

『了解!後で、話があるから・・・ちゃんと帰って来てね?』

「わかってるよ」

ユウが微笑みながら優しく声を返すと、リッカは溜息交じりに、「起動!」と照れくさそうに返してくる。

その間に、ヒロが気を取り直して神機を構えると、ユウは1度目を閉じてから、ゆっくりと開け、神機を地面に突き刺し、それに手を添える。

『じゃあ、いこうか!ユウ!』

「いくよ、ミコ」

『「感応現象、『響』」』

キイィィィィィィィンッ!!!!

二人が声を揃えて発すると、ユウの神機は目に見えて震えだし、そこからヒロの神機へとオーラが繋がる。

すると、

パキンッ パキパキンッ

「これって!?」

「僕の感応現象をミコの力で拡散して、リッカの作ったリンクデバイスに繋いで・・って説明は、今は良いか」

『あんたの話は、一々長いからね』

そんな彼等から目線を落としたヒロは、自分の神機を見て驚く。

神機の感応制御システムが作動し、ものすごい勢いでコアの周りの結晶が増えていく。それによって、ヒロの神機そのものが埋まっていくほどに・・・。

「ヒロ、感じる?そして、聞こえる?みんなの想いが、君に集まっていることを・・」

「え?・・・」

言われてから集中すると、神機からヒロへと、戦っている全てのゴッドイーターの気持ちが伝わって来る。

 

『はぁ!!この騎士道精神を、ヒロ君へ!!』

『先輩の為に、私だって!!』

『くっそー!これでいいのかよ!ユウ!ヒロ!』

『神薙にも神威にも、割のいい仕事付き合ってもらうぜ』

『ヒロ!負けるなよ!自分を信じろ!』

『ヒロ君、頑張ってね。応援してるわ』

『ヒロ!全部ぶつけて、ジュリウスを引っ張ってこい!』

『俺達の神秘の探求は、終わらないぜ?ヒロ。ぶちかましてこい!』

『ヒロさん!ギルさんを・・・、極東をお願いします!』

『お前に全部任せたからな!やれー!ヒロ!』

『私達がついているわ!やっちゃいなさい!ヒロ君!』

『お前ならやれるさ!ヒロ!運命を覆してこい!』

『ヒロさん!あなたの1撃に、全てを繋ぎます!』

『お前さんの強さは、俺達が1番知ってる。決めて来い、ヒロ!』

『お前なら・・・・大丈夫だ。見せてやれ・・、人の強さってやつをな』

 

沢山の思いに堪えきれなくなり、ヒロは涙を零しだす。

そこへ、ブラッドの皆の気持ちも入り込んでくる。

 

『お前のお陰で、俺の中のやりきれない気持ちにケリを付けれたんだ。今度は、俺がお前を助けるぜ!ヒロ!』

『あたしね、ヒロと同期って言うのが自慢なんだ!だから、もっと一緒にいよう!その為に、負けないでよ!ジュリウスも一緒に、帰ろう!』

『お前が教えてくれたロミオの気持ちが、今の私の支えになっている。そして、あいつが残したブラッドもな。ありがとう、ヒロ。負けるな!』

『あなたに出会えたことが、私の宝物です。あなたとずっと、歩んでいきたいんです。だから、生きて!そして勝って、ジュリウスを取り戻しましょう!ヒロ!!』

 

涙で前が見れなくなったヒロの涙を、ユウは後ろから拭い、笑顔で話し掛ける。

「これが、君が極東で手に入れたモノだよ。君の大切なモノ・・・絆だよ」

「僕の・・・大切な・・、絆」

「僕にとっても、大切なモノだよ。だから・・・、守ろうか。集中して!道は、僕が切り拓く!」

そう言ってから、ユウは飛び上がって、ラケルの両腕を斬り付ける。

ザァンッ!ザシュウッ!!

