GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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5話 騎士道を以って・・

 

 

「君達が・・・・、ブラッドかい?」

神機の調整を終え、保管庫から戻るヒロとギル。急に話しかけられて、二人はゆっくりとその人物に振り返る。

「僕はエミール。栄えある極東支部第1部隊所属、・・エミール・フォン・シュトラスブルグだ!」

何故かビシッという音が出る程の構えを決めて、自己紹介してくる彼に、ギルが呆れ顔で返事を返す。

「・・・そうか。よろしくな」

それを合図に立ち去ろうとすると、エミールは手を前に突き出し、それを止める。そして、何やら思いつめたような表情で、思いの丈を語り始める。

「このフライアは、良い船だね。・・・・実に、趣味が良い。しかし!この美しい船の、祝福すべき航海を妨げるかのように・・・、怒涛のような荒神の大群が待ち受けているという。きっと・・・君達は不安に怯えているだろう。そう思うと・・・僕は、いてもたっても、いられなくなったんだ!」

「・・・・・はぁ」

何やら大袈裟に喋っているエミールに、ヒロは空返事を返してしまう。

怒涛のような荒神の大群を倒すのに力を貸すのは、ブラッドの方だからだ。

「そう言う訳で、この僕が君達の力となるべく、参上したのだ。大船に乗ったつもりでいてくれたまえ!」

「・・・・結構です」

「バカ!」

何か怖くなってきたヒロが、つい言ってしまった言葉にギルが小突くが、それも遅かった。エミールは更に派手な振る舞いで、語り始める。

「君は、非力を恥じているのか?いや、恥ずべきことはない!強大な敵との戦いには、この正義の助太刀こそあるべきだ!頼りたまえ!弱きを助けるのが僕の義務!『騎士道精神』だからだ!!」

「いえ、いいむぐぅっ!」

「わかった。そうさせてもらう」

余計なことを言いそうなヒロの口を塞いでから、ギルが代わりに答える。それに満足したのか、優雅と言った感じの足運びで、エミールはゆっくりと歩み始める。

「共に戦おう。人類の、輝かしい未来のために!!我々の勝利は、約束されている!!」

嵐が過ぎ去ったような静けさに、ギルはヒロの口を塞いでいた手を放してから、溜息を吐く。

「ややこしいヤツが・・・、来たな」

「・・・・うん」

二人は肩を竦めてから、再び歩き始めた。

 

 

任務の説明を受けるために、ブラッドは神機保管庫に集まっていた。

それぞれが神機を移動用のケースに入れてから待つと、ジュリウスがエミールを連れて入ってくる。

「誰?あの人?」

「ヒロとギルが会ったっていう、極東の奴じゃね?」

ロミオとナナが小声で話しているうちに、二人は皆の前へと到着する。

「本日は初の外からの要請任務だ。ここ極東地域も、最前線とはいえ、決して万能ではない。任務に割ける人員にも、限界がある」

「それで、俺達にか?」

ギルの質問に、ジュリウスは頷いて見せてから、話を続ける。

「今後、こういった任務がメインとなるだろう。俺達ブラッドは、要請のあった地域に赴き、力を貸す。必要なら独自に戦闘へ介入する」

「そうか・・・。君達は俗に言う、遊撃部隊というやつだね」

「そういうことになります」

口を挟んできたエミールに丁寧に受け答えしてから、ジュリウスは改めて任務の内容を口にする。

「今回は極東に向かっている荒神の集団を、二つに分断し、排除する。その為、2班に分かれて行動する」

そのジュリウスの言葉に、ヒロとギルは嫌な予感に、目を合わせる。そして、その予想は的中する。

「第1班は俺とナナとロミオ、第2班はヒロとギルに、彼にも加わってもらう。極東第1部隊の、エミールさんだ」

「君達への自己紹介は済んでいるが、彼等にはまだだったね。僕はエミール・・・栄えある極東支部第1部隊所属、エミール・フォン・シュトラスブルグだ!!」

ヒロとギルの時とは違ったポーズを決めるエミールに、二人は溜息を吐き、ナナとロミオは少し固まってから立ち上がる。それから自分の神機ケースを手に持ち、ナナはヒロを、ロミオはギルの肩に手を置いてから、エールを送った。

