みかん色の風   作:OCEAN☆S

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結構詰まってしまって、投稿が遅れてしまいました!

大変申し訳ございません…それでは続きをどうぞ!


side story riko 2nd「間違った選択」

東京…私は今年の夏、またここに戻ってきた…彼のお墓を見に…。

 

 

ここに来ると、私は少し心が落ち着く…目の前に悠之君がいるように感じるから…

 

けれど、それと同時に懐かしい記憶も蘇ってくる…ここは私に安心感と悲しい思いを与える…そんな場所…。

 

 

でも今日は彼の誕生日…あんまり悲しんでばかりじゃなくて、少しは彼に笑顔を見せるように、明るい気持ちで行かなくちゃ。

 

 

私は一年前のお花を新しいお花に入れ替えて、ひしゃくで水を注ぎ、墓石に水をかけ、線香束に火をつけて供える…

 

「…これでよしっと。」

 

私は手を合わせて…お祈りをする…。

 

(また来年もここに帰ってくるからね…そして、お誕生日おめでとう…。)

 

これで全てが終わったのでお墓を後にしようとした…けれど、私の体は何故か動かなかった…

 

(あれおかしいな…?どうして体が動かないの…?いつまでもここに居たらまた悲しくなっちゃう…)

 

でも、私は何かを悟った…

 

本当はもっと彼のそばにいたい…心が嘘をついているから体が動かないんだ…

 

貴方がいなくなってからもう二年も経つのに…

 

少しずつ私のじわっとまぶたが熱くなっていくのが分かった…

 

もう二度と貴方の前で泣きたくなんて無かったのに…

 

そして、1粒ずつ涙がこぼれ落ちた…

 

私…本当にもうダメなのかな…2年間頑張って生きてきたけど…やっぱり貴方の事が忘れられない…貴方に…会いたいよ…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おや、女の子が一人でお墓参りかい?」

 

私が一人で泣いていると後ろから優しそうなおばあさんが話しかけてきた

 

「あら…泣いちゃってるの…ハンカチ使うかい?」

 

「い、いえ…自分のがあるので…。」

 

私はポッケからハンカチを取り出して涙を拭く…。

 

「このお墓の人…君のお父さんかい?」

 

「いいえ…私の…大切な人です。」

 

「そうかい…それは辛かったね…」

 

 

 

おばあさんが同情するような目で見てくれた…。

 

「私もね…若い時に旦那は体が弱くて…早く死んでしまってね…それからずーっと独りぼっちでね…」

 

「……」

 

「でもね…私の旦那はこう言ってくれたんだよ…『生きてて…』って…」

 

 

彼と…同じことを…

 

「それから私も毎年墓参りに行ったんだけどね…何回行っても悲しい気持ちは変わらなかった…。」

 

「そう…ですよね。」

 

変わるはずが無い…大切な人の前のお墓で…悲しくならない人なんているわけが無い…。

 

「でも、私には…彼の言葉がずっと…頭の中に残っていた…彼の分まで生きなくちゃ…どんなに辛く悲しくても…」

 

おばあさんの言ってくれることも分かる…けれど私は…

 

「……私もう思いを断ち切りたいんです…いつまでも彼の事を思っていないで…中途半端な自分を変えたいんです…」

 

私は思い切って感情を出してしまった

 

「忘れてはいけないよ…」

 

「…どうしてです?」

 

「貴方の大事な思い出を…彼との思い出を全てを踏みにじってしまうことになるからだ…」

 

「……」

 

「もう一度よく考えてごらん。」

 

おばあさんはそう言い、その場から立ち去った…

 

 

思い出…か…彼との思い出…悲惨な事もあったけど、楽しい思い出もたくさんあった…ううん、むしろ楽しい方が多かった……

 

でも…私はあのおばあさんと違って…そんなに前向きになれない…彼のことを思い出すと…

 

彼に会いたい…

一緒に居たい…

 

そんな不可能な願い事ばかり考えてしまう…

 

私…これからどうすればいいんだろう…。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

~東京から帰って数日~

 

ちょっと出かけるってお母さんに伝えて、海を見に行った…それは私の気を紛らす為。

 

 

東京とは全然違って、やっぱりここは海がとても綺麗…初めて来た時も感動したけど、夕焼けだともっと綺麗…

 

 

「あれ?お姉さん一人で何してるの?」

 

スーパーのレジ袋を持ったオレンジ色の髪の女の子が私に話しかけてきた

 

あれ?この子って確か…

 

「ここら辺じゃ余り見ない顔だけど…」

 

「あ、うん…私最近引越して来て…。」

 

