ソードアート・オンライン・リターン   作:剣の舞姫

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今回はアスナと合流。皆さん、ブラック珈琲の準備はよろしいかな?


第二話 「SAOの親子」

ソードアート・オンライン・リターン

 

第二話

「SAOの親子」

 

 始まりの街を出てキリトは誰よりも早く次の村に辿り着いていた。

 途中で何度もモンスターと出くわしたが、逃げる事無く全てを倒し続けている内にいつの間にかレベルは6になっていて、恐らくは現在参加者中最も高いレベルになっているだろう。

 そんなキリトは今、村にある小さな宿の部屋で来客を待っていた。メッセージは既に送っているので、もう間もなく来る筈なのだ。

 

「っ!」

 

 その時、扉をノックする音が聞こえたので、入出するよう声を掛ければ、入ってきたのは懐かしい赤いローブで全身を隠した人物…アスナが入ってきた。

 

「アスナ!」

「キリト君!」

 

 走り寄るアスナを抱き止めて二人は互いの温もりを確かめ合う様に抱き合い、やがて見詰め合うと唇を重ねた。

 

「キリト君…会いたかった」

「うん、俺もだよ、アスナ」

 

 その後もずっと抱き合っていた二人だが、今は他にもやらなければならない事があるので、名残惜しく感じつつもベッドに腰掛けてキリトはアスナがアイテムストレージを開くのを見ていた。

 

「あ…」

「うん、間違いなく入ってた、ユイちゃん」

 

 アイテムからユイの心たるクリスタルを取り出すと、茅場晶彦に言われた通り、二人同時にクリスタルに触れた。

 すると、クリスタルが光り輝き、粒子となって二人の目の前に人型に集まりだす。そして形作られていくシルエットは、間違いなくキリトとアスナの愛娘の姿。

 やがて、光は収まり、粒子も完全に消えて二人の前には一人の少女が立っていた。愛くるしい表情と、キリトとアスナを見上げるその信頼と親愛の篭った眼差し、間違い無い。

 

「また、お会いできましたね、パパ、ママ」

「…ユイ!」

「ユイちゃん!」

 

 アスナがユイを抱きしめ、そしてキリトがそんな二人を抱きしめると、ユイも涙を浮かべて二人を抱き返してきた。

 漸く再会出来た親子、大切な存在の確かな感触が、抱きしめる事で強く、強く感じられる。

 

「やっと、わたし達…一緒に暮らせるね」

「ああ、早く22層まで行こう…あの家で、また三人で暮らそう」

「パパ…ママ…ユイも、一緒に暮らしたいです」

 

 また三人で、22層にあるあのログハウスで暮らす。その為にも、キリトとアスナは先へ進まなければならない。

 でも心配はいらないだろう。自分達には愛娘の所に帰るというこの世界での使命があるのだから、簡単に死ぬ様な事はしない、出来ない。

 

「アスナ、今のレベルは?」

「わたしは5になったばかり、キリト君は?」

「俺は6、もう直ぐ7になる所だ」

 

 最初の内にクラインと共にレベル上げしていたのが影響してか、やはりキリトの方がレベルは上だった。

 だけど、アスナのレベルも初日という点で見れば十分なもの。迷宮区に行くまでには二人揃ってレベル20台までは行ける計算だ。

 

「先ずは武器が必要か…明日はこの村の武器屋で適当な剣を買ってからクエストに挑もう」

「クエスト?」

「前回の第一層ボス戦で俺が使っていた剣、アニールブレードがそのクエストで手に入るんだ」

「そうなんだ…あ、じゃあわたしもクエストを一つ受けておきたいな」

 

 何でも、前回はレベルや実力的な問題で武器屋で購入したレイピアを第一層のボス戦で使っていたが、この村のクエストに報酬でレアなレイピアを入手出来るものがあるので、それが欲しいとの事だ。

 

「それじゃあ明日は別々に行動、ユイは宿で留守番だけど…大丈夫?」

「…はい、良い子にして待ってます」

「そっか」

 

 本当は着いて行きたいという顔をしているが、自分が足手まといになるという自覚があるのか、留守番をする事を了承してくれたユイの頭を優しく撫でるキリト、その顔は肉体年齢14歳にして既に立派な父親の顔だった。

 

 

 翌日、キリトとアスナは別々に行動してそれぞれ目的のクエストにソロでチャレンジしていた。

 キリトはアニールブレードを入手するため、アスナは前回は諦めたレアなレイピアを入手するために、そして、互いにレベルを更に高くするために動いている。

 やがて、時間は夕刻になり、キリトとアスナは村の入り口で合流して、ユイの待つ宿屋に向かいながら成果を見せ合っていた。

 

「アニールブレード、無事にゲット出来た。レベルも敵は基本的に全て倒す方針で進めたから15まで行けた」

「わたしもクエストクリアでレイピア…“フルール・パッセ”ゲットしたよ。レベルは…13だね」

 

