GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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40話 極東支部の日常2

 

 

戦いに疲れた戦士達に、一時の休息を・・。

 

 

 

その1

 

「じゃーん!」

「・・・・・また、俺なんだ。ナナ・・」

突き出した手の上に、水色のカプセルをのせて、ナナが満面の笑みを浮かべる。引きつった顔を見せるコウタに・・・。

 

『回復錠やデトックス錠も、味がした方が絶対良い!』

 

そう言いだしたナナが、榊博士やムツミを巻き込んで、『味がする回復錠』を開発して、皆に振舞ったのが始まり。

その時に1番いい反応を見せたコウタが、面白い・・・もとい・・、面白いという理由で、ナナにタゲられてしまったのだ。

「コウタさん!今度はね~・・・」

「待った!頼むから、誰かも巻き込ませてくれ!」

その言葉に、ナナは困った表情を浮かべてから、首を横に傾ける。

「でもー・・・、1つしかないよ?」

「それで、俺1択かよ!?他にも色々、いんだろう!?」

「・・・えへへ」

「褒めてないんだよ!?」

何故か照れるナナに、コウタはツッコミをいれる。しかし、ナナの差し出された手は、引っ込まない。

しばらく黙って見ていたが、コウタは諦めたように大きな溜息を吐いてから、水色の回復錠(?)を手に取る。

「・・・・今度は、まともな味か?」

「はい!食べられるものです!」

「・・・何味かは、教えてくれないのな」

そう言って頬に汗を流してから、コウタはそれを口の中に入れ、目を閉じて嚙み砕く。

「・・ん・・ん・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・どうですか?」

期待の眼差しを向けるナナ。どこか悪戯が成功した、子供のようだ。

そして、極東のツッコミ名人は、期待通りの反応を見せる。

「・・・・何だろう、・・これ。えっと・・・、何ていうか・・・・何だ?」

「あははー。実はー・・・・、ここで売ってた『初恋ジュース』ってやつで・・」

「げぇーーーっ!!!!」

奇声を上げたコウタは、その場でごろごろ転がりだす。

「やっぱりーーーー!!不味い不味い不味い不味い不味いーー!!!」

極東支部で有名な、初恋の味を表現したという、謎の飲料。

あのソーマの顔をありえない程歪ませた、ある意味伝説の飲み物である。・・・不味くて・・。

「えー?おっかしいな?ちゃんとミントの味も足して、すっきりな後味に仕上げたのに・・」

「はっ!?だからこんなに喉が・・・痛い!鼻も無駄にスースーする!余計に、あの忌まわしい味が鼻を通る!とにかく・・・・、不味いよ!?これ・・、不味いよ!!?」

首を傾げるナナに叫びながら、1日中初恋ジュースに取りつかれた、コウタだった。

 

 

その2

 

ブンッ ブンッ

「ふぅ・・」

訓練所で素振りをしていたギルは一息ついて、額から流れる汗を袖で拭う。すると、

「どうぞ!」

カノンがタオルを差し出して、ニコニコ笑って立っていた。

「・・・はぁ・・。悪いな」

「いえ!」

そっけない態度をとるギルであったが、カノンは特に気にすることなく、笑顔のまま彼を見つめ続ける。

「・・・カノン。何がそんなに楽しいんだ?」

「え?・・・それは~・・」

ギルに聞かれてカノンは、指を顎に当てて考える素振りを見せてから、再び笑顔になって答える。

「よくわかりませんけど、ギルさんを見てるの・・好きですよ!」

「なっ!?・・ば、馬鹿!お前・・」

わかりやすく狼狽えてしまったギルを見て、カノンは自分が言った言葉を思い返し、顔を赤くしていく。

「あ、あの!ち・・違う、ですよ!?違わないですけど!・・その、違うんですー!!」

顔を真っ赤に、目の前で両手を振りながら慌てるカノン。帽子を深くかぶって誤魔化すギル。そんな二人の周りで、訓練をしていた者達は、ほんの少しほっこりした気分になったのだった。

《(あ~・・・・、平和や~・・・)》

 

「・・俺の出番は、なかったか・・ふっ」

「何ジュークBOXの前でぶつぶつ言ってんだ?ハル」

 

 

その3

 

