GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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2話 血の力

 

 

少し遅れて入った部屋で、たんたんと作業をするラケルを見て、ヒロは背筋を伸ばして緊張してから、傍へと歩み寄る。

「遅くなりました!神威ヒロです!」

「・・・・そこに座って」

怒るわけでもなく、涼しい声で促してきたラケルに拍子抜けしてか、ヒロは軽く息を吐いてから席へとつく。

ヒロが腰を落ち着けたのに合わせてか、ラケルは作業の手を止め、今は動かなくなった足の代わりの電動式車椅子を動かし、ヒロへと向き直る。

「さて・・・、調子はどう?気分が悪いとかは、ない?」

「あ、いえ。特に変わったことは・・」

その妖美な微笑みに、ヒロは照れ笑いをしながら頭を掻く。女性の好みなど考えたこともなかったヒロでも、ラケルの美しさには心乱してしまう。

そんな彼の心境を置いて、ラケルは簡単に検査を終わらせる。

「もう安定しているみたいね。・・・はい、検査は終了。何か、気になることはある?」

「え?・・・。そう、ですね。・・・・・あの、僕が所属する特殊部隊って・・」

きちんと質問を返してきたヒロに、フッと笑んでから、ラケルは質問に答える。

「あなたが訓練後に所属する、フェンリル極致化技術開発局特殊部隊。通称『ブラッド』は、従来のゴッドイーターとは、異なる偏食因子『P-66因子』を打ち込んだ、第3世代のゴッドイーターの部隊よ」

「P-66・・・って、違うんですか?」

首を傾げて聞き返すヒロの顔が可笑しかったのか、ラケルは口に手を当てて静かに笑ってから、話を続ける。

「これまで第1,2世代のゴッドイーターが打ち込んでいたのは、『P-53因子』。マーナガルム計画という、荒神に対抗するための新たな新人類を創造する計画に使われた、『P-73因子』というものがあったの。それを人体直接投与できるように改良されたもの。でも、あなたが今回打ち込んだ偏食因子『P-66因子』は、ブラッド専用のもの。あなたのように、選ばれた人間のみ許された、偏食因子ブラッド」

「選ばれた・・・人間。これまでと、どう違うんですか?」

「選ばれた人間には、特別な力を・・・。そう歴史が語るように、あなた達ブラッドにも、それに相応しい力が宿るでしょう」

「そう・・・なんです?」

疑問が尽きないといった感じに、ヒロは腕を組んで頭を捻る。ラケルの方は笑みを崩さず、優しく諭すように声を掛ける。

「また、気になることがあれば、訪ねてきなさい。・・・あなたのこれからの活躍に、期待しています」

「あ・・は、はい!」

話を打ち切られたのだと理解してから、ヒロは勢いよく立ち上がり、深く礼をして部屋を立ち去る。

ヒロが去った部屋の中で、ラケルは微笑んだまま元の作業に戻る。

 

 

本日の予定を消化したヒロは、夕飯までの時間をつぶすために、フライアの中を散策する。

先程のジュリウスとのやり取りの後に気付いたのか、その場所は立ち入っていいのかよく考えてから、行動するように心がけて・・。

「んぐ・・んぐ・・、ん?あっ!新人さん、発見~!!」

「え?」

大きなディスプレイが設置してあるフロアを通りがかったところで、ヒロは急に大きな声に呼び止められる。

そこには、猫の耳のように髪を立てた少女が、何やら大口で食事しながら手を振っていた。

「え・・・っと、僕でいいのかな?」

「うん!君でしょ?新しく配属された、新人くんって?」

「あ、はい!じゃあ、先輩ですか?」

「ううん。あたしも、今日入った新人~」

少女の何気ない一言に、ヒロは目を細めて「じゃあ、何故新人と言った」と、心の中でつぶやいた。

「あたし、ナナ!香月ナナ!よろしく~」

「あ、僕は神威ヒロ。よろしくね、ナナ」

「うんうん。よろしくされました!」

軽く握手をしてから去ろうとしたヒロに、ナナは思いついたように、横に積んであったモノの一つを、ヒロの前へと突き出す。

「はい!」

「・・・・なに、これ?」

「はじめましての、おでんパン!!」

「おでん・・・パン・・、だと?」

ヒロの中で訴えかける本能が、『それ、掛け合わせねぇよ!』とツッこむ。が、当の彼女は、さもそれが世界一の至福と言わんばかりに、食している。

自分が間違ってるのかと、ヒロは頬を伝う汗を無視して、ゆっくりとそれを口に運ぶ。

(これもコミュニケーション・・・これもコミュニケーション・・・)