 超ハイスピードでレベル上げする二人だが、この先を考えるのなら、この世界での実力の重要性を考えるのなら、慎重だと言えなくも無いだろう。

 互いの報告をし終えてもう直ぐ宿屋というところでキリトは雑貨屋が視界に入り、ふと今回のクエストクリアまでに溜まったコルを思い出し、先にアスナだけ宿屋に戻る様に伝えた。

 

「どうしたの?」

「あ~…ちょっと買いたい物があるから、先に戻ってて」

「買い物なら付き合うよ?」

「い、いや…ほんと大したものじゃないから、ユイも待ってるから先に、な?」

 

 ユイの事を出されれば引き下がるしか無いアスナ、渋々だが先に宿屋へ向かったのを確認してキリトは雑貨屋に行き、店主のNPCに話しかけた。

 

「すいません、これを二つ」

「いらっしゃい、6000コルになります」

「えっと、じゃあこれで」

「まいど」

 

 目的の物を購入して宿屋に向かう。その道すがら、一日で随分と村に居るプレーヤーの人数が増えている事に気がついた。

 恐らくはβテスターや、βテスターと一緒に組んだビギナーが殆どなのだろう。この村の周囲もそろそろ潮時だと感じつつ、宿屋へと入っていくのであった。

 

 

 宿に戻ってきたキリトはユイを膝の上に乗せて楽しそうにしているアスナの向かい側のベッドに座りアスナに甘えているユイの頭を撫でながら先ほど雑貨屋で購入した物をポケットに忍ばせていた。

 

「キリト君、さっきは何を買ったの?」

「え、あ、いや……その」

「パパ?」

 

 ハッキリと言えば良いのだが、どうにもユイの目の前でというのが恥ずかしい。だけど、もしユイの目の前で言って、渡せば…ユイも、アスナも喜んでくれるのではないか、そう思えてしまう。

 二人の視線を感じつつ、キリトは少しの間だけ目を閉じて深呼吸をすると、目を開けてポケットに入れていた物を取り出した。

 

「アスナ…」

「は、はい!」

「俺達、SAO内での関係も過去に戻った事でリセットされたよな」

「うん…でも」

「いい、俺も同じ気持ちだから…でも、やっぱりこういうことはちゃんとしておきたいんだ」

 

 だから、とアスナの左手を取り、その薬指に、雑貨屋で購入した指輪を通した。

 

「あ…」

「パパ…」

「アスナ…俺と、結婚してください」

「……~~~~っ!」

 

 一瞬、キリトのプロポーズに反応出来なかったアスナだが、直ぐに頭が意味を理解して顔が真っ赤になる。

 アスナの膝の上に座るユイは目を輝かせながらキリトとアスナを交互に見ているので、この後の展開を非常に楽しみにしている様だ。

 

「アスナ・・・返事、聞かせてもらっても、良いかな?」

「……はい、不束者ですが、わたしを…キリト君の奥さんにしてください」

 

 キリトからのプロポーズにより開かれたウインドウ、【プロポーズを受けますか? YES/NO】の表示のYESをクリックしたアスナ、これでキリトとアスナはSAO内で正式な夫婦となった。

 

「やったーーっ! パパ! 格好良かったです!!」

「あ、そうかな?」

「はい!」

 

 アスナの膝の上から飛び降りてキリトに抱きついてきたユイを抱き返し、涙を拭っているアスナも抱きしめた。

 また、アスナと夫婦として、ユイの親として、これから先ずっと一緒に居られる。何よりの幸福が今、こうして手に入った。どんなレアアイテムを手に入れる事よりも嬉しい、幸せを、もう一度手に入れたのだ。

 

 

 それから一ヵ月後、第一層迷宮区手前の町、トールバーナにキリトとアスナ、ユイの三人は居た。

 この一ヶ月、自分たちのレベル上げを行いつつ、見かけた一般プレーヤーが窮地に陥っていた場合は救出してという事を何度も繰り返している内にキリトとアスナは互いにレベルが28と25になっており、死亡者も前回が2000人だったのに対して今回は1000人弱と、助けられなかった人こそ居たものの良い傾向だと言える。

 更に言えばキリトとアスナはビギナープレーヤーの多く、主に二人が救助したプレーヤー達からは高く信頼と信用を寄せられていた。

 自分達の片手間ではあるが、救助したプレーヤー達を少しだけ指南してレベル上げを手伝ってあげていたというのが信頼・信用される理由の一つであろう。

 そして今、キリトとアスナ、ユイは前回同様、第一層フロアボス攻略会議に出席していた。前回は助けられなかったディアベル、彼を今度こそ助けると、心に誓って。

 

「ねぇキリト君、前より人…多くない?」

「そうだな…確か、前は俺とアスナを入れて30人前後だったのに、今回は50人くらい居るぞ」

 

