文化祭が過ぎて3日後…
俺は普段通りに制服に着替えて、学校行きのバス亭に向かう…そう今日はいつもと違って1人だ…
~20分前。
俺はいつも通り布団から目が覚めたが、昨日まで隣で寝ていたはずの千歌の姿がいなかった。
「あー悠之君起きた?」
廊下の襖を開けると、しま姉さんがちょうど目の前にいた。
「あの~千歌が見当たらないんですけど知りません?」
「あ~何かさっき学校に宿題忘れたーって言っていつもより早いバスに乗っていったけど・・・」
はぁ…千歌だったらありえる話だなぁ…仕方ない今日は1人で行くとしますか。
~~~~~~
「それにしても…千歌がいないと面白くないなぁ…」
「誰がいないと面白くないんですか?」
「え?そりゃあ……!?」
俺の隣にあの時校舎で迷子になってた女の子が立っていた。
「君は確か体育館にいた……え~と…」
「桜内梨子…ですよ?」
「あ、そうだった…すまない。」
文化祭の日以来記憶を整理してみたけど…やっぱりどこかであったっていう記憶だけ残ってはいるんだが…いまいちピンと来ない…
「それで、桜内さんはどうしてここに?」
「私の家はあの旅館の隣なんですよ。」
桜内さんが指を指す方向には十千万の隣の一軒家だった。
「小野さんもこの辺りに住んでるんですか?」
「俺の家は…」
俺が喋ろうとした時、丁度バスが来てしまった。
「あ、バス来ましたよ。」
~~~~~~~〜~~~~~~~~~~~~~~~
バスから降り…学校に着いたので、俺は桜内さんと別れて自分の教室に向かった…桜内さんは…恐らく職員室かどこかだろう…
3-Aの教室に着き、自分の席につく…隣を見ても俺の横には誰もいない…いや、いない方が正解だ。
「はぁ~い♡それじゃぁ席についてね~♡」
相変わらずの変人理事長…クラスが上がって担任が変わると思ったらまたこの理事長だった…
「あ、そうだった!早くこっちに入ってきてね~!」
「は、はい…」
理事長が廊下にいる生徒にそう呼びかける…もう何となく俺は察した気がした…
「は~い、今日は新しい生徒を紹介しようと思いまーす!」
『誰?』
『かわいい~』
『髪キレ~』
うん、やっぱりこうなると思ってたよ。だって今年退学者を出したクラスはここだけだし…。
「えっと…東京から来ました、桜内梨子と言います。」
東京…やっぱり俺はこの人とどこかであった気がする…一体どこだ…東京のどこで顔を見たのだろう…。
「それじゃあ……小野君の隣でいいかな?丁度そこの席空いてるし~」
「あ、はい。」
俺は適当に返事をする…
『またアイツかよ…』
『くたばれリア充』
周りの男子の目線が物凄く怖いんだが…俺は何か悪いことでもしたのか?
「…また一緒でしたね。」
桜内が席についたのと同時に、俺の耳にそっと喋りかける。
「…そうだな、それにしても同い年だったなんて意外だ。」
すると、桜内がクスッと笑い。
「私もです、可愛い顔をしてたから年下かと思ってました。」クスッ
「はぁ?別に可愛くなんかねえよ。」
「あ、今ちょっと顔が赤くなりましたよ?」
桜内が微笑ましそうに見つめる…何かこの人といると調子が狂うな…
「それじゃあ、桜内さんは教材を取りに行くから、誰か職員室に連れてってあげてちょうだーい。」チラチラ
理事長が俺の方をチラっと何度も見返す
「…いや、先生が連れてってやれよ」
「え~これでも理事長の仕事って大変なのよ~」
「でも、流石に1人で職員室くらいは…」
「……」クイクイ
「…?」
桜内が俺の制服の袖をキュッと握ってこう放った…
「その…職員室わからない…かな…」ウワメズカイ
「……!?」
やばいな…今不覚にも可愛いと思ってしまった……俺にはもう千歌がいるのに…でも…まあ、仕方ないか。そんな捨てられた子猫のような目で見られたら断る理由が見つからない…
「…行きましょう。」
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「…よい…しょっと。」
「おいおい、それ全部まとめて持つつもりか?」
教材といえども山になればかなりの重さになる…しかし15冊以上もある教科書をまとめて持っていくなんて無理がある…はず。
「私こう見えて結構力あるんですよ?」ヒョイ
桜内が涼し気な顔をしながら軽く持ち上げる…これがギャップと言うやつか。
「……貸せよ。」
「?」
「まあ…なんだ…半分くらい持ってやんないと俺が教室に入れないから…」
男子のクレームの荒らしとかな。
「ふふっやっぱり可愛いな~♡」
「はあ?」
桜内が丁度半分くらいの量を俺に渡す。
「ねえねえ。」
「なんだよ?」
「どうしてあんなに楽しそうに歌うことが出来るの?」
歌う…?あぁ、多分この間の文化祭の事だろう。
「何でって…まあ、楽しいから…。」
桜内が少し顔を曇らせる…
「羨ましいな…」ボソッ
「…?」
「あ、ううん何でもない!」
2人で少しずつ話をしながら教室へ向かっていく…
♢
昼食の時間…今日は千歌の母さんが弁当を作ってくれたみたいだから屋上にでも行って食べに行こう。天気もいいしな。
俺は教室から出て少し上機嫌になりながら屋上に向かう…。
「…やっぱり天気がいい時の屋上は最高だな。」
「そうですね~今日は結構風通しもいいし…」
「そうだな……って何でいるんだよ?」
…また桜内か…俺はストーカーでもされてるのか?
