GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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34話 明日も笑えるように

 

 

支部長室に呼ばれたブラッドは、そこに集まっている隊長格を見回して、何か大きな作戦だろうかと、緊張の面持ちを見せる。

全員が揃ったというところで、榊博士が立ち上がり、皆へと説明を始める。

「みんな、忙しい中集まってくれて、ありがとう。今回君達を呼んだのは、ある大規模な作戦の説明をする為だよ」

「大規模な作戦・・・ですか?」

アリサが問い返してきたのに頷いてから、榊博士は続ける。

「フライアから、改良された無人型神機兵の試験運用をお願いされたんだが・・・。それに合わせてか、大量のオラクル反応がこちらに向かってるとわかってね。そこで・・」

言葉を切って、榊博士は同席している九条へと目を向ける。それを合図に、九条が説明を引き継いで、話し出す。

「これを機会に、無人型神機兵を実戦投入することにしました。ですので、今回は護衛という形ではなく、神機兵と共闘といった形で、作戦を進めていただきたいのです」

ブラッド以外は、神機兵と言われてもパッとしないのか、少しだけどよめきが起こる。

それを諫めるように、榊博士が軽く咳払いをしてから、再び喋り始める。

「まぁ、試験運用という形ではなく、実戦投入だ。神機兵は遊撃兵とでも考えて、君達はいつも通りやってくれたらいい。・・懸念することがあるとしたら、感応種の存在だ。このオラクル反応を引き連れているのが感応種だとしたら、これ程厄介なことは無い」

そう言って榊博士は顎に手を当てて、少し厳しめな表情を見せる。

「荒神は明日にも、極東支部の管轄内に到達する。ヒロ君のお陰で、極東の過半数が、ブラッドアーツ、ブラッドバレッドを扱えるようにはなったが、まともに感応種と戦闘経験があるのは、今の極東にはブラッド以外存在しない。・・・まるで誰かが、狙ったかのようにね」

「博士。リンドウさんが出張中なのは知ってますけど、ユウとソーマは?」

タツミが口を挟むと、榊博士はそれだと言わんばかりに、眉間に皺を寄せて答える。

「ユウ君はツバキ君とイタリア支部。ソーマ君も、今は北京支部に行っていてね。嫌なタイミングさ」

二人がいないことに動揺が走る中、ジュリウスが1歩前に出て、口を開く。

「厳しい戦いになるのは承知の上で、私達は2班に分かれて、皆さんを援護しようと思います。感応種が出現した際には、ブラッドに要請を。私達にとっても、極東はもう大切な場所です。荒神に壊させはしません」

彼の言葉に頷きながら、ブラッドも前へ出る。

そんな中、皆の心配は無用といった感じで、九条は自信満々の表情で発言する。

「大丈夫です!私の神機兵ならば、感応種なんてものに怯えることはありません!必ずや、皆さんの期待に応えてくれるでしょう!」

 

 

団欒室のビリヤード台の近くで、ハルとギルは酒を酌み交わしている。

明日の作戦前にと、ハルに誘われて、ギルも付き合って飲んでいるのだ。

「・・・ギル。神機兵には、どのくらい期待できる?」

ハルの質問に少し考えてから、ギルはグラスの中の氷を鳴らして答える。

「力はあります。スピードも・・。ただ、前回の試験運用の時の様に、急に動かなくなると・・・、ただのポンコツっすね」

「ポンコツか・・、ははっ。お前らしい、言い回しだな」

そう言ってから、ハルはグラスに映る自分を飲み干すように煽り、笑って息を吐く。

「最後は己を信ずるのみ・・か。まぁ、ゴッドイーターらしくて、良いじゃないか。背中を預けれる仲間は、十分多い。・・・生き残ろうぜ、ギル」

「ハルさん・・・。はい」

それから二人は、グラスを掲げて、軽く合わせてから、笑い合った。

 

「ところでー・・相談なんだがな、ギル。お前の班の誰とでもいいから、うちのカノンちゃんと交換しないか?」

「・・・・・・・」

「あれ?・・・ギルくーん?」

 

 

