GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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50話 同じ夢

 

 

「ふんっ!!」

ブゥオンッ!!

ソーマの振り抜いた神機を跳んで躱してから、キュウビは口を大きく開いて炎を吐き出そうとする。

「甘いです!!」

ドドドドッ!!

キャウッ!

しかしアリサの放ったバレッドによって、その場に倒れ落ちる。そこへ、ヒロとリンドウが捕食形態を喰いつかせ、皮を剝ぎ取るように振り抜く。

バリィッ!!

「捕食成功です!」

「どうだ~?痛てぇだろ?」

そこへアリサとソーマが追い打ちにと、神機を大きく振り下ろす。

流石にそれは食らうまいと、キュウビは身体を捻って後ろへと転がり、ゴッドイーター四人を睨みつけてくる。

「・・ようやく、本気になったか」

「そのようですね」

斬り付けた二人が構えなおして、相手の出方を伺うと、キュウビは身体を小刻みに震わせ、赤い炎をいくつも浮かび上がらせる。

「ちっ・・・。全員、散れ!」

ソーマが舌打ちをして叫ぶと、キュウビはその炎を拡散させ、レーザーのように発射する。

パッァン!! バババババババッ!!!

「こいつは・・・、厄介だなっと」

「ヒロさん!無理しないで、盾の展開を!」

「くっ!はい!!」

三人が上手く躱したのを見届けてから、ソーマはキュウビの側にあった壁を走って跳び、尻尾の付け根に神機を叩き込む。

「足掻くな。・・すぐ楽にしてやる!」

ドゴォッ!!

キィギャァーー!!!

後ろ脚を地面に減り込ませ、キュウビが叫ぶと、リンドウはヒロに声を掛けながら走り出す。

「ヒロ!1撃に備えろ!道は、拓いてやる!!」

「あ・・、はい!」

言われた通りにヒロは、神機の刃に力を籠める。同時に、血の力『喚起』を発動し、高まるオーラを更に膨らませる。

それに応えるように、アリサは銃型を上に構え、キュウビの足の隙間をすり抜けながら、バレッドを乱射する。

「地に伏せなさい!キュウビ!」

ドドドドドドドッ!!!

上半身を浮かせて尚、倒れぬといったように踏ん張るキュウビ。

その頭を押さえるために、リンドウが真上から攻撃を仕掛ける。

「頭を下げろ!」

そう言って振り下ろした神機を弾こうと、キュウビは口から炎を吐き、抵抗する。

コォォーーッ!!

バキンッ!

「ちぃっ!・・・こんの・・!」

リンドウの神機が弾け飛んだのを目にし、ヒロは動揺の色を見せるが、すぐに別の事に驚いてしまう。

リンドウの右手のプロテクターの下に見た、黒く禍々しい腕に・・。

しかしリンドウは怯むことなくそのまま突っ込み、その右手で直接キュウビの頭を掴んで、地面へと叩きつける。

「躾の行き届いてない、犬っころが・・。お座りだ!!」

ガアァンッ!!

ギャウッ!!

キュウビが完全に地面についた状態を作ってから、リンドウはヒロへと叫ぶ。

「今だ!!ヒロ、やれ!!」

「っ!?おおぉぉぉーーーっ!!!」

溜めた力を一気に解放し、ヒロは刃を横薙ぎに振り抜く。

「ブラッドアーツ、『疾風の太刀・鉄』!!」

ザシュザシュザシュザシュザシュッ!!!

無数の斬撃を放って、ヒロが駆け抜けると、ソーマがフッと笑みを見せてから、後ろに大きく構えた神機を振り下ろす。

「・・・上出来だ」

ドォォーーーンッ!!!

その1撃に、身体を大きく揺らして、キュウビはその場で動かなくなる。

そんなキュウビの頭から覗いていたコアを、リンドウが右手でもぎ取ってから軽く2,3度投げて確認し、沈黙した敵にウィンクする。

「まっ・・、相手が悪かったな」

激闘の終了に気が抜けてか、ヒロはその場に尻もちをつき、息を乱さず会話をする三人を見て、改めて尊敬の念を抱いたのだった。

 

 

