春休み…残すところあと一週間余り…か…このまま、平穏な日々が続けばいいんだがあなぁ…時間は止まってはくれない…進んでいく一方だ。
とりあえず、今はこの布団から出ることを優先しよう・・・いや、今日くらいは、二度寝したっていいだろう…だからもうちょっと寝よ・・・
ガラッ
「おーきーろー」
そう思った矢先に千歌が部屋に入ってくる…とりあえず寝た振りでもしておこうかな。
「ゆ~じく~ん!はやく起きてよ~!」
いつもだったら、幸せな気分で起きられるんだけど…今日は少しだけタイミングが悪い…千歌には悪いけど、あと…1時間くらい…
「もぉ~!起きてったら~!」
あぁ…この声を録音して、目覚ましの代わりに使いたいなぁ…
いや、やっぱり生声が一番いいな。前言撤回。
「(いつもならすぐに起きるのにどうやったら起きるんだろう…?
う~ん…例えば……)」
「ふんだっ!もう、悠之君なんか知らないから~!
千歌の事を放っておいてずーっと寝ちゃってなよ!」
怒ったフリして、心を揺さぶる作戦か……全然怖くないな、むしろ可愛いもっとやって。
「だっ…ダメかぁ…う~ん…どぉ~しよお~」
なんか…逆に癒されて眠気がまた来た…もう寝ようかな…
♢
1時間後…
流石に、二度寝じゃあんまりぐっすりは寝られないか……ん?
何だか、いい匂いがする…いつも傍にいるような、優しい匂い…。
俺は、重たいまぶたをしっかりと開いてみると、俺の布団の中に千歌の姿が見えた。
お、驚いたな…起こしに来てたというのに、俺の布団で寝ちゃってるんだからな…
「むにゃ…」
寝返りで、千歌の寝顔が俺のことを見つめる…
…やべえなぁ
「くぅ…くぅ…」
千歌の寝顔めっちゃ可愛い…。
とりあえず寝顔が可愛い過ぎるので、ほっぺをつついてみる。
いつも触ってるけど、相変わらずマシュマロみたいに柔らかかった…
「可愛いなぁ…」ツンツン
「……///」
あれ?今顔が少し赤くならなかったかな?
もう一度、千歌の顔を確認してみると、少し赤くなっていた。
「やっぱり少し赤いな…」プニプニ
「……」
もう少しだけ…いじってみようかな?
「いまなら、千歌は寝てるし…キス…しちゃおうかな?」
「……!?」
「(さて、どんな気持ちなのかな?千歌は。)」
「……///」ドキドキ
顔がもっと赤くなってるな、嘘はついていても顔に出てるのがまるわかりだ。可愛いらしいなぁ。
「……///」ドキドキ
「…途中からおきてただろ?」
「……!?」
「寝た振りしてたのが、バレバレだったぞ。」
「え、えー!?いつからー!?」
「いや、頬をつついてたところ辺りから。」
「そんなぁ…」シュン
少し千歌のテンションが下がる…まあ、このままいけば千歌とキスが出来たんだもんな。
「キス…して欲しかった…。」ウルウル
「え、い、いや…そんな顔されても…」
「悠之君とキス…したかったのに…」
「わ、わかったって」
チュッ
「えへへ♪悠之君だーいすき♡」
「千歌…さっきのわざとだろ…」
「え?私はなーんにもしらないよー?」
「はは…そっか。」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「で、何か用があるんだろ?」
「え?」
「いや、わさわざ起こしに来てくれたってことはなにか用があるってこと何じゃないのか?」
千歌が あ、思い出した~!みたいな仕草をしてから話し始める。
「そう!ちょっと悩みがあるの!」
「どんな悩み?まさか宿題じゃないよな」
「えっとね…宿題はないんだけど…」
宿題じゃないんならなんだろう…?この日にちだったら宿題に困ってもおかしくないくらいだけど、宿題は無いって言うし…
「えっとぉ…その…///」
千歌が言うのを恥ずかしそうにしている、そんなに深い悩みなのか…
「昨日体重を測ったら、春休みに入る前と比べて1キロ増えてたの!」
「…へ?」
1キロ?そんなのちょっと動けばすぐに戻る程度なのに、そんなに悩むことかな?
