GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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36話 鎮魂歌

 

 

フライア2階の庭園。

そこに、1つの墓石が置かれる。

『勇敢な友 ロミオ・レオーニ ここに眠る』

その墓石の前に、フライア、極東から集まった人々は、彼を黙って見送る。歌姫のレクイエムに包まれながら・・。

 

この命はすべて主の為に捧げました

彼の腕に抱かれて我が罪を赦されましょう

 

ですから、どうか私をこの場所へ・・・帰したまえ・・

 

ナナは、立っていられなくなり、シエルへとしがみついて泣き・・。

ギルは、震わす肩をハルに擦られながら立ち尽くし・・。

ジュリウスは、泣き腫らした目で毅然としようと努め・・。

ヒロは・・・・・感情を閉ざしたように、ただ前を見つめていた・・。

歌が終了すると、北の集落の老夫婦が、声を上げて泣き始めたのをきっかけに、関わった仲間達からも、少しずつ声が上がりだす。

「こんな、形になっちゃったけど・・・・、ロミオさんに・・届けばいいのだけど・・」

「・・・・そうね」

サツキに寄りかかって、ユノは目を閉じる。それを労う様に、サツキは優しく頭を撫でる。

『実は是非お願いしたいことがあるんっすけど・・・。迷惑かけたブラッドのみんなの為に、1曲歌ってもらえないっすか?』

 

グレムは面白くなさげに、早々に立ち去っていき、レアも少し惜しむように目を閉じてから、その場を後にする。

ラケルは隣に立つジュリウスへと、何かを耳打ちした後、集まった人に1礼してから庭園を出て行った。

 

庭園を出てすぐの廊下で、ラケルは壁に背を預けて後輩を見守る、ソーマを目に留める。それに1礼して去ろうとしたところで、ソーマの方から声を掛けてくる。

「今回・・・やけに嫌な条件が重なったな・・」

「えぇ・・・。その代償が、彼だということ・・・重く、受け止めております」

「そうか?・・・・お前、顔が笑ってるぞ?」

「・・・・・なんの、事でしょう?」

あくまでとぼけるのかと思い、ソーマは「ふん」と鼻を鳴らしてから、壁から背を離す。そして、去り際に、ラケルへと意味深な置き土産をする。

「まぁ、いい。・・だが、これだけは覚えておけ。いずれ”うち”の最強が、お前に挨拶に来るだろう。その時は、もっとマシな言い訳でも考えとくんだな・・」

ソーマが庭園に入っていくと、ラケルは再び前へと進みだす。そして、口の端を浮かせてから、ひっそりと呟く。

「・・・その頃には、全て終わっています・・・」

 

『ジュリウス。私は決めました・・。2度とこんな悲劇が起きぬよう、神機兵を一緒に完成させましょう。貴方の・・・大切なモノを守る為に・・』

 

 

ロミオの葬儀の後、ヒロは一人、神機保管室に来ていた。

そこに今も大切に保管されている、ロミオの神機を見る為に・・。

簡単な検査を行う為、今は調整室の1室に運び込まれている。ガラス越しに機械に固定されたそれを、ヒロは黙って見続ける。

『ヒロ・・・。マジでありがとな!』

(感謝なんか、しないでよ・・・ロミオ先輩。もっと、一緒にいてよ・・)

悔し気にガラスに当てていた手を握るヒロ。

と、背中に気配を感じて、ヒロは振り返る。入口付近の暗がりに、リッカが立っている。それから彼女が入ってくると、もう一人影が見える。

「あの・・・、リッカさん・・」

「ごめんね、邪魔して・・。でも、君には・・・この人が1番の薬だと思って、ね」

「え?・・・」

そう言って横へかわしたリッカの後ろから、もう1つの影が入って来る。その姿がはっきりしてくるのに合わせて、ヒロの顔は、徐々に歪んでいく。

「あ・・・、あ・・・・・」

その人はヒロの目の前に立ち、優しく肩へと手を置く。

「ごめんね、ヒロ。大事な時に、いてあげられなくて・・」

「そん、な・・・、そんな!?」

「そんなに我慢しないで・・、泣いて良いんだよ?・・ヒロ。大丈夫だから」

「あぁ・・・・・、ユ・・ウさん!!」

そしてヒロは、彼・・・神薙ユウにしがみついて、やっと涙を流し始めた。

「ごめ・・ごめんなざい!ユウざん!!僕は・・・僕は約束を・・・・あぁぁ・・」

「良いんだよ。君も、みんなも・・・全力で頑張ったんだから・・」

「ああぁぁぁーーーーーーーーーっ!!!」

大声を上げて泣くヒロの背中を、ユウは優しく撫でながら、頷いてあげた。

 

 