「一緒にお昼食べたいな~なんて。」
「なんで俺なんだよ?他の女子とかと仲良くしてた方が楽しいんじゃないのか?」
「そういう悠之君もクラスの男子と全然喋ってないよ?」
…こいつ中々痛い所を。
「はぁ…じゃあ勝手にしろよ。」
「はーい♡」
桜内が嬉しそうな顔をしながら俺の隣に座る。
「なあ?」
「はい?」
「桜内は今日入学初日だろ?なんでそんなに人と接するのが上手いんだ?」
「桜内…じゃなくて名前で…」
「わかったわかった、梨子さん。」
「よろしい♪」
梨子が嬉しそうな笑顔を見せる…
「う~ん…なんでだろ…私ホントはそこまでお喋りが得意なわけじゃないんだけど…悠之君とは初めて会った感じがしないから…かな?」
「…そっか。」
やっぱり俺もこの人と間違いなくどこかであった記憶がある…なのに思い出せないのはなぜだ…
俺は無意識にスマホの画面を開く…
「あ、その女の子誰?」
梨子が俺のスマホのロック画面をじっと見つめる。
「うん?俺の幼馴染だよ。」
「へ~幼馴染なのにロック画面にしちゃうくらいに大好きなんだ~」
「まあ…そりゃあ……って何言わせてんだ。」
「あら、また赤くなった…貴方って結構顔に出やすいんだね。」
あぁ…やっぱりこいつといると調子が狂う……
「で、付き合ってどれくらいなの?」
「いきなり付き合ってる前提っすか…まあ事実ですけど…。」
「…笑顔が凄く魅力的な女の子だね♪」
「当然だ、それに笑顔だけではないぞ。」
「うわぁ…いきなり嫁自慢ですか…おじさん臭いなぁ…」
「お前そろそろぶっ飛ばすぞ?」
「まさか冗談ですよ♪」
「あぁ、俺も今のは冗談だ。」
何故か俺と梨子は自然と笑顔がこぼれていた、なんかここの学校に来てから初めて「友達」という存在を手にした気分だった。彼女も俺と同じ転校生だから話が噛み合うのだろうか…その辺は俺にはよく分からん。
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放課後
俺と梨子は方角が一緒なので帰りのバスも一緒だ。
「じゃあ、私はここで降りるね。」
「え、まだ一駅前じゃないか。」
「私と君が一緒だと、あの子が嫌がるんじゃないの?」
「あぁ…確かに。」
梨子って結構気遣いできるんだな…少し感心したな。
「悪いな、気遣ってくれて…それじゃあまたな。」
「うんじゃあね♪」
桜内は一駅先に降りて、その場を去った。
そして、それから五分ほどたって十千万の前に着いたので俺も降りた…。
♢
「ただいま~」
「あ、おっかえり~!」
旅館に戻ると千歌が全速力で俺のところに走ってきた。
「今日は1日中会えなかったから寂しかった~!」
「あぁ、俺もだよ。」ヨシヨシ
「もっと~」
「わかったわかった。」ナデナデ
あー…やっぱり可愛い…。
「2人とも~玄関だとお客さんに見られちゃうから早くね~」
「「あ、はーい」」
とりあえず、2人で食卓の方へ移動する。
「先に食べてても良かったのに…悪いな。」
「ううん、悠之君と一緒に食べたかったから~それに朝も一緒に食べれてないし。」
「そっか、サンキューな。」
「うん♡」
今日は、鮭の塩焼きとお味噌汁とご飯と和物、シンプルだがそれがまた食欲をそそる。
「ねえねえ悠之君…ご飯粒ついてるよ?」
「え、まじか?どこだ?」
「ここ♡」ペロッ
「——!?」
千歌が俺の頬に付いてるご飯粒を優しく舐めとるように食べた。
「えへへ悠之君の顔真っ赤~♡」
「全く……そら、お返しだ。」ズイ
俺は千歌の頬に軽くキスをする……
「あ…も、もう…悠之君…今食事中…///」
「でも先にしたのは千歌だぞ?」
「む~///」
千歌が頬膨らませている…ちょっと怒らせちゃったかな?
と思ったが千歌が少し恥ずかしそうな顔をしている……
「あの…悠之君…その…」
「うん?」
「えっと…さっき続き…千歌の部屋でしない?」
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