「だから、手伝って欲しいの!」
「手伝うって…なにを?」
「とりあえず、着替えてきてね~!待ってるから~!」
俺は急いで、適当に動きやすそうな服を選んだ。
♢
千歌と一緒に朝食・・・いや、昼食って時間帯だなもう、とりあえず一緒にご飯を食べた。
「ねえ、悠之君…今日は『アレ』してないの?」
「アレってなに?」
「えっとぉ、卒業式の時みたいな髪型…」
「あ〜、アレはちょっと俺には似合わないかな~って…」
「そ、そんなことないよ!」
あんなにカッコイイ髪型だったのにもったいないっ!初めてあの髪型を見た時に胸がキュンキュンしてたのに♡
「もっかいアレやってみよぉ~」
「えぇ~?でもなぁ…」
「大丈夫っ!私が良いって言ったんだからいいに決まってるよ♪」
「そ、そんなに言うなら…じゃあ…」
~15分後…
「えっと…///終わったけど…///」
少し恥ずかしそうにしている悠之君が、食卓に戻ってきた。
「わぁ~やっぱりその髪型かっこいいよ~!」
何もしてない時よりも、爽やかな雰囲気が出ててオシャレな感じ~
ずーっと見ていたいなぁ♡
「えっと…その…やっぱり恥ずかしいからそんなにジロジロと・・・」
「えへへ♪恥ずかしがってる悠之君も可愛いなぁ~♪」
「か、からかうなって…///」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「───で、公園に来たのはいいけど、これから何をするんだ?」
「えーっとね・・・ジャッジャーン!」
千歌の手提げ袋から、ソフトボールの1通りの道具がたくさん入っていた。今すぐ試合が始められそうな位の量だな。
「そっか、千歌は昔からソフトボールが大好きだもんな。」
「うん!だから悠之君が帰ってきた時からずーっとやりたかったんだぁ~!」
「俺も久しぶりにやるけど……よしっ!」
大体の球技なら俺の得意分野だ、それにしても千歌とソフトボールをするのって、俺が中学生の時だったかな?
あの時はまだ千歌達は小学生だったな…懐かしいな。
「悠之君~!いっくよ~!」
「おーう!」
~キャッチボール中
「それにしても、悠之君はスポーツ系は何でも行けちゃうんだね~」
「あ〜、多分遺伝だろう。」
「あ、そっか~悠之君のお母さんもスポーツ得意だもんね~。」
「まあ、俺の母さんが、俺が小さい頃からスポーツを教えてくれたからな」
確か、小学校時代に俺と千歌と一緒にキャッチボールをやった記憶があるな…スポーツが出来たり、絵が上手かったり、変にファッションにこだわりを持ったり…俺の母さんはやっぱり謎だ。
「ねえ、悠之君!」
「ん?どうした?」
「ちょっとしゃがんで、キャッチャーやってくれない?」
「おぉ、もしかしてピッチャーが出来るのか!?」
「えへへっ♪まあね!」
俺は、キャッチャーミットに持ち替えて、しっかりと構えた。
「よ~し!いっくぞ~!」
「よしっ!こーい!」
「そりゃっ!」ヒュッ
バシッ!
千歌の最初の一球目は、重みのある直球だった。
キャッチャーミットを付けていても、少し手がジンジンする。
「次いくぞっ!」ヒュッ
バシッ!
