GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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11話 神機兵

 

 

 

 

シエルに周囲のオラクル反応を確かめてもらっている間、ブラッドは周りの警戒をしつつ、迎えと救護のヘリを待っていた。

ヒロは、初めて実戦で使ったブラッドアーツの感触を確かめるように、自分の右手を握っては開いて、自分の力の前進を感じていた。

そこへ、

「・・・・・ユウ?」

声を掛けられ、全員が一気にそちらへと振り向く。

そこには、本来救援で駆け付けるはずだったであろうゴッドイーターの少女が立っていた。帽子から流れる銀髪の向こうの表情は、どこだったかで見たことあるかのように、ヒロに既視感を与えた。

皆対応に困ってる中、ジュリウスが1歩前に出て、挨拶をする。

「極東支部の方とお見受けします。我々はフェンリル極致化技術開発局所属ブラッド。私は隊長の、ジュリウス・ヴィスコンティと申します。以後、お見知りおきを」

「あ・・・・、はい。私は極東支部所属、独立支援部隊クレイドルのアリサ・イリーニチナ・アミエーラと申します」

呆けていた自分に今更気付いたかのように、アリサは頭を深く下げる。

「オープンチャンネルに救援要請を察知したので、勝手ながら戦闘に介入させていただきました。以後このような場面でも遭遇することがあるかもしれませんので、今後もよろしくお願いします」

「はい。救援、感謝します」

挨拶が済んだので下がろうと思ったところで、ジュリウスはアリサの視線に気付く。さっきもそうだったが、ヒロのことが気になるようだ。

「あの・・・、私の部下が何か?」

「あ、いえ!すいません。・・・ちょっと・・、知り合いに似ていたもので・・」

「・・?そうですか」

見られているヒロの方も、特に心当たりがあるわけでもなく、一人困惑している。そこへ、

「隊長、時間です」

シエルが連絡を済ませたのか、声を掛けてくる。それに手を上げて応えて見せてから、ジュリウスはアリサに一礼をする。

「では、私達はこれで。いずれ、また・・」

その挨拶に合わせて、ブラッドは先に歩き出したジュリウスについて歩き出す。ヒロも、自分に対してとわかっていたので、視線の送り主のアリサに一礼してからその場を離れた。

 

ブラッドの去った後も、アリサは暫く立ち尽くし動けない。

そこへ、

「おーい!アリサー!!」

「アリサさん!大丈夫ですか!?」

別任務から駆け付けた、第1部隊の現隊長藤木コウタとエリナ・デア=フォーゲルヴァイデが到着したのだ。

「コウタ・・・、エリナさん」

「ん?どうしたんだ?」

「どこか、怪我でもしたんですか?」

「い、いえ・・。少し・・・考え事を・・」

アリサの返事に、二人は状況を把握できないでいると、アリサは無意識のような静かな声を洩らす。

「コウタ・・・・前に言ってた、『世界にはその人に似た人間が三人いる』って話ですけど・・・・。私、信じるかも・・しれません」

「「・・・は?」」

アリサの言葉になお理解不能と、コウタとエリナは同時に声を発し、首を傾げるのであった。

 

 

任務終了後に座学の続きをと提案するシエルに、ロミオとナナが全力で抵抗したので、結局その日はそれ以降自由時間となった。

そんな中、ヒロは一人訓練所に足を運んで、模造の神機に30kg程錘を付けて、素振りをしていた。

ブラッドアーツでの攻撃は、自分が想像していたよりも強力だった。その為に、制御しきらなかったせいで切っ先がぶれ、削ったのが頭半分となったのだ。

(もっと・・・、強く・・)

しかし、それとは別に理由もあった。

任務に出る前の話の中に出てきた名前、神薙ユウとソーマ・シックザール。極東支部のゴッドイーターででなくとも、二人に憧れる者は世界中にいる。

そんな英雄の彼等のことを思うと、ヒロは火照る身体を休めるのが勿体ないと思ったのだ。

(強く・・なりたい・・。あの人達のように・・)

憧れから来る歓喜を力に変え、ヒロは握る手に力を込めて、振り続けた。

 

