みかん色の風   作:OCEAN☆S

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第43話「私たちの拠点へ。」

~2日前~

 

「そういや、千歌は夏休み実家には帰るの?」

 

「うん!旅館の手伝いとかもあるからね~夏になるとお客さんも結構増えて大変だからね。」

 

そういや…母さんの仕事先もまだ沼津のままだからな…俺も久々に顔を見せに行こうかな?

 

「悠之くんはどうするの?一緒に内浦に帰る?」

 

「あぁ、俺もたまには母さんに顔を見せなくちゃな。」

 

 

~~♢♢~~

 

~現在~

 

 

見渡す限りの青い海…随分と久しぶりだ…そういや大学に行ってから全く帰省してなかったから一年ぶりくらいにはなるのかな?

 

「じゃあ千歌、俺はは先に母さんの所に行ってくるから。」

 

「うん、荷物はあの時のお部屋にまとめておくからね!」

 

「ありがとう、じゃあまた後で。」

 

「行ってらっしゃい~」

 

 

……

………

…………

 

 

母さんの仕事先の家は千歌の旅館から少し離れた場所にある、確か3キロくらい離れている。

 

…バス代をケチって歩いていこうとしたのは間違いだったかな。この暑さで外を歩くのはちょっと賢い判断ではなかったかも。

 

 

 

 

 

なんだかんだで、20分くらい歩いてようやく家が見えてきた。

どんな反応をしてくれるのだろう?

 

ピンポーン♪

 

「はーい、どなたー?」

 

ガチャ…

 

「ただいま母さん。」

 

「悠之!?どうしたの?珍しいわね~」

 

「たまには顔を見せなくちゃって思ってさ。今時間大丈夫?」

 

「大丈夫よ、早く上がって上がって。」

 

部屋に上がると、今までたくさんの書いてきた絵画が飾れている。中には失敗作も混ざっているが、母さんはそれも大きなヒントになるから捨てないで飾っている。

 

「富士山…」

 

「ん?これ?」

 

中でも1番大きく、目立つように富士山の絵も飾れてあった。

 

「そうか…完成したんだ。おめでとう!」

 

「えぇ、これでもうここにいる意味もなくなってしまったわ。」

 

「また新しい仕事場所に移動するのか?」

 

「いいえ、ここ数年間ずっと書き続けてなんだか少し疲れちゃったから、1年間休業しようと思うの。だからここでゆっくりと休むことにするわ。」

 

 

2年間もこの絵を完成させるために、一体どれほどの絵を書いたのだろう…この富士山の絵からたくさんの努力をした情熱さが伝わってくる。

 

「そっか…2年間もお疲れ様。」

 

「そんなことよりも…」

 

「?」

 

「悠之がチャラくなってなくてよかったわぁ~」ムギュウ

 

「はぁ…?」

 

「いやだって、急に美容科の道を行くなんていうから変にチャラチャラしちゃってるのかな~?って心配だったのよ?」

 

「あのな…俺がチャラ男が似合うような性格をしていると思うか?あと暑いから離れろ、いい歳して何してんだか。」

 

「もう、ケチなんだから~」

 

全く…相変わらずキャラ崩壊が激しい人だ。

 

「でも、なんか安心したわ。」

 

「?」

 

「千歌ちゃんと仲良くするのよ。」

 

「あぁ、分かってるさ。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

久しぶりにあったけど、とくに変わったことがなくて安心した。

 

 

「ただいま~」

 

そして…ここの旅館も。

 

「おかえりなさい~!」

 

後ろの髪をお団子のように束ねた千歌の姿があった。

 

「どうしたの?悠之くん?ものすごく顔が真っ赤だけど…」

 

「え…?」

 

あぁ…きっといつもと違う千歌の姿に脳内が追いついていないんだろう…。

 

いつも通りだと思ってたらあっという間に裏切られた感じだ…。

 

「もしかして熱中症!?あんまり汗もかいてないっぽいし…!?」

 

「あ…確かに。」

 

自分の首元や顔周りを触ってみたが、汗で濡れてるところが全く無かった…歩いて往復してきたんだから少しは汗をかいててもおかしくないのに…。

 

「早く悠之くんこっちきて!」

 

「う、うん。」

 

 

たしかに、急に目がくらみ出してきた…千歌に言われたから余計に意識して感じるようになったのか…少し視界がぼやける。

 

 