「おおっこれもいい球だ。」
綺麗に、弧を描くカーブを投げてきた。
かなりキレのある曲がり方だった…しっかり球を見とかないと反応できない所だった…。
「じゃあ…次、決め球…いくよっ!」
「(決め球!?)」
「悠之君に取れるかな?私の必殺…!」ビシュッ
「(なんだ?さっきよりもスピードが遅い…ただののチェンジアップか?これなら簡単に…)」
グンッ
な、なに!?球が…俺の手前で伸び上がった!?
スパァン!
俺のキャッチャーミットが、簡単に吹き飛ばされ。
衝撃で尻もちを付いてしまった。
「やったぁッ!」
千歌が嬉しそうにぴょんぴょんはねてる…俺はそれどころじゃないんだけどな。
手が物凄く痛い…
「ちょっちょっとまて!なんだ!?今の魔球は!?」
「あ~今の?アレはライズボールって言う変化球だよ。」
「ライズボール?」
「そう、バッターの手前でボールを伸び上がらせる変化球なんだ~」
「いつの間にそんな恐ろしい魔球を…」
「魔球じゃないよ、変化球だよ~!」
千歌がいつの間に、こんな特技を身につけているなんて知らなかった…3年もたてば変わるもんだな…。
♢
「おぉーい!千歌ちゃーん!」
振り向くとそこには、曜と果南にダイヤ 、ルビィちゃん、花丸ちゃんがいた。
「あれ?なんで、みんながいるんだ?」
「私が呼んだんだ~ソフトボールやるならみんなとなら楽しいと思うし!」
確かに、こういうスポーツは人数がいた方が楽しいからな。千歌も結構やるな。
「おっはヨーソロー!」
「もう昼間だぞ。」
「あ、そうだった!」
曜が早速、敬礼ポーズをする。相変わらず元気だなぁ~。
「(何だか悠之さんの髪型がいつもより素敵ですわ…)」
「(悠之君…?何だか…髪型が…カッコイイ…///)」
果南とダイヤの目が俺に向いてるんだが…やっぱりこの髪型はおかしかったかな…?
♢
「それじゃみんなでキャッチボールしよ!」
「ヨーソロー!」
「ま、丸…スポーツあんまり出来ないけど大丈夫かな?」
「大丈夫だよ、花丸ちゃん。」
「ルビィちゃん…」
「ルビィも出来ないから」
え!?そういうフォロー!?ちょっと予想外。
「ルビィ?黒澤家に恥を欠かないような、プレイをするのですよ。」
「だ~いや~!これはアウトドアなんだから、そんなに固くならなーい。」ヒュッ
「か、果南さん…そ、そうでしたわね。」ヒュッ
ルビィちゃんも花丸ちゃんも、最初は出来ないって言ってたけど。
少しずつ投げ方も良くなってきているな。
「次、みんなでバッティングしてみないか?」
「いいね!じゃあ・・・」
『おい。』
『俺達、これからここで練習するからどいてくんない?』
何だか柄が良くない中学生の野球チームが俺たちに絡んできた。
「最初にここを使っていたのは私達ですわよ!?
公園は広いんですからもっと、隅の方を使いなさい!」
「お、お姉ちゃん…落ち着いて。」
確かに、この野球チームはコートを広く使った練習がしたいから、俺たちにどけって言っているのだろう…。
『こっちはお前達と違って遊びに来てんじゃあねんだよ。』
「最近の中学生ってこんな人ばっかりなの?ほんっと、いやになっちゃう…悠之君、面倒だから・・・」
果南がそう言いかけたその時…
「遊び…?」
『あ?』
「遊びなんかじゃないよ!」
千歌…
「体重を戻すための運動だもん!」
──ってそっちですか!?
『くだらねえ、いいから早く・・・』
「まあ、待ちな…こういうのはどうだ?」
『あん?』
今度は俺が、中学生達に説得をする。
「この場所を掛けた…ゲームだよ。」
…後編へ続く。
はい、今回初めて、話を二つに分けました。
次回も投稿は遅くなるかもですが、頑張って書こうと思います!