ドサッ

自分の流した汗が小さな水溜りになった頃に、ヒロはようやく手を休めてその場に倒れ込む。

荒く息を吐き続ける彼の元に、1本の缶が降って来る。それを取る力がなかったのか、頭で受けてから拾い上げると、出入口のところでギルが手を軽く上げて見せる。

それに笑顔を作ってから、ヒロはゆっくり立ち上がってからそちらへと足を運び、ギルの隣に座り込んで、貰ったドリンクを一気にあおる。

「随分と熱心だな、副隊長さんは」

「・・・・ちょっとね・・」

落ち着いてきた呼吸を確かめてから、高い天井に設置された照明を薄目で眺めるヒロ。そんな彼に、ギルは任務前から気になっていたことを聞く。

「おまえ・・・、ユウさんに会ったことでもあるのか?」

「・・・うん。1度だけね。・・もしかして、ギルも?」

「あぁ。グラスゴーで腐ってる時に、1度な」

それから二人は、黙ってドリンクを飲み干してから、しばしの静寂に身を預ける。

どのくらい経ってか、ギルは背中に隠していたスピア用の模造神機を手に、部屋の中心へと歩き出す。

そんな彼が妙に可笑しくなり、ヒロは笑いながら駈け寄ってギルの背中を軽く叩く。

「いてっ・・・。なんだよ?」

「別に。ギルは素直じゃないよね」

「俺も、ジッとしてられなくなっただけだ」

「・・・そっか」

ヒロの反応にぶっきら棒に答えながらも、ギルも握る手に力を籠める。と、そこへ、

「あっれー?ヒロとギルもいる!」

「はぁ!?何なんだよ、揃いも揃って俺の真似してー!」

「私達の方が遅れてきたので、結果だけで判断するのであれば、私達が・・」

「固いんだよ、シエルはー!」

ロミオとナナとシエルが、神機を銃型に変形させてやってきたのだ。

彼等もまた、興奮が治まらないでいるのだろう。

その名だけで影響を与える。二人の最強のちょっとした感応現象に、ヒロは改めてすごいと尊敬の念を抱いた。

「何だ。やっと練習する気になったのかよ」

「はぁ!?練習じゃねぇし!向上だし!」

「ロミオ先輩、素直に言った方が良いよ?今日もシエルちゃんに指摘されたって」

「余計なこと言うなよな!」

「丁度良かったです。副隊長。前におっしゃっていた資料を、私なりにまとめておきましたので、後程確認してみて下さい」

「あぁ、ありがとうシエル」

急に賑やかになった訓練所。

その外で、一人静かに微笑みながら、ジュリウスは暫くその声に耳を傾けていた。

 

 

フライアが極東地域に入った頃を見計らってか、グレム局長から招集をかけられ、ジュリウスはヒロとシエルを連れ立って、3階の奥の局長室へと訪れていた。

2度ほどノックを鳴らし、中へと入り敬礼をする。

「ブラッド隊長、ジュリウス・ヴィスコンティ、以下二名。招集に応じ、参上しました」

「あぁ。少し待て・・」

何か不機嫌といった感じで返事を返すグレムの前で、レア博士と九条博士が、何やら物々しい感じで黙って立っている。

入り口付近に陣取っているラケルは、相も変わらず涼しい表情を崩さずに、成り行きを見守っているという感じだ。

そんな中、九条博士が消えかけたモノを再燃させるかのように、口火を切って喋り始める。

「レア博士。神機兵の無人運用テストに、どうして反対なさるのですか?」

「反対ではなく、時期尚早と申し上げているのです。グレム局長も、何故許可を?」

話を振られてから、きっと何度目かの溜息を洩らしたのだろう。グレムは高価そうな椅子にその巨体を預けながら口を開く。

「有人神機兵の運用が非人道的だと、本部の方で難色を示す声が上がってね。更に悪いことに、退役した元ゴッドイーター達も、それに同調していてね」

「な・・・そんなっ!?」

「だから、ここである程度の実績を認めさせないと、神機兵の計画自体が縮小を免れないんだよ・・。レア博士には申し訳ないが・・・ここは私に免じて、な?」

「くっ・・・」

少し気に喰わぬといった表情を浮かべつつも、レアは何も言えずに立ち尽くす。が、それも短い時間で、俯いていた顔を上げてから真っ直ぐグレムを見つめてから、軽く一礼をする。

「・・・失礼します」

そうして去って行く先にブラッドの三人とラケルを目にしてから、何とも言えない切なげな表情を見せ、それっきり何も言わず部屋を後にした。

レアが去ってから早々、グレムはそれが無かったかのようにブラッドを自分の前まで来るよう手招きし、並んだ顔を順々に見てからジュリウスへと視線を落ち着ける。

「話を聞いていたなら、お前達を呼んだ理由はわかるな」

「神機兵の、無人運用テストを行うという風に受け取りましたが、我々ブラッドはなにを?」

「ふん!これだから戦闘しか能のない奴は・・」

悪態をついてからラケルがいるのにハッとし、グレムは1度咳払いをしてから、話し始める。

「今回の実験に、ブラッドには神機兵について現場へ行ってもらう。要するに、護衛だ」

「護衛、ですか?」

そうだと言わんばかりに深く頷いてから、手元にあった資料をジュリウスに投げてよこす。

「詳しいことは・・・九条君」

「は、はい・・」

急に声を掛けられ驚いたのか、九条は下がった眼鏡をクイッと上げてから、ジュリウスの前に立って説明を始める。

「えー・・ジュリウス君とシエル君は確か、マグノリア・コンパス出身だとか?」

「はい。私達はレア博士、ラケル博士に育てられたも同然ですので、神機兵のテストパイロットも行っています」

「それは・・素晴らしい。今回護衛とはいっても、あくまでも神機兵の戦闘データを記録することが目的ですので、戦闘に介入するのではなく、戦闘する様子を見守っていただくということを重きに、動いて欲しいのです」

