GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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45話 終焉を斬り裂く光 前編

 

 

フライアを守護するように、横一列でバレッドを撃ってくる神機兵。

それを装甲壁の影から様子を伺いながら、タツミは溜息を洩らす。

「あぁー、くっそ!なんて弾、撃ってくんだよ!?当たったら、人間なんてバラバラだぞ!?」

苛立ちからか、苦笑いしか出ない状態で、タツミはバレッドの弾を補充している隊員に、声を掛ける。

「おーい!まだかよー!?そろそろ撃ってくんねぇと、俺等前衛は何も出来ねぇぞー!?」

「もう少し・・・待って下さい!」

焦りながらバレッドを装填する後輩隊員を目で確認してから、タツミは自分が新人だった頃を、ふと思い出してしまう。

初任務の時の自分の情けない姿を思い出して、タツミはまたも苦笑してしまい、返事を返してきた隊員に、もう1度声を掛ける。

「なぁ!ゆっくりでいい!落ち着いて、行こうぜ」

「あ・・・・、は、はい!」

今度は明るく返事を返したのに頷いてから、タツミは今だ止まぬ弾幕の音に、手の中の神機に力を籠める。

「・・・・よし!みんな、良いか?装填完了しました!」

「おし!ぶっ放せ!!」

ドドドドドドドドゥオンッ!!!

全員が一斉掃射したことにより、神機兵は怯みだす。それを隙と捉えて、タツミは前衛組を引き連れ、一気に距離を詰める。

「頭じゃねぇぞ!?背中だからな!」

《了解!!》

彼の声に合わせて、隊員は二人一組で神機兵に飛び掛かり、背中の装置を破壊にかかった。

 

 

攻め込んできた荒神を相手に、ブレンダンは十分装甲壁に引き付けて、バレッドを構える隊員へと指示を出す。

「よし!撃てー!!」

《了解!!》

ドドドドドドドゥォンッ!!!

先に突っ込んできた荒神を掃討すると、今度はシュンが近接班を連れて、飛び込んでいく。

「おっしゃーー!!1番乗りだぜー!!」

「シュン!油断は禁物だぞ!?」

「うっせーよ!ガチガチ頭!!」

「な・・なに!?」

シュンの捨て台詞を真剣に考えてから、ブレンダンは隣にいる隊員に声を掛ける。

「・・・なぁ。俺は、頭が固いのか?」

「え!?・・・そう言われましても・・」

急に話を振られて、困ってしまう隊員を見て、「やはり、そうなのか?」と、更に悩むブレンダン。

そんな彼の無線に、答える声・・。

『そんなことありませんよ、ブレンダンさん。私は、あなたの判断は間違っていないと思います』

「はっ!?・・フラン・・さん」

フランの声を耳にした瞬間、ブレンダンは急に一筋の涙を零し、肩を震わせ天を仰いだ。その姿に、その場に残った隊員は、何事かと一歩後退る。

「フランさん・・・、ありがとうございます。見ていて下さい!あなたの言葉を、俺が正論にして見せます!」

『え?・・・あ、はい・・。頑張って下さい・・?』

そう言ってから、ブレンダンは自分の役目を忘れ、装甲壁の下へと飛び込んでいく。

「あ!?あの!ブレンダンさん!?」

「そこは、任せたぞ!うおぉぉぉぉっ!!」

戦場をいつになく元気に駆け回るブレンダンを見て、残された隊員達は、皆同じことを思い浮かべる。

《(・・・・・なんて、単純な・・)》

 

 

ドゥオンッ! ドゥオンッ!

「ふぅ・・・。カレル?そっちは、どう?」

粗方の荒神を殲滅し終えたジーナは、無線で反対の位置を守るカレルに声を掛ける。

『・・別に、問題ない。神機兵じゃないから・・・つまらないな』

「あら、以外。楽なお仕事で、お金が良いのがもっとうでしょ?あなた・・」

『まぁな・・・。だが、ブラッドバレッドの試し撃ちにもならねぇ雑魚ばっかりじゃ、金も良くないだろう』

そんな文句を洩らすカレルに、ジーナは少し考えてから、フッと笑みを浮かべる。

「だったら隊を分断して、タツミの応援にでも行ったら?苦労してるみたいだし、相手は神機兵よ?」

その言葉を待っていたかのように、無線越しにカレルは低く笑いだす。

『なら、そうする。お前等は来るの、遅くていいぞ。全部俺の獲物だ・・』

無線が切れると、ジーナは肩を竦めて、口元に手を当てて笑い出す。

「本当・・・、わかりやすい子・・」

それから、現場を見降ろして状況を確認し、その視線をフライアへと移動させる。

(頑張ってね・・・。ヒロ君)

 

 

極東に入り込んできた神機兵を、ハルは器用に攻撃を躱して、背中をとる。

「それじゃあ、当たんねぇよ!っと」

ガァンッ!

