GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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レイジバースト編
48話 西へ東へ・・・


 

 

静けさに支配された、雪山の開けた場所。

そこで、一人の男が、右腕を押さえて苦しみの声を上げる。

「ぐぅ・・・・・・が、がぁ」

ゴッドイーターの象徴である腕輪の隙間から、黒ずんだモノが脈を打つ。

偏食因子の浸食。それが、彼を苦しめているようだ・・。

そこへ、赤いフードを深くかぶった少女が、大きな鎌の形をした神機を手に現れる。

「・・・・・対象を発見した。これより、任務へと移行する」

『了解しました』

無線を切ってから、更に近寄り、少女は鎌を振りかぶって、男へと話し掛ける。

「・・・言い残すことは、あるか?」

「くぅ・・・『処刑人』、か?・・・なら、1つだけ・・。娘に・・・・がぁ、『すまない』・・くっ・・・と」

「・・・・わかった」

返事をしてから、少女は一気に鎌を振り下ろす。

ザシュッ!  トサッ

腕輪事右腕を斬り落とした後、少女はもう1撃と、神機を構える。しかし・・・。

「ぐ・・・・があぁぁぁぁっ!!!!」

「・・・・ちっ」

急に叫びだした男の身体が、徐々に黒く変貌しだす。

それに舌打ちしながら、少女はあらかじめ確認していた、彼の神機の所まで飛びのき、自分の神機を捨てて、それを手に取る。

バキッ バキバキッ

「くぅっ・・・・ぐぅうぅっ!!」

拒絶による浸食が、彼女の腕に絡みつき、荒神化を始めようとする。だが、それは徐々に治まっていき、彼女が呼吸を落ち着ける頃には、神機は彼女の手に馴染む。

「・・・・ふっ!!はぁぁっ!!!」

ドスッ! パキィンッ

完全に荒神化する途中の男の胸に、彼自身の神機を突き立てて、少女は的確にコアを破壊する。

その瞬間、オラクル細胞は霧散化を始め、彼の残った体は、雪の中へと倒れ込む。

「・・・・・ふぅ・・・」

彼が動かなくなったのを確認してから、少女は彼の神機を手放す。そして、投げ捨てていた自分の神機を拾い上げてから、無線を繋ぐ。

「・・・対象を排除した。・・・任務完了」

『ご苦労様でした。今、迎えを送ります』

「・・・了解」

無線を切ってからしばらくして、少女は斬り飛ばした右手の側へと歩み寄り、腕輪をゆっくりと持ち上げる。そして・・・、

キイィィィィンッ!

『パパ、頑張ってね!早く帰って来てよ!?』

「うっ・・・・!!」

感応現象が彼女に、持ち主の思い出を伝える。

それはほんの些細な日常。しかし、持ち主の男にとって、賭けがいのないもの・・。

それを思いながら、少女は優しく腕輪を胸に抱く。小さく描かれた、彼であろう絵を見つめながら・・・。

しばらく静かにその場で腕輪を抱いていると、ヘリが頭上へとやって来る。

『お待たせしました、リヴィさん。乗り込み次第、フェルドマン局長の所へ・・』

「わかった・・」

ヘリが降り立つのを眺めながら、リヴィ・コレットは小さく声を洩らす。

「・・・・極東支部に・・か・・」

 

 

ラケル・クラウディウスが起こした『終末捕食』は、『特異点』ジュリウスによって、2つの『終末捕食』の受け皿となる螺旋の樹の形成によって収束した。

「彼が戦い続ける事で、『終末捕食』を食い止めている」という極東支部長の主張により、フェンリル本部は、螺旋の樹を『平和の象徴』として、人類に危険は去ったと発表した。

多くの者達の奮闘によって、世界は救われたと・・・そう思われていた。

しかし・・・・、事件はまだ、終わっていなかった。

誰も予想し得なかった事が待つ未来へ・・。

GOD EATER達の物語は再び加速しだす。

 

 

 