泣き疲れたのか、ヒロが眠ってしまうと、ユウは優しく抱きかかえ、部屋に設置された長椅子へと寝かせる。その上に、リッカが持ってきた毛布を掛ける。

「・・ごめんね、忙しいのに呼び戻して。でもさ・・・、このままじゃ、この子駄目になっちゃいそうだったから・・」

「ううん。ありがとう、教えてくれて。本当はもっと、早く帰ろうと思ってたのに・・、先延ばししちゃってたから・・・」

そういって微笑むユウに、リッカはこつんと頭を預ける。

そこへ、軽くノックをしてから、ソーマが入って来る。

「・・・邪魔したか?」

「うん。邪魔・・」

「リッカ・・・。大丈夫だよ、ソーマ」

リッカに苦笑しながら、ユウはソーマへと視線を向ける。ソーマも、久方ぶりに会った顔に口の端を浮かせてから、すぐに真剣な表情になる。

「今回の作戦、お前はどう思う」

「どう、というのは?」

聞き返してきたユウに、ソーマは壁に背を預けてから腕を組んで、話し始める。

「無人型神機兵のテスト運行をすっ飛ばしての実戦投入、それに俺やお前、リンドウがいないタイミングで行ったこと。それと・・・、都合よく振ってきた赤い雨。偶然にしちゃあ、出来すぎてる」

その説明に頷いてから、ユウも少し目を細めてから喋りだす。

「そうだね・・。実はサツキ姉さんの情報筋で、ある事が気にかかってね・・。だから、リッカの連絡で1度戻ろうと思ったんだ」

「ある事?なにそれ?」

リッカの疑問に目を閉じてから、ユウは答える。

「僕の予定を、わざわざ調べた本部の人間がいたそうだよ。向こう2ヶ月のね・・。その人は口を閉ざしてるらしいけど、僕の名前が挙がったからって、サツキ姉さんが連絡くれたんだ。・・・・これも、タイミングが良すぎるよね?」

「それって・・まさか!?」

「お前が極東にいないことを知りたがった人間が、いるってことになるな」

ソーマが核心をついてくると、リッカは口を押さえて、目を大きく開く。

ユウは閉じていた目を開いてから、ソーマへと口を開く。

「ソーマ。僕等の介入を良しとしない誰かが、この結果を望んでいたというなら、僕は戻った方が良いかな?ここに・・」

「いや・・。確証がねぇのに、お前を引っ張り出すわけにはいかねぇ。前に電話で言ったのは、俺が誰かさんの尻尾を掴んでからの話だしな。それに、お前とツバキを無理矢理戻して何もなけりゃ、極東の信用問題に関わる。お前も、わかってんだろ?」

「・・・・うん」

話の全てがわかったわけでは無いリッカだが、二人が何かを掴んでると理解して、それを確かめる為に、声を掛ける。

「ユウ君達は・・・、この件の裏で動いてる人物に、心当たりあるみたいだけど・・」

その質問に答えるか悩んでから、ユウはリッカへと耳打ちする。

「ん?・・・・え?・・なんで?だって!?」

「確定じゃないよ。・・・・でも、おそらくは・・・」

そう前置きしたユウの言葉に続けて、ソーマが口を開く。

「気を付けるに、越したことはない。だが、お前は自分の仕事に戻れ。・・・俺が、極東に残っておく」

ヒロの眠っている間に、三人は今回の事件の首謀者を予想し、自分達に出来ることを話し合った。

 

 

