GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

28 / 73
28話 嬉しさがいっぱい!

 

 

ズウゥゥゥーーーンッ

「え?・・・・なに?」

急な地響きに、眠っていたナナは体を起こす。壁を探って、電気のスイッチを入れた瞬間、警報が鳴り響く。

 

『緊急警報!荒神がB地区の装甲壁を突破!防衛班は直ちに急行してください!第4部隊及びブラッド隊は、住民の避難をお願いします!』

 

ブラッドが呼ばれたことに過剰反応してか、ナナはベッドに立ち上がる。

何かしなければと、部屋を見回していると、スピーカーから榊博士の声が入る。

『ナナ君、聞こえるかい?』

「榊博士!?あの!荒神が・・!!」

『大丈夫。君が心配することは無い。いいかい?とにかく、気持ちを落ち着けて、その場でジッとしてるんだよ。いいね?』

そう言い終えて、榊博士の声は聞こえなくなる。

大丈夫と言われたのだ。とにかく、言われた通りジッとしていようと努めるナナ。

しかし、元々考えるより先に動いてしまう性格があだとなってか、ナナは強い眼差しで立ち上がり、扉を思い切り殴りつけた。

 

神機保管庫に車を入れて、ユノとサツキはリッカへと声を掛ける。

「どうも、リッカさん。それとも・・・未来の妹とでも、呼んだ方が良いですか?」

「いいよ~。いつでも、そう呼んでくれて!」

そうサツキに返してから、リッカはユノへと目を向ける。

「じゃあ、差し詰めユノちゃんが、私の未来の妹かな?」

「え、えっと~・・・そうなりますか?」

少し照れた様子のユノを撫でながら、リッカは余裕の笑みを浮かべる。それに苦笑しながら、サツキは両手を軽く上げて見せる。

「まったく、揶揄いがいがないですね。あ・・そういえば、さっき緊急警報が流れてましたけど、大丈夫なんです?」

「あぁ、大丈夫だよ。さっき防衛班が出てったし、ハルさんの所とブラッドが住民の避難救援に行ったから」

そう言ってユノの頭から手をどけて、保管されている神機の方へと目を向ける。すると、今ここに居てはいけない人物を見てしまう。

「・・・は?ナナちゃん?」

ナナは神機の認証を行い、自分の神機を手に取ると、目の前に止められたサツキの車に飛び乗って、エンジンをかける。

「え?あ、ちょっと!?」

「ごめんなさい!借ります!!」

それだけ言い残し、ナナは車で走り去ってしまった。

後に残された三人は、唖然として立ち尽くしてしまう。

「あの、行っちゃいましたね?」

「行っちゃったね・・・。神機、持たせちゃ駄目だったんだけど・・」

「わ・・・・私の車がーーーーー!!!」

 

作戦指令室に入ったレンカは、自分のデスクの上からインカムを殴り取り、極東の各ゲートの衛兵へと繋ぐ。

「こちら空木だ!ブラッド隊、香月ナナを通すな!車で移動のはずだ。強行突破されぬよう、ゲートは・・」

『こちら西口ゲート!すみません!すでに通してしまったと・・』

「くそっ!遅かったか!どこへ向かったかわかるか!?」

「周辺の地図、出します!!」

無線を切ってレンカが叫ぶと、ヒバリが手元のキーボードを操作し、極東近辺の地図をスクリーンに表示する。

ナナの腕輪のビーコンを発見すると、レンカはもう1度無線を繋ごうとする。しかし、ある異変に気付き、その手を止めてしまう。

「空木さん!荒神が、極東から離れていきます!この先は・・・」

「ナナの奴、これが狙いか。・・・ジュリウスに繋いでくれ!」

そう叫びながらも、レンカは昔の自分と重なるモノを感じ、苦笑いを浮かべてしまう。

 

「ナナが・・・。わかりました」

レンカからの連絡を受け、ジュリウスはブラッドへと声を掛ける。

「ブラッド隊!ナナが、極東から単身外に出た!目的は、極東に入り込んだ荒神の誘導だ!」

《っ!!?》

その言葉に、皆顔色を変えて戸惑う。その様子を見ていたハルが、神機を担いで口を開く。

「行って来いよ、ブラッド隊。ナナちゃんが囮になったなら、俺等だけで十分だろ?」

「でも、ハルさん!」

ギルが声を上げると、カノンも傍で声を掛ける。

「行ってあげて下さい、ギルさん。ナナさん、きっと待ってますよ!」

「カノン・・」

「決まりだね、ギル」

ヒロが軽く背中を叩くと、ギルもようやく二人だけの部隊を置いて、離れる覚悟を決める。

「な、なぁ!?早く行かないと、不味いんじゃないのか!?」

「ヘリに要請、着きました!すぐに移動を!」

「わかった。さぁ、うちの迷子を・・迎えに行くぞ」

皆の言葉に頷いてから、ギルはハルとカノンに、軽く会釈して走り出す。その隣について、ヒロも全力で走り出した。

 

