悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

様々な苦難を乗り越え遂に念願の雄英入試合格を達成する!!

今まさに彼のヒーローアカデミアが始まろうとしていた!

さて緑谷少年はどんな高校生活を送るのか?

そしてどんな仲間と出逢うのか?

更に向こうへ!PlusUltra!!!



ChapterⅠ-episode2 雄英高校入学編
第6話


……リリ…

 

…リリリリッ…

 

緑谷「……」ジリリリリッ

 

大きな目覚ましのアラーム音が僕の耳元で鳴り響く。

 

朝の来訪だ。

 

緑谷「」ジリ

 

ピッ

 

起きるとすぐにアラームを止めベッドから起き上がる。

 

緑谷「……」ボーッ……

 

緑谷「今日から学校か…」

 

春休みも終わり、また新しい1年がスタートする。

 

これといって何の変化も見られない僕の普通な1日の始まりだ。

 

…ってそういえば中学卒業したから正確には春休みじゃないな

 

緑谷「…春休み……」

 

緑谷「……………あ」

 

緑谷「ああああああああっっ!?」

 

起床から1分後…寝惚けていた僕の目がようやく覚めた。

 

そうだ。すっかり忘れてた。

 

今日は記念すべき雄英の初登校日だったのだ。

 

 

 

 

 

 

緑谷「かぁっ…結構ギリだっ!!」ギュッ…

 

いそいそと試験合格の余韻に浸る暇も無く、初日は朝からドタバタしていた。

 

急いで靴紐を結び玄関から出ようとする。

 

デク母「出久!ティッシュ持った!?」

 

緑谷「うん!」シュルッ…

 

悟空「弁当持ったんか?」

 

緑谷「今日は入学式とかだけで午前中で終わりだから必要ないんです!!」

 

緑谷(飯関連の事に関しては抜かりないな)

 

デク母「ハンカチも!?ハンカチは!?ケチーフ!!!」

 

緑谷「うん!!!持ったよ!」ギュッ!

 

ただでさえ焦っている時に何度も尋問されるのでそろそろうんざりしてくるぞ…

 

緑谷「時間無いんだ!急がないと…」ダダッ…

 

両足共に靴を履き終えたので立ち上がり走り出そうとするが…

 

デク母「出久!!」

緑谷「」ピタッ

 

呼び止められた。もうやめてくれよ…

 

緑谷「なぁにぃっ!?」

 

デク母「………」

 

母さんはモジモジしながらも一言こう言った。

 

 

デク母「超カッコいいよ」

 

 

緑谷「……!」

 

ガチャ…

 

緑谷「…行ってきますっ」

 

僕もそれに答えるように笑いながら2人に挨拶し、直様ドアを開け出発した。

 

ダダダ…

 

悟空「……」

 

悟空「頑張れよー緑谷」

 

 

 

 

緑谷「………」

 

無事学校に着き玄関で上履きに履き替えて残るは教室に向かうのみとなったのだが…

 

緑谷(広い)

 

廊下で立ち止まってしまう。

 

緑谷(どんだけ体積でかいんだここの学校は…!)

 

緑谷(ええっと地図によると…現在地が……ここ…だよな?)ピラッ

 

緑谷(だからここを右に曲がってその後…………)

 

緑谷「だぁぁぁーっ!!」

 

緑谷「そもそもいくら何でも教室多過ぎなんだよーーっ!」

 

チャイムが鳴るまでのタイムリミットも刻一刻と迫ってきた。

 

いくら探しても教室が見つからず彷徨い続けていた。

 

地図を辿ってもいつになっても辿り着かない為嘆きだした。

 

緑谷「どうするどうするどうするよ僕ぅぅぅっ!!」

 

そんな事を言っていると後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 

 

「…全く…一体誰ですの?廊下でこんな大声で喚いている方は……」スタスタ…

 

 

 

緑谷「…!」

 

その声の主は徐々に僕に近づいてくる。

 

緑谷(……この声…それに喋り方…)

 

緑谷(僕知ってるぞ…この人!)クルッ

 

即座に反応し、後ろに振り返った。

 

そこには雄英の制服を着ている1人の少女の姿が。

 

