GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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27話 ゴッドイーター・チルドレン

 

 

目の前から逃げようと走るコンゴウの後を追いながら、ジュリウスは前に待ち構えるヒロへと叫ぶ。

「ヒロ!頼む!」

「はっ!!」

ザシュッ!!

ヒロが飛び上がって回転しながら、コンゴウの背中を斬り抜けると、すかさず横から、ナナが神機を横に振り抜いてくる。

「てやっ!!」

ガンッ!!

もろに食らって顔面が割れると、コンゴウは頭を抱えて転げまわる。そこへ、とどめと言わんばかりに、ジュリウスが捕食形態で飛び込み、胸へと抉り込ませる。

ガリュウ!!

コアを抜き取って、ジュリウスが着地すると、ヒロとナナは周りへと警戒する。少しの間の沈黙の後、ヒロが息を吐いたことにより、三人は緊張を解く。

「どうやら、目的は達成したようだな」

「みたいだね。お疲れ様」

「お疲れ~!!」

三人は笑顔を交わしながら、ジュリウスを中心に集まる。

極東へと連絡を取る為に、ジュリウスは無線を繋ぎ、喋りかける。

「こちらブラッド隊、ジュリウス。フラン。俺達の区画は、目的を達した。ギル達の様子を教えてくれ」

『はい。少々お待ちを・・・』

待っている間に、ナナの様子を伺うジュリウス。今日聞いたばかりとは言え、少し気にしすぎかと、そんな自分に苦笑してしまう。

しばらく待っていると、フランから返事が返って来る。だがそれは、彼の望んだ答えとは違うものだった。

『ジュリウスさん!そこから離れて下さい!』

「どうした!?フラン!?」

『多数のオラクル反応が、突然に・・!!』

「ジュリウス!」

「っ!?」

ヒロに呼びかけられ、フランの連絡から耳を背け、顔を上げる。すると、倒した数の倍の荒神が、自分達を囲みに現れたのだ。

「フラン!一旦切る!」

『あ!ジュリウスさん!?』

無線を切ってから神機を構えて、ジュリウスは頬を伝う嫌な汗に、思わず苦笑してしまう。

「囲まれたね、ジュリウス。どうする?」

「応援を頼むしかないな。ギル!聞こえるか!?こっちに来られるか!?」

無線をギルに繋ぎなおしてから叫ぶと、ギルから即座に返事が返って来る。

『援護に行ってやりたいのは山々だが、こっちもそうはいかなくてな』

「どういうことだ?」

『そっちもかもしれないが、こっちも追加のお客さんが大量に到着だ!』

「くそっ!・・大丈夫なのか!?」

じりじりと距離をつめてくる荒神に目を向けながら、ジュリウスは声を掛け続ける。

『まだ何とかなるが・・・おらぁ!!・・そうは、もちそうにねぇな!』

「ジュリウス!どうするの!?」

前で食い止めるヒロにせっつかれて、ジュリウスは眉間に皺を寄せて考えた末、全員に指示を出す。

「ブラッド!ここから直ちに、撤退する!シエル!そっちの退路をひらけ!ナナ!ここは俺とヒロで食い止める!お前は先に逃げろ!」

『了解!』

「え・・・・・、逃げる?」

彼の指示に、何かを感じたのか、ナナはその場で固まる。それに気付いたヒロが、すかさず声を掛ける。

「ナナ!早く!」

しかし、彼の思いを断るように、ナナは急に首を横に振りだす。

「やだ・・・・やだよ、やだ。みんなが・・・だって、・・・・・死んじゃう・・」

「え?・・・ナナ?」

その場にへたり込んでしまったナナの異変を察知してか、ヒロは背筋に寒気を感じる。

そして・・・。

 

『ナナ・・・・、逃げて』

「いやぁーーーーーーーーーーーっ!!!!」

 

キイィィィィィンッ!!

