GOD EATER2 ~絆を繋ぐ詩~   作:死姫

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ちょっと早いかもしれませんが、3,4話書き溜めたのでUPします!

今回も長くなると思いますが、楽しんでいただければと思います!


ブラッド編
1話 神の名を継ぐ者


 

 

赤い雨・・・。

誰かの命を悼んでか・・・。それとも・・・・。

 

壊れかけの世界が血を流す中を、移動する大きな物体。

フェンリル極致化技術開発局の移動要塞、『独立機動支部 フライア』。

キャタピラの音を響かせて進む巨大な城の一角に、小さな教会が設けられている。「死者の尊さを、忘れぬように」と、設立者の一人が、、希望したためだ。

 

正面に飾られた大きなステンドグラスに描かれる『花を抱く聖女』に、両手を汲んで祈る一人の女性。フェンリル極致化技術開発局の副開発室長の、ラケル・クラウディウスである。

閉じていた目を開け、その顔をゆっくりと上げてから、妖しい笑みを浮かべ声を洩らす。

 

「さぁ・・。新しい世界の、幕を上げましょう・・・」

 

エイジス事件から、3年の時が経った。

圧倒的に不利とされていた荒神との生存競争も、少しずつではあるが良い方向へと進み始めていた。

ゴッドイーターの戦術強化、各支部で受け入れられぬ人々の為の安全な住居確保など、「失う覚悟を持って」の理念から、「生き抜く為の勇気」の行動へと変化したのが大きいだろう。

決して表立って語られぬ、事件を解決へと導いた英雄達の意志によって・・・。

・・・・・しかし神も、ただ滅びるつもりはない。

人の織り成す新たな力に対し、神も新たな力を身に着けたのだ。

 

再び大きな歯車が、時を刻み始める。

GOD EATER達の、物語を始める為に・・・。

 

 

 

薄暗い夜明け前の空を、ヘリはある場所へと向かっている。

曇った窓を擦ってから、少年は靄がかった世界を見渡す。特に面白味のない、平坦な荒野を・・。

少し眠たい目を擦る彼は、これから向かう場所に、期待と不安の両方の気持ちに、自然と口の端を浮かせる。

(これで・・・、僕もやっと・・・)

ある人との出会いによって、夢と諦めていた彼の願いは続き、今日やっと叶うのだから・・・。

「そろそろ着陸しますので、ベルトを締めて貰えますか?」

「あ、はい!」

下の方に影が見えたかと思った時、パイロットの指示に慌てながら、締めっぱなしのベルトを再確認して、彼は大きく深呼吸する。

ゆっくりと降下するのに合わせて、影はどんどんと大きくなる。仰々しいその姿が輪郭を現した頃には、ヘリは地面へと足を付けた。

扉を開き、外へと降りた彼の目に映ったのは、その巨体を走らせ続ける、移動要塞フライアだった。

 

 

カッ!カッ!カッ!

音を立てて照明が点くと、部屋の真ん中には大きな機械が置いてある。予め説明を受けていた少年は、そこへとゆっくり足を運び、右手を機械にそっと置く。そこへ、スピーカーから女性の声が流れる。

『ようこそ。フェンリル極致化技術開発局、フライアへ。これからあなたには、ゴッドイーターになる為の、洗礼を受けてもらいます。準備はよろしい?』

「はい!お願いします」

大きな声で返事をしてから、両足を肩幅に開き、足を思い切り踏ん張る少年に、「ふふっ」と声が洩れてくる。

『では・・・』

 

ガァーンッ!!!!

 

「ひ、ぐぅぅっ!!」

部屋中に響いた大きな音に驚いたのも束の間。彼は苦悶の表情を浮かべ、自然と口を大きく開き、叫んだ。

「ん・・ぐぅ、うあぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」

 

 

小さな小窓から様子を伺っていたラケルの元に、フライア所属の特殊部隊『ブラッド』隊長の、ジュリウス・ヴィスコンティがやって来る。

ラケルの隣へと位置を取ると、彼女に倣って小窓を覗き込み、少し控えめに喋りかける?

「失敗・・ですか?」

「いいえ。あなたの時も、こんなものだったわ」

考えを見透かされたような返事に、ジュリウスは一瞬目を細めてから、改めて小窓の向こうの少年を見つめる。

すると、苦痛が治まってきたのか、彼は着いた膝をゆっくりと伸ばし始める。

「ふふふっ。成功ね・・」

「・・・そのようだ」

ジュリウスのそっけない返事に、ラケルは微笑んで見せてから、マイクのスイッチを入れる。

 

まだ少し震える足に気合を入れてから、彼は右腕にガッチリはまった黒い腕輪を見る。それから、自然と握りしめていた神機をゆっくりと持ち上げて、その黒い刃を一気に振り下ろす。

 

キィィンッ!

