GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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29話 極東支部の日常

 

 

戦場を駆ける、ゴッドイーター達。

そんな彼等にも、戦いとは別の生活が存在する。

 

 

 

その1

 

時間を持て余したシエルは、特に目的もなく、団欒室へと足を向けていた。

そんな時、ナナと極東の女性隊員が、集まって騒いでいるのが目に留まり、シエルは自然とそちらへ足を運ぶ。

「あ!シエルちゃん!やっほー!!」

「どうもー!シエルさん!」

「お一人ですか?」

「こっちこっち!」

呼ばれたことに対し、笑顔を見せてから、シエルは近寄って喋りかける。

「皆さん集まって、どうされたんですか?」

「実はね、極東の・・・・えっと・・、四天王?」

ナナが首を傾げるのに苦笑しながら、三人の中の一人が、代表して答える。

「違いますよ、ナナさん。極東の『BeautifulQuartet』ですよ」

「ビューティフル・・・ですか?」

聞き返したシエルに、三人は勢いよく詰め寄り、力説を始める。

「そう!この極東支部が誇る、四人のイケメンの事を、私達は敬意を込めて、そう呼んでるんです!」

「第4部隊隊長、真壁ハルオミさん。あの甘いマスクから飛び出す細やかな気遣いと微笑み・・。例え軽い人とわかっていても、こう・・・背筋がゾクゾクって」

「極東支部教官の、空木レンカさん。普段厳しい言葉を発する彼が、唐突に見せる優しさ。その笑顔を、アリサ先輩ではなく・・・私だけのものにしたい」

熱弁が続く中、シエルはとんでもない所に足を運んだと、頬に汗を伝わせる。そんな彼女とは対称に、隣で聞いてるナナは、ひたすらニコニコと楽しんでいる。

「そして極東が誇る最強の一人、神薙ユウさん。あぁ、ただ優しく微笑んで下さるだけで、私の心は春の様に暖かい。リッカさんという障害を越えて、抱き締めてほしい」

「そ・・・そうなん、ですか?」

何とか言葉を口にしたシエルに、今度は三人揃って声を発する。

「「「そして!何といっても・・・・」」」

三人が溜めに溜めて言おうとしているところに、その当人がエレベーターから姿を現す。

「「「きゃぁーーーっ!!!ソーマ様ーーーーーーーっ!!!!」」」

無表情のままソーマは視線だけを移動させ、声のする方へと声を掛ける。

「あ?・・・どうした?」

「「「はぁ~・・・・」」」

ドサッ

話し掛けられたことに腰が砕けたのか、三人は嬉しさに涙を流しながら、その場に倒れて失神した。

そんな様子に慣れているかのように、ソーマは軽く息を吐いてから、受付へと歩き出す。

そして、声を殺して笑うヒバリに、「ふん」と鼻を鳴らしてから、口を開く。

「ヒバリ、少し出てくる。それと・・・・あれ、片付けといてくれ」

「ふふっ、わかりました。どうぞ、お気をつけて」

そのやり取りを眺めながら、ナナはシエルを覗き込んで喋りかける。

「ねぇねぇ、シエルちゃん!あたし達ブラッドも、『BeautyConditioner』作る?」

「・・・・髪の毛が艶やかになりそうですね」

「え?なんで?」

ナナの間違いを正さずに、シエルはヒロにもファンクラブが出来ないかと、内心ヤキモキしていたのだった。

 

 

 

その2

 