居住エリアの窓から、外を眺めるジュリウスとユノ。

ゆっくり話をするのは、サテライト拠点の時以来だ。

「明日は、私も住民避難のお手伝いをするの」

「それは、危険では?」

心配の声を掛けてくるジュリウスに、ユノは笑って答える。

「あなたほど危険じゃないわ、ジュリウス。それに、いざという時は、守ってくれるんでしょ?」

「・・・ふっ、敵わないな。あなたには・・。必ず、守ってみせます」

急に敬礼をしてくるものだから、ユノは声を出して笑い始める。ジュリウスはいたって真面目なのだがと思ったが、彼女の笑顔につられて、自分も口の端を浮かせ微笑んだ。

 

「兄さんの分まで、ちゃんと守ってね?」

「兄さん?ご兄弟が、ゴッドイーターを?」

「知らなかった?極東じゃ有名なんだけどな・・。私の兄さんの、神薙ユウって」

「・・・・・・は?」

 

 

自室に戻ったロミオは、自分の携帯端末と睨めっこしながら、懸命にメールを打ち続ける。

しかし、ある程度打ったところで、頭をがしがしと乱暴に掻いてから、それを消す・・・を繰り返していた。

「あぁー!・・やっぱ、シンプルにお願いするのが良いのかなぁ?わっかんねぇなー」

もう何度目かという溜息を吐いて、ロミオは腰かけていたベッドに倒れる。そこへ、目的の人とは別の者から、メールが届く。

少し驚いて携帯端末を覗いてから、ロミオはフッと笑みをこぼす。

「なんだよ。・・・久しぶりだな」

そう声を洩らしてから、内容を開示する。

『元気か?私はこっちの生活に慣れた。お前はどうだ?元気なのか?だが心配は少ししかしてない。お前なら大丈夫だ。約束。忘れるなよ。破ったら殺して死ぬ。体には気を付けろ。またメールする』

「最後とんでもないこと書いてんだけど!?あいつ・・・、喋るのも苦手だったしな・・・・・・・・ったく」

苦笑しながら、ロミオは返信メールを手早く打って返す。慣れた人間には、簡単なのだが・・。

『バリバリ元気だっての!ってか、約束忘れてねぇから、怖えぇ事サラッと書いてよこすなよ!?俺はお前の方が、心配だよ。何かあったら、連絡しろよな?大好きだぜ!』

ピピッ

「早っ!?」

送って数秒で返ってきたことに、ロミオは驚きながら、メールを見ると、

『馬鹿者。私もだ』

とだけ書いていた。

何となくさっきまで悩んでた自分がバカバカしくなり、ロミオは少し晴れやかな気分になる。

それから、もう1度携帯端末で文章を打ち、メールに乗せて、本来の目的の人へと送った。

 

『ユノさん、お疲れっす!!実は是非お願いしたいことがあるんっすけど・・・』

 

 

団欒室のカウンターで、ナナは大量に並べた食べ物を、片っ端から口の中へと放り込む。

「んぐんぐ・・・うっ・・ん!!明日の為に、いっぱい食べとかないと!!」

ひたすら食べまくるナナに、周りの人間は唖然として見ていた。

 

「んぐんぐ・・・、ん?はへふ?(食べる?)」

《いえいえいえいえ・・》

 

 

ヒロはエントランスの長椅子に座って、中央に設置された巨大スクリーンを見ている。

映し出された極東全域の地図を見て、明日どう動こうかと考えていたのだ。

ジュリウスから、β班としてシエルとナナを預かって動くことになったヒロ。今は珍しく緊張しておらず、むしろ自分でも驚くほど冷静になっている。

そんな脳に、有りとあらゆる事を想定して叩き込んでいく。

ある程度自分の中に折り合いがついたのか、ヒロは大きく息を吐く。そこで初めて、自分の隣に、誰かがいると気付く。

「あ・・・シエル。ごめんね、気付かなくて・・」

「いいえ。・・・ヒロ、明日はよろしくお願いします」

「うん。よろしく!」

そう言ってから、ヒロは再び視線を、巨大スクリーンへと移す。しかし、シエルがそのまま隣にいるのが気になって、集中を削がれてしまう。

すると、シエルが急に自分の肩に寄りかかってきたので、ヒロはぎょっと驚いて体を強張らせる。

「・・あ、の・・シエル?・・・どしたの?」

「・・・黙ってて下さい。今は、私も上手く喋れそうにありませんから」

「そ・・そう・・」

それから二人は、しばらくは静かに時の流れに身を任せていた。

 

