みかん色の風   作:OCEAN☆S

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第3話「宿敵現る!?」

この俺、小野悠之が内浦に帰ってきてから既に10日が経った……俺は引越しでここに来たからある物から逃れることができた。

 

千歌が既に追い込まれている…夏と冬に必ずお世話になる宿敵……

 

そう、その名も…「宿題」という全国の若者が必ず苦しむ…恐るべき強敵である!

 

 

 

「うぅ…ゆ~じ~く~ん…宿題が終わらないよ~」

 

「最終日まで貯めてるからそんな目にあうんだ、毎年毎年同じことを繰り返してないか?」

 

「私にとっては「宿題」と書いて「宿敵」って読むのっ!」

 

千歌がよくわからない言い訳をする。

 

「変な言い訳はいいから早く終わらせろよー」

 

「そんなぁ……悠之君はこんなに困ってる私を見捨てちゃうの…?(ウルウル)」

 

千歌が捨てられた子犬のような瞳で俺を見つめる………

 

「——誰も手伝わないなんて言ってないだろ?」

 

「わぁい!やったぁー!」

 

千歌が嬉しそうに俺に抱きついてきた、千歌の柔らかい胸の感触が俺の身体に伝わる……

 

 

それにしても俺は千歌に甘すぎる気がする……だけど、つい甘やかしたくなっちゃうんだよな……甘え上手な所が千歌の魅力の一つだ。

 

「で、さっきから手が止まっているけど、どこか分からないところでもあるのか?」

 

「あ、うん…ここの計算の仕方が分からないんだ…教科書と同じようにやってるのにできないの…。」

 

二次方程式……か。そういえば俺も昔は苦戦していた時期があったなぁ…だが、高校生になった俺にはもう敵ではない。

 

「じゃあ、俺が直接教えてやるよ。答えを写して解くだけじゃあ後から辛いからな。」

 

「でも…すごく時間がかかるんじゃ…。」

 

千歌が心配そうな顔をする……俺の時間が無くなるのかと思って気にしているのか?

 

「千歌が分かるようになるまで教えるから気にすんな。」

 

「ほ、ほんとう…?」

 

「もちろんだ、俺が今まで千歌に嘘をついたことがあるか?」

 

「あ、ありがとう…///」

 

俺は千歌の隣に座る……

 

「じゃあ、始めよっか。」

 

「うんっ!」

 

「二次方程式の計算の基本から教えていくから……」

 

俺が千歌に分かるように解説をしていく。俺は自然に千歌との距離を詰めていく。

 

「(ど、どうしよう…悠之君の顔が近くて…き、緊張しちゃうよ~///)」

 

「千歌?」

 

「(ダメっ!これは…ただのお勉強……お勉強……だけど…。)」

 

「熱でもあるのか?」

 

「ひゃあ!?」

 

俺は千歌の自分の方に寄せて、おでことおでこを合わせる……

 

「ゆ、悠之君…今はお勉強の時間でしょ…///」

 

「あ、ごめん…顔が赤いからつい…熱がなくてよかったけど。」

 

「もう……私はいつも風邪をひいてるイメージなの?」

 

「あはは…今後気を付けます。」

 

2人で宿題を続けてから1時間

 

「ここで、計算を当てはめてみてごらん。」

 

「やったー!解けたー!!」

 

「よし、じゃあ一旦休憩にしようか。」

 

千歌が畳でごろんっと寝転ぶ。

 

「そういえば、他の教科は何が残ってるんだ?」

 

「えーと…国語でしょ、社会でしょ、英語でしょ…」

 

千歌が指で数える……

 

「ほぼすべてなのはよく分かった…」

 

「あ、でも今ので数学が終わったからあと4教科…」

 

「充分残ってるじゃあねえか!」

 

「えへへ……おねがぁい♡」

 

「全く……」

 

 

さらに時間が経過する……

 

「あと一教科だ~!」

 

「最後は何が残ってるんだ?」

 

「後は……国語…しかも私が嫌いな漢文だ~。」

 

「漢文か…確かに難しいよな。でも、一緒に解いていけばなんとかなると思うから……頑張ろうぜ。」

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

気を取り直し、再び勉強に戻る。

 

「ここにレ点があるから……下の文字を読んでから上の文字を読む……」

 

「そう、そんな感じ……」

 

「やった!できたー!!」

 