 

「なんだと!?」

『・・まさか!?』

『この感じ・・・、ナナ!?』

『そんな・・・、こんなタイミングで!?』

 

辺りに響き渡るナナの叫び。

それと同時に、彼女の血の力が覚醒した。

 

「あぁぁぁーーーーんっ!!」

ナナの叫びに呼応してか、荒神の動きに変化が見えだす。

『お、おい!どうなってんだよ!?』

『俺が知るか!』

「どうした!?」

無線の向こうで言い争うロミオとギルに、ジュリウスは状況の説明を要求する。すると、代わりにシエルが報告する。

『荒神が、一気に引いていきます。・・・いえ!おそらく、そちらに向かってます!』

「はは・・。噓でしょ?」

無線を聞いていたヒロが、自嘲気味に笑ってしまう。しかし、変化は目の前でも起こり始める。

荒神が、ゆっくりではあるが、ナナへと目標を定めて動き出したのだ。

「これは・・・覚醒に伴う、血の力の暴走・・・なのか?」

ジュリウスが声を洩らしたのを聞きつけたのか、無線の向こうの三人が声を上げる。

『すぐに向かいます!』

『5分だ!それまで、踏ん張ってろよ!?』

『すぐにそっちに行くよ!!』

そう言って無線を切った三人に苦笑してから、ヒロはジュリウスに話し掛ける。

「どうする?みんな隊長命令を、無視しちゃったけど?」

「こういう違反は、お前で慣れてるさ。ヒロ」

そう言って笑うジュリウスに、ヒロは肩を上げて見せてから、ナナの前に移動する。

「ヒロ。お前のブラッドアーツで、どのぐらい倒せる?」

「そうだね・・。今目の前にいるだけなら、3分の1ってとこかな?ジュリウスは?」

「・・・同じぐらいだな。今の俺個人の技能でどうにかなる領域は、当に越してる。こういう時、ブラッドアーツ頼りの自分が、情けなくなるな」

「同感だね・・」

目の前の数、推定40以上。ギル達の方から流れてくる数がわからない以上、三人を待つ余裕がないかもと嫌な汗を感じる二人。

しかし諦めぬと、神機を構えて見せる。

そして、ナナに向かってくる荒神が数匹、飛びかかってきたのを迎撃しようとした時、

「なら、三人なら余裕だな」

ズガァーーーーーンッ!!!

「「っ!!?」」

思わぬ声に驚く間に、目の前をバスター特有のオーラが走り抜け、飛び込んできた荒神を一掃する。

その発生源の先に立っていたのは、極東の最強の一角だった。

「ソーマさん!」

「まさか、貴方がここにいらっしゃるなんて・・」

二人とナナに視線を巡らせてから、ソーマは「ふん」と鼻を鳴らして、声を掛ける。

「たまたまだ。・・話は後にしろ。先にこいつらを、片付けるぞ」

「「了解!!」」

ソーマの登場に、戦況は一気に反転する。それから、三人が合流したところで、ナナを抱えて全員極東へと撤退した。

 

 

連絡を終えた榊博士は、溜息を吐いてから椅子に背を預ける。

そこで、ノックの音に反応して、

「どうぞ」

と声を掛けてから、座り直す。

入ってきたナナを除くブラッドに、榊博士はいつもの笑顔で迎える。

「やぁ、待ってたよ。・・・・ナナ君の、事だね?」

「はい。榊支部長の、見解をお伺いに参りました」

『支部長』というワードに苦笑してから、榊博士は説明を始める。

「先程、ラケル博士と連絡を済ませたところだよ。まず、ナナ君の血の力なんだが・・・、『誘引』ということだよ。要するに、特定の偏食場パルスを発生させ、荒神を引き寄せる、一種の疑似フェロモンを纏うといった能力だ」

「荒神を・・・引き寄せる、ですか?」

「そう。ジュリウス君の『統制』、シエル君の『直覚』、ギルバート君の『鼓吹』。そして、ヒロ君の『喚起』。どれも、味方のゴッドイーターに影響を及ぼす力だが、彼女の場合は違う。ラケル博士によれば、意志の力の具現化が『血の力』となるそうだね?おそらくナナ君の意志は、皆を守りたいが故に、荒神を一身に受け止める・・と、言うことなのかもしれないね」

榊博士の説明に、納得しつつもやるせない表情を浮かべるブラッド。そんな中、ギルが榊博士へと、質問する。

「俺も、いいっすか?どうして、ナナの血の力は・・暴走したんすか?」

その質問に、榊博士は大きく息を洩らしてから、いつになく真剣な表情で答える。

「君達は、ゴッドイーター・チルドレンというのを、知ってるかい?文字通りの意味なんだが、ゴッドイーターから生まれた子供の事を、フェンリルではそう呼称している。彼女は、そのゴッドイーター・チルドレンなんだよ」