というか可愛い…

 

「………貴方は………」

 

緑谷「君…知ってる!確か……」

 

緑谷「試験の前に会ったよね?僕等!」

 

()()()の…?」

 

緑谷「やっぱりそうか!」

 

 

あの時…とは前にも言っていた例のおつかいの事である。

 

帰りの途中、路地裏でチンピラ(?)複数に絡まれてた所を見かけて助けたんだ。

 

ただばったり会っただけなので特にこれといった親交も無く別れたのだが…

 

正に空前絶後。また……しかもこんな形で会う事になろうとは思いもしなかった。

 

人生って何起こるか分からないね。

 

 

「…っ…せ、先日は見ず知らずの私を助けて頂き…ありがとうございます」ペコッ

 

緑谷「え…ぁ…ぃ…ども」

 

どうやら相手もその事に気付いたらしく僕にお辞儀をすると自己紹介をし始めた。

 

「申し遅れました。私は八百万百」

 

八百万「1年A組の生徒ですわ」

 

緑谷「八百万さん…ね」

 

緑谷「ぼ…僕は緑谷出久。君と同じ1-Aに所属してるよ」

 

八百万「あら…偶然」

 

緑谷「偶然も何も…まず君がここの試験を受けていたなんて…」

 

八百万「まぁ驚くのも無理ありませんわね」

 

八百万「私貴方方とは違って推薦でここの学校を志望していましたもの」

 

緑谷「すっ推薦!?ひぇぇ…」

 

緑谷「確か4人しか採用されないんだろ?すごいじゃないか」

 

八百万「上を目指す者であれば当然の結果ですわ」

 

八百万「……もしや教室の場所をご存知では無いのですか?」

 

勘が鋭く、出逢って数秒の僕の状況をすぐ呑み込めたようだ。

 

緑谷「あ…そ、そそそうだ!」

 

緑谷「実は…ここの構造把握し切れて無くて廊下で迷ってね」

 

緑谷「良ければ教えてもらえないかな?」

 

八百万「ええ。勿論結構ですわよ」ニコッ

 

八百万「この前のお礼…と言うほど大それた事ではありませんが」

 

八百万「私で良ければ」

 

緑谷(ぐはぁっ!?)キュンッ!!!

 

彼女は眩しい笑顔で快く了解してくれた。

 

しかもこんな可愛い女子とこんな会話弾んで…しかもお礼まで言われるとは……

 

あまりに感激してしまい、心を打たれてしまう。

 

緑谷「あ…今なら死んでもいいかも」

 

八百万「え」

 

 

 

 

 

 

 

 

スタスタ…

 

八百万「着きましたわ。ここが1-Aの教室」

 

緑谷「ドアでっか!?」<バリアフリー?

 

八百万「然程時間も残っていません。早く席について準備しませんと」

 

緑谷「そうだね」スッ…

 

僕はドアの取っ手を手で握り、そのままドアをゆっくり開けた。

 

意外と重量自体は軽い。

 

ガラッ…

 

緑谷「」

 

その瞬間僕の目に映ってきたのはとんでもない光景だった。

 

 

 

 

眼鏡少年「君!机に足をかけるんじゃない!」

 

眼鏡少年「我々の先輩方やこの机の製作者の方々に申し訳ないと思わないのか!?」

 

爆豪「あぁあん!?微塵も思わねーよつーか思えね」

 

爆豪「テッメェどこ中だ!」

 

眼鏡少年「ぼ…んんっ…俺は私立聡明中学出身の飯田天哉だ!」

 

爆豪「聡明ー!?エリ中じゃねぇか」

 

爆豪「そりゃブッ殺し甲斐ありありだなオイ」ガタッ

 

飯田「君酷いなっ!本当にヒーロー志望か!?」<ブッコロシガイ!?