「えっと~・・・・がんばってね」

「自棄になって、殴るなよ」

先に歩き始める二人の優しさに、尚嫌気がさしてきたヒロとギルは、逃げ出したくなる前にと、移動の為にヘリポートへと移動していった。

そんな彼等の様子を、前髪のカールを指で遊びながら、エミールは余裕の笑みで目を閉じる。

「ふふっ。何も緊張することはないのだが・・・。僕の溢れんばかりの強さと輝きに・・・酔ってしまったかもしれないねぇ」

その台詞に1点の曇りがないのを理解できてか、ジュリウスも絶句していた自分を悟られぬように、移動を始めた。

 

 

荒野を駆ける荒神の大群の上空から、ブラッドとエミールは銃型にして構える。

そして、それぞれの無線に、フランからの連絡が入る。

『メテオライト、発射してください!』

 

ドゥオォーーーーンッ!!!!

 

一斉に発射されたバレットは、上空で交わり、拡散して荒神へと降り注ぐ。

 

ドドドドドドドーーーンッ!!!!!

 

その威力に大半の荒神は沈黙し、残った荒神は中心から左右へと別れる。

『分断確認。降下してください』

『いくぞ』

フランとジュリウスの声を確認してから、ヒロは神機を剣型に変形しながら飛び降りる。

 

片腕を押さえて飛び退くシユウを目で追いながら、ギルはヒロの名前を叫ぶ。

「ヒロ!いったぞ!」

それを合図に、シユウが背中にする壁の後ろから、ヒロが飛び越えて銃口を向ける。

ドドドドッ!!

ギャギャアッ!!

頭を押さえられて屈み込むシユウ。そこへ、ギルの容赦ない1撃が、その胸を穿つ。

「くたばれ!!」

ズゥンッ!!

大きな穴を確認することも出来ず、シユウはその場に倒れ込む。そこへ、二つの大きな口が、喰い荒らそうと構えていた。

ガビュウッ!!!!

 

フランとの連絡で確認を終えたのか、ギルは顔を上げてヒロを呼ぶ。

「おい、やはり後1体だけだ」

「そう。じゃあ・・・・、あれってことだよね」

二人の視線の先に映るのは、大口で笑うような素振りを見せるウコンバサラと、傷だらけの騎士(?)のエミールだった。

手を貸そうとはしたのだが、「助太刀無用!!」と止められたので、ヒロもギルも周りに警戒をしつつ、見守っているのだ。

「はぁ・・はぁ・・、闇の眷属め・・」

グアアァウッ!!!

「ここは・・・僕の、騎士道精神にかけて!貴様を土に、還してやぶぅあっ!!」

長口上はお気に召さないのか、エミールが喋り終わる前に、ウコンバサラは相手を吹っ飛ばす。

「おのれ・・・、なかなかやる!だが!今度は、こちらの番がぁぁっ!!」

やはり喋らせてもらえず、エミールは壁に激突し、倒れる。

もう無理だろうと歩き始めたところで、立ち上がるエミールに気付いたヒロが、ギルを止める。

「おい。もう良いだろう。子供の遊びじゃないんだぞ」

「でも・・・、あの人はやる気みたいだし・・」

その言葉が聞こえていたのか、エミールは口の端を浮かせてから、神機を構えなおす。

「待っていてくれ。今・・・、僕の騎士道精神を示してみせる!!」

グアァウッ!