そう言われても、今一納得がいかないのか、ギルは続けて疑問を返す。

「それに、なんか問題でもあるんっすか!?」

「ギル・・」

苛立ちも交じって少し声を荒げたのを、ジュリウスが落ち着くよう名を呼ぶ。しかし、榊博士はそれを構わないといったそぶりを見せ、説明に戻る。

「ゴッドイーター・チルドレンは、その身に微量ながらも、偏食因子を持って生まれる。ゴッドイーター自体、言うなれば新たな人種だ。そこから更に子孫が生まれたとなると、未知な部分が多くてね」

「未知な部分ですか?それは、どんな?」

ヒロが聞き返すと、榊博士は軽く首を横に振ってから、話が脱線したことに反省し、大筋を戻して話し出す。

「その説明は、今はやめておこう。ギル君が聞きたいことから、話が横道に反れるしね。・・・簡単に判明していることは、ゴッドイーター・チルドレンの大半は、精神が不安定になりやすい。ましてや、ゴッドイーターになろうものなら、体内の偏食因子の濃度に精神が耐えられなくなり、ある種の発作を起こしてしまうんだ。その為、従来のゴッドイーター以上にメディカルチェックを行ったり、精神安定剤などを服用しなければならなくなる」

その言葉にハッとして、ブラッドは顔を見合わせる。その反応に再び息を吐いてから、榊博士は目を閉じる。

「心当たりは、あるみたいだね。彼女は自分が昔の記憶の不安定さと認識しているようだけど、実際は・・・起こるべくして起こっている事象に対して、ラケル博士が対処されてるだけなんだよ。暴走は・・・タイミングが悪かったと、いうことになるね」

 

 

研究室の奥の部屋で、ナナは天井を見ながら溜息を吐く。

榊博士に、血の力の暴走が治まるまで、そこにいるようにと連れてこられてから、もう3日が過ぎていた。

しかし、何もない部屋で、寝食だけを行っていると、覚醒した日の事を思い出して、心が潰されそうになる。

胸をぎゅっと抱くように寝返りをうって、目を閉じて寝てしまおうと思い悩んでいると、

コンコンッ

ノックの音に反応して起き上がる。

「・・・暇、してるか?」

「ソーマさん。・・・遊びに来てくれたんですか?」

そんなナナの言葉に、フッと笑みを浮かべて、ソーマは自分の後ろへと指さす。

「俺は、そこまで暇じゃない。・・・俺はな」

「え?・・・」

そう疑問に思っていると、

「いよっ!ナナ!」

ロミオが元気よく顔を出す。

それに続いて、ヒロ、シエル、ギルと顔を出し、最後にジュリウスが入って来る。

「みんな・・・」

ナナが感動に涙を浮かべると、皆笑顔で応える。それを確認してから、ソーマがその場から去ろうとすると、ジュリウスが頭を下げて感謝を口にする。

「ソーマさん。無理を言って、申し訳ありません」

「俺がいつ、無理を聞いた?」

そう言って軽く手を振ってから、ソーマは出て行った。

そんなソーマの背中を見送ってから、ヒロは思い出したように喋りかける。

「そうそう。ナナに、お土産があるんだ」

「おみやげ?」

「じゃ・・・、じゃん!・・・・・・チキン、です」

突然シエルが柄にもないことを口にする。

誰が渡すのか、ジャンケンで決めた結果だ。

しかし、そんな事然したる問題ではないのか、ナナは嬉しさに涙を拭いだす。

「おいおい。泣くやつがあるかよ」

「やっぱりー、シエルの『じゃんっ!』が、寒かったんじゃね?」

「なっ!?ろ、ロミオがやれって言いだしたんじゃないですか!ジャンケンに負けた、罰ゲームなどと言い出して!!」

「まぁまぁ、シエル。怒らないでよ。可愛かったよ?」

「か、かわ・・・・えぇ!?」

「シエル、落ち着け。ナナが困っているぞ?」

皆に囲まれて過ごすことが、こんなにも嬉しいことなのだと痛感し、ナナは早く戻りたいと、強く願うのだった。

 

 

 





実はゴッドイーター・チルドレンの細かい設定、今回調べて知りました!w

勉強不足だな・・・。



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