 

緑谷「…………」

 

八百万「…どうなさいましたの?」ヒョコッ

 

あの2人を見ていると何時ぞやのトラウマが掘り起こされる。

 

 

飯田『物見遊山のつもりなら即刻雄英から去りたまえ!』

 

 

爆豪『俺の前に立つな殺すぞ』

 

 

 

緑谷「… 」

 

正直この2人とは当たりたくなかった。

 

決してクラス分けで恵まれていたわけでもない…か。

 

飯田「ん?」

 

お…どうやら飯田君はこちらに気付いたようだ。

 

僕の方向に向かって進んできた。

 

飯田「…やぁ、久しぶり」

 

飯田「自己紹介がまだだったね。俺は私立…」

 

緑谷「あ…大丈夫大丈夫。かっちゃんと話してた所見てたから」

 

飯田「む、そうか……」

 

飯田「かっちゃん?」

 

緑谷「あ…ああ爆豪君の事…うん」

 

飯田「む、そうか」

 

緑谷「僕は緑谷出久。よろしくね飯田君」

 

飯田「ああ、よろしく」ゴゴゴ…

 

さっきの延長か…若しくはまだ僕に悪いイメージがあるのか…

 

飯田君は僕を睨みながらそう言った。

 

歓迎する顔じゃないよそれ

 

飯田「緑谷君…君はあの実技試験の構造に気付いていたのだな?」

 

飯田「俺は…気付けなかったよ」

 

飯田「君を見誤っていたよ!悔しいが君の方が上手だったようだ…」ギリッ

 

と…何とも悔しそうな顔で歯を食い縛った。

 

……これ気付いてないって言ったら殺されそうだなぁ。

 

でも飯田君は思っていた以上に穏やかでいい人そうだから良かった。

 

すぐに打ち解けそうだ。

 

「あ!地味めの人だ!」

 

これまた聞いた事のある声が僕の耳に入って着た。

 

その方向を向くと試験で会った茶髪の女の子が。

 

茶髪の少女「良かったー受かったんだね!」

 

茶髪の少女「マイクの言った通りだったよ!」

 

茶髪の少女「すごいカッコよかったし!」<はぁーって!

 

緑谷「そ…それ程でも」

 

緑谷「君も、直談のお礼言えずにそのまま別れたら嫌だったし…」

 

緑谷「き…君がさあんな事言ってくれたから僕もこうしているわけで…」

 

茶髪の少女「え?何で知ってるの?」

 

緑谷(あ)

 

しまった。緊張して口走っちまった…

 

緑谷「え…えと…それは…」

 

そんな会話をしているとかっちゃんとがこちらを見つめてきた。

 

まぁ話に夢中で僕自身は気付いてないのだが。

 

爆豪「…」

 

 

 

爆豪『どういう事だぁああんっ!?』ガシッ

 

緑谷『った…』グイッ

 

かっちゃんに襟首を掴まれ空中に持ち上げられる。

 

爆豪『どんな汚ぇ手使えばテメェが受かるんだ!』

 

爆豪『史上初!唯一の雄英進学者!!!』

 

爆豪「俺の将来設計が早速ズタボロだよっ!!』

 

爆豪『他行けっつったろーがぁっ!!』

 

ガシッ

 

かっちゃんの腕を両手で強くグッと掴んだ。

 

ミシ…

 

爆豪(んだ……ってぇ…)

 

緑谷『……僕だって生半可な覚悟でこんな事してるんじゃないんだ』

 

緑谷『小細工だとか…そんなの元からクソ食らえだ』

 

緑谷『僕は…自分自身で…勝ち取ったんだっ……この力!』

 

爆豪『……!?』

 

 

 

 

爆豪(…….なんで無個性のデクが合格できんだよ…)

 

爆豪(反抗なんかしやがって…ぜってー何かウラがあるはずだ)

 

爆豪「クソナードが…」

 

しばらく話しているとHRの開始のチャイムが鳴り始めた。

 

だが先生がまだ来てない為会話を呑気に続けていた。

 

 

茶髪の少女「緊張するよねー…あ、今日は入学式とかガイダンスだけかな?」

 

緑谷「え…ま、まぁ…そうなんじゃないかなぁ…」

 

緑谷(顔近ぇぇ…ってか皆制服姿やっべぇ…)

 

緑谷(最近ようやくまともに話せるようになったってのに…)

 

「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

 

突如廊下から誰かの声がした。

 

皆は気になって廊下をそろ〜と見ると…

 

爆豪「…」ジィ…

 

八百万「…」ジィ…

 

「ここは…」

 

ヂュッ

 

「ヒーロー科だぞ」

 

緑谷「…」

 

A組(誰?)