背中を強打され、膝をついたところで、ハルは大袈裟に後ろへと距離をとる。そこへ・・・。

「あーはっはっはっ!!機械仕掛けのおもちゃが!!これでも、食らってろー!!」

ドガーンッ!!!

神機兵の背中どころか上半身を吹き飛ばし、カノンは笑いながら着地して、ハルの側へと駈け寄る。

「ハルさん!これで、一通り倒したと思うんですけど?」

「あ・・おぉ。相変わらず、変わり身が早いな」

頬を掻きながら、ハルは背中に汗を感じながら、返事をする。

(ギルよー。お前は一体・・、何を教えたんだ?前よりパワーアップしてないか?)

そう心の中で嘆きながら、第2部隊と連絡をとるハル。

「どうだー、そっちは?」

『はい!問題ありません!ハルさん達は、そのまま神機兵の対応、お願いします!』

「・・・・なんか、妙に畏まってないか?」

『いえ!そんなことは、ありません!どうーぞ!!そちらで、頑張って下さい!!』

無線を切ってから、ハルは溜息を吐き、おそらくの原因であるデンジャラス・ビューティーに目を向ける。

彼女の方は、首を傾げて不思議そうに見てくるだけである。

そこへ、もう1体神機兵が、支部へ向かって走って来る。

「ちぃ!また、お客さんか!?」

「ハルさん!」

神機を構えたカノンに、ハルは大きく息を吐いてから、ウィンクして見せる。

「おし!やっちまえ!」

「はっはーー!!くたばれ、ポンコツ人形ーー!!!」

ドガァーーーンッ!!!!

その威力を目にしながら、ハルは神機兵の前に、カノンに殺されるのではなかろうかと、自分を心配した。

 

 

フライアの奥へ進みながら、ヒロは思ったよりも広いフライアに、今更ながら感心していた。

自分がいた時には、研究施設の方に顔を出すことがなかったので、今走っている通路も、まったく別の場所のような感覚を覚えているのだ。

暗がりを真っ直ぐ進んだところで、大きな扉へとつき当たる。

全員で開ける方法を調べていると・・、

ギィィッ

扉は自動的に開き、中へと誘ってくる。

「・・・・当然、罠だな」

「でも、行くんでしょ?ヒロ」

ギルとナナに頷いてから、ヒロは躊躇わず真っ直ぐと中へと足を踏み入れる。

妖艶に微笑む、ラケルの元へ・・・。

 

 

最後の神機兵の背中から、神機を引き抜いて、アリサは軽く息を吐く。

「・・・ふぅ。ソーマ、片付きましたよ?」

「・・・・いや、まだだ」

アリサの声に答えながら、ソーマは神機保管庫の方角に目を向けている。それに倣って、アリサも視線を移動させた瞬間、

ガッシャーーンッ!!!

グゥゥゥーーンッ

巨大なゴーレムのような物体が、受付や壁を吹き飛ばして現れる。

「・・・・これは・・」

「まだ、こんなおもちゃを隠してやがったか・・」

その巨体を眺めながら、アリサとソーマはゆっくりと位置を決めるように歩きながら、意見交換する。

「大きいですね・・。ウロヴォロスぐらいは、あります?」

「あぁ・・。資料で見た、神機兵のプロトタイプに、似てるな。大分見た目が変わってやがるが・・」

「神機は、持ってないみたいですね。何か、情報はあります?」

「さぁな・・。データはあてにならないだろう。こいつは、どう見ても荒神だ」

話しながら、お互い足を止めると、神機を構えて体勢を低くする。

「何か・・、アドバイスはありますか?」

「ふん・・・。俺達のもっとうは、決まっているだろう?」

「それも、そうですね」

諦めたように息を吐くアリサに、ソーマはフッと笑みを浮かべる。そして、二人揃って同じ言葉を口にする。

「「『死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そして隠れろ、隙を見つけてぶっ殺せ。そして・・・・』」」

吠える神機兵プロトタイプに向かって走り出し、声を上げる。

「「『生きることから、逃げるな!!』」」

ザァンッ!!!

 

 

フライアの放送室に潜り込んだサツキは、必死に作業を進める。そんな彼女に、コウタは攻め込んできた神機兵を1体沈めてから、声を掛ける。

「サツキさん!まだっすか!?こういうの、専門なんでしょ!?」

その言葉に、サツキは作業の手を休めずに、苛立ち半分に答える。

「専門って言っても、他所様の機械は、把握するのにも時間が掛かるんですよ!?えっとー・・・、マイクの配線はここで・・・、スピーカーは・・・。もう、いい!フライア全体に流すんだから、全部上げて!!」