「お疲れ様、よく頑張ったな。」

 

「うん!悠之君がいたからだよー!」

 

千歌が宿題を始めてから約3時間……ちょうどお昼の時間帯に終わることが出来た。

 

「じゃあ冬休みの最終日だし、午後はどこかへ出かけない?」

 

「そうだな……千歌はどこに行きたいんだ?」

 

「うふふっ」

 

「……?」

 

千歌が楽しそうに微笑む……

 

「悠之君がここに来てから、1度行きたい場所があったんだ~」

 

「へぇ…どこだ?」

 

「まあまあ、ついてきて!」

 

千歌が俺の手を取り、そのまま旅館から出ていこうとした……が。

 

「千歌……まさかその格好で行くのか?」

 

「あ…まだパジャマだった。」

 

「俺も着替えないと……」

 

2人とも自分の部屋に戻り、支度を済ませた。

オレンジ色のニットのワンピースに、黒色のタイツ……いつもより大人っぽい私服に心を撃ち抜かれた…。

 

 

「お待たせ~」

 

「………」

 

「悠之君?」

 

「——可愛い。」

 

「え…///」

 

千歌が戸惑いを隠せないでいる…。

 

「い、いや…いつもと違う雰囲気にびっくりしたというか…」

 

「そ、そうなんだ…あんまり千歌には似合わなかったかなぁ…?(シュン)」

 

「いや、全く逆だよ!」

 

俺は少し深呼吸をして……

 

「可愛いよその服…千歌にぴったりだ…。」

 

「……ほんと?」

 

「千歌は何を着ても可愛く着こなせるんだから、気にしないで大丈夫だよ。」

 

「その…ありがと…///」

 

千歌が顔を真っ赤に染めている……きっと頑張ってオシャレしたんだな…。

 

「じゃあ行こうか。」

 

「うんっ!」

 

俺達が玄関を出ようとすると……。

 

「あれ~?千歌と悠之くんはどこへ行くの?」

 

「み、みと姉!?」

 

「デートだよな~」

 

「ちょっ!悠之君!」

 

「あ、ごめん…邪魔しちゃったね。行ってらっしゃい。」

 

「いっ…いってきま~す……」

 

俺達はそう言い、旅館を出た。

 

 

 

 

あの子達…楽しそうにしてたな…。もうそんな関係になっちゃったのかな?よかったね…千歌…。

 

 

 

 

「もうっ!さっきの悠之君デリカシーが無いよー!」

 

「ああいうのはすぐに話を切った方が効率がいいんだ。」

 

「デリカシーが無い悠之君なんて嫌いだもん!」

 

 

千歌が顔を膨らませている…

 

「まあまあ、そう怒るなって…可愛い顔が台無しだぞ。」

 

「なっ!?か、か…かわいいなんて…///」

 

「ほら、赤くなってる千歌も可愛いぞ~」

 

「うぅ…悠之君のいじわる…。」

 

若干怒りながらも、少しずつ笑顔を見せる…素直な性格がバレバレだな。

 

「ここだよ、悠之君と一緒に行きたかったんだ~」

 

「ここは…喫茶店か?」

 

店の看板を見ると「松月」って書いてある…俺が居ないうちにこんな喫茶店ができていたのか…。

 

「悠之君はやく入ろ!」

 

「あ、ああ。」

 

お店に入ると中から美味しそうなお菓子の匂いが漂ってくる…。

 

「さーて、私は何にしようかな~~。」

 

「色々とあるんだな……何にしよう…。」

 

メニューを見ると苺のショートケーキとコーヒーのセットが写真で乗っている……見栄えがとても綺麗だしこれにしようかな?

 

「悠之君は決まった?」

 

「ああ、俺はこれにするよ。」

 

注文後、二人用の席につく……

 

「悠之君はコーヒー飲めるんだね~。」

 

「ん?千歌は嫌いなの?」

 

「私は……ちょっと苦くて…無理かな。」

 

「そうか…可愛いらしいな。」

 

「直ぐに「可愛い」って言わないで…恥ずかしいよ…///」

 

千歌がオレンジジュースを飲みながら顔を赤くする…。

 

「だってほんとうの事だからつい……」

 

「うぅ…」

 

喫茶店の周りにいる人達からヒソヒソと話し声が聞こえてくる……。

 

「カップルかな?」

 