朝早く起きたシエルは、身形を鏡の前で何度も確認してから、自分の部屋から出る。

昨日正式に移動が終わり、今日から極東支部所属となったブラッド隊。

それを良き日にしようと思い立ったシエルは、早めに起きて、ヒロを起こそうと考えたのである。

ヒロの部屋の前についてから、自分のリボンや髪形を何度か直して、軽く咳払いをするシエル。それから大きく深呼吸をしてから、控えめにノックをして声を掛ける。

コンコンッ

「・・・ヒロ、お迎えに上が・・・、迎えに来ました。その・・、起きてますか?」

声を掛けてから数秒・・。返事がないのを確認してから、シエルは小さく息を洩らして、ヒロの部屋へとそっと入る。

素早く扉を閉めると、ヒロのベッドに、なるべく見ないように近付いてから、腰を下ろす。

「あの・・・、ヒロ?朝です・・。起きてくれると、ありがたいんですけど・・」

そう言いながら優しく彼を揺すると、その手が布団に吸い込まれるように埋まっていく。

「・・・・・え?」

人体にはありえない弾力に、シエルはおそるおそる布団をはぐってみる。すると、そこには・・・。

「・・・・・・・・・・・人形・・」

毛布を丸めて紙に書いた顔が張られた、ダミーだった。

 

「・・・・・きゃあぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!」

 

シエルの叫びに驚いて、同じブラッドの区画に部屋を持つギルとナナは、飛び起きて表へと顔を出す。

「なんだ!?どうした!?シエル!!荒神か!?」

「・・・・どうしたの~・・くあっ。また、カルビに咬まれた~?」

寝惚けながら目を擦るナナと、何事かと周りを警戒するギルに、シエルは涙目になって、ダミー・ヒロ人形(毛布)を引きずってきて、声を上げる。

「ヒロが・・・・、攫われましたー!!」

「「・・・・・・・はい?」」

朝5:30の悲劇に、シエルが極東中を駆け回る、ちょっとした事件となった。

 

 

ガタガタと荷を揺らしながら、車は坂を上り続ける。

そんな事は何のそのといった感じで、運転するリンドウは、口笛を吹きながら楽し気に走らせる。

「いや~、朝早いのも中々いいもんだろー?少し冷たい空気が、身を引き締めるこの感じ・・。旅の楽しみの1つだよな~」

そう言って、助手席に座るアリサに目を向けると、彼女は上り始めた太陽を見つめながら答える。

「そうですね。少しゆったりとした時間を楽しめるのは、とても良いです。最近働きづめでしたし・・・」

彼女がそのまま荷台へと顔を向けると、黙って座っていたソーマが、「ふん」と鼻を鳴らしてから首を鳴らす。

「どうでもいいが、安全運転で頼むぞ。替えのきかない機材もあるんでな」

「任せとけって、ソーマ博士。何年運転してると思ってんだよ?」

「ふん・・・、どうだかな」

そんな会話を楽しむように、リンドウは再び口笛を吹きだす。

そこで、いい加減諦めたという様に溜息を吐いてから、荷台に転がったヒロが声を掛ける。

「・・・あの、もう良いですから・・。逃げませんから・・。縄、解いてもらえませんか?」

そう言った彼は、布団に簀巻きにされて、その上にソーマの足で押さえつけられていた。

・・・要するに、拉致られたのである。

「おっ?もう良いのか?いやいや~。随分とその格好のままでいたから、お前さん、癖にでもなったのかと思って、気ぃ遣ったんだがな~」

「そんな訳ないです!?大体、突然襲い掛かられて、簀巻きにされて連れ出されたら、誰だって抵抗するでしょ!?後!ソーマさん、そろそろ本当に痛いです!足どけて下さい!」

「・・・悪かったな」

ソーマが足を下ろしてから、手早く縄を解いてやると、ヒロは布団から抜け出し、身体を伸ばしたり曲げたりしてから、剥れた表情で荷台の席に着く。

「まぁまぁ、そう怒るなよ~。今日から同じ極東支部の正式な仲間になったんだから、楽しいピクニックに誘いたかった訳だよ?俺は・・」

「ピクニック・・・」

その言葉に反応してか、ヒロはその場に立ちあがって、大きな声で叫んだ。

「これの・・・、どこがピクニックなんですかーーーーっ!!!!」

「おぉ~、ビックリした~」

「元気ですねー、ヒロさん」

「うるせぇぞ。・・座ってろ」

ヒロの叫んだ声は、木霊して遠くへと響き渡る。

だが、それが極東支部に届くことはないだろう。何しろここは・・・・極東支部から、すでに300km近く離れた、山岳地帯なのだから・・。

 

 