オラクル細胞が霧散する前にと、ソーマとアリサは手慣れた様子で、キュウビの身体から素材を回収していく。

本来は、荒神が霧散した後に回収できるモノだけという感じなのだが、特別必要な場合、フェンリル研究者を中心とした回収班が、任務に同行してそういった作業を行う。

二人はそんな素養もあるのだと、ヒロは感心しながら眺めていた。

「・・・よう、ヒロ。後は任せて、ちょっとこっちに来ないか?」

「え?・・あ、はい」

車の上に転がっていたリンドウに呼ばれて、ヒロはその隣へと移動する。

雨よけ用に展開したコンテナの上で、リンドウは軽く右手を上げながら、煙草の煙を吐き出す。

彼の隣へと座ったヒロは、その右手をまじまじと見つめてしまう。

「ん?これか?・・・やっぱ、気になるか」

「あ、いえ、それは・・!?」

「いや~、いいんだって」

リンドウは右手を握ったり開いたりして見せてから、それに視線を落とす。

「こいつはな・・・、俺が生きているっていう、証みたいなもんだ」

「生きている・・証・・」

「あぁ。俺はな、ある任務でドジっちまって・・・荒神になっちまったことがある」

「なっ!?荒神に!!?」

驚くヒロに笑い掛けながら、リンドウは話の続きを口にする。

「もう諦めちまうかって、思った・・。それを、仲間が助けてくれたんだ。どちらかというと・・・、怒られちまったんだがな。『生きることから、逃げるな!』ってな・・」

「・・・もしかして・・・、それ・・」

フライアとの全面戦争前に、ソーマが言った言葉を思い出したヒロの表情を見てから、リンドウは小さく頷いて見せる。

「あいつとみんなが、命懸けで俺に伝えてくれた言葉を忘れない為にも、俺はこれで良かったんだと思ってる。だから今は・・・俺の、誇りにもなってる」

「・・・そうですか」

リンドウの笑顔につられてか、ヒロも笑顔を彼に返す。

そんな彼に思うところがあってか、リンドウは少し神妙な顔をしてから、何かを喋ろうとする。何度か躊躇ってから後に、頭を掻いて、思い切ったように口を開く。

「・・・なぁ、ヒロ。お前等ブラッドも・・・・、クレイドルに入らないか?」

「・・・え?」

突然の申し出に戸惑うヒロ。そんな彼に、リンドウは更に続ける。

「俺達は、人が安心して暮らせる世界を作るのを夢に、活動してる。荒神なんかに怯えず、安心して眠れる世界・・・『ゆりかご』みたいな世界をな。その夢には・・まだまだ遠いが、いつか必ず実現できればと願ってる。・・・その夢を、お前さん達とも、一緒に見てぇな・・・ってな」

「リンドウさん達の・・・夢を・・」

驚きながらも、ヒロは彼の言う夢を想像してみる。誰もが笑って暮らせるその場所で、子供達が穏やかな表情で眠っている。

目を閉じて微笑むヒロに、リンドウは軽く肩を叩いて笑いかけていると、作業を終えたソーマとアリサが、笑いながら口を挟んでくる。

「な~んか、出来の悪い宗教の勧誘みたいですね」

「まったくだ・・。聞いてるこっちが、恥ずかしい」

「なっ!?お前らなぁ!!」

リンドウが声を上げると、二人はさっさと車の荷台へと姿を隠す。そんなクレイドルの暖かさに、ヒロは小さく息を洩らしてから、リンドウへと話し掛ける。

「極東に戻ったら・・・、みんなに相談してみます。けど・・」

「ん?けど・・、何だ?」

不思議そうに聞き返すリンドウに、ヒロは遠くを見つめながら立ち上がり、答える。

「僕は・・・、『ブラッド』であり続けたいと・・・。そうも、願うんです」

そんな彼の笑顔に、リンドウは頭を掻いてから立ち上がり、同じ方向を見つめながら、声を洩らす。

「・・・そうだな。そいつは、間違いねぇな」

ヒロの素直な気持ちに、リンドウは若かりし日の自分に重なる部分を見て苦笑し、煙草を消してから、大きく背伸びをする。

「よっし!んじゃあ、帰るとするか!帰るまでが、遠足だからな!」

「はい!」

「何言ってるんですか」

「ふん・・・、馬鹿が」

そうして、四人は極東に向かって、舵を切った。

 

 

長い道のりを経て、ようやく極東へと戻った一行は、車を神機保管庫へと直接入れて、荷解きを始める。

そこへ、レンカが榊博士と共に、やって来る。

「やぁ。お疲れ様」

「無事に戻って、何よりだ。特に・・・ヒロはな」

そんな二人に1礼するヒロ。しかし、レンカの台詞が気に食わないのか、アリサは目を細めて彼へと詰め寄る。

「何で、”ヒロさん”なんですか?レンカは恋人の心配が出来ない程、鈍感になっちゃったんですか?」

「い、いや・・。そういう意味じゃ・・」

アリサの不満気な表情に、レンカが戸惑っていると、自分の神機を保管庫に戻したソーマが、溜息を吐きながら口を開く。

「帰って早々、痴話喧嘩か・・。極東も、平和で何よりだな・・」

その言葉に、レンカとアリサは急に恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして俯く。それから、アリサがレンカを上目遣いに見てから、小さく「馬鹿」と呟く。

そんな様子を笑いながら見ているリンドウ。が、彼の頬に膝が食い込み、車の荷台へと吹き飛ばす。

ガァーンッ!!