「ふっ・・・いいだろう。そろそろ、僕の本気を見せぎゃふっ!!」

何度宙に浮いたのか、エミールはふらつく頭を抱えながら、ゆっくりと立ち上がる。

流石に見ていられないとヒロも同調してか、ギルと走り出すが、エミールの口から洩れる声に、その足を止めてしまう。

「ゴッドイーターの・・戦いは・・・、ただの戦いではない・・。この絶望の世に於いて、神機使いは・・・、人々の希望の依り代だ!!」

「・・・・へぇ」

長々喋るめんどくさい人としか思ってなかったヒロは、少しだけエミールに関心の目を向ける。

「正義が勝つから、民は明日を信じ!正義が負けぬから、皆前を向いて生きる!!故に僕は・・・騎士は!絶対に、倒れるわけにはいかないのだ!!」

「だから・・・長いんだよ。話が」

ギルのツッコミに同意してか、ウコンバサラが再びエミールへと突っ込む。しかし、そこには目標はなく、空から降ってきた強烈な痛みに、叫ぶ暇もなくその場で倒れた。

その1撃をもって沈黙した荒神を目にしてから、歓喜の笑みを浮かべたエミールは、曇りがかった空に向かって、勝利の雄叫びを上げる。

「うおぉぉぉぉっ!!騎士道精神の、勝利だぁ!!」

ガビュウッ!!

「は?」

それを遮るような音がして、エミールは背後へと振り返る。そこには、捕食をしているヒロとギルが、白い目で見つめていた。

「・・・・そういうことは・・」

「コアの回収を済ませてからにして下さい」

「あ・・・・・・・・・・・・、すまない」

本気で忘れていたらしい表情に、ヒロとギルは溜息を吐いてから、回収を終えたのを確認してから、歩き始める。

それにハッと我に返ってか、エミールも早足で後を追う。

「ま、待ってくれ!普段は、決して忘れたりはしないんだ!」

そんな彼の声を無視しながら、ヒロはジュリウスへと報告する。

「隊長・・・帰投します」

『・・・・ご苦労だった』

その苦労を理解できるといった感じで、ジュリウスはそれ以上何も聞かなかった。

 

もうすぐ合流地点というところで、ヒロとギルが足を止める。そして、

 

オオォォォォォンッ!!

 

狼の遠吠えのような声が木霊する。

その雄叫びが聞こえた方向を探るように見回しながら、ギルは舌打ちをしてから口を開く。

「くそっ・・・。新手かよ」

「そうみたいだね。僕はジュリウスと連絡とるから、ギルはフランさんに確認取って」

「わかった」

「エミールさん・・・・あれ?」

振り返って指示を出そうと思った時には、エミールの姿はそこにはなかった。そこに、ジュリウスからヒロへ無線が入る。

『ヒロ。荒神らしき声を確認した。お前達の状況を、教えてくれ』

「それが・・・・、エミールさんが単独でいなくなりました」

『なんだと?』

つい呆けてしまった頭を振ってから、ヒロはギルと目で示し合わせる。それから別方向に移動を始めてから、改めてジュリウスに返事を返す。

「今からギルと別々に探します!隊長達も、手を貸して下さい!」

『わかった。こちらも捜索に移る。未知の荒神の可能性が高い。できるだけ、単独での戦闘は避けろ』

「了解!!」

無線を切ってから、建物の中に入り、影になったところから水の中まで、ヒロは視線を走らせた。

 

独断先行してしまったことを、今更ながら後悔しているエミールは、荒神に警戒しつつ足を進める。

「闇の眷属よ・・・。姿を見せろ」

言っていることに反して、彼の声は普段より響かない。

周りに仲間が確認できないことに、正直怖気づいているからだ。

その時、近くの瓦礫の隙間が赤く光ったように見え、エミールはそちらを向いて神機を構える。その瞬間、

ズシッ

「な・・・んだと!?」

今まで重いと感じなかった自分の相棒が、急に手の中にのしかかってくる。焦ったエミールは、必死に神機を振ってみる。

「どういうことだ!ポラーシュターン!いったい・・」

 

ガアァァーーーンッ!!

 

そのタイミングを待っていたとばかりに、瓦礫の裂け目は崩れ、赤く光る二つの瞳が、ゆらゆらとエミールを見つめる。

「な・・・なな・・」

神機のことでパニックになっているエミールは1歩、また1歩と後ずさる。

それを嘲笑うかのように、赤黒いオーラを纏った荒神は、その顔を天に向けて、絶望を謳う様に叫ぶ。

 

オオォォォォンッ!!!

 

それを耳にしたブラッドの誰もが、目を見開いて鳥肌を立てる。

新たな力を持った、神の降臨に・・・。

 

 

 

 





エミール、台詞なげぇよ!!

でも、好きなキャラだ!w

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