団欒室の中に設けられた、巨大スクリーン。

ニュースを眺めていたギルの隣に、カノンはちょこんと座っている。微妙に距離を詰められたと思い、ギル自身微妙な気持ちを表情に表している。

すると、

『みんなーっ!神機兵に乗って、世界を守りましょ!?』

フェンリルの神機兵搭乗者を募集する、宣伝が流れ出す。

妙にブリブリしている昔のアイドルチックな女の子、『シプレ』を見て、ギルは顔をしかめて声を洩らす。

「・・・何だこりゃ?」

「知りません?『シプレ』。最近男性隊員の間で、大人気なんですよ?」

その言葉を拾って、カノンが会話に持ち込むと、ギルはそれに気付かないのか、更に言葉を返す。

「神機兵と、何の関係もないじゃねぇか?何なんだ?この女は・・」

「さぁ・・、素性は一切明かしてませんし・・・。ただ、噂ではユノさんに対抗して、本部が後押ししているアイドルだとか!」

「それが本当なら、上層部は随分と平和なもんだ。サツキさんが『根が腐ってる』というのも、頷ける」

「あくまでも、噂ですよ!?」

自然と会話をしていることに、カノンは嬉しさに頬を赤くしている。と・・。

『今日は、私の最新ナンバー、『コイメカ』を聞いてもらいます!』

「何を言ってんだ、こいつ・・・・、ん?」

「え?・・・・えぇ!?」

悪態をついていたギルの変化に合わせて、カノンも一緒に振り向くと、コウタを先頭にした男衆が、綺麗に整列して構えていたのだ。その中には、ロミオの姿も・・。

「あの・・・・、コウタさん?」

「黙ってろ、ギル。ここからは、俺達の時間だ」

「へ?」

カノンが声を洩らしたその瞬間、画面の中のアイドルは、パッとポーズを決めてから、いつも(?)の言葉を口にする。

『シプレ~』

《シルブプレーー!!》

男達の叫びに、ギルとカノンは思わず飛び退いて、驚愕の表情を浮かべる。

そして、『シプレ』の曲に合わせて、男達の祭りが始まる。

 

『女の子は♪恋の機械♪計~算は苦~手なの♪』

《・・・・はい!・・・はい!・・・・・・・・はいはいはいはい!!》

『もちょっとだけ♪後ちょこっとだけ♪お~ね~が~い♪こ~っち向いて♪』

《・・・・・・・はい!・・・・・・はい!・・・・・・・・こ~っち向いて!!》

『オ~~バ~ヒ~ト♪目と目が合~った瞬間♪』

《おーーーーー!ふわっふわっふわっふわっ!!っおい!!っおい!っおい!っおい!》

『起動し~た♪恋を知~った♪この胸の~ド~キ~ド~キ~~♪』

《おーーーー!おーーーーー!!はいはいはい、へいっ!ド~キ~ド~キ~~♪》

『神機兵~』

《シルブプレ!!》

 

曲が終わると、何事も無かったかのように、男達は去って行く。その様子に唖然としていたギルは、固まってしまったカノンを抱えて、医務室へと逃げ去った。

 

 

 

その3

 

「ちょっと!今回は私がヒロ先輩を誘ったんだから!エミールが引いてよ!!」

「ふっ。いくらエリナの頼みとはいえ、それは聞けないな。何故なら!彼と僕は、運命共同体だからだ!!」

目の前で繰り広げられる、自分の取り合いに、ヒロは感情を無にして「早く終わらないか」と、切に願っていた。

 

少し前に、エリナに呼び止められたヒロは、訓練に誘われた。

最近打ち解けたなぁと思っていたので、より関係を良好にする為に受けたところで、どこから湧いて出たのか、エミールが「待った!」をかけてきたのだ。

そして、二人の関係上ヒートアップしていき・・・・今に至る、という訳だ。

 

「先輩は、私の誘いを受けてくれたの!あんたはしょっちゅう、任務に行ってもらってるじゃない!」

「ふふっ、エリナ。それは違うな。僕達は!共に必要としあってるからこそ!任務を共にしているんだ!!」

「あんたなんかが、先輩と肩を並べていると思ってること自体、腹ただしいのよ!」

「思っているのではない!感じているのさ!僕とヒロ君は、ね!!!」

(帰りたい・・・・・)