朝方、ブラッドは神機保管庫に呼ばれる。

ジュリウスはロミオの件で事後処理があると断ったが、他の者は任務もなかったので、足を運んでいた。

リッカの作業室に向かいながら、ヒロがいないことを気にするシエルを引っ張って、まだロミオの事を引きずったままの三人は、リッカの作業室へと入る。

「・・あれ?ヒロいたの?」

ナナの声にパッと明るい表情を見せたシエルだったが、そこに待っていた人物を目にし、驚きの表情へと変わる。

それは、ギルの方も同じで、ナナだけが首を傾げている。

「えっと~・・・誰?」

「まさか・・・、お会いできるなんて・・」

「・・・ユウさん」

ギルの呼んだ名に、しばらく目をぱちぱちしてから、ナナは驚きに声を上げる。

「ユウサン・・って・・。うっそー!?」

「ははっ。元気な子だね」

ナナに応えるように笑って見せてから、ユウはギルとシエルにも顔を向ける。

「ギル。大分良い顔になったね・・。それに、シエルさんだっけ?電話以来かな?」

余りにも気軽に声を掛けられたことに唖然としたが、二人はすぐに頭を下げる。それに驚いてから、ナナも急いで頭を下げる。

「頭を上げてよ。話、しづらいでしょ?」

「あ・・・は、はい!」

「りょ・・こほんっ!了解、しました!」

「あ、は~い!」

「「ナナ!」」

「え?えぇ?」

皆の反応に、ヒロは苦笑して、同席しているリッカは口を押えて笑っている。当のユウは頬を掻いて、少し困った表情していた。

皆が落ち着いたというところで、ユウは話し始める。

「今回は・・・、大変だったね。僕がいてどうにかなったなんて思えないけど、何も力になってあげられなくて、ごめんね」

ユウが頭を下げるのに、ギルとシエルは慌ててそれを止めさせるよう声を掛ける。

「そ、そんな!頭を上げて下さい!!」

「ユウさんが謝ることなんて、何もないっすよ!!」

「ユウさんって、良い人だ~」

ナナだけ視点のずれたことを言っているが、ユウは二人の説得に応じて、顔を上げる。それから一変し真面目な表情を見せると、ユウは再び話し始める。

「じゃあ、お言葉に甘えて・・。それで?今後君達は、どうする?」

《え?・・・》

その質問には、ヒロも一緒に疑問符を浮かべる。

これから・・・。それを、余り意識していなかったからだ。

「凄く・・・悲しかったと思う。辛くて、苦しかったと思う。でも、そんな夜を越して、君達は今後どうするの?ゴッドイーターを続ける?それとも、1線退いて、後進の指導をする?」

「そ、れは・・・」

ヒロが口籠って黙ってしまうと、皆も黙って俯く。しかし、それを良しとしないといった感じで、ユウは強く叱咤する。

「顔を上げろ!ゴッドイーター!キツイことを言うようだけど、外には荒神がいて、君達の力を必要とする人達がいるんだよ!?」

《っ!!?》

思わず顔を上げる皆を見回してから、ユウは自分の手を前に出す。

「戦う勇気がまだあるなら、この手を取って。僕が、君達に・・・彼の思いを上げる」

「彼って・・・・」

そう言った目の先に・・作業台に移動された、ロミオの神機が目に入る。それに気付いたら引けぬと、全員勢いよく、ユウの手を掴む。それに笑顔を見せてから、ユウは空いた手をゆっくりとロミオの神機へと触れさせる。

ビキィィッ

少し浸食してきたのを感じてから、ユウは眉間に皺をよせる。それから大きく深呼吸をして、口を動かし、呪文を唱えるように声を洩らす。

「感応現象、『想』」

キィィィィィィンッ!!

その瞬間、四人の頭の中に、ロミオの想いが流れ込む。

 

『みんなの分も、俺も頑張らなきゃ!』

『ブラッドはさ、すげぇ部隊なんだよ!!』

『あいつ等は、そんな事、絶対しないし!!』

『うおぉぉーーーーーっ!!やるぞーーーーーっ!!』

『俺さ、みんなに感謝してんだ』

 

「うっ!・・・・」

「ユウ君!もう限界だよ!?」

ユウが手を離したのをきっかけに、皆は視界が元に戻る。そして、目の前で息を荒げながらリッカに支えられるユウを見て、すぐに駈け寄る。

「ユウさん!?大丈夫ですか!?」

「あぁ・・・はぁ・・、やっぱ、慣れないね・・これ」

ヒロの心配の言葉に、ユウは苦笑しながら体勢を整える。それから、目の前の皆を見てから、改めて話し掛ける。

「どうだった?彼の・・・ロミオの想い」

「・・・はい。とっても、暖かかったです」

「少し切なげで、でも・・」

「いつも、あたし達の事を、考えてくれてて・・」

「俺等に、感謝してました」

そんな彼等に頷いてから、ユウはさっきの質問をもう1度する。

「彼の想いを受け止めたところで・・・、もう1度聞くよ。どうする?ブラッド隊?」

その言葉に応えるように、皆背筋を伸ばして、強い眼差しを見せる。

「続けます。これからも、仲間を守るために!」

「あたしも、頑張ります!先輩の分まで!」

「俺も、今度こそ逃げません!」

「僕も、ロミオ先輩の分まで、戦います!」

四人の強い決意に、ユウは優しく微笑んでから、全員を抱き寄せる。

「うん!君達は、やっぱり最高だよ!」

「わ!ユウさん、ちょっと!?」

「お、俺は、そんな歳じゃ・・」

「わーい!英雄に抱き着いちゃう!」

「あ、あの・・・その・・」

そんな彼等の元気な姿を見て、リッカはホッと胸を撫で下ろして見守った。

 

「ねぇ、旦那様?何も、女の子まで抱くことなかったんじゃないかな?」

「あ、え?お、怒ってる?リッカ・・」

「おぉー。英雄が怒られてる」

「リッカさんの前じゃ、形無しっすね。ユウさん」

「私は・・・・もっとヒロと・・」

「え?シエル?・・」

 

 





遂にユウとヒロの接触です。

ユウが少し変わった事してますが、それは後のお楽しみということで!w


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