「・・・・あのさ・・・、本当にどうしたの?」

「・・・・・鈍感・・」

「はい?」

「何でもありません!」

「・・・怒ってる?」

「・・・・他の女性に優しくしないなら、許してあげます」

「ん?・・・えっと、なんで?」

「もう良いです!」

「あれー・・・」

 

 

フライアの研究所。

静かなその場所で、小さく響く笑い声。

その声の主、ラケル・クラウディウスは、思い通りに事が進むさまを喜んでいるのだ。

「うふふふふっ。・・さぁ、これで条件は・・整ったわ。誰も、運命を覆せない」

 

作戦前夜は終りを告げ、朝を迎えようとしていた。

 

 

 

作戦指令室で、レンカは無線から連絡を取る。

「各配置は完了したか?」

その声に応えるように、各班の代表が返事を返してくる。

『こちら防衛班。極東支部全域に、配置完了!』

『ブラッドα、北地区南、配置完了』

『第1部隊、北地区北東、配置完了!』

『第4部隊、北地区北西、配置完了だ』

『ブラッドβ、北地区東、配置完了です!』

『アリサ・イリーニチナ・アミエーラ、配置に着きました』

『じ、神機兵の配置、完了です。・・はい』

全ての位置情報を確認してから頷き、レンカは荒神の動きへと目を向ける。

「今のところは真っ直ぐ南下している。戦闘が始まれば、おそらく分散してくるだろう。常に無線の回線は、指令室へと繋いでおけ」

《了解!!》

伝え終えたレンカは、大きく深呼吸をしてから、荒神を表すポインタに向かって、声を洩らす。

「さぁ・・・・どうでる?荒神」

 

黙って立っているのが我慢できないのか、エミールは普段の態度には似つかわしくなく、そわそわしている。

それによって、カタカタと神機が音を立てるのをうるさく思ったのか、エリナがエミールを睨みつける。

「エミール!あんた、うるさい!」

「エリナー。お前もうるさいぞー」

冷静にツッコミを入れながら、コウタは前方から眼を離さない。そんな彼に、エミールはエレガントにポーズを決めて見せてから、喋りかける。

「隊長!迫りくる敵がわかっていながら、何故待たなければいけないのですか!?騎士ならば!立ち向かうべきです!!」

「俺、騎士じゃないしな。それに、騎士だって待ち伏せ位するっての」

「そ・・・そうですか」

隊長として扱いに慣れているのか、コウタはあくまで冷静に努める。『真面目に相手をするだけ損をする』と、ヒロから助言をもらったのもあるが・・。

そこへ、西に陣取っている、ハルから連絡が入る。

『コウタ、聞こえるか?』

「ハルさんっすか?聞こえるっすよ」

『こっちで荒神を視認した。少しこっちに反れてるかもしれねぇ。西に配置、流しといてくれ』

「了解!」

無線を切って歩き出すと、エリナとエミールがそれに続く。しかし、宛がわれた神機兵はその場から離れずに、静かに佇んでいる。

「・・あの!?神機兵、良いんですか?」

エリナが気になり聞いてくると、コウタは面倒くさそうな表情をして、手を2,3度横に振る。

「良いんだよ、別に。所詮扱ってんのは、現場を知らないずぶの素人なんだ。戦闘だけ期待すりゃ、それで御の字ってもんだよ。それにな・・」

「それに?」

聞き返してくるエリナと、その横にいるエミールに目で合図してから構えさせ、自分も神機の銃口を、前方へと向ける。

「俺、あいつ嫌いみただし・・。行くぞ!」

そう叫んで、前方に見えてきた荒神へと走り出す。それに続いて、エリナとエミールも応える。

「「了解!!」」

第1,4部隊が接触したことで、戦闘の幕は切って落とされた。

 

 

 

 





最近、自分が『オタク』ではなく、『ヲタク』だと気付きました。

ははは・・・。

次は重要な話ですね・・・。頑張ります!色々と・・・。

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