GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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3話 荒廃した世界の歌姫

 

 

壁を背に目を閉じているヒロ。そこへ、無線からジュリウスの声が入る。

『・・・ヒロ、今だ』

「ふっ!!」

壁を飛び越えてから体を捻り、スコープに標的をとらえた瞬間、

ダダダッ!

グアゥッ!!

ヒロのバレットがコンゴウの足を貫く。

それに合わせて走り込んできたジュリウスが、神機を振り上げ頭を砕く。

ゴズッ!!

「ヒロ!捕食だ!」

「はぁっ!!」

グリリリィッ!

ヒロの神機が、倒れたコンゴウの背中からコアを削り取ると、コンゴウは震える手を天に伸ばすような仕草をした後、その体を地に伏せた。

戦闘の終了に、ヒロは緊張を解いて息を吐くと、ジュリウスがフッと笑みながら隣へと歩み寄る。

「お前にはこれ以上のアドバイスは無いな。ある意味、教え我意がない」

「そうかな?う~ん・・・・でも、今2発外したし・・」

「足止めだけだというのに・・、お前は欲張りすぎだ」

「いえいえ。隊長ほどじゃないですよ」

「ふっ・・」

笑い合う二人、ヒロとジュリウス。

もう何度目かの共闘で、かなり息の合った連携が出来るようになっていた。元々、精神的にも相性が良いのかもしれない・・。

そこへ、

 

ドォーンッ

 

『ちょっとぉ・・・、先輩はあたしを殺す気なの!?』

『お前が突っ込みすぎるから、距離を取らせようとしただけだろう!?』

遠くの爆発音と無線からの声で、ヒロは頬を掻き、ジュリウスは溜息を吐いてから察する。

「やれやれ・・。ヒロ、二人のフォローに向かうぞ」

「了解。・・・またなんか、揉めてるね」

「全く・・・、どうしたものかな・・」

再度溜息を洩らすジュリウスの肩を軽く叩いてから、苦労続きの隊長を労うヒロ。

現場に到着してみれば、体のあちこちから煙を出すナナとロミオ、それと・・標的だったシユウが転がっていた。

 

 

フライアのロビーから階段を上ると、オペレーターが控えている受付と、その奥に神機保管庫がある。

それぞれ神機を定位置へ戻すと、先を歩いていたジュリウスとヒロは、受付で礼をしてくるフランへと声を掛ける。

「ただいま、フランさん」

「今戻った。これで暫くは、フライアの近辺に近付く荒神はいないだろう」

「お疲れ様です。そうですね・・・。まだブラッドは正式に認可された部隊ではないので、他の支部や本部からの要請もありません」

「まぁ、もうすぐ全員揃う。その時には、フランの仕事を増やしてやれる」

「わかりました。お待ちしています」

苦笑してから再び一礼するフランに手を振ってから、ジュリウスはヒロへ頷いてから、一人エレベーターへと乗り込み去って行く。

残されたヒロは、今だ言い合いを続けるナナとロミオを見てから、「押し付けられた」と溜息を吐いてから、二人の仲裁へと向かった。

 

 

フライア天板のヘリポートに、一機のヘリが到着する。フライア局長グレゴリー・ド・グレムスロワと、開発室長のレア・クラウディウスが迎えに立っていた。

因みにレア博士は、ラケル博士の姉にあたる。

二人の招待に応じてやってきたのは、フェンリル外で暮らすサテライトの人々の物資供給などに力を注ぐ、『歌姫』葦原ユノとマネージャーの高峰サツキである。

今や世界のアイドルと化したユノは、戦場に疲れた兵士の「息抜き」と称したコンサートを行い、その裏で、サツキがフェンリルとの物資取引、更には裏情報を取得し、ゲリラ放送で暴露などの活動を行っている。

勿論、後者は秘匿にだが・・・。

「よくいらっしゃいました!」

「ここまで、わざわざありがとうございます!」

「話は、中で!」

挨拶をする二人を促し、彼らを先導に、ユノとサツキはフライアへと入っていく。

 

「いやいや~。こうしてお目にかかれるなんて・・。私の娘も、ラジオ放送の時からの、ファンでして」

「光栄です。私などの歌を支持して下さって」

ロビーへと続く廊下を進みながら、グレム局長の言葉にユノは軽く頭を下げる。その仕草が可愛いのか、グレム局長の緩んだ頬は、より垂れて地面に落ちそうなほどだ。

そんなグレム局長の顔を横目に見てから、サツキは心の中で「狸め」と呟いている。

「ご謙遜を。今や世界で、あなたのことを知らない人などいませんわ。そんなあなたが慰問に伺ってくれたとなれば、うちの職員や兵士の励みになります」

「そう言っていただけると、自分の活動に自信が持てます」

その笑顔を崩さず大人を相手するユノに、グレム局長もレア博士もより一層感心している。そんな様子を目にしてか、サツキは苦笑してから息を吐き、口を開く。

「今回のお招きに応じたのは、こちらのフライアからも、本部訪問に口添えしていただければと思いまして」

「あら、ストレートですね。やはり、本部の方にもコンサートを?」

聞き返してくるレアに、サツキは1度頷いてから続ける。

「本部の方々には中々認可をもらえず・・。向こうの方にも、この子の歌を届けたいのですが」

「そういうことなら、私が紹介状を書きましょう。な~に、あなた方にお会いすれば、すぐに意見も変わりますよ」

「ありがとうございます」

グレムの計らいに、サツキが頭を下げた頃には、フライアの受付前にさしかかる。そこで足を止めたグレムは、ユノとサツキに下心丸見えの提案をする。

「どうです?今日は泊って行かれては?今日は珍しく、天然牛の肉が手に入りましてなぁ。きっとお口に合うかと」

その分かりやすい誘い文句に、サツキより早くユノが口を開く。

「大変ありがたいのですが、今日はここの後に、極東支部へと移動して、現在のサテライト拠点の食糧事情の改善について、お話ししなければなりませんので」

「そ、そうですか・・、いや、大変ですな~、はっはっ!」

まさか17歳の女の子にそんな返しをされるとは思ってなかったのか、グレム局長は笑って誤魔化さざる負えなくなる。それを可笑しく思ったのか、レアも声を殺して笑い、サツキはユノにウィンクして見せる。

