GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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33話 闇の中で・・

 

 

目を閉じて風を受けながら、ヒロは静かに連絡を待っている。

フライアで極東を離れてから、1週間。

少しずつ一人の任務に慣れてきたヒロだが、仲間がいるのが当たり前の生活が長くて、夜眠るのにだけは慣れれずにいた。

 

ピピッ

『ヒロさん。オラクル反応の接近を確認しました。準備、お願いします』

「了解、フランさん」

ヒロ専属にと一緒に戻ったフランの連絡に答えてから、ヒロはゆっくりと目を開け、立っていた崖から下を見降ろす。

「・・・・ふぅー。・・・行きます!」

そう言って飛び込み、ヒロは荒神へと走り出した。

 

 

 

「「はぁ・・・」」

夕飯時に、団欒室で食事をとっている最中、シエルとエリナは、同時に溜息をもらす。

その様子を各部隊が目にしてから、「またか」といった感じで、苦笑いを浮かべる。

「シエル。ヒロが心配なのはわかるが、食事はきちんと取るべきだ」

「エリナ。ヒロがいなくて寂しいのはわかるけど、何べん溜息つきゃ良いんだよ」

ジュリウスとコウタ、それぞれの隊長に注意されると、二人は焦った様子で立ち上がる。

「なっ!?違います!ヒロなら大丈夫と、信じてます!!」

「べ、べべ、別に寂しくなんか!ちょっと先輩に会いたいなって、思っただけです!!」

「「・・・・・・え?」」

お互いが言った言葉に反応し、シエルとエリナは顔を見合わす。そんな二人の様子に、ジュリウスとコウタは、今度は自分達が溜息を洩らす。

ヒロの事を気にしているのは、何もシエルとエリナだけではない。ジュリウスを始めとするブラッド隊、第1部隊、第4部隊、防衛班など・・・。皆口にはせずとも、単身フライアと旅立ったヒロの事を、心配していた。

「あぁ!ヒロ君!!君をこんなにも遠くに感じると、僕は・・・僕は!胸が張り裂けて、食事もいつもの3分の2しか、喉を通らない!!早く帰ってきてくれ!君の騎士道精神が、僕は欲しい!!」

「それだけ食えれば、十分だろう」と皆が思う中、タツミが目を細めながら、手に持ったスプーンでエミールを指し、口を開く。

「こいつ・・・、やっぱホモじゃねぇのか?」

《うん・・・・》

皆が頷いた姿が目に入らないのか、エミールは椅子の上に立ち、涙ながらポーズを決めている。

そこへ、遅めの食事にやってきたレンカに殴り飛ばされ、エミールは1時間程正座させられた。

 

 

任務を終えたヒロは、部屋でシャワーを済ませ、ベッドへと体を放り込んでいた。

自分がこんなにも寂しがりだとは思わなくて、ヒロは恥ずかしさ半分、疲れ半分で、食事をせずに眠ってしまおうと考えていたのだ。

目を閉じて、ゆっくりと微睡んでくるのを感じると、ヒロはそれに身を預けて、静かに意識を閉ざす。

 

『君は・・・・、選ばれた子だ』

(・・・・・なに・・・、これ?)

『君は・・・・、英雄になれるんだよ?』

(これは・・・、いったい・・)

『誰よりも強く・・。荒神を、倒すんだ・・』

(夢・・なのか、な・・・)

 

『君は、人間じゃないのだから』

 

「わぁぁっ!!?」

体中から汗を噴き出させ、ヒロは勢いよく起き上がる。

嫌な夢を見てうなされていたのか、ヒロは息を荒くして頬を伝う汗を拭う。

「今・・・なにか・・・・」

夢の内容を思い出そうとして、ヒロは目を閉じてみる。だが、濃くかかった霧のようなものに邪魔されて、もう何も思い出せずにいた。

「・・・・・・・・・はぁーー」

大きく溜息を吐いてから、ヒロは再びベッドに倒れ込む。それから、左腕で顔を隠すように覆うと、自然と口から声を洩らす。

「・・みんなに、会いたいな・・・・」

それからゆっくりと起き上がり、汗を流そうとシャワー室へ足を運ぶ。

神威ヒロの出生を、誰も知らない。

彼自身、ここ2,3年より前の記憶が、存在しないのだから・・・・。

 