 

なんと廊下に寝袋に包まれて横たわっている変なおじさんがいるではないか。

 

どう見ても不審者です。うん。

 

何やら手には既に飲み終わったゼリー飲料が…

 

信じられるか?一口で飲み干したんだぜ?

 

誰もがその光景に衝撃し数秒前の歓声が一気に静まった。

 

「ハイ。静かになるまで8秒かかりました」

 

「時間は有限。君達は合理性に欠くね」モゾモゾ…

 

そう言うと男性は寝袋から出てようやくその姿を露わにした。

 

一見ただ草臥れている人としか思えない程身体はガリガリしていた。

 

だが一応この学校にいるという事はここの教師なんだろうか…

 

とても現役プロヒーローには見えない体型だったが。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

緑谷(このクラスの担任…?)

 

相澤「早速だが……」ゴソゴソ…

 

自己紹介を軽く済ませると寝袋からある物を取り出した。

 

相澤「体操服(これ)着てグラウンドに出ろ」

 

 

 

 

 

 

数分後、体操服に着替え全員グラウンドに集結した。

 

入学式始まるまでもう残り時間は僅かだった。

 

こんな時に何をするのだろう。

 

誰もが同じ事を考えていた筈だ。

 

緑谷「あの…これから何を?」

 

相澤「今から個性把握テストを行う」

 

A組「!!??」

 

皆が皆その発言に驚きを隠せなかった。

 

何しろ初日から授業をするなど普通あり得ないし聞いてもいなかった。

 

茶髪の少女「入学式は!?ガイダンスは!?」

 

相澤「ヒーローになるんだったらそんな悠長な行事出る時間なんて無いよ」

 

茶髪の少女「!」

 

相澤「雄英は自由な校風が売り文句。そしてそれは先生側もまた然り」

 

緑谷「…」

 

相澤「中学までやってたろ?()()()()の体力テスト」

 

相澤「国は未だ画一的な記録を取って平均を作り続けている」

 

相澤「実に合理的じゃない…ま、文部科学省の怠慢だな」

 

相澤「おい爆豪、ちょいこっち来い」

 

爆豪「?」スタスタ…

 

相澤先生に近付き、目の前である物を渡される。

 

爆豪「こりゃ……ハンドボール?」

 

相澤「好きに個性使っていいから早よ」

 

緑谷(!)

 

八百万(個性は…使用できるの?)

 

爆豪「あ…ああ」

 

爆豪(好きにねぇ…)ググ…

 

爆豪(んじゃ思いっきし……)

 

ハンドボールを強く握って大きく振りかぶる。

 

爆豪「死ねえええっっ!!!」ボオオッッ!!

 

緑谷(……死ね?)

 

ボールを投げると同時に手を爆発させ、その爆風でボールを遥か彼方へ吹っ飛ばす。

 

相澤(球威を爆風に…面白い奴だ)ピピッ

 

相澤「…ほう。700超えか中々…」スッ…

 

相澤先生は僕らにその数値が書かれているタイマーを見せる。

 

緑谷「な…705.2……」

 

3桁超え…ましてや百台後半の記録など見た事も聞いた事もない。

 

個性有無でこれ程差が着くのか…

 

相澤「まずは自分の【最大限】を知る」

 

相澤「それがヒーローの素地を形成する合理的手段だ」

 

個性使用可…要するにこれは自分の個性を皆に披露しアピールできる場だと皆は解釈した。

 

初めて本当に全力で計測できるので思わずはしゃいでしまう人も中にはいた。

 

「すっげー!()()()()!!」

 

「個性思いっきり使えるのか…!」

 

……これが火に油を注ぐ結果となった。

 

相澤「……面白そう…か」

 

相澤「君達はヒーローになる為のこの3年間を」

 

相澤「そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?」ギロッ

 

緑谷「!?」

 

さっきまでの様子とは全く違い、身体の覇気を剥き出しにして僕らを強く睨みつけた。

 

その顔からは何か恐ろしいようなものを感じ取れる。

 

そして衝撃の言葉を言い放つ。

 