「彼女さん可愛い~」

 

「爆ぜろリア充」

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば千歌は何を頼んだんだ?」

 

「私は~みかんパフェにしたんだ~!」

 

「ほう…美味しそうだな…。」

 

「悠之君のもわけてくれるなら、わけてもいいよ~」

 

「分かってるって」

 

千歌がスプーンから1口分すくう…。

 

「はい、アーン…♡」

 

俺は何もためらいもなく千歌のパフェを

「今度は俺のだな、ほらアーンして…」

 

「あ〜ん……おいし~い…幸せ~♡」

 

千歌の笑顔を見ていると自然に顔がにやけてしまう……。

 

「なんで悠之君がニヤニヤしてるの~?」

 

「うん?……千歌が可愛いからだよ。」

 

「もうっ!さっき言ったばかりなのに…///」

 

千歌が恥ずかしがりながら目をそらしながら話しかける…。

 

「悠之君、私がどうしてここに来たかったか分かる?」

 

「う~ん……スイーツが好きだから?」

 

「ぶっぶー!」

 

千歌が両腕でクロスをする。

 

「じゃあ……なに?」

 

千歌がクスッと笑い……

 

「……やっぱりなんでもないっ!」

 

「えーっ!?」

 

そこまで言っといて最後は何も言ってくれないのかよ……余計に気になるな…。

 

 

 

 

そんな会話をしていると辺りが夕焼け色に染まっていた…。

 

「そろそろ帰ろっか、あんまり遅くなるとみんな心配しちゃうし…。」

 

「そうだな、早く帰ろっか。」

 

2人でお会計を済ませ、店を出ると冷たい風が2人を襲う……。

 

「寒っ!」

 

「1月だからな……春はまだまだ先か…。」

 

海の周辺だからなのか、風がとても冷たい…。

 

「風邪ひくといけないからすぐに戻ろう…。」

 

「悠之君……」

 

「何?」

 

「手……繋がない…?」

 

「い、いいけど……。」

 

ギュッとふたりで手を繋ぐ…千歌の少し小さな手の温もりが俺の指の先にまで伝わっていく…

 

「ほら……2人で手を繋いでいると…心の奥からポカポカしてこない?」

 

「確かに……安心感があるから…かな?」

 

互いに顔を見つめる…

 

「前のお正月の時は果南ちゃん達がいたから…普通に手を繋げたけど…ほんとにふたりきりだと緊張するね…。」

 

「確かに…今日は1日中2人きりだもんな…。」

 

 

2人で歩いているうちに辺りが夕焼けから真っ暗になっていく…。

 

「1人で暗い場所を歩いてたら泣き出しちゃいそう…やっぱり悠之君がそばにいるからかな…。」

 

「俺は千歌がそばに居てくれるだけで充分幸せだよ。」

 

「うん…私も♡」

 

悠之君の手がどんどん熱くなっていく…少し緊張しているのかな?

 

「なあ…千歌。」

 

「なぁに?」

 

「キスがしたい……」

 

「え、え…えー!?」

 

千歌が大きな声をだす。

 

「で、でも……ここお外だよ…?」

 

「ごめん…我慢できない…。」

 

「まって……ゆう……んっ♡」

 

暗闇の小道で千歌の唇にキスをする…。

 

「まって…っていったのに……もう~悠之君のバカ…。」

 

「暗闇だから大丈夫……」

 

「そ、そうだけど…」

 

もう一度千歌とキスをする…。

 

「んっ…んぁっ…」

 

「外で暗闇のキス…ハマっちゃった?」

 

「う、うん…♡」

 

千歌が恥ずかしそうにうなずく。

 

「でも、寒いからやっぱり早く帰ろ!」

 

「えー!?」

 

 

千歌の手を握ったまま一緒に走り出す…

 

 

俺は走りながら少し後悔した…

 

 

まだ告白もしていない女の子に唇を合わせてしまったことを…

 

 

 

 

 

俺達は旅館に戻ると、千歌の母さんがニヤニヤしながら玄関で待っていた…。

 

「2人とも~見ちゃったよ~!」

 

「へ…?」

 

「さっき車で通ったら、夜道でふたりが……」

 

『やめてぇー!!』

 

 

 




キスシーン…書いていて凄く恥ずかしくなってしまいました(笑)

まだまだ僕も純粋ですネ~(どの口が言う)

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