 

乗り捨てた車から距離を取って、ナナは荒神を引き付けながら、1体1体確実に倒していく。

しかし、予想に反してその数は多く、苦戦を強いられ、ナナは肩で息をする程に体力を奪われている。

(みんなを・・・守るんだ。・・・大好きな・・、みんなを・・)

気力を振り絞って、神機を握り直すナナ。だが、荒神を一掃するイメージが湧いてこない。

少しでも気を抜けば、泣いてしまいそうな状況で、ナナは歯を食い縛って足を踏ん張る。

そんな時、曖昧な記憶の中で微笑む、母親の姿が目に浮かぶ。

「お母さん・・・」

その笑顔で、ずっと自分を守り続けた母。その姿に祈るように、ナナは声を洩らす。

「お母さん・・・あたし、みんなを守りたいんだ。大切なみんなを・・・。だから、力を貸してね」

「あぁ、力を貸そう」

ドォンッ!

答えが返ってきたのに驚き、ナナはそちらへと目を向けると、ジュリウスを先頭に、ブラッド隊がそこにいた。

バレッドを撃ったヒロが笑って見せるのに合わせて、全員が神機を構える。

「ブラッド隊!仲間を守るために、荒神を倒すぞ!!」

《了解!!》

皆一斉に走り出すと、荒神へと戦闘を開始する。

その行動を理解しつつも、納得のいかないナナは声を上げる。

「なんで!みんな、どうして来ちゃったの!?せっかくあたしが、荒神を・・!」

それに答えるために、皆目の前の荒神を駆逐していく。

ガンッ!

「ナナ!っと・・・このっ!お前は、本当に馬鹿だよ!」

「え?・・」

ザンッ!

「あぁ。珍しくロミオに同意見だ。はっ!・・・なにも、一人で行くことはねぇだろ?」

ドドンッ!!

「私達は、仲間ですよ。・・はぁっ!!ナナさんが私達を思う様に、私達だってあなたを思っているんです」

「だ、だけど・・・」

ザシュッ!!

「ふぅっ!!仲間の為の苦労ぐらい、買わせてよ・・ナナ。僕達は、六人でブラッドなんだよ?」

ジュバッ!!

「一人でも欠けたら、意味がないんだ。ナナ・・。俺達と一緒に、帰ろう」

「うぅ・・・・・くぅっ・・・うっ・・」

ナナが泣きながら動けない代わりに、ブラッドは目の前の荒神を、1体も残さず消滅させていった。

 

戦闘が終わっても、泣き止まないナナを、シエルが優しく背中をさする。

そんな中、一人リュックを背負っていたヒロが、中身を取り出して、それをナナに渡す。

それを目にした瞬間、ナナはゆっくりと手を伸ばして、それを受け取る。

アルミホイルに包まれた中からでも、匂いで察したのか、その中身を迷わず口へと運ぶ。

「急いで持ってきたから、ちょっと形崩れちゃったけど・・・。こういう時に、食べるんでしょ?それ」

「あ・・・」

そう言われて、ナナは思い出す。

母がいつも言ってくれた言葉を・・。

 

『ナナがおいしそうに食べてくれるから、お母さん・・とっても嬉しいわ!』

 

「そうだ・・。嬉しい時は、おでんパンだ。あはは・・」

もう一口噛り付いてから、ナナは笑顔を浮かべて、皆への感謝を口にする。

「冷めてるけど・・・とっても、温かいよ。みんな・・、ありがとう。とっても、嬉しい」

そんなナナの笑顔につられて、皆も優しく微笑んだ。

 

 

ガツッガツッガツッ

極東に戻ったナナは、一心不乱に食べまくっていた。

大量に作ってくれとブラッドが要請した、おでんパン。そんな希望に応える為、料理長ムツミの粋なはからいで、夕飯は全員おでんパンとなったのだ。

最初は皆意外と美味しいと食べていたのだが、量がありすぎて、一人また一人とギブアップしていく。

今となっては、ナナしか食べていない程に・・。

「う~ん。ちょっと作り過ぎちゃいましたかね?」

「ほんはほほはいお!ほっへも、おいひい!(そんなことないよ!とっても、おいしい!)」

ご満悦のナナはまだ食べ続けているが、他のブラッドは気持ち悪そうに、口を押えている。

「お・・・お前・・、まだ、食うのかおぷっ!」

「ロミオ・・・・。どうか、その行為はお手洗いで・・・・うっ!」

「・・・・・んっ!ナナ。頼むから、もう見せないでくれ」

「無理・・・・・・。僕、色々・・・無理」

「・・・・・・・・・・・・」

ジュリウスに至っては言葉も出ない程、気持ち悪いらしい。

しかし、ナナの幸せそうな笑顔を目にして、ブラッドは喜びに顔を綻ばせるのだった。・・・・・吐きそうになりながら。

 

