GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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24話 少しの面倒が、日常のスパイス

 

 

少し曇ったある日・・。

別々の場所で、それぞれに面倒を抱えた二人の話。

 

「僕を・・・・・、殴ってくれ!!」

「・・・・・・わかりました」

 

「この子の、面倒を見てやってくれ!」

「・・・・・・は?」

 

 

ヒロの面倒 1

 

その日、突然の嵐に巻き込まれる。

「やぁ!待っていたよ、我が友よ!!」

「・・・・・・・・」

相変わらずのやかましいポージングに、ヒロは来て早々、帰りたいと不満の表情を浮かべる。

そんな彼に、苦笑しながらヒバリが申し訳なさそうに、事情を説明する。

「えっと・・・・・実はですね、極東の西側に位置する河川近くで、多数のオラクル反応を確認しまして。皆さん出払っていて、手が空いていたのが・・・」

「何!案ずることは無い!僕と彼ならば、問題なく解決して見せよう!!」

「・・・・・・・偵察ですよね?じゃあ、僕一人で・・」

そう言って、さっさと任務申請を済ませようとしたヒロを制し、エミールは悟ったように頷いて見せる。

「わかるよ。前回の僕は、あまりに不甲斐無く、君の足枷となってしまった事実を・・。だがしかし!僕は生まれ変わった!!以前の情けないエミールの皮を脱ぎ捨てて、『NEWエミール』としてね!!」

「・・・・・・・そですか」

だんだんどうでもよくなってきたヒロは、エミールに任務申請を任せて、ヒバリへと恨めしそうな無表情を向ける。

「あの・・・・えっとー・・・、すいません」

申し訳なさそうに頭を下げるヒバリに、ゆっくり頭を下げ、ヒロは神機保管庫へと一人で向かった。

それを気の毒そうに見送るヒバリとは対称に、エミールは静かに笑みを浮かべて声を洩らす。

「ふふっ。流石はヒロ君。その寡黙な姿勢も、愛しいというモノだ!」

言葉のチョイスを間違っているんじゃないかと、ヒバリは背中に走る悪寒に、より一層申し訳なさを感じた。

 

 

ギルの面倒 1

 

その日、ギルは非番で空いた時間を、訓練で消化しようと歩いていた。

そんな折、エントランスに降りてきてすぐに、ハルの姿が目に入る。何やら女性と口論になっていると思い、余計なお世話と思いつつも、ギルは溜息交じりにハルへと声を掛ける。

しかし、それが不味かった・・・。

「ハルさん。何かあったんすか?」

「お?・・おぉ!ギルー!お前は何て良いタイミングで現れる、出来た後輩なんだ!」

わざとらしく声を上げるハルに、ギルはやっぱりかと目を伏せて、ついでに彼の方も注意しようと、彼等の傍へと歩み寄る。

「ハルさん・・・。今回みたいな・・・・・、ん?何すか?」

喋り始めに手を前に制されてから、ギルは面食らって黙ってしまう。そんな彼の様子に不敵な笑みを浮かべてから、ハルは口論していた女性を、自分とギルの間へと滑り込ませる。