震える手のまま、口を大きく開けて、ヒロは一口かじる。

「ん・・ん・・。あ、おいしい」

「でしょ~!嬉しい時には、おでんパンが一番!」

「そう・・・・なの?」

疑問は拭えないが、ヒロはフッと笑んでから、ナナの隣に腰かけてから、もう一口頬張る。

 

並んでおやつ(?)を楽しんでいると、鼻歌を歌いながら一人の少年が歩いてくる。それからヒロとナナに気付いてから、後ろ頭に組んでいた手を解いてから、オーバーリアクションで話しかけてくる。

「お?おぉ~!もしかして、お前等、今日入った新人!?」

「え?あ、はい」

「そうで~す!」

二人の返事に更にテンションを上げて、彼は二人の前へと飛び座る。

「そっかそっか!これで俺も、晴れて先輩になるんだな!」

「あ、今度こそ先輩ですか」

「なんだ、それ?」

「いえいえ、何でも・・」

一瞬ヒロの言葉に首を傾げたが、再びハイテンションで話し始める少年。

「俺は、ロミオ!ロミオ・レオーニ!ブラッドでお前等の先輩になるから、『ロミオ先輩』って呼べよな!」

「僕は神威ヒロです!よろしくお願いします!ロミオ先輩!」

「あたしは、香月ナナで~す!よろしくです!ロミオ先輩!」

「お、おぉ。なんていうか・・・、お前等素直なのな・・」

突然の先輩風に、戸惑うことを期待していたロミオは、二人の素直さに自分が戸惑ってしまう。

「そ、それで?お前等、明日から訓練だろ?」

「はい。訓練課程を終えれば、ブラッドに配属するって・・」

「ラケル先生が、言ってました」

何を納得したのか、ロミオは深く2度頷いてから、神妙な表情を作って見せる。

「訓練はきついぞ~。上から戻すのは、覚悟しとけよ!」

「ロミオ先輩・・・・、食事中・・」

「あ、わりぃわりぃ」

真面目になってみたのに失敗したと、ロミオは頭を掻いてナナに謝る。それから1点変わって明るく立ち上がってから、ロミオは何やらポーズを決める。

「でもな!訓練を越して経験を積めば、俺等ブラッドは他のゴッドイーターとは違って、凄いことが出来るんだぜ!」

「凄いこと・・・ですか?」

「おうよ!なんと・・・、必殺技が使えるようになるんだぜ」

「ひ、必殺技!!!」

その言葉に目を輝かせるナナに、ロミオは更に調子に乗って、座っていた椅子の上に立つ。

「そう!俺もまだだけど、使えるようになれば『あっ』という間に、荒神なんてボッコボコなんだぜ!?きっと、ジュリウスが見せてくれるよ!」

「必殺技・・・かー」

「必殺技!!・・・・楽しみ!!」

「だろ~!」

三者三様に想像する、必殺技。

全然違っているが三人はその話で、暫くの間盛り上がった。

 

 

ビーッ

『目標達成。訓練プログラムを、終了します』

あれから1週間。

ヒロとナナの戦闘も、様になってきていた。

ロングソードのヒロの動きは、訓練始めからかなりの動きを見せ、新たな神機ブーストハンマーに慣れないナナのフォローまで回れる程だ。

ナナの方も大分慣れたのか、小さな体に似合わぬ力で、その巨大な神機を上手く使いこなせるようになった。

そんな二人の様子を伺っていたジュリウスは、組んでいた腕を解いて管理室から出る。それから、携帯端末を使って、ある所へと連絡をする。

「・・・俺です。・・はい。そろそろ、あの二人に最終訓練を受けさせます。・・・・大丈夫です。二人なら、必ず・・・」

会話を終了してから、ジュリウスは口の端を浮かせてから、歩く速度を上げた。

 

 

近場のオラクル反応に合わせて、ヒロとナナ、ジュリウスはヘリから降下する。二人が神機の具合を確かめている中、ジュリウスは無線を使って、フライアのオペレーターのフラン=フランソワ=フランチェスカド・ブルゴーニュに連絡を入れる。