お姉さんは笑顔でそう答えてくれた…けれど

 

「お姉さん何かあったの?」

 

「え、どうして?」

 

お姉さんの笑顔は、無理やり作ったような悲しそうな笑顔だった。

 

 

「だって…悲しそうな顔をしてる。」

 

「……」

 

私はそう言われて、海に映った自分の顔を見てみる…。

 

確かに、暗い顔だった。

 

「…ホントだ。」

 

「辛いことでもあったの?」

 

「べつに…貴方には関係ないし…。」

 

「そうかもしれないけど…」

「じゃあ何で…?」

 

私は彼女にそう質問する。

 

「私ね、誰かが悲しんでるのって…嫌なんだ。」

 

「…そう。」

 

「…それに」

 

彼女は、真剣な顔をして私にこう言った。

 

「お姉さん、泣いてるんだもん…。」

 

「え…?」

 

「海で顔を見てもぼやけてて見づらいかもだけど…」

 

「ほんとだ…私…」ポロッ

 

私はハンカチを取ろうとしたけど、家に置いてきてしまった。

 

「使いますか?」スッ

 

「あ、ありがと…」

 

私は彼女からハンカチを借りる…

 

「…貴方優しいのね。」

 

「エヘヘ…ありがと♪」

 

…可愛い子

 

「ねぇ、お姉さん」

 

「なに?」

 

「内容とかは聞かないからさ、日曜日にお昼にさ、またここに来てよ。」

 

「え、どうして?」

 

彼女は、ニコやかな笑顔でこう答えた

 

「それはお楽しみ♪じゃーねー!」

 

そのまま、あの子は走り去ってしまった。

 

「変な子…」

 

日曜日…行ってみようかな。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

日曜日、私はあの子が言った時間帯にまたここの海に来てみた。

 

約束の時間に来てみたけど、あの子はまだ来ていないみたい…

 

「すみません~!」

 

あの子が裸足のまま走ってきた…海育ちだから?熱くないのかな?

 

「ごめんね、準備してたらちょっと遅れちゃった!」

 

「それはいいけど、これから何をするの?」

 

「あ、うん!こっち来て!!」グイッ

 

「ち、ちょっと!引っ張らないで~!!」

 

私は彼女に強引に引っ張られて、小さな定期船に乗せられた。

 

♢

 

「ねぇねぇ、お姉さんってどこから引っ越してきたの?」

 

「…東京よ。」

 

「おぉ~!都会人だ~!」

 

この子、都会って聞いただけで凄く嬉しそう…別に特別良い場所って訳じゃないのになぁ。

 

「そうだ、お姉さん名前なんて言うの?」

 

「桜内梨子よ。」

 

「桜内梨子さんか~私はね、高海千歌って言うんだ~」

 

「千歌さん…か。」

 

「千歌でいいよ。」

 

「そうだね、よろしく千歌ちゃん。」

 

「えへへ…よろしくね、梨子ちゃん。」

 

私の方が歳上なのに…でも、何だか妹みたいで可愛い…

 

「あ、もうすぐ着くよ!」

 

「う、うん!」

 

 

 

 

 

私達は定期船を降り、小さなダイビングショップに着いた。

 

「いらっしゃ~い…ってなんだ千歌か。」

 

「なんだって酷くない?果南ちゃん」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ダイビングショップに連れてくるということは、今日はきっと海に入るのだろう…

 

私は千歌ちゃんの友達の説明をしっかりと聞くことにした。

 

 

 

「…以上が説明だけど大丈夫そう?」

 

「えぇ、とても分かりやすかったわ。」

 

彼女の名前は果南って呼ぶらしい…スタイルもとても綺麗な子…ハキハキしてて、凄く話もわかりやすい。

 

果南さんにダイビングのコツとかを聞いてると、私は重大なことに気づいた…

 

「そういえば今日水着持ってきてない…」

 

「あ~大丈夫大丈夫、水着だってレンタル出来るんだから。」

 

「そ、そうなんだ…よかったぁ…。」

 

千歌ちゃんは服の下に水着を着ていたみたいで、すぐに準備が出来ていた。

 

私は、果南さんから受け取った水着を着ようとするが…

 

「これ、ビキニだ…」

 

ダイビングって言うから、スク水みたいなのを想像していたけど…まあいいわ、一応着たことはあるし…。

 

確か、水着を着て…その上からウエットスーツを…

 

「梨子ちゃん~まだ~?」シャッ

 

「ひゃっ!?まだ入っちゃダメ~!!」

 

「おぉ…これが都会人のボディ…」

 

「ちょ、ちょっと…千歌ちゃん…どこを見て…///」

 

「背も高くて、キュッとしてて…うへへ…」

 

「もぅ~!千歌ちゃん~!///」

 

ガシッ!