「・・・えっと・・・」

「あのぉ、ハルさん?」

突然向かい合わせにされ、ギルと女性は戸惑いを隠せずにいる。ハルの方は、一人納得しているように頷いている。

「ギル、こちら台場カノンちゃん。俺が隊長をしてる、第4部隊の紅一点だ。カノン、こいつはギルバート・マクレイン。ブラッドの隊員にして、グラスゴーの時の俺の後輩だ」

「あ、はぁ。ブラッドさんの・・」

「・・・どう、も・・」

まだ今一状況が吞み込めない二人に、ハルは今しがた思いつき、勝手に決めたことを、高らかに宣言する。

「実はな、カノン。彼が!今日からお前の、教官だ!!」

「そ・・・、そうなんですかぁ!?」

「・・・・・・はい!?」

何がどうなってこんな話になったのか、理解できずにいるギルを他所に、ハルはカノンへと喋りだす。

「いいか、カノン。お前は・・・・・・本当に、よくやってる。俺は、そう思う。だが、まだだ!きっとお前には、まだ欠けているところがある!」

「は、はい!で・・でもですよ、私の教官はハルさんじゃあ・・?」

カノンの返しに、ハルは遠い目をしながら、フッと微笑む。

「俺が教えられることは・・・・、もうない。これからは、彼に!ブラッド流戦闘術を学ぶといい!」

「ブラッド流戦闘術・・・・、はい!学ばせていただきますぅ!!」

そんなものは無いと否定しようとしたギルの口を、ハルは素早い動作で塞ぐ。それから、カノンに聞こえないように、ギルへと耳打ちする。

「・・頼む、ギル。俺を助けると思って、引き受けてくれ。この埋め合わせは、いつか必ず・・・・・な」

「・・・・ぷはぁ!ちょっ!?」

口を解放されて、抗議しようと詰め寄ったところを、ハルは華麗にスルーし、カノンと抱き合わせる。

「んなっ!す、すいません!」

「わわ!ご、ごめんなさい!」

二人が赤くなって離れたところを見て、ハルは2,3度頷いてからウィンクして見せる。

「何だなんだ~?お前等案外、お似合いじゃないか?そういや二人共・・・、ゴッドイーターになってから5年だったか?同期ってのも、ポイントが高い!」

「な、なな、何のポイントっすか!?」

ギルの叫びを笑いながら誤魔化し、ハルはゆっくりと歩き出す。その方向がエレベーターだと気付いた時にはもう遅く、ハルはエレベーターに滑り込む。

「・・・じゃあな。後は任せた」

そう言い残して、ハルは去って行き、思わぬ事情を抱えたギルは、その場で固まってしまう。

そんな彼を、ジッと見つめながら、カノンはおずおずと声を掛ける。

「あ、の~・・・・教官先生?もしかして、迷惑でしたか?」

「あ・・・・・いや、その・・。教官先生は、やめて下さい」

「じゃあじゃあ、ギルバートさんも、敬語はよして下さいね?」

「・・・・・ギルでいい」

カノンの期待の眼差しに、引けない状況を理解してか、もう諦めてか・・・。

ギルは、カノンへと右手を差し出す。

「まぁ、引き受けちまったからな。よろしくな、カノン」

「はい!よろしくお願いします、ギルさん!!」

そういって握り返してきたその手を、ギルは小さいなと思って息を吐いて、静かに笑みを見せた。

 

 

ヒロの面倒 2

 

「はぁっ!!」

ザンッ!!

最後の1体を薙ぎ倒し、ヒロは捕食をしてコアを抜き取る。

それから、事の発端である、エミールの様子を伺う。彼は、何かを憂いているように、立ち尽くしている。

 

情報通りに、偵察の任務に来ていた二人。

だが、荒神を確認したエミールは、ろくに数の確認もせず、「闇の眷属よ!」といつもの調子で突っ込んでいった。

その結果、大量の荒神に追われる破目になり、何とか切り抜けて今に至る。

 

エミールに声を掛けようかと考えていると、彼は目に涙を浮かべ、両手を広げ懇願してくる。

「僕を・・・・殴ってくれ!ヒロ君!!」

「・・・・・・わかりました」

何の迷いもなく、ヒロは拳を振り上げる。

「そうだね・・。突然こんなこぐぅはっ!!」

ガスッ!

何かまだ喋っていたような気がしたが、ヒロはその拳を、エミールの顔面へと叩き込む。

その場に倒れたエミールを観察していると、彼は何事も無かったように立ち上がる。

「ふっ・・・。やはり君は、言葉よりも行動派なんだね。だが、聞いてくれ!僕の後悔の念を!」

「・・・・はぁ」

前置きから、更に長いんだろうなと、ヒロはジト目を向ける。しかし、エミールは特にお構いなしに、話を続ける。

「僕の軽率な行動によって、君までも危険に晒してしまった。だが僕は!どうしてもあの闇の眷属を目にすると、いても立ってもいられなくなるんだ!」

「・・・・・・はぁ」

「しかし!その為に人の命を危険に巻き込むことは、騎士道精神とは言えない!僕は、そんな僕が!許せそうにない!!」

「・・・・・わかりました」

ドゴッ!

「ぐはぁっ!!」

要するに殴ってくれと言いたいのだろうと、ヒロは左アッパーを顎に炸裂させる。体を浮かせてから倒れ込むエミールの様子を、再び伺っていると、エミールはのそりと起き上がる。

「なんて、早急にことを運ぶ人なんだ、君は。だが、それ程に僕を思っていての行動だろう。気に入った!!」

「は?・・・」

殴りすぎて気がおかしくなったのかと、ヒロは立ち上がったエミールを見る。すると、今度こそはと覚悟を決めてか、両手を広げ、エミールはヒロへと思いを叫ぶ。

「さっきまでは準備が出来ていなかったが、もう大丈夫だ!さぁ!君の拳で、弱く情けない僕を、殴り飛ばしてくれ!!」

「・・・・・・わかりました」

殴り飛ばせと言われたからにはと、ヒロは後ろへと下がる。そして、助走をつけ、思い切り彼の鼻っ柱に、拳を叩き込む。

「どうしたぶぅぅっ!!!」

ゴシャッ!!!!