「・・・・なんか、すんません」

声に出しながら作業をする彼女に、コウタは謝りながら、目の前の出入り口へと集中する。

そこへ、通路の方に出ているエミールから、無線が入って来る。

『隊長!神機兵が2体ほどやってきました!彼等も、壊してよいのですか!?』

「一々伺いたてなくていい、つってんだろ!?神機兵は、もう俺等の敵なの!荒神なの!わかったか!?」

『なんと!?闇の眷属め!ついに正体を現したか!!食らえ!エミール・スペシャル・クラッシュ・・・!!』

「うるさいよ!無線切ってから、戦え!!」

そう言って自分から無線を切断すると、サツキがチェックを終えたのか、顔を上げて叫ぶ。

「オッケーよ!!これで、いつでも行けるわ!!」

「よしっ!!エリナ!中を固める!通路からこっちに入ってくれ!」

『了解です!!』

エリナに連絡を取ってから、コウタはブラッドからの連絡を待った。

 

 

微笑むラケルに、ヒロより先に、シエルが前へと踏み出し話し掛ける。

「お久しぶりです、ラケル先生。・・・このような形での再会、とても残念です」

あくまで礼を尽くすシエルに、ラケルは楽しそうに笑いながら、彼女へと口を開く。

「シエル・・、良いのよ?取り繕わなくても・・・。聞きたいことが、あるのでしょう?」

その言葉に過剰反応してか、シエルはあからさまに殺気を剝き出しにして、ラケルへと声を掛ける。

「・・・では、単刀直入に聞きます。何故、こんな事をしたんですか!?」

その殺気を心地良いという風に受け止めながら、ラケルは答える。

「この世界を、あるべき姿に還すためよ・・。人も、荒神も、全て一つの無に帰して、新たな秩序の元に再構築する。当たり前の事を、当たり前に行うことが・・そんなに、おかしい?」

自分が絶対の真理であるかのように、彼女は語って見せる。その振舞いは、あたかも自分が、神であると言わんばかりだ。

そんな彼女に、今度はヒロが1歩前へと歩み出て、冷たい瞳で口を開く。

「これ以上話し合っても、無駄なんですよね?だったら、僕等は抗わせてもらいます。ラケル・クラウディウス!」

「ふふっ。無駄な足搔きは、体を傷付けるだけよ?ヒロ」

ラケルは表情をそのままに、ゆっくりと手を伸ばす。抵抗せずに、こちらへ来いというように・・。

しかし、ヒロは1度目を閉じてから深呼吸をし、彼女へとある者からの伝言を口にする。

「『例えあなたが、神になろうとも・・。僕達”人”は・・・、生きることから逃げない。僕を遠ざけたところで、結果は変わらない。あなたの言い回しで言うならば、神になった時から、あなたは勝てない”運命”だ』」

「・・・・・・何を、言ってるのかしら?」

今までの笑みが嘘だったかのように、ラケルは表情を険しくする。そんな彼女に追い打ちをかけるように、ヒロは伝言を最後まで言い切る。

「『僕達は、ゴッドイーター。神を喰らう者だ・・。本当に抗うのは、あなたの方だ』」

「だから・・・、何を言っているのよ・・」

言い終えたヒロを、睨みつけるラケル。そんな彼女に、ヒロは彼女がもっとも嫌う名前を、口にする。

「極東の英雄、神薙ユウさんからの伝言です。そして、それが僕等の・・・”人”の答えだ!ラケル・クラウディウス!!」

「っ!!?・・・・神薙、ユウ・・・!どこまでも・・・神を冒涜した、偽りの英雄が・・・!!」

怒りに震えるラケルの足元に、ゆっくりと木の根のようなものが這い出して来る。彼女の後ろにある、もう1つの扉の向こうから・・。

「・・・良いでしょう。新たな王が目覚めた今、私の計画は成功したも同然。抗うことが、如何に無益なことか、身を以って知るがいい!」

その言葉を最後に、ラケルは木の根の様に伸びてきた触手の中へと消えていく。

ブラッドはそれを斬り払って、中へと突入する。

そこには、優雅に宙を舞う、白い王が待ち構えていた。

それを目に留めながら、ヒロは無線をコウタへと繋ぐ。

「コウタさん。目的地に到達。ユノさんも・・・スタンバイ終わりました」

『了解!じゃあ、後は頼むぜ!ブラッド!!・・サツキさん!』

『先輩!!・・・・負けないで!』

途中割り込んできたエリナの声に、ヒロはフッと笑んでから答える。

「うん。負けないよ・・」

無線を切ったところで、ヒロはブラッドの先頭に立つ。

「世界は、終わらせません・・」

「ジュリウス!今度は、あたしが助けてあげる!」

「俺達が・・だ。死ぬなよ、お前等・・」

皆の顔を見回してから、ヒロはゆっくりと神機を構える。

《隊長!命令を!!》

三人の求めに応じて、ヒロは腹から声を上げる。

「ブラッド隊!荒神を、喰い荒らせー!!」

《了解!!!》

ブラッドが飛び込んでいく様子を見つめながら、ユノはセットしたマイクの前に立ち、自分の中の”何か”に呼びかけるように、歌い始める。

(ジュリウス・・・・。届いて!!)

 

 

 





最近・・・肩が重いなぁ・・。

きっと・・・、猫をかまいすぎてるせいだ・・w



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