 

「ち~か~?」

 

ポイッ!

 

え、果南さんが千歌ちゃんを片手でつまみ出した…!?

 

「ごめんね、ゆっくりでいいからね~」

 

果南さんが笑顔のままカーテンを閉める。

 

「いたた…別に投げなくたっていいじゃん~!」

 

「覗きに行った千歌が悪い!」

 

「でも、梨子ちゃん…セクシーだったよね~?」

 

「うん、それは間違いない。ハグしたい」キリッ

 

「あはは、だよね~」

 

ゴゴゴゴゴゴ……

 

「お二人共…?」

 

「「あ、」」

 

『ダイビングが終わったらお話がありますから』ニコッ

 

「「ご、ごめんなさ~い…」」

 

 

 

~沖~

 

私達は沖の方に出て、さっそく潜ってみた。

 

どんな海の中…どんな世界なのかな?

 

「(うわぁ…凄く綺麗…やっぱりDVDとかで見るのとはスケールが違うなぁ~)」

 

それに、凄くいい気分になる…普段行くことのない水の中だから?

 

「(梨子ちゃん凄く嬉しそう…連れてきてよかったなぁ。)」

 

私は梨子ちゃんにサインを送る

 

「(こっちに来て…って意味なのかな?)」

 

私は千歌ちゃんについて行ってみる…

 

「(これは…)」

 

私達の頭上から、日差しがかかり、海上を美しく照らしている…

 

綺麗なだけじゃない…どこからかピアノのような音色が聞こえる…こんな海の真ん中で聞こえるはずがないのに…どうしてだろう…?

 

 

「(でも…心が凄く落ち着く…)」

 

♢

 

「どうだった?ダイビング楽しかった?」

 

「ええ、とても心が落ち着いた…それに海の音も聞こえた」

 

「海の…音?」

 

千歌ちゃんは首をかしげてるけど、私には間違いなく聞こえた…凄く綺麗な音色だった。

 

「じゃあ、陸の方に戻ろっか。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「おかえり」

 

私達が、ダイビングショップに戻ると、悠之君が待っていた。

 

「あれ?悠之君どうしてここに?」

 

「あぁ、千歌の母さんが東京行った時のお土産って…あれ梨子?」

 

「悠之君!?」

 

梨子がいつもより、大げさな反応をする…いつもだったらもっと普通にしてるのに…

 

「悠之君、梨子ちゃんのこと知ってるの?」

 

「知ってるも何も、同じクラスだからな。」

 

「へ~そうなんだ~!いいなぁ~!」

 

俺と千歌は年が離れてるから、絶対同じクラスにはなれない、だから少し羨ましいのか。

 

「さあ、早く着替えてシャワー浴びよ?話は後でね。」

 

果南が割り込む

 

「そうね、海水いっぱい浴びたもんね。」

 

「じゃあちょっと待っててね、悠之君!」

 

 

~15分程…

 

ほかの客の声と果南の声が聞こえる…果南さん毎日こんなに日々を送ってるのかな?ちょっと大変そう…

 

私はシャワーを浴び終わり、着替えて部屋から出る…

 

「あれ、梨子じゃん?」

 

話しかけてきたのは…東京の友達…4人だった

 

「なんだ、3年生になる前に引っ越したと思ったらこんなところにいたんだ~」

 

「……」

 

「なによ、せっかく再開したのに黙んなくてもいいじゃ~ん」

 

「…気安く話しかけないで。」

 

「はぁ!?」

 

友達が大きな声をあげた…

 

「前から思ってたけど、アンタほんっとにムカつく女だよね、美人だからって調子乗ってんの?」

 

「……!!」

 

 

~~~~~~~~~

 

『見た目いいからって調子乗ってるよね~!』

 

~~~~~~~~~

 

「…ッ!」

 

あの時と同じ事を…こいつらあんな事したのにまたそんなこと言えるの?

 

…信じられない。

 

「なんだよ、それともまだあいつの事思ってんの?