ヒロの拳に吹っ飛ばされ、エミールは5m程離れた壁に、激突する。

それから、壁に積もっていた瓦礫に埋もれて、エミールは暫く倒れ伏せている。

今回は流石にやりすぎたかと、ヒロは瓦礫へと近付いていく。すると、

「とぉーっ!!!」

瓦礫の中から、エミールが飛び出した。顔面を腫らして・・・。

「ふふっ。何て騎士道の籠った、拳だ。心が、顕れるようだよ・・」

「・・・・・・・良かったですね」

心配は無用だったかと、呆れた顔をして見ていると、エミールは華麗にポージングを取り、ヒロへと指さし叫ぶ。

「君の思い!この胸に刻みつけた!これで僕はまた、生まれ変われる。そう!今度こそ真の騎士道精神を掲げる男!『NEOエミール』としてね!!!」

「・・・・・・帰ります」

もう付き合いきれないといった表情で、ヒロは彼を放って歩き始める。

そんなヒロを呼びながら、エミールは後を追って駆けてくる。

「待ってくれ、ヒロ君!君の行く道は、僕の道でもあるのだから!!」

「・・・・・・・・違います」

そうして、やたら長く感じたエミールとの任務を、ようやく終われるとヒロは胸を撫で下ろした。

 

 

ギルの面倒 2

 

訓練所に来ていたギルは、唖然としていた。

訓練を付けると一緒した、カノンの変貌ぶりを見て・・・・。

「あーはっはっはっはっ!!!ほらほら、どうしたの?プログラム何て、そんなものなの!?」

ガァーンッ!ドォーンッ!チュドドーンッ!!

疑似荒神との戦闘訓練プログラムを行って、彼女の実力を測ろうとしたギル。その結果思ったことは、「こいつと組んだら、どこにいれば安全なんだ?」ということだった。

一応、衛生兵も兼ねてると本人からは聞いていたが、回復させてくれるより、破壊されるんじゃなかろうか。ギルは逃げて行ったハルを思い浮かべ、自分も無理ですと伝えたかった。

 

訓練プログラムが終了すると、カノンは何事も無かったかのように戻ってきて、無垢な瞳で、ギルに訊ねてくる。

「えっとぉ・・・・、どうでしたか?」

「・・・どうって・・、本気で聞いてるのか?」

「はい!お願いします!!」

今までどんな訓練や経験をすればこうなるのか、逆に疑問に思うギルだが、カノンが目を瞑って覚悟の表情を浮かべたのを見てから、溜息をもらしながら苦笑し、ナナを褒める時の癖で、彼女の頭を撫でる。

「あ・・・・えっと、あれ?」

「良かったんじゃないか?少なくとも、荒神を倒すうちはな。だが、あんたは衛生兵でもあるんだろ?だったら、前衛が入り込める位置取りと、回復弾を使い分けれるようにしといたら、良いんじゃねぇかと思う」

「・・・・・・あ・・・」

男に撫でられるのが初めてで、カノンは少しぽーっとしていたが、ギルが褒めてくれているとわかると、その頭を深々と下げ、お礼の言葉を告げる。

「あ、ありがとうございます!なんか、的確にアドバイスまでもらって・・」

「この程度のアドバイス、誰でも言いそうだがな・・」

ギルにとっては当たり前の台詞のつもりだったが、彼女にとってはそうではなかったらしい。

それも、その筈。デンジャラス・ビューティーの異名を持つ彼女と訓練や任務に出て、まともに喋れる人は、ほとんどいなかったのだから。もしくは、怒られてたか・・・。

『褒められたい』という少し子供っぽいことを求めていたカノンにとって、ギルの行為や言葉は、希望を満たす何かになったのであろう。

「私、頑張ります!これからも、すごく!だから・・・その、また・・褒めてくれますか?」

「あ?・・・あ、あぁ。・・まぁ、な」

「はわぁ~!!」

何だかよくわからない奇声を上げるカノンに、ギルは「早まったか?」と思いつつも、喜ぶ彼女に水を差すまいと、フッと微笑んで見守っていた。

 

 

夕食を取る為に、ヒロは部屋を出たところで、ギルと鉢合わせる。目的は一緒だろうと、二人はそのままエントランスへと降りてくる。そこで、

「やぁ!ヒロ君!待っていたよ!君との友情を深める、晩餐の為にね!!」

「あっ!ギルさん!これ、クッキー焼いてみたんですけど!」

エミールとカノンが、それぞれに話し掛けてくる。

そんな二人を目にしてか、ヒロもギルも、今日は疲れたからといった表情を見せ、お互いがその顔に気付き、改めて二人同時に溜息を吐いたのだった。

 

「お前・・・、本当に大変だな」

「ギルはまだ、役得っぽいよ・・」

 

 

 





途中でこういう話を書くのが、少しの楽しみだったりします!

カノンちゃんとギル。
この組み合わせは、きっと面白い・・・・はず!!


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