「なるほど・・・」

ジュリウスの返事に頷いてから、九条は更に続ける。

「ですがただ見守るという訳ではなく、荒神と1対1という状況を作り出してほしいというのが任務です。勿論、万が一神機兵が危なくなれば、護衛としてそれを排除してください」

「つまり・・・、露払いをしろと・・」

ジュリウスの言葉に理解したかと鼻を鳴らしてから、グレムは口を開く。

「いいか。お前等普通の兵士の何十倍も金がかかっているんだ。絶対に神機兵を壊すんじゃないぞ!」

「「「了解!!」」」

話すことが終わったとそっぽを向くグレムに一礼し、ブラッドの三名は部屋を後にする。それに合わせて、一緒に部屋を出るラケル。それを熱い視線を向ける九条は、ぽーっとして手元の資料をぶちまけるのだった。

 

 

話が終わって外に出たところで、ジュリウスとシエルがラケルに呼ばれて研究室へと入っていく。待つように言われたので、廊下にある長椅子で座って待とうと思い移動するヒロ。そこで、先に来ていたレアと鉢合わせする。

「あ・・、どうも」

「ん?・・・あら、こんにちは。さっきは、みっともない所を見せちゃったわね」

「いえ・・」

さっきのことを考えると、相席しずらいと思い迷っていると、レアの方からヒロを促す。

「座ったら?・・ちょっと、お話しましょ?」

「あ、はい・・」

言われるがままに隣に座ると、レアは値踏みする様に、ヒロを眺めだす。それをくすぐったく思ってか、ヒロは声を洩らす。

「あのー・・・」

「あ、ごめんなさい。最近シエルと一緒にいるところを、よく見かけるから・・・なにか、凄い魅力でもあるのかな~って・・」

「そ・・そんなこと、ない・・かと」

「謙虚なのね」

ヒロの反応が面白いのか、レアは口元に手を当てて静かに笑う。

それから、急に真面目な表情になったかと思えば、溜息まじりに話し始める。

「シエルは、もともと裕福な軍閥の出身でね、・・・両親が亡くなったのをきっかけに、ラケルに引き取られたの」

「・・・そう・・なんですか・・」

少し固い所や、生真面目なところなんかは、遺伝なのだろうかとヒロは想像してみる。でも、ちょっと自分では想像できないと、苦笑してしまう。

「マグノリア=コンパスで、シエルはとても過酷で、高度な軍事教育を施されていたようね・・。極限状態でのストレステストや、少しのミスで懲罰房に入れられたりして・・」

「・・・・・なんか、想像してたのと違いますね。児童養護施設って聞いてましたし・・」

「そう?マグノリア=コンパスは、軍事学校としての評価の方が高いぐらいなんだけど。でも、表向きには違うんだけど・・」

何かを思い出したかのように、少し遠い目をして見せてから、レアは話を続ける。

「久方ぶりに会った時には、彼女は命令に忠義を誓う、猟犬のような子に・・・なっていたわ。その後も、歳の近さからか、ジュリウスのボディーガードを任されていたんだけど、守る・・守られる・・の関係からか、二人は友達という関係にはなれなかったみたい」

「友達・・・ですか・・」

少し考えてから、ヒロはここでのシエルやジュリウスを思い返してみる。少なくとも、自分が見る限りでは、そんな風に二人を見たことが無いなと思ったからだ。

「・・・・どうして、その話を僕に?」

「・・・・ふふっ、何でかな・・。余計な、お節介かな?」

「お節介・・ですか」

復唱するとレアは立ち上がり、ヒロの頭を2,3度撫でてから歩き始める。その途中、ふいっと振り返り、ヒロに笑顔を向ける。

「ここで目にするあの子達は、私が知らない良い表情をしてる。その中心には、あなたがいる。それが理由かな?」

「はぁ・・・」

「これからも・・、仲良くしてあげてね」

「・・・はい」

なんだかどういう話だったのかよく分からないままだったが、ヒロはただ、レアがジュリウスとシエルのことを思う気持ちに共感できた。それを返事に変えたつもりで答えると、レアは満足そうにその場を後にした。

 

 

 

 





最初、神機兵という存在を見た時、モンハンのオトモアイルー的な存在だと思ってました。

実際は、あんなガシャコンッて音させながら走りそうなやつ、嫌ですけど・・。
何か、怖いし・・

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