気を取り直すように咳払いをしてから、グレムは階段下のエレベーターへと案内しだす。

まだ煮え切らないロミオとナナの言い合うロビーへ・・。

 

「だからさ、お前は前に突っ込みすぎなんだよ!」

「えぇ~、先輩がビビりすぎなんじゃないんですか?」

「ビビッてねぇし!?」

ちょっと疲れて座っていたヒロは、何度目かの溜息を吐いてから、重い腰を上げて二人に割って入る。

「ナナもロミオ先輩も・・・、もう良いでしょ?言いたいこと言い合ったんなら、今度はお互いの妥協点探そうよ」

「妥協するのはこいつ」

「妥協するのは先輩」

示し合わせたようにお互いを指さす二人に、本当は自分は揶揄われてるんじゃないかと、ヒロは目を細める。

「先輩の引けた腰を、前に出せばいいと思う」

「だ~か~ら~、ビビッてないって・・!」

「わっ!?」

興奮したロミオが手を振り上げると、油断していたヒロがそれに驚き後ろに仰け反る。そこへ、

「え?きゃっ!?」

通りすがったユノにぶつかり、それをサツキが支える。慌てて体制を整えたヒロは、グレムやレアの顔も目に入って、青ざめる。

「す、すいません!ボーっとしてました!」

「ちょっと!どこに目を付けてるんですか!?・・・え?」

「サツキ、大丈夫だから。こちら・・こそ・・」

捲し立てるサツキを宥めながら、ユノも振り返ってヒロを見る。そして一瞬だが、二人の思考が止まってしまう。恐る恐る上げたその顔に、何故か既視感を感じてしまったのだ。

「・・・・あ・・っと、その・・」

「バカモン!大事なゲストに、失礼を働きおって!」

《すいません!》

凝視してくる二人に見とれていたのも束の間、グレムに怒鳴られ、今度はナナとロミオも一緒に深々頭を下げて謝る。それに目を覚ましたようにお互いを見返すユノとサツキは、短く深呼吸をしてからグレムへと顔を向ける。

「私は大丈夫ですので、どうか怒らないで上げてください」

「そ、そうですか?・・・わかりました。お前等、感謝するんだな!全く、戦闘しか取り柄のない馬鹿共は・・」

文句の言い足りないグレムがエレベーターに向かうのに、ユノとサツキも後に続く。その場に残ったレアは、しょげているヒロの頬を撫でてから、軽く注意を口にする。

「ロビーでは、他の人に迷惑はかけないように。騒ぐ時には、娯楽室を使うか、私に許可を取りに来ること。わかった?」

「あ・・・・、はい」

「よろしい!」

軽く手を振ってから去って行くレアを待ってから、エレベーターの扉は閉まり、その場には三人だけとなった。

そんな中妙に静かだと思ったのか、ヒロとナナが揃ってロミオの方を見る。すると力でも溜めていたのかの如く、ガバッと顔を上げてから、大きく開いた眼で訴えかけてくる。

「今の・・・・ユノじゃん」

「「?・・・誰?」」

「知らねぇの!?葦原ユノじゃん!?『歌姫』の!」

腕をブンブン振り回しながら興奮するロミオに、ヒロとナナは首を傾げたままだ。

「知ってる?ナナ」

「知らない。でも、可愛いかった~!」

「何で知らないんだよーー!!」

頭を抱えて暴れるロミオ。そこへ、入れ替わりにジュリウスがエレベーターから出てくる。

「まだ騒いでいるのか?ロミオ」

「あ、ジュリウス!丁度いいところに!葦原ユノ!知ってるよな!?」

「ん?・・・あぁ、今日は彼女の慰問の日だったな」

「ほら見ろ~!知らないのは、お前等だけじゃん!」

彼の返事に跳んで喜ぶロミオに、馬鹿にされてると剥れるナナ。この状況はとジュリウスが見てきたので、ヒロは苦笑してから肩を竦める。その反応が可笑しかったのか、フッとジュリウスは微笑んだのだった。

 

 

移動の為に待たせていたヘリに乗り込み、ユノとサツキは極東支部へと向かっていた。

暫くは二人共黙っていたが、その沈黙を破るように、サツキが声を洩らす。

「似ていたわね・・・」

「・・・うん。一瞬心臓が止まるかと・・」

その返しを期待してたのか、途端にサツキはニマーッと悪戯な笑みをユノに向ける。それに気付いた時には、ユノは逃げれないでいた。

「やっぱり~。まだ、お兄ちゃんが恋しいのぉ?」

「ち、違っ!んもぅ!だから、サツキとこの話したくなかったのに・・!」

「良いじゃない。私達の仲なんだから、教えてよ~」

「いやっ!!」

面白がってつついてくるサツキに無視を決め込んでから、ユノは窓の外に焦ったヒロの顔を思い浮かべてから、クスッと笑った。

 

 

 





仮タイトル『荒地の歌姫』

読み返したら、どうしても法子さんじゃなくて、三輪さんっぽいからやめました。

ユノ「黙れ小僧!!」

あ、キャラ違った。

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