「ここのお布団に…」

 

「あぁ…」

首元に氷枕、デコの上に冷たいタオルを乗せてもらった。

 

「今、飲み物持ってくるから待っててね。」

 

「ありがと…」

 

この地球上…どこにいても、夏は暑い…油断してたらあっという間に身体の体力を削られていく…。

 

「はい、お待たせ。」

 

千歌がスポーツドリンクを持ってきてくれた。

 

「ありがとう…」

 

乾いた喉をあっという間に潤ってくる…

 

「びっくりだよ…いきなり悠之くんが熱中症になっちゃうなんて。」

 

多分俺のこの症状にトドメを指したのは千歌だろうけどな…

 

なんか…疲れがでちゃったかな…

 

 

「悠之くん…寝ちゃった?」

 

 

私はそっと悠之くんの頭を撫でる。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「悠之くん~起き…ありゃ、まだ寝ちゃってるか……」

 

もう夕食出来てるから起こしてあげた方がいいよね…

 

熱はどうかな…?もう良くなっているかな?

 

「……」ピトッ

 

悠之くんの額に自分のデコを当てる…。

 

「…千歌?」

 

「あ、起きた悠之くん?」

 

「うん…」

 

悠之くんが私の頬に手を当てる…

 

「悠之くん…どうしたの?」

 

「千歌ってさ…なんでこんなに可愛いの…?」

 

「ふぇっ!?ど、どうしたの?急に…///」

 

なんか、面と向かって可愛いなんて言われたの結構久しぶりかも…。

 

「ど、どうしちゃったの悠之くん?やっぱりのぼせちゃったの?」

 

まだ熱があるのかな…?なにかしてあげた方がいいのかな?

 

「ゆ、悠之くん…なにか欲しいものとかある?冷たいもの…とか?」

 

「…膝枕。」

 

「へ?」

 

「膝枕をして欲しい。」

 

「えぇ!?」

 

ほんとにどうしちゃったんだろ…熱中症になるとなんだか甘えん坊になっちゃうのかな?

 

「は、はい…おいで。」ポンポン

 

「ん…」スッ

 

最初はなんか戸惑ったけど…甘えん坊な悠之くんもなんかいつもと違って可愛い♪

 

「悠之くん、じっとしてて?」

 

「…?」

 

横たわっている悠之くんにそっとキスを交わす。

 

「ん……」

 

「……」

 

ガララ…

 

「千歌~悠之くんは起き…た…?」

 

「あ、」

 

美渡ねぇに見られて、空気が一瞬にして凍りついた。

 

「ご、ごめん……邪魔しちゃって。」

 

「う、ううん…///」

 

「じゃ、じゃあ…あとはお若いふたりで…」

 

ピシャ…

 

な、なんかこんな展開…高校生の時にもあったような気がする…。

 

「千歌…も、もう大丈夫…///」

 

「ゆ、悠之くん…やっと戻った?」

 

「うん…なんかごめん」

 

「だ、大丈夫だよ…///」

 

 

~~♢♢~~

 

「あら、美渡ちゃん?2人はどうしたの?」

 

「志満ねぇ…2人がもうあそこまできてるなんて…」

 

「あそこまでって?」

 

「膝枕しながらキスしてた…///」

 

「…別に驚くことはないんじゃない?」

 

「ど、どうしてさ?」

 

「だって、2人とも高校生の時からアツアツだったじゃない♪」

 

「た、たしかに…」

 

 

~~♢♢~~

 

 

「いやぁ…ごめんな、急に体調崩しちゃってさ…」

 

「大丈夫だよ、こういう日くらい誰にだってあるもん。」

 

「なんか熱中症で頭おかしくなってたみたいだし…」

 

「あはは…確かにいつもの悠之くんっぽくはなかったかも。」

 

 

私はなんか可愛いらしくて良かったと思うけどなぁ…なんか悠之くんを独占している気分になれて少しドキドキしたし…。

 

 

そうだ…悠之くんにあの事を…。

 

 

「悠之くん…明後日にさ、沼津の港の方でお祭りがあるんだけど…よかったらふたりで一緒に行かない?」

 

「お祭り?もちろん行くよ!一緒にお祭りだなんて久しぶりだな~」

 

よかった…前は曜ちゃんや梨子ちゃんも一緒だったけど…今回はデートとして誘えられた!

 

 

早く明後日にならないかな~♪


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