相澤「よし。8種目トータルで最下位の者は除籍処分としよう」

 

A組「はあああああっ!?」

 

なんと生徒の1人を退学させようとしているのだ。

 

先程まで安楽的な高校生活を堪能していた筈がいつの間にか最大の危機に陥れられる。

 

勿論これに全員納得いく訳がない

 

茶髪の少女「そ、そんな!?入学初日に…いや…」

 

茶髪の少女「そうでなくても理不尽すぎる…!」

 

相澤「常日頃から理不尽は潜んでいる。いつどこで敵が襲ってきてもおかしく無い世の中だ」

 

緑谷「…!」.

 

緑谷(ヘドロの時だってそうだった…)

 

相澤「そういう理不尽(ピンチ)を覆していくのがヒーローなんだよ」

 

相澤「Plus Ultra(更に向こうへ)さ…全力で乗り越えろ」

 

「んなアホな…」

 

飯田(これが最高峰…予想はしていたがこれ程とは…) チュー…

 

八百万(……恐らく私達の活力を出す為のご冗談でしょうが…)

 

八百万(そうだろうとそうでなかろうと私のやる事は変わりませんわ)

 

八百万(むしろこれは好機)

 

八百万(入試では見せられませんでしたが…)

 

八百万(私の実力を見せつける絶好の機会ですわ)

 

クラスの空気が困惑や戸惑いで覆い尽くされる。

 

入学初日からこんな大試練を受けなければならないのだ。

 

拒否権もない。助かる道は1つ。

 

相澤「放課後マックで団欒したかったのならお生憎」

 

相澤「雄英高校は3年間君達に苦難を与え続ける」

 

緑谷(マジかよ…!)

 

相澤「生徒の如何は俺達の自由」

 

相澤「ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」

 

上に昇りつめる。ただそれだけだ。

 

 

 

オールマイト「…」

 

オールマイト「雄英のシステムは常軌を逸する」

 

オールマイト「教師によっちゃ初日なんて事も…」ペラ…

 

オールマイト「……相澤消太…除籍回数154…」

 

オールマイト「去年に至っちゃ1クラスまとめて送り還しやがってる…」

 

オールマイト「……〜」

 

オールマイト(こりゃいきなりどデカイ受難…)

 

 

 

 

第1種目50m走

 

 

ドォッ!!

 

トラック周辺に激しくエンジンの振動音が鳴り響く。

 

飯田君の個性だ。

 

飯田「っ」キキーッ…

 

飯田(50mじゃ3速までしか入らんな…)

 

相澤「3秒04ー」

 

飯田天哉。個性【エンジン】

 

足にエンジンみたいな器官がついていて滅茶苦茶早い。

 

因みにさっき飲んでいたのは燃料となる100%オレンジジュース(ガソリン)である。

 

相澤(ま…水を得た魚)

 

相澤(他がどうすんのかが見物だな)

 

「5:58…まずまずね」<ケロケロ

 

蛙吹梅雨。個性【蛙】

 

舌を伸ばしたり高くジャンプできたり……とにかく蛙三昧。

 

本人曰く蛙っぽい事なら大体できる。

 

 

 

 

茶髪の少女「…」ポン…

 

彼女は自分の身に着けている物や衣服などに軽く触れた。

 

これもまた個性を発動させる為。

 

ダダッ…

 

茶髪の少女「ひぃぃ…」

 

一見普通に走っているのと何の変わりもしない走り方だが…

 

相澤「7秒15」

 

茶髪の少女(あ、中学の時より速なった)

 

麗日お茶子。個性【無重力(ゼログラビティ)

 

触れた物の引力を無効化する。

 

要は物を軽くしていた訳だ。

 

 

「うーん」

 

クルッ

 

こちらの方は何故か進行方向と逆の向きになり立ったままスタート地点についた。

 

「ふっ…皆工夫が足りないよ」

 

相澤「はいスタート」

 

「個性を使っていいってのは…」ダンッ

 

開始の合図と共に上空へジャンプした。

 

そして…

 

ゴオオオッ…

 

麗日「わっ…速!」

 

彼のお腹から何とレーザーが発射された。

 

その反動でゴールに急接近する…

 