別のテーブルでは、サツキが顔を伏して嘆いていた。

それを榊博士は、頬を掻きつつ慰めようと声を掛ける。

「い、いや~。まさか、ナナ君がサツキ君の車に乗って行くなんてね。流石の私も、予想すらできなかったよ」

「・・・・慰めれないなら、無理しないで下さいー」

弱冠幼児退行してしまってるサツキの背を、ユノが苦笑しながら撫で続ける。

何しろ、一切合切の機材を積んでいた状態で、ナナが飛び掛かってきた荒神を巻き込む形で轢き殺し、更には横から突っ込まれた拍子で、吹っ飛んで横転。

当然、車は大破し、中の機材はすべてお釈迦になったわけだ。正直、嘆くなという方が難しい。

そんな彼女を見かねたのか、リッカが溜息を吐いて、榊博士に話し掛ける。

「博士。今回はこちら側の過失なんだし、何とかしてあげなよ?」

「そうは言うがね、リッカ君。車はともかく、彼女が所持していたような機材は、中々手に入らないんだよ?よしんば手に入るとしてもだ、私のポケットマネーにも限界がある」

「・・・・いくら位です?」

研究費、開発費などで、結構な金額の動きを相手する榊博士がいう値段に興味が湧いてか、リッカは榊博士がタブレット型端末に出した金額を、横から覗く。

そして、それが洒落じゃないと理解してか、優しくサツキの肩に手を置く。

「・・・・・これは、無理」

「あぁぁーーー!!極東支部まで冷たいーーー!!」

「ちょ、ちょっと、サツキ」

更に嘆くサツキに(おそらく半分は嘘)、リッカはあることを思いついてか、手早く携帯端末でメールを送る。

それから数分もしないうちに返信があり、リッカは苦笑しながら、サツキに内容を伝える。

「喜びなよ、サツキさん。『良いよ』ってさ」

「・・・・・うぅ、誰が?」

そう聞き返してくるサツキに、返信されたメールを液晶に映したまま、サツキへと見せる。

「『良いよ。サツキ姉さんの為なら』・・って、ユウ!?これ、本当に!?」

「何となーく、ユウ君ならこう言いそうな気がしてさ。うちの旦那様は、倹約家だから」

その言葉に確信を得たのか、サツキはユノに飛びついて喜びを露わにする。

「やったーーーー!!持つべきものは、出来る弟よねー!!」

「んもう!サツキは調子いいんだから。でも、良いんですか?リッカさん。結婚資金とか・・色々と」

そう聞かれたリッカは、手をヒラヒラさせて笑って見せる。

「心配ないって。ユウ君程じゃなくても、私だって稼いでるんだし。本人が良いっていうのに、私が止めらんないでしょ?」

そんなリッカに笑顔で礼をするユノ。それに対し、サツキは自分の携帯端末をカチカチとせわしく打っていた。

「・・サツキ?何してるの?」

「え?ユウにお礼のメールよ。それと、相当な金額をサラッと出すって言ったユウの貯蓄を、教えてって」

「なっ!?何でそんなこと、聞いちゃうのよ!」

ユノが怒っている間に、サツキの携帯端末にユウから返信が帰ってくる。それに反応して、リッカと榊博士も覗き込むように体勢を変える。

「ちょっと!リッカさんに、博士まで!」

「まぁまぁ。私は将来の妻だし」

「私は直属の上司だしね」

ただ見たいだけなのだろう二人に目配せしてから、サツキは開封ボタンを押す。

「さーって。ユウの貯蓄はいくら・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「?どうしたの?みんなして・・?」

全員の・・・まさか榊博士までも目が点になっているのを不思議に思い、ユノも携帯端末の内容を覗く。

そして・・・。

《ええぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!!》

どれだけ稼いだのか・・・、はたまたどれだけ使わなかったのか・・・・。神薙ユウの明かした貯蓄は、極東支部全体を3年動かせる数字だった。

 

研究所でPCのキーボードを打ちながら、ソーマは運ばれたおでんパンを一つ手に取る。そしてそれを頬張ろうとしてから、山と積まれたおでんパンを目にし、溜息を吐く。

「どうやって処理しろってんだ。こんなに・・」

そう呟いてから立ち上がり、コーヒーを入れてからソファーに腰を下ろす。と、そこで、携帯端末が鳴っていることに気付き、ソーマは液晶を確認してから、コールボタンを押す。

「俺だ。・・・・あぁ。お前の言ってた、女に会った。・・・・そうだ。・・・・お前の言ってたこと、わかった気がする。・・・あぁ、そうだ。まさかとは思うけどな・・・・・・。わかってる」

電話の内容がよろしくないのか、ソーマは終始険しい顔をしている。そして、最後に溜息をもらしてから、彼の名を口にする。

「あぁ・・・・。もしかしたら、お前に帰ってきてもらうかもしれねぇぞ、ユウ」

 

 

 





ナナの話、完結です!

作家さんってすごいなぁと、思います。
ちょっと書いてみた程度の私は、たまに気が狂いそうに・・w

次は、コメディ色で!休憩、休憩w


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。