 

明けて次の日、任務を終えたヒロに、フライアでの仕事の終了が言い渡される。それを聞いてホッとしたのも束の間、ヒロはフライアの大広間で緊張をしていた。

 

『助かったわ、ヒロ。お礼と言っては何だけど、一緒に食事でも、どう?』

 

ラケルに誘われたのであれば断れぬと、軽い気持ちで受けた誘い。食堂に行くと思っていたら、想像の斜め上の場所に通され、ヒロは落ち着きなく周りを見渡している。

(・・・あれ、シャンデリア・・かな?初めて、見た)

見るもの全てが仰々しく、ヒロはテーブルマナーを知らない事に、ひどく戸惑っている。

そこへ、遅れてラケルが入室してくる。すると、傍につていた人に声を掛け、ヒロの対面に位置する場所へと落ち着く。

「さぁ。晩餐を始めましょうか?遠慮なく食べてね」

「は・・・・はい!」

緊張に上ずった声を出し、ヒロは目の前に並べられる銀食器を数え、「多くないか?」と汗を流す。

 

カチャカチャ

運ばれてくるもの全てが見たことがなく、ヒロはまずどうやって食べるかを考えてから食事をするを繰り返す。

今は、目の前に出されたお肉らしきものをジッと見つめ、それが何なのかを考えている。

「・・ヒロ?子羊の肉は、お嫌い?」

「へ?あ、あぁ!子羊、ですか?いや、そのー・・・・、どうでしょう?」

苦笑しながら、ラケルの見よう見真似で切り分け、口へと運ぶ。

(・・・緊張、してるのかな?・・・・・味がわからない)

吐き出すわけじゃないから、きっと美味しいと思いながら、ヒロは不器用ながらも切り分けて、手早く口へと運ぶ。

そんな彼を見ながら、ラケルは静かに笑って声を掛ける。

「そういえば、ヒロ?あなたは、どうしてゴッドイーターに?」

「え?・・・・・それは、えっと・・」

本来、ゴッドイーターになる際、過去のありとあらゆることをデータとして残すため、大仰な面接が行われる。

しかし、ブラッド隊は特殊で、全員ラケルの息がかかった者ということで、その詳しいデータは、ラケルが個人的に取ったモノのみとなっている。

その際にも、ヒロはほとんどの質問を、「よく、わかりません」と答えていて、これを機に聞いてみようと思ったのだ。

「その・・、前にラケル博士に面接してもらった時にも言ったんですが、僕は・・昔の事を覚えてません。ただ、荒神を倒すのはゴッドイーターだって知って・・・。それから、ある人に出会ったのが・・切っ掛けに・・」

「ある人?私も、知っているかしら?」

「はい!極東の英雄、神薙ユウさんです!」

「・・・・神薙、ユウ・・・・・・・」

自分が記憶する中で、1番の自慢ともいえる記憶。それを嬉しそうに話したヒロだったが、何故かラケルは・・・普段見せたことのない、感情の『無』を表す顔をする。あるいは・・・・・、嫌悪・・。

「あ・・・・・あの、ラケル博士?」

急に黙ってしまうラケルの表情を伺っていると、彼女は何も無かったかのように、いつもの優しい顔に戻る。

「いえ。何でもないの・・。そう。良き出会いが、あなたをゴッドイーターにしたのね」

「は・・はい」

内心ビクついていたヒロは、ホッと胸を撫で下ろす。

だが、その後にラケルが口にした言葉に、ヒロは更なる動揺を覚えてしまうのだった。

「でも・・・間違いは、正さないと。ヒロ・・。神薙ユウは、英雄なんかでは、ないのよ」

 

ヒロが退室した大広間で、ラケルは静かに紅茶を嗜む。

そして静かに、長く息を吐いてから、目を鋭く細め、過去の出来事を思い出す。

たまたま本部ですれ違った、神薙ユウの事を・・。

『・・・あなたは・・・・、誰ですか?』

ピシッ

彼の言葉を思い浮かべて、ラケルは手の中のカップに力を籠め、ヒビを走らせる。

「・・・邪魔は、させないわ・・・・。神薙ユウ・・・・・」

ガシャンッ!!