「おっと」ドサッ

 

も倒れてしまう。

 

立ち上がり、再度レーザーを噴出する。

 

相澤「5秒51」

 

「1秒以上出しちゃうとお腹壊しちゃうんだよね」<フフフ

 

A組(何だこいつ)

 

青山優雅。個性【ネビルレーザー】

 

へそからレーザービームを出す。僕と被ってるなんて言っちゃいけない。

 

持続時間がネック。長い時間は出せない。

 

 

八百万「」ブロロロ…

 

中には自分の足で走らない人もいる。

 

相澤「3秒01」

 

「ちょっと待った!原チャリは無しだろ!」

 

相澤「あり」

 

八百万「危ない危ない…越される所でしたわ」

 

八百万百。個性【創造】

 

様々な物体を作りだす。

 

でも分子構造まで理解しないと出来ないので扱うのは至難の業……

 

緑谷(というか…すっごいなぁ八百万さん)

 

相澤「おい次、緑谷と爆豪さっさと整列」

 

相澤「時間がもったいない」

 

緑谷「あ…はい」

 

相澤(個性を最大限使い各記録の伸び代を見れば()()()()()()()()()()()()()…)

 

相澤(はっきり表れる)

 

相澤(それは己を活かす創意工夫につながる)

 

緑谷「…」ザッ…

 

爆豪「…」ザッ…

 

緑谷 爆豪((何でペアがこうなった…))

 

相澤「ほれスタート」

 

ダダッ!!

 

お互いに相手と距離を取ろうとしているかの様にスタートダッシュから全力疾走…

 

「はっええ…」

 

「あれ個性使ってねーじゃんどっちも…」

 

だがどちらも速さが一歩も劣らない為平行に走っていた。

 

爆豪(嘘だろ…デクの奴なんでこんな速…)

 

緑谷「青山君のやってみるか…」クルッ

 

そう言って後ろを振り返る。

 

かめはめ波の態勢に入った。

 

緑谷「か…め…は…め…」ギュルル…

 

爆豪「なっ…テ」

 

緑谷「波ぁあああっっ!!!」ボボオオッ

 

前に向かって勢いよく発射した。

 

あまりに衝撃が強かったのかかっちゃんはコースから吹っ飛ばされる…

 

爆豪「ぐっ…」ズザザ…

 

キキーッ…

 

相澤「3秒99」

 

緑谷「よしっ」

 

相澤「よしじゃない。お前の所為で爆豪計り直し」ゴゴゴ…

 

緑谷「あ、すみません……」

 

爆豪「………」

 

爆豪(そんな…そんな馬鹿な…)

 

爆豪(個性の発現はもれなく4歳まで…)

 

爆豪(なんであいつに個性があるんだよ…ッッ!!)ギロッ…

 

 

 

 

その後も全員が様々な種目で超人的な記録を更新していった。

 

第2種目握力

 

ピピッ

 

「540キロか…」

 

「500ておま…!ゴリラか!?いやタコか…」<タコってエロいよね

 

「…」

 

障子目蔵。個性【複製腕】

 

肩から出ている触手の先端に自分の器官を複製する事ができる。

 

……待った待った。これって手複製しても10倍近くの力は出せないよね。

 

元々の腕力も相当なモノそうだ…

 

 

 

第3種目立ち幅跳び

 

緑谷「…」ピョン…

 

フワフワ…

 

「……え」

 

僕は軽くジャンプしてそのまま宙に浮き続けた。

 

飯田「光線に飛行…複合的個性…?」

 

麗日「万能だね…」

 

蛙吹「極端に身体能力高める個性かもしれないわね」

 

爆豪(違う…デクの親父とお袋は…そんな個性は持ってなかった……!)

 

爆豪(訳がさっぱり分からねぇ…どうなってやがる!?)

 

相澤「…」ピピッ

 

相澤「∞」

 

A組「……え」

 

相澤「これ一生足着かないだろ?」

 

A組「そんなのありかよっ!?」

 

相澤「あり」

 

緑谷(あっ…そうだ…無闇矢鱈に技を使ったら怪しまれる…)

 

緑谷(後で何とかして誤魔化すか…)

 

爆豪(また越しやがった……っ!)