あんたも変わらないね~」

 

「…やめて!」

 

私はとっさに大きな声を出してしまった

 

「…まぁ、私達はあんたも、あいつも居なくなって清々してたけどね~」

 

「やめて…もうそれ以上言わないで…!!」ギリッ

 

『やめてよ!!』

 

私は声の方に振り向く、叫んだのは千歌ちゃんだった…後ろに果南さんもいる。

 

「誰だか知らないけど、一人相手に数人だなんて最低!恥ずかしいと思わないの!?」

 

千歌ちゃんが本気になって怒っている…幼くて可愛い子だと思ってたけど…とても驚いた…。

 

「なによ、アンタには関係ないじゃない」

 

「関係なくない!私はこの人の友達だもん!!」

 

「ふ~ん…アンタにも友達いたんだ~」

 

彼女は私を見下したような言い方をする。

 

「もういいよ、梨子ちゃん行こ?」

 

「う、うん…」

 

 

私達がこの場を離れようとしたその時。

 

「─ったく何の騒ぎだよ、もう着替えは終わったのか?」

 

「だめ!出てきちゃ…!!」

 

私の声は間に合わなかった…

 

「なんだよ、もう着替え終わってんじゃん。」

 

「嘘…なんであいつが?」

 

だめだ…バレた…。

 

「あ、あんた…な、なんで!?」

 

「は?なんだよお前ら…てか、誰だ?」

 

「ほ、ほんとにあいつなの…?死んだんじゃ…!?」

 

「いや、だから何の事だよ?意味わかんねえ奴らだな。」

 

彼女らは動揺してる…それもそうだ、今まで虐めてきてなお、自殺までさせた、あの悠之君にそっくりな彼を見たんだから…

 

「ね、ねえ帰ろ?」

 

「う、うん…」

 

彼女らは荷物をまとめ始めた。

 

「なぁ、まてよ。」

 

「ひっ!?」

 

「お前ら、俺の友達泣かしたよな…?」

 

悠之君…?

 

「お前達が誰か知らねえけどよ…友達いじめる野郎とか…非常に腹立つんだよね。」

 

「うそ…あいつってあんな事言うやつだっけ…?」

 

「今ここで、梨子に謝るか…この場から消えて、2度と現れないと誓うか…選べ。」

 

「あ、あぁ…」

 

彼女らは恐怖して動けていない…

 

「質問してんだけど…ゴチャゴチャ言ってないで早くしろよ。」

 

「は、はい!消えます!!

もう二度と関わりません!!

それじゃ!!!」

 

タッタッタッ…

 

あの人達は、すぐさま走って行った…

 

「ったくなんだあいつら…梨子、大丈夫か?」

 

「う、うん…」

 

「どうしたんだよ、なんであいつらは俺のことを知ってるんだ?」

 

「それは…。」

 

私は、高校二年感の過去を、みんなに話してしまった…ずっと心の底に閉じ込めておくつもりだったのに…

 

「私…ずっと悠之君に嘘をついてた…!

悠之君があの人に似ているから…

勝手に代わりにして、気を紛らそうとしていた…

でも…寂しい気持ちは変わることは無かった…」

 

「……」

 

「最低だよね…私…」

 

私は、全ての思いをぶつけた…

 

「……そうだな、最低だな。」

 

「悠之君、そんな言い方…」

 

千歌ちゃんがフォローしてくれたけど、私がしたことは悠之君にとって最低な事だ…私の心の気晴らしにするために利用していたのだから…

 

「そうだよね…だって私…」

 

「俺が言ってるのは、誰にも相談せずに、1人で抱え込んだ…そのやり方が最低だって言ってるんだ。」

 

「え…?」

 

「相談しづらい内容かもしれない…

けど、そうやって一人で抱え込み…

一人で苦しんでいる…そんなのは余計に辛いだけだ。

それに…俺なんかを代わりにしてたら、死んじゃったお前の彼氏に失礼だろ?」

 

「悠之君…」

 

私の胸にチクリと痛みが走る

 

「もっと周りを頼りなよ、友達だろ?俺達。」

 

今、一瞬…悠之君の笑顔が彼の笑顔に見えた…

 

「悠之君…ごめんなさい。」

 

ギュッ……

 

私はいつの間にか悠之君に抱きついていた…

 

「いいよ、思い切り泣いても。」

 

「うん……」

 

私はそのまま彼の胸で泣き続けた…。

 

 

悠之君の白いシャツ…まるで、彼のようだ…。

 

 

貴方はずるいよ…代わりにはしないって決めたのに、あなたの存在が彼との記憶を蘇らせる…

 

 

 

でも…これでハッキリと心に決めたことがある。

 

 

 

私は彼のことが大好きだ…でも、その彼はもうこの世にはいない…

 

あの時私は生きる希望をなくしかけた…

 

でも、彼は言ってくれた…『生きて』…と。

 

天国の悠之君…私、生き続けてみせるよ…だって私は…

 

あなたの事をずっと…愛してるから…。

 

そして、あなたの事を絶対に忘れないから…!




とりあえず、梨子ちゃんのストーリーは幕を閉じます。


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