アリサの部屋に来ていたシエルは、シャワー室から顔を出してから、姿を見せる。

「あの・・・・、どうでしょうか?」

普段の服装から着替えて、アリサの持ち合わせの服を着た姿を、アリサとリッカに披露する。

「う~ん・・・・。どう思います?リッカさん」

「・・・・そう、だね~・・。可愛いと、思うよ?ただ・・・」

「ただ!?何ですか!?」

言葉を濁したリッカに、シエルは詰め寄って質問する。その勢いに目を大きくしてから、息を吐いて苦笑する。

「・・・ちょっと、エロい。シエルちゃんのイメージじゃ、ない気がする」

「そうですか?私はそうは思いませんけど・・」

「・・・みんながみんな、アリサちゃんやサクヤさんみたいに、露出の多い服を着る訳じゃ、ないんだよ?」

「リッカさんだって、結構な露出してるじゃないですか」

「私のタンクトップを、一緒にしないでよ!作業着だよ!?」

二人が言い合いになっているのを見かねて、シエルはミニスカートの裾を揺らしながら声を掛ける。

「あの!結局、どうなんですか!?」

少し零れそうな胸を隠しつつ、シエルが顔を赤くしていると、アリサとリッカは交互に答える。

「これならヒロさんを、ドキドキさせれます!急な服装の変化は、男心をくすぐりますから!」

「でもイメージと違う!シエルちゃんは、もっとおとなしめな雰囲気で、優しく包む方が、ヒロ君をドキドキさせれる!」

「・・・・どっちなんですか?」

聞き返しながらも、どこか諦めたように、シエルは肩を落としながら溜息を吐いた。

 

「わかりました!じゃあ、サクヤさんも交えて、決着をつけましょう!」

「望むところだよ!きっとサクヤさんなら、イメージの方が大事ってわかってくれるから!」

「・・・あの・・、私の為ですよね?」

 

 

その4

 

手の中のグラスを傾けながら、ハルはぼそりと呟く。

「なぁ・・・。本当の魅力ってのは・・・、『胸』で解決しても良いんだろうか?」

「・・・・はぁ?・・」

ヒロは、『また始まった』と思いながら、掴まってしまった自分の運命を呪った。

 

ある時から、急にハルに個人的に呼び出されるようになったヒロ。深刻な表情に、心配して聞いてみれば、『女性の魅力とは何ぞや?』という、下らない・・こともないが、そんな話であった。

それを探求すると言われ、彼に付き合わされてから・・数回。ようやく『胸だよ!』というのに落ち着いたと思ったら、今回のこれである。

 

「ヒロは・・・もしかしたら、女性の胸で満足かもしれない。だが俺は、まだ迷っているんだ。それで、良いのか?・・と」

「あの、周りに誤解を招く言い方、やめてもらって良いですか?」

そうヒロが手を前に出したところで、ハルは気持ちを込めた眼を向けて静かに叫ぶ。

「俺はな、今『うなじ』に、惑わされている!」

チャーチャララチャ~♪ジャッジャンッ♪

「・・・・うなじ、ですか」

大きく頷き返してくるハルを見ながら、『何故いつもタイミングよく、音楽が流れ出すんだろう?』ということを、ヒロは気にしていた。

「今まで、女性の下半身に逃げがちだった俺は、お前のお陰で、男の原点たる『胸』に還ってくることが出来た。だが、その時気付いてしまったのさ。女性の美しさを象るしなやかなラインの、存在にな」

「・・・それで?・・・今度は、誰なんですか?」

いつものパターンに、ヒロが呆れ顔で返してくると、ハルは悟ったような表情で、笑顔を見せる。

「ふっ・・・。お前も気になるか?次なる、神秘が・・」

「そういうことに、しときます」

「まぁ、そう焦るなよ。これから・・・、じっくり二人で決めようじゃないか」

ついにはナンパにまで付き合わされるのかと、ヒロは疲れた表情を見せ、息を洩らす。

一人生き生きと立ち上がるハルに引っ張られ、ヒロが立ち上がったところで、レンカがやって来る。

「あぁ・・ここにいたか、ヒロ。探したぞ」

「あ、レンカさん・・」

フッと笑みを浮かべながら、レンカは、ヒロが待ちわびていた要件を口にする。

「例のフライアへの訪問許可、下りたぞ。早急だが、1時間後になる。ブラッドは全員非番だろ?すぐに集めて、行ってくると良い」

「本当ですか!?ありがとうございます!早速、みんなに知らせてきます!」

喜びを顔いっぱいに表してから、ヒロは1礼してから駆け出す。

そんな彼に、ハルは手を上げて見送りながら、声を掛ける。

「俺からも、よろしく言っておいてくれ。・・後は、任せとけ」

とっても良い顔でウィンクするハルを、ヒロは見ないようにしながら去って行った。

 