「あがっ・・・・痛ぅ・・、さ、サクヤ!?」

「ふん!」

子供を抱いたまま跳び膝蹴りを華麗に決めたサクヤが、倒れたリンドウを見降ろして溜息を洩らす。

「・・出張から帰ってきて早々、連絡もなしに飛び出して10日・・。何か、言うことは?」

「・・・・いや~、奥様?これも~、仕事ですよ?」

「ふんっ!」

パァンッ!

言い訳をするリンドウに、今度は平手打ちを食らわせてから、屈んで彼を見つめるサクヤ。そんな彼女に同調してか、二人の娘、レンもリンドウの頬を引っ張る。

「お・・・おいおい・・・。悪かったって・・。降参だよ、レンも」

「あぶっ・・ぶぅ!」

「ほ~ら。悪いパパちゃんよね~?」

ちょっとアグレッシブな家族団欒に、ヒロが声を殺して笑っていると、榊博士がニコニコしながら話しかける。

「なに。安心したまへ、ヒロ君。君もちゃんと、愛されているよ」

「はい?」

疑問に首を傾げる彼の耳に、神機保管庫の扉の向こうから、久しぶりの声が届く。

『ねぇねぇ、シエルちゃん。本当にその顔で、ヒロに会うの?』

『変ですか?完璧なリサーチの基に、ヒロの好みを追及したのですが・・』

『あいつにサプライズって意味じゃあ、いいのかもな』

その声に顔を綻ばすヒロに、ソーマはフッと微笑んでから、彼の背中を軽く押してやる。

「行ってこい。・・・仲間を、安心させてやれ」

「あ・・、はい!」

そう言ってヒロは、荷解きをソーマ達に任せて、保管庫の出入り口へと駆け出した。

 

「えっとー・・・、シエル?どうしたの?ハロウィンってやつ?」

「なぁっ!!?」

「そんなに落ち込むことか?結果は目に見えてたろう・・」

「あぁ~、シエルちゃんがまた固まっちゃったよ~」

 

 

研究室に戻ったソーマは、一息つこうと、コーヒーメーカーのスイッチを入れて、出来上がったコーヒーをカップに注ぐ。

そこへ、携帯端末の呼び出し音が響く。

溜息交じりに画面へと目を向けてから、ソーマはフッと笑ってから、着信ボタンを押す。

「・・・俺だ」

『ははっ。そりゃ、そうでしょ。どうだった?キュウビの相手は?』

「問題ない。・・・お前がいれば、もっと楽だったがな、ユウ」

そう彼が口にすると、電話の向こうで、神薙ユウは笑いながら答える。

『僕がいても、大して変わらないでしょ?リンドウさんもアリサも一緒だし・・・、ヒロも連れて行ったんでしょ?』

「あぁ。情報が早いな・・。空木か?」

『少しヒロの心配をしてね。まぁ、大丈夫って伝えておいたけどね』

「ふん・・・、言ってろ」

話しながらソファーに腰を落ち着けてから、ソーマはコーヒーを一口すすり、再び話し始める。

「こっちの研究も大幅に動く。・・・お前の方も、とっとと終わらせてこい」

『そうだね。こっちにはフェデリコもいるし、もう少しで帰れると思うよ』

「そうか・・・」

親友との話に心を休めながら、ソーマはこれからの研究に、思いを巡らせた。

 

 

「先輩!どうですか!?」

「・・・・どうって言われても・・・、ハロウィン?」

「はうっ!!?」

「・・ふっ。へこたれるな、エリナ。ヒロの心は、すぐそこだ!」

「・・・ハルさんのせいだったんですか・・」

「ヒロ君!!あぁ、ヒロ君!!君の帰りを、どれほど待ちわびたことか!!さぁ!行こう!騎士道精神の、明日に向かって!!!」

「・・・・黙っててもらえます?」

 

 

 





キュウビとの対決、終了です!

ヒロも確実に成長している・・・・はず!w


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