 

 

この技は【舞空術】

 

悟空さんが話していた例の3つの技の1つだ。

 

その名の通り体内の気を放出して空中を浮遊する。

 

空を飛べるので色々応用が利くし便利な技だ。

 

因みにかめはめ波とか…そういう気功波の類も教えてもらった3つの内の1つ。

 

?もう1つ?

 

それはまだ内緒。

 

 

 

第4種目反復横跳び

 

「ひゅぅう」ブヨンブヨンブヨン

 

何やら両側の線に謎の黒い物体が置いてある。

 

とてもブヨブヨしてて弾力がある。

 

その弾力を利用して押して跳ね返されを繰り返す。

 

相澤「92回」

 

「っしょーーっ!!」

 

峰田実。個性【もぎもぎ】

 

頭から球状の物体を自由に生み出せる。

 

触れると体が跳ねるのはあくまで彼だけの話であり…

 

個性の発動者以外に触れるとその物体にくっつく。

 

彼が快調ならば1日離れない程の粘着力を持つ。

 

 

 

 

 

そんなこんなで無事に体力テストは終了した。

 

え?残り半分?元々これ4種目だよ(惚け)

 

まだ紹介しきれてないが…他の人はまた別の機会にしよう。

 

目薬を点けながら相澤先生は説明を始めた。

 

相澤「そんじゃ計測結果を参考に総合順位を付けたんで発表する」ポタ…

 

相澤「詳細は面倒なので省き」<後で俺に声かけろ

 

緑谷「」ドキドキ…

 

…結構高い方狙ったつもりだがそれでも緊張する。

 

最下位になればここまでの努力が全て水の泡になるのだ。

 

そんな事誰が許せる

 

緑谷(とはいえ…1つは∞だし…大抵どこも上位半分には入ってた)

 

緑谷(多分大丈…)

 

ピッ

 

スマホを操作して空中にトータルが書いてある映像が映し出された。

 

なんとそこには…

 

緑谷「……え…い…ち…い?」

 

麗日「やったじゃん!トップだよトップ!」ユサユサ…

 

嬉しさのあまりか麗日さんは激しく僕を揺らす。

 

信じられなかった。まさかかっちゃんや八百万さんを抜いて1位なんて…

 

緑谷(なんせ八百万さんは殆ど道具駆使してたからなぁ…)

 

緑谷(流石に勝てる訳がないと思ってたよ)

 

八百万「……」

 

八百万(2位…か)

 

八百万(勿論本望は1位だったのですが…)

 

八百万「…っ……」

 

爆豪「なんでデクがトップなんだよ……っ!」

 

青山「ふむふむ……で気になる…」

 

蛙吹「最下位は…」

 

全員1番下に書いてある名前に目を向ける。

 

そこに書いてあった人物は…

 

 

 

峰田「………う……ウソ…」

 

峰田「オイ…ラ?」

 

相澤「という訳だ。本日をもって峰田実は退学とする」

 

緑谷(峰田君…か)

 

緑谷(確か反復横跳びで飛び抜けてた人の筈)

 

相澤「要はまだ個性を使い切れなかったって事だ」

 

相澤「他の奴等は大記録を2つ、3つは取っている」

 

相澤「大してお前は突出した記録が1つしかなく更に身体能力もガタガタと来た」

 

相澤「……肉体的な鍛錬は果たして行ってきたのか?」

 

峰田「や…やった!出来る限りやったさ!」

 

峰田「毎日必死にトレーニングし…」

 

相澤「じゃあこれはなんだ」ピピッ

 

そう言うと相澤先生は峰田君の計測記録の表を見せる。

 

相澤「他の奴らは大記録とは言わずともそれなりに特訓を積み重ねているからそこらの高1よりかはいい結果を残している」

 

相澤「だがお前は反復以外の7つはドベだ。他校でもこれ位しか出せないのはそうそう居ない」

 

相澤「自分がどれだけ過程の中で努力していようが、世の中は結果が全て」

 

相澤「【命懸けで頑張りましたが無理でした】なんて通じねぇんだよ」

 