「ふっ・・・。確かにお前の気持ち、その背中から受け取った」

「ハルさん・・。程々にしてやってくださいよ?」

 

 

フライアへとやってきたブラッドは、目的の場所へと真っ直ぐ向かう。

彼が教えてくれた場所に、ひっそりと咲いていた小さな花を持って・・。

「来たよ。ロミオ先輩・・・」

2階の庭園の真ん中に位置するその場所で、皆は優しく微笑む。

ロミオの、墓前の前で・・・。

ナナが代表して、花を添えると、物言わぬ彼に話し掛ける。

「先輩・・。仇、取ってきたよ・・。みんなで・・、ジュリウスも一緒に。話したいことが、いっぱいある気がするんだけど・・、あははっ。何か、言葉が出ないよ」

そんなナナの肩に、シエルが優しく手を置く。

ギルも、帽子を深くかぶり直してから、表情を悟られぬようにする。

ヒロも、何か言おうと前に進み出たその時、彼は自分達が持ってきたものと、別の花が添えられているのに気付く。

「これって・・・」

ヒロの声に合わせて、皆その花へと注目する。

それにハッとしたように、ナナが声を洩らす。

「これ・・・・、ジュリウス?」

おそらくはそうであろうと思ったのか、皆それを見つめて小さく息を洩らす。

「来てたんだね。ジュリウス・・・」

「えぇ。一人でなんて・・彼らしい、ですね・・」

「まったくだな・・」

「ねぇ!?・・・うふふっ」

ナナがこぼした笑い声に同調して、皆笑顔を作る。それから静かに手を合わせて、彼の眠りが安らかにあるよう、祈るのであった。

 

 

その5

 

極東に戻った四人は、しばし黙って歩いていた。

だが、急に思い出したかのように、ナナが皆に向かって話し掛ける。

「ねぇねぇ?今日はみんな、何してたの?」

そう聞かれてから、三人は少し考えた後、顔を赤くして慌てだす。

「お、俺は!別に・・・・、訓練・・してただけだ」

「私も!その、あの・・。ちょっと、アリサさんとリッカさんに・・・いえ」

「僕も・・・・・・ハルさんと・・、何も!何もしてないよ!まだ!」

「ん~?・・・」

皆の反応に首を傾げるナナ。そんな彼女に、ヒロも同じ質問を返す。

「な、ナナこそ!今日は、何してたの?」

「あたし?」

聞かれることを待っていたかのように、ナナは胸を張って喋りだす。

「あたしはね!コウタさんを実験に使って、初恋の味を確かめてた!」

「「「・・・・えぇ!?」」」

どこか誤解を生みそうな言い回しを、聞いていたのはブラッドだけではなかったのが問題だ。

その後、コウタは有らぬ事実が噂となり、周りから質問攻めにあうのだった。

 

「それで?ナナさんに、何をしたんですか?『初恋の味』だなんて・・・ドン引きです!!」

「だからー!違うって言ってんだろ!?」

「き、キスとか・・まで、いったのかよ?」

「タツミさん!?目がマジで、怖えぇんっすけど!?」

「面白いから、旦那様に報告しようっと」

「ユウさんに変なこと報告するのだけは、勘弁して下さい!!あの人、絶対信じますし!」

「まぁ・・・・、好きなら・・。良いんじゃないか?」

「そうね~・・ふふっ」

「違うって言ってんだろ!?親友だろ!?信じろよ!!」

「付き合いは、真面目にな・・」

「どーでも、いいぜ!」

「・・・同じく・・」

「じゃあ、口挟まないでもらえます!?」

「隊長!ちゃんと責任とって下さいよ!?」

「貴方なら、出来る!僕は!隊長の清廉な心を、信じている!!」

「あぁぁーーー!!もうーー!!!誰か収集つけてくれよぉーーーー!!!!」

 

 

極東支部は、今日も平常運転・・・。

 

 

 

 





まったりな感じで、早くも40話です!

先は長いな・・・。

まだまだ続く物語に、お付き合いください!w


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