「こちらジュリウス。フラン、現場に変化は?」

『いえ、当初確認のままです。ヒロさんとナナさんは初実践ですから、このぐらいが妥当かと・・・。でも、早すぎませんか?』

二人を心配するフランに、ジュリウスは笑みを浮かべてから返答する。

「問題ない」

無線を切ってから、並んで待つ二人の前へと歩み出るジュリウス。それぞれの顔を確認してから、口を開く。

「本日は二人の最終訓練を行う。だが、訓練である前に任務だ。疑似プログラムの荒神との違いに、最初は戸惑うと思うが、落ち着いてやれば何の問題もない。お前達なら、難なくこなせると信じている」

「「はい!!」」

二人の返事に大きく頷いてから、ジュリウスは更に前へと歩み出て、崖下を闊歩するオウガテイルの群れを指さす。それに目を向けてから、ヒロとナナも気を引き締めなおす。

「あれが人類の敵、荒神だ。俺達のやるべきことは一つ。荒神を、倒すことだ」

「「はい!!」」

「・・・いくぞ」

すっと下へと飛び降りたジュリウスに続いて、ヒロとナナも崖下へと飛び込み、声を上げる。

「「了解!!」」

 

「てぇい!!」

ガァンッ!

壁に追い込んだところに神機を振り下ろし、オウガテイルを地面にめり込ませてから、ナナは慌てた様子でコアを捕食する。

ホッと息を吐いたところに、ジュリウスが歩み寄り、優しく肩を叩く。

「よくやった、ナナ。コアの捕食が、荒神殲滅の近道だ。出来る限りは、忘れず捕食するように」

「は、はぁ~い」

少し疲れた顔で苦笑いを浮かべるナナに、ジュリウスは微笑んで見せてから、ヒロの方へと目を向ける。ナナも気になってか、その視線を追ってヒロを見つめる。

「ふぇ~・・・。ヒロ、凄い」

「ふっ。そうだな」

二人に注目されてるのも知らず、ヒロは目の前のオウガテイルを一閃してから、その勢いのまま、空中で体を半回転させてから、後ろから飛び込んできたオウガテイルも斬り裂く。

ザシュッ!!

「はぁ!!」

ギュルッガビュウッ!!

後ろに1歩飛んでから捕食形態にし、2体を貫きコアを回収する。神機を元に戻してから周りを警戒するヒロの姿に、ジュリウスはゆっくり歩み寄り、ナナもそれに続く。

「二人共、文句なしに合格だ。だが、これは始まりに過ぎない。より強力な荒神を倒すために、これからも精進するんだ」

「「はい!!」」

二人に伝え終わったとしてか、ジュリウスは後ろを振り返る。その先から、新たに3体のオウガテイルが、こちらへと向かってくる。

それに気付いたヒロとナナが神機を構えなおすと、ジュリウスはそれを片手を挙げて制してから、もう2,3歩前へと出てから神機を構える。

「いいか。俺達ブラッドには、他のゴッドイーターにはない『血の力』というものが存在する」

「血の・・・力」

ヒロの返事に頷いてから、ジュリウスは中段に構えた神機を握る手に、力を籠める。

「はぁっ!!」

 

キィィンッ

 

小さな耳鳴りがしたと思った時、ヒロとナナは体の変化に気付く。

「これは・・」

「・・・力が・・・湧いてくる」

二人が驚いてる中、ジュリウスは迫る敵を目にしながら、話を続ける。

「これが血の力だ。お前達にも、個々に特色を持った『意志』として、いずれ目覚めるだろう。そして・・・・、これがっ!!」

 

ヒュッ  ザシュザシュザシュッ!!!

 

「・・・え・・」

「嘘・・・・・」

ジュリウスがオウガテイルの間を斬り抜けた瞬間、無数の光の斬撃が斬り裂き、その動きを沈黙させ倒れた。

驚きに動けないでいるヒロとナナに振り返ってから、ジュリウスは二人の疑問に答えた。

「これが、血の力に目覚めた俺達ブラッドの奥義、『ブラッドアーツ』だ。この力を以って、俺達は世界に蔓延る荒ぶる神に、終止符を打つ」

 

 

 

 




ブラッドアーツ。
出来るだけ全部覚えて、使ってみます!

でも、多いな~・・・

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