ヒロがだんだんとその場に沈んでいきそうな感覚に襲われていると、

チャーチャララチャ~♪ジャッジャン♪

どこからか音楽が流れ出す。

そして・・・ついに、彼が動き出す。

「ふっ・・。全くお前等は・・、何て青春真っ盛りなんだ」

「は・・ハルさん!?」

ハルの登場に、エリナとエミールは口論を止め、ヒロは・・・更にややこしくなりそうな予感に襲われた。

面倒になる前に先手を打とうと、ヒロはこちらに歩いてくるハルに近寄る。だが、彼が喋るより先に、口の前に人差し指を立てられ、「ちっちっちっ」と横に振られる。

「安心しろ~、ヒロ。ここは、俺に全て任せておけ」

絶対に面白がっているというジト目で見つめるヒロに、ハルは素知らぬ態度で、エリナとエミールの前に立つ。

「いいか~エリナ、エミール。昔の偉大なる人は、こう言った。『時に欲しいモノは、力ずくで奪え!』と!!」

「力ずくで!?」

「奪う!!」

二人の復唱に、ハルは1度頷いてから、両手を広げて話を進める。

「ただ戦えと言う訳じゃない。そう!文字通りに、奪い合うことこそに!意味がある!!」

「な、成る程・・」

「一理、ありますな」

本人の知らぬ間に何かが決まったのか、二人はハルに言われるまま、ヒロの腕を1本ずつ握る。

そして、ハルが高々と上げた右手を下ろして、

「始め!」

と叫んだ瞬間、力いっぱい引っ張り出した。

「いっ・・・いだだだだっ!何!?なんな・・痛い痛い!!」

当たり前だが、ヒロは痛がっている。

その様子を心配したのか、エリナがハルへと声を掛ける。

「あの!ハルさん!?先輩、もの凄く痛がってるんですけど!?」

「ふっ、青いなエリナ。痛みを分かち合うことこそが、真の絆を生むということじゃないか!」

「そ・・・くっ!そう、何ですか!?」

ハルの答えに首を傾げているエリナの隙をついて、エミールが勝負をかけようと力を籠める。

「ふんっ・・・ぬ~!!エリナ!そんなに心配なら、ヒロ君を離すといい!!後は僕に任せてね!!」

「なっ・・こっのぉ!!だ・れ・が、離すもんかーーー!!!」

「いだだだだっ!!!裂ける!割けるーー!!まっ・・痛いーーー!!」

流石にヒロが涙目になってきたところで、ハルは不敵に笑みを浮かべながら前へと歩み出る。

「そうだ。そして、死力を尽くして欲しいものを我が手にと引っ張った時、痛みを訴える相手を気遣い、手を離した方が勝利者となる!」

そう力説すると、二人はハッとしてその手を・・・・、離してなかった。

「な・・・・何、言ってるんですか!?離した隙に、エミールが先輩を連れてっちゃったら・・・くぅっ!どうするんですか!?」

「・・・・なに?」

「そ・・・それに、ここまで情熱を見せつけているというのに・・・がぁっ!離した瞬間、その情熱をも手離すも同義!そんな者に、ヒロ君の横に立つ資格はない!」

「・・・成る程な。確かに、それも1つの心理かもしれない」

一人感心しているハルに、ヒロは必死に声を掛けようとしている。だが、左右にかかる力と痛みのせいで、だんだんと声も出せなくなってくる。

そんなヒロの必死な顔に、何を思ったのか、ハルは自分の中に芽生えた疑問を問うていた。

「ヒロ。お前はどう思う?」

その言葉を聞いたのを最後に、ヒロは意識がぷっつりと途切れてしまった。

後に、その様子を見た者達が語り継ぐ、『真壁ハルオミの、理不尽な大岡裁判』事件であった。

 

 

 

その4

 

任務から戻ったジュリウスは、今日共に戦ったタツミとブレンダンに、お礼の言葉を口にする。

「本日もありがとうございました。また、色々と勉強させていただきました」

「いや、構わない。お前と一緒に任務に行くと、俺の方も考えさせられる。まだまだ精進しなければな。お互いに・・」

「はい。ブレンダンさん」

そんな二人の会話を聞きながら、タツミは大きく息を吐く。

「お前らな~、固いにも程があるぞ?特にブレンダン!お前は、昔っからその調子だしな!」

「うん?何か問題でもあったか?」

気にした様子もなく、真顔で聞いてくるブレンダンに、タツミは更にもう1つ溜息を吐く。

「どこか悪いところがあったら言ってくれ、タツミ。隊長であるお前の言葉を、俺は全て受け入れよう」

「固い!でも、間違ってない!悪いとこ何てねぇよ!」

「・・そうか?」

少し首を傾げたが、ブレンダンはエントランスへの道を先に進む。

その後ろで、肩を落とすタツミに、ジュリウスが声を掛ける。

「あの、タツミさん。大丈夫ですか?」

「あ?平気、平気。防衛班は一生一つになれないって、確信してるから・・俺」

「心中、お察しします」

「・・・お前に説得力はねぇよ?」

エントランスへ入り、ブレンダンの背中を見つけたタツミは、ジュリウスを促し受付へと向かう。

そして、自分の心のオアシス、竹田ヒバリをその目で探す。

しかし、休憩にでも行っているのか、ヒバリの姿は無く、またがっくりと肩を落とす。

「なんだよ。ヒバリちゃんいねぇのか・・」

「そのようですね。なら、私がフランに報告をしましょう」

「そだな~。慣れたオペレーターが1番だ。な?ブレンダン」

ようやく追いついたブレンダンの肩を、軽く叩いて受付へ行こうと合図するタツミ。

だが、彼は何故かその場から動かない。気になったタツミとジュリウスは、ブレンダンへと振り返ると、二人はぎょっと驚きの表情になる。

「ぶ・・・ブレンダン?」

「どう、されたんですか?」

ブレンダンは、神々しいものを見たかのように、感動の涙を流しながら立ち尽くしていた。そして、一言洩らす。

「・・・・・可憐だ」

「「・・・・・はぁ!?」」

彼の瞳の中には、てきぱきと書類を片付けるフランが、女神の様に映っていた。

 

 

極東支部は、今日も平常運転・・・。

 

 

 





はい、滅茶苦茶!w

花男の『F4』みたいなの作りました!マジ恋にもありましたか?『エレガント・クアットロ』だったか・・?

ふざけすぎですね^^;


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