そのままカップをを握りつぶして、ラケルも大広間から退室した。

 

 

 

明後日、フライアは極東支部へと到着する。今度はグレム局長の指示で、装甲壁の外に着ける形で・・。

東口ゲートを潜ってから、グレムはよっぽど榊博士が嫌いなのだろうと、ヒロは苦笑する。

そんな彼の元へ、近付いてくる姿が目に入る。

「ヒローーーー!!お帰りーーー!!」

ブラッドの先頭に立って叫ぶナナの声に笑顔を作り、ヒロは少しだけ足を速める。

そんな彼等の後ろから、もの凄い速さで走って来る影が二つ。

「シエル・・・エリナ。って、何で走って来るの?」

ヒロが首を傾げている間にも、シエルとエリナは競走でもしているかのように、肩をぶつけている。

「・・エリナさん?別に急がなくても、同じ部隊の私が迎えますんで、ご心配なく」

「・・シエルさんこそ。先輩の穴を埋めるのは、大変だったんでしょ?どうぞ、休んでいて下さい」

何やら言い合いしているなと思って見ていると、ヒロの肩にそっと乗る手がある。その無駄に華麗な仕草に覚えがあり、ヒロはギギギっと顔をそちらに向ける。

「ふふっ。待っていたよ!我がライバル、ヒロ君!!君の帰りが待てず、ここに張っていて正解だったようだね!」

「・・・・・・・えー」

口から息を吐くように声を洩らして、ヒロは顔の表情を無くしていく。

その隣では、特に気にせずポージングを決めるエミール。そこへ、もの凄いスピードで飛んできたシエルとエリナが、エミールの顔面に蹴りを決める。

ゴシャアッ!!!

「はぁーーー!」

「何であなたが1番何ですかーー!!」

「何であんたが1番なのよーーー!!」

二人のツインキックに吹っ飛ばされ、エミールは華麗に回転しながら、儚げに地に伏した。

 

 

極東に戻った事を、榊博士に報告してから、ヒロは極東の自分の部屋へと移動する。その途中、

「・・・お?いよっ!ヒロ!」

「あ、ロミオ先輩」

ロミオが支部長室前で待っていた。

ヒロが見せる笑顔に、ロミオは頬を掻いてから、喋りかける。

「ちょっとさ・・・、付き合わねぇ?」

 

ヒバリに届けを出してから、ロミオはヒロを連れてある場所へとやって来る。

「ここは・・・」

そこには、微量ながらも自然の草が生え育ち、それに護られるように水が溜まった、小さな池だった。

フライアの庭園程、整えられているわけでは無いが、太陽の光でキラキラと水面が輝く様は、素直に美しいと思える。

「良いだろ、ここ?前にハルさんと任務に出た時に、教えてもらってさ。ブラッドみんなに見せたくて・・・今日は、お前を誘ったんだ」

「先輩・・・・・、ホモですか?」

「ちっげーよ!!お前が最後の一人なだけだよ!!」

「冗談ですよ」

揶揄ったことに頭を下げるヒロに、ロミオはフッと笑って見せてから、池へと視線を移動させる。

「・・・俺さ、みんなに感謝してんだ。俺なんかを・・・あー、やっぱ今の無し!とにかくさ、俺・・・極東に来て、本当に良かったって思う」

「・・・ですね。僕もです」

ヒロの返事に頷いてから、ロミオは改めてヒロへと、お礼を口にする。

「ヒロ・・・。マジでありがとな!これからも、よろしくな!」

「はい。ロミオ先輩・・」

それからしばらく池を眺めてから、二人は極東へと戻って行った。

 

 

 

ピピッピピッ

「・・・はい。あぁ、九条博士・・。はい・・はい・・。そうですか。完成、されたのですね?わかりました。・・・えぇ。試験運用の日取りを、極東支部と相談しましょう。・・・はい・・・では」

ピッ・・・

ピッピッピッ・・ピッ

「・・・・私です。・・どうも、ご部沙汰しています。えぇ・・・。今日は折り入ってお願いがございまして・・・。はい・・。・・・・・・神薙ユウの所在地と、2ヶ月先までの彼の予定を・・・お教え願えますか?」

 

 

 

 





少しだけヒロの事を書きました。

後々、全てを明かします!(私の妄想ですが・・w)

次からが・・・・、憂鬱だ・・。



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