 それも見覚えのある顔が増えているのだ。前回ではなく、今回の見覚えがある顔…それはキリトとアスナが窮地を救い、少しの間だけレベル上げを手伝ったり指南していた者達だ。

 皆、キリトとアスナに気付くと手を振って笑顔を向けてくるので、二人もそれに手を振り返す。どうやら彼らも二人と別れてから順調にレベル上げをしてボス攻略に挑むだけのレベルまで達したという事だろう。

 

「はーい! みんな、聞いてくれ! 今日は俺の呼びかけに応えてくれてありがとう。俺の名はディアベル、職業は気持ち的にナイトやってます」

 

 前と同じ、ディアベルの演説が始まった。内容も前回と同じで、ディアベルのパーティーが第一層フロアボスの部屋を見つけたというもので、その攻略を行うのに6人でのパーティーを組む事になった。

 勿論、キリトとアスナは最初からパーティー登録しているので、最悪前回同様に二人であぶれ組みでも良いのだが。

 

「あ、あのキリトさん、アスナさん…良ければ組まないッスか?」

「あ、確かベルだったか?」

「はい! あの時はありがとうございます! おかげで俺、今はレベル16になったんスよ!」

「へぇ、凄いじゃない!」

 

 キリトとアスナに声を掛けてきたのは、何日か前にモンスターに囲まれている所を助けた青年、ベルだ。

 金髪の髪を逆立てた長身の青年で、武器は両手剣を使用している。助けた当時はレベルが8だったので、随分と頑張ったらしい。

 

「それで、どうッスか?」

「良いよ、俺達で良ければ組もう」

「はいッス!」

「あ、ベルてめぇズリィぞ! キリトさんキリトさん! 俺っちも、俺っちも良いか!?」

「ありゃりゃ、モスキート君もキリト君信者だったんだ…」

 

 また一人、増えた。モスキートとアスナが呼んだ青年は緑色の長髪の青年で、キリトと同じ片手剣に盾装備の前衛だ。

 

「アタシもキリトさんとアスナさんと組むぅ!」

「うわっ!? クルミちゃん!?」

 

 いつの間にキリトの後ろに居たのか、茶髪の髪を三つ編みで前に垂らした少女が後ろからキリトに抱き着いてきた。

 

「ちょっとクルミちゃん!? キリト君に抱きつかないで!」

「そうですそうです! パパに抱きついて良いのはママとユイだけなんです!」

 

 因みに、このクルミという少女は一番最初にキリトとアスナが救出した少女で、当時はレベルがまだ2だった。

 しかし、今ではレベルが何と19まで上がっているという凄まじい才能を開花させた少女で、使用武器は槍をメインにしている。

 

「もう~! 離れなさい!」

「ぶぅ~、アスナさんのケチ」

「ケチじゃないの! キリト君はわたしの旦那様なんだから!」

 

 ちょっと、照れた。それにしても5人になったとは言え、随分と理想的なパーティーが出来上がったものだと思う。

 レベル28で片手剣一本のスピード型の前衛キリトと、レベル25でレイピアとスピードによる遊撃のアスナ、レベル19で槍による中衛のクルミ、レベル16で両手剣によるパワー型の前衛ベル、同じくレベル16で片手剣と盾による攻防一体型のモスキート、パーティーとしては申し分無い。

 

「あと一人位は欲しいな…あ」

 

 何かに気付いたキリトは立ち上がって一人の男に近寄ると、その男に話しかけた。

 

「なぁアンタ」

「ん?」

「その武器、斧使いだよな?」

「ああ、そうだが」

「良ければ、俺達と組んでくれないか? 斧のパワーが欲しいんだ」

 

 キリトが話しかけたのは浅黒い肌の長身男性…キリトにとってクラインと同じもう一人の兄貴分、エギルだった。

 

「俺はキリト、パーティーはあそこのメンバーで、あと一人必要なんだけど」

「ふむ…ディアベルと組もうかと思っていたが、いいぜ。俺はエギル、よろしくなキリト」

「よろしく、エギル」

 

 こうして、キリトはもう一人の兄貴分との二度目の初めましてを済ませた。

 正直、エギルのパワーが欲しいという打算はあるものの、やはり…エギルとは早い段階から友好を深めたかったという私情が、強かったのかもしれない。




オリキャラを三名出しました。

名前:ベル
レベル:16
武器:両手持ち大剣
容姿:長身でキリトより頭一つ分高い。金髪の髪を後ろに逆立てたALO編のキリトみたいな髪型

名前:モスキート
レベル:16
武器:片手剣+盾
容姿:背丈はキリトと同じくらい。緑色の髪の長髪で手鏡を使う前のクラインみたいな髪型でバンダナ無し

名前:クルミ
レベル:19
武器:槍
容姿:アスナより頭一つ分背が低い。茶髪の髪を三つ編み一つで縛り、左肩から前に垂らしている。チッパイww

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