『ギィィヤァァーーーーー!!!!』

両腕を吹き飛ばされて、前のめりに倒れたラケルに、何本かの触手を切り捨て、その上に立っていたソーマが喋りかける。

「ロミオの葬儀の日に、言ったよな?『いずれうちの最強が、挨拶に行く』と。・・・気の利いた言い訳は、準備出来たのかよ?」

『ひ、ひぃ!!』

言われてから思い出すと、目の前に立つユウがとても恐ろしくなり、ラケルは両足で必死に後ろへと下がろうとする。

「今恐れるのは、僕じゃないでしょ?・・・覚悟しろ、ラケル・クラウディウス。あなたの野望を断ち切る、最強の刃だ」

『な・・・なに!!?』

背中を向けたユウの向こうに見えたヒロが、金色のオーラを背中と右腕から放ち、その刃は、黄金に眩い光を発する。

「ブラッドレイジ、発動!!!おおぉぉぉぉっ!!!!」

『馬鹿な・・・・、そんな!!?人間に!!?神の、私が!!』

彼女が嘆いていると、ヒロは右腕を振り上げた状態で、ラケルの頭へと目掛けて飛び込む。

そして・・・・。

「はあぁぁぁーーーーーーーーっ!!!!」

『そんな・・・・!!?』

 

ザァンッ!!!!!

『ぎゃぁあぁーーーーーーーーっ!!!!』

 

ヒロの渾身の一撃が頭を斬り裂き、ラケルはその勢いで、胸の中のジュリウスを零れ落とす。

それを受け止めようとヒロが飛び込むと、受け止めた瞬間オーラが弾ける。

パッアァンッ

「あ、れ・・・、やっちゃった・・」

そのままジュリウスと一緒に地面にぶつかると覚悟を決めていると、

ガシッ

その手前で、シエルとナナ、ギルとリヴィに受け止められる。

「無理すんなよ、隊長さんよ!」

「そうそう!助け合いでしょう?」

「まったく、世話がかかるな。お前は」

「ヒロ・・・本当に、良かった」

そんな四人に身を任せながら、ヒロはジュリウスの顔を見てから、意識を失ってしまう。

そんな彼等に微笑んでから、ユウはラケルへと振り返り、ミコと同時に口を開く。

『「僕達(あたし達)の、勝ちだ」』

ラケルは恨めしそうな目を向けてから、そのまま顔を地面へと埋めた。

 

 

映像を見ていた指令室の者達は、目の前の事が信じられないのか、黙ったまま硬直している。

そんな沈黙を破るように、ツバキがインカムを手に小さく息を吐いてから、無線の繋がった全ゴッドイーターへと伝える。

「荒神化したラケル・クラウディウスは、沈黙。ジュリウス・ヴィスコンティの救助にも成功した」

『《おおぉぉぉっ!!!》』

その声にやっと反応してか、指令室の者達も歓喜の声を洩らす。

そんな中、ユノとサツキは、ジュリウスが助かった事とは別の事でも、涙を流していた。

「ミコ姉さん・・・。嘘みたい・・。サツキ」

「何よ・・・、何なのよ!あの馬鹿ミコは!!・・・本当に、馬鹿」

二人の流す涙に微笑んでから、リッカはスクリーンに映る愛しい人に、小さく声を掛ける。

「・・・・お疲れ様。ユウ君・・」

誰もが歓喜する中、ツバキは一人真剣な面持ちで、再び無線へと話し掛ける。

「タツミ。現在荒神の状況はどうだ?」

『うっす!ちょっと前に、急に消えたんで・・・。多分ラケルが倒れたのと同時に、いなくなったんじゃないっすか?』

「そうか。ならば!全ゴッドイーターに告ぐ!今すぐ螺旋の樹から撤退しろ!怪我人には手を貸せ!時間はそうないぞ!いいな!?」

『《了解!!》』

彼女の声に、今度は静まり返ってしまう指令室。そこで、榊博士も神妙な顔で前に歩み出て、口を開く。

「まだ・・・、終わっていないよ。『終末捕食』を、どうするかだ」

彼の言葉に、皆動揺が走る。

問題は、まだ解決してはいなかったのだ。

 

 

 

 





こんな感じで、戦闘は決着です!!

この話を書くために気張ってきたので、3回ぐらい書き直しましたが、果たしてこれで良かったか疑問なところも・・・w

ユウのネタが若干ONLINEとかぶってるくさいことがわかった瞬間、やめようかなとも思いましたが・・・・、まぁ2次作品ですしw

ここから更に本気出して書きます!
あっ・・これ、駄目な奴の発言ですね・・。
でも、本気出します!


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