 

振るった刃の震える音に、少年は歓喜の笑みを浮かべる。

『おめでとう。これであなたも、晴れてゴッドイーターとなりました。これから訓練の後、ここフライア預かりの特殊部隊、ブラッドに所属してもらいます』

「・・・・はい」

声の主が、天井近くの小窓の向こうにいるとわかってか、そこで微笑むラケルを見つめて返事をする。

『後程、検査を行います。呼び出したら、3階の私のところまで来るように。・・何か、決意表明でもある?』

「・・・・決意」

ラケルの言葉に少し考えてから、彼は尊敬する人がくれた言葉を思い出す。

 

「もし神機を握る時が来たら、大切なものを守るために使うんだよ」

 

それを噛みしめるように目を閉じてから、軽く息を吐いてから目を開け、口を開く。

「この神機を振るって、僕の大切なものを・・・守ります!」

その言葉に、横に控えていたジュリウスは目を大きく開き、ラケルは満足そうに大きく頷く。

『その決意を、どうか忘れぬように・・。神威ヒロ。今日からあなたは、フェンリル極致化技術開発局の、ゴッドイーターです』

 

 

待ち時間を持て余したヒロは、少しの冒険心に、エレベーターで2階に上ってみる。

色々な施設が並ぶ中を、物珍しそうに見て回るヒロ。彼にとっては全てが目新しく、とても輝いて見えた。

彼が見ていた景色には、「空っぽ」という言葉が当てはまっていたからだ。

 

しばらく歩いたところに、ガラス扉を見つける。それもまた珍しいと、ヒロは特に何も気にせずに、その扉の中へと踏み込む。

ガチャッ

「・・・・・すごい」

『楽園』

彼の連想も、あながち間違いではない。

そこには、色とりどりの花が咲き、その周りを小さな小川が流れている。真ん中には、アクリル天板まで立派に育った木が立っていた。

「はじめて・・・、見た」

「・・・・・ん?」

ヒロが必死に見回しながら洩らした声に、木の下に座っていた先客が顔を上げる。それに驚いてしまったヒロは、慌ててポケットの中にしまっておいた、IDカードを取り出し、認識番号と睨めっこする。

「あ、と・・・。自分は・・・えっと、・・これかな。これ?んーっと・・」

「あぁ、おまえか。畏まらなくていい」

おたおたするヒロを手で制してから、男はゆっくりと立ち上がる。

「俺の名前は、ジュリウス・ヴィスコンティ。ここフライアの特殊部隊ブラッドの隊長をしている。以後、お前の上司となるな」

「あ、はい!改めまして、神威ヒロです!よろしくお願いします!隊長!」

「はは・・。そんなに固くならなくていい。良ければ・・、座らないか?」

ジュリウスが再び腰を下ろしてから、自分の隣を指すと、ヒロは拍子抜けした感じで、そこへと座る。

会話のないまま少し沈黙が続いた後に、ジュリウスがふと口を開く。

「ここは・・・、良い所だろう?」

「え?・・・はい。そう、ですね・・」

そして、会話が途切れてしまう。

それをどうにかしようと、ヒロが必死に首を捻っていると、ジュリウスが困ったように笑みを浮かべて、ヒロへと顔を向ける。

「すまない。どうにも、俺は人とのコミュニケーションが苦手でな・・・。気の利いた事一つ考えるのも、苦労してしまう。別にお前を嫌っているわけではないんだ」

「あの・・・いえ。僕も、来たばかりで緊張して・・・、すいません」

それから二人共謝ってることに気付いてか、つい顔を合わせて笑ってしまう。そこへ、

 

『神威ヒロさん。検査を行いますので、ラケル博士の研究室へ出頭して下さい。繰り返します。神威ヒロさん。検査を・・』

 

ヒロを呼ぶ放送の声が流れる。

反射的に立ち上がったヒロは、ジュリウスへと目を向ける。それに応えるように、ジュリウスも小さく頷いて見せる。

「行った方が良い。またゆっくり話す機会もあるだろう・・」

「はい。それじゃあ・・・・」

「ん?」

すぐに立ち去るかと思ったヒロが、手を差し伸べてきたので、ジュリウスは一瞬考えてしまう。しかし、彼の意図が読めたのか、ジュリウスもその手を掴んで見せて、口の端を浮かせる。

「これから、よろしくな。ヒロ」

「はい!隊長!」

固く握ったその手の温もりに、ヒロは大切なものを一つ見つけたと思った。

 

 

 





僕っ子なんで、ユウとかぶりそう・・・。
でも、似ているということで話を進めるから、いいんだ!


・・・・・・・多分。

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