作戦指令室で溜息を吐いたレンカは、落ち着かないシエルを捕まえてきたギルとナナに顔を向けて、喋りかける。

「今、リンドウからメールが届いた。『ちょっと、行ってくる!(ブラッドの隊長さんを、借りるな)』だそうだ」

「は、はぁ・・・」

「な~んだ。ヒロは、リンドウさんと一緒に行っちゃったんだ~」

「・・・・・・・」

ギルが今一理解していないのを納得させるため、レンカは彼等の目的を伝える。

「リンドウ・・・と、アリサとソーマも一緒だが・・。あいつ等はクレイドルの仕事で、旧中国地方へと向かった。・・・・はぁ・・。ヒロを連れてな・・」

「・・そいつは、ヒロも納得済みなんっすか?」

「いや、強制だ。まぁ、あいつの性格上、諦めてると思うが・・」

「あぁ~、わかるかも~・・」

ヒロが溜息交じりに、『わかりました』と言う顔を想像し、ナナとギルは苦笑してしまう。

そこで、ずっと黙って聞いていたシエルが、恨めしそうにレンカに視線を向けてから、口を開く。

「・・・・・いつですか?」

「なに?」

「・・・いつ、帰って来るんですか?ヒロは・・」

聞かれてから少し考えて、レンカは苦笑いを浮かべて答える。

「おそらく・・・・、早くて1週間といったところか?」

「1っ!!週間・・・・・・・・」

その言葉を最後に、シエルはその場で気絶してしまう。

シエルを掴んでいたギルは、その様子に溜息を洩らし、ナナはシエルの頬を指でつついて遊ぶ。

「とにかく・・・。朝早くから、すいませんでした。俺等は・・・まぁ、これで」

「失っ礼しま~す!!」

「あぁ。今日も頼んだぞ」

ギル達が去って行った後、レンカは自分のデスクに頭を落とし、盛大に大きな溜息を吐いた。

 

 

少し緩やかな道に落ち着いた頃に、ヒロは三人に向けて、質問をする。

「それで・・・そろそろ、目的を教えてもらえませんか?」

「ん?・・・・おぉ!?忘れてたなー!?」

リンドウがわざとらしく大きな声で言うと、アリサとソーマは同時に溜息を吐く。それから、ソーマが閉じていた目を開けて、説明しだす。

「俺達は今、旧中国地方に向かっている。極東が『日本』と呼ばれていた頃のな。そこで、俺達クレイドルが追ってきた、『原初の荒神』の素材を手に入れるのが、今回の旅の目的だ」

「・・・『原初の荒神』?」

聞きなれない言葉に、ヒロは首を傾げる。それに答えるために、ソーマは話を続ける。

「従来の荒神は、オラクル細胞同士が交じり合って成長を遂げた細胞を中心に、形を成している。交じり合うことによって学習する・・・。それが、普段相手にしている荒神だ。だが、『原初』は違う。特殊な地域で、交じりっ気なしに成長し、学習能力に特化した細胞、『レトロオラクル細胞』で形を成した荒神だ。全ての始まり・・・原点という意味で、『原初』って訳だ」

「・・は、はぁ・・。それが、その・・・、旧中国地方にいるって・・ことですか?」

「そうなるな・・」

ソーマが頷いたのに合わせて、今度はアリサが口を開く。

「今後、荒神に対して私達が『有効』となるモノを作り出すのに、その『レトロオラクル細胞』が必要になってきます。携帯式簡易シェルターや、自動形成を行う装甲壁などですね・・・。それの研究を進めるためには、『原初の荒神』の素材が、必要不可欠という判断を・・・ソーマ博士がしましたので」

「・・・博士はよせ」

ソーマに睨まれてから、アリサが笑いながら顔を引っ込めると、リンドウが煙草を咥えながら話し出す。

「まぁ、細かいことを気にするよりは、いつも通り荒神を倒すって考えてくれていい。・・・俺達三人で手が余りそうだったんでな。期待の新人を巻き込ませてもらったわけだ。どうだ?楽しいピクニックだろ?」

「もう・・・ピクニックが何なのか、わからなくなってきました」

ヒロが頭を捻っている様子を、バックミラーで確認しながら、リンドウは煙草に火をつけて笑い出す。

「はははっ。まぁ、気楽にいこうぜってことだ。とにかく、現場付近に到達するには時間が掛かる。何にもねぇが、旅を楽しもうや」

「・・・はい、わかりました」

彼の言葉に軽く息を吐いてから、ヒロはようやく笑みを零してから、車から見渡せる景色を眺める。

ほんの少し・・・・、楽しくなってはきたのだ。

四人を乗せた車は、その車体を揺らしながら、目的の場所へと走り続ける。

 

 

 





さぁ、『レイジバースト編』の始まりだ~い!

下手糞な文章に、またお付き合いください!!


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