相澤「それは本来隠されている実力を持っているにも関わらずそれを見ようともしない意志の低い様な馬鹿がする言い分なんだよ」

 

相澤「物事の苦楽で行動を決めて今の自分に甘んじているような……な」

 

峰田「…っ……!」

 

相澤「つくづくあの入試は合理性に欠くよ」

 

相澤「お前の様な奴まで受かってしまう」

 

相澤「個性把握テスト(これ)がその事を全て物語っている」

 

峰田「ふっ…ふざけんな!こんなん認められるか!」

 

峰田「訴えて裁判を起こし…」

 

相澤「おーおー…法律に逃げるか。大層な事で」

 

相澤「言っておくが過去そんな事例が無かった訳じゃない」

 

相澤「だが全部撤回されてる」

 

相澤「この学校では教師の行う事は全て正当な行為と見なされる」

 

相澤「生徒の有無は全て教師の判断に委ねられる」

 

相澤「【駄目な奴はすぐ切り捨てる】……ウチに()()()()()()()()()()()…!」

 

緑谷「……」

 

相澤「法だの人権だのそんな達者な事言うのはせめて仮免許取ってからにしな」

 

峰田「ぃっ……か…」

 

相澤「反論も出来ないか。怠惰な英雄(ヒーロー)だ…いや」

 

相澤「()()()()()()()()()()()()

 

麗日(ちょっ…い…いくら何でもいいす…)

 

スタスタ…

 

麗日「…え……」

 

飯田「き…君!何を馬鹿な…」ヒソヒソ…

 

相澤「良かったじゃないか。スタートラインには立てたんだ」

 

相澤「誇っていい事だ…だが舐めすぎた」

 

相澤「これの反省を踏まえ…来年またここに来る事を心から願うよ…」

 

峰田「そんっな…そんな事…できねぇよ……」ポロポロ…

 

峰田「頼むよ……やめてくれ…」

 

相澤「何を泣いてる。校門はあっちだ」

 

相澤「早く立ってここから立ち去れ。授業の邪魔だ」

 

八百万「……っ!?」

 

爆豪(はぁ…?)

 

スタスタ…

 

峰田「たのむ゛よぉぉ…!!」

 

峰田「嫌だ…んな事…!」

 

相澤「…そろそろいい加減に…」

 

ザッ…

 

相澤先生の背後まで近付きそのまま静止した。

 

自分の頭の中に潜んでいたある感情を抑え込みながら…

 

相澤「………何の用だ。まだ話の途…」クルッ

 

ブオッ

 

青山「マジ?」

 

蛙吹「嘘でしょ」

 

ガシッ!!

 

 

先生が後ろに振り返った瞬間…生徒の1人が殴りかかってきたのだ。

 

間一髪で手で掴んで防いだ相澤先生だが…

 

 

 

 

相澤「……これは一体…どういうつもりだ……?」ググ…

 

相澤「…緑谷……!」

 

緑谷「っっ……!」ググ…

 

僕は腕に更に力を加えて先生を押し返しそうとする。

 

だが相澤先生の腕力も侮れず、どちらの身体も動かない。

 

緑谷「彼だって必死になって入学した…!」

 

緑谷「確かに…敵は気付かぬ内に奇襲してくる時もある!」

 

緑谷「だけど…流石に今回のは例外だろ!」

 

相澤「……ほほう。クラス1位なら俺に勝てると思ったか」

 

相澤「俺も舐められたもんだ」

 

緑谷「………8種目だけで人の真価が出るかなんて分かる訳ないだろっ!」ググッ…

 

そう言い放つと再度拳にかける力を強くする。

 

相澤「ぐ…」

 

ズズッ…

 

八百万(押されてる…?)

 

少しは応えたのか、後ろに引きずる相澤先生。

 

相澤「それは8種目もの間違いだ」

 

相澤「お前は100回に1回出るものを真価と言うのか?」

 

緑谷「……」

 

 

こんな事してただじゃ済まなくなる…そんな事は分かってた。

 

ただ…許せなかった。

 

人の事も知らない癖に…役立たずだの無能だのと決めつける。

 

僕は今までそれに苦しんできた。

 

だから…黙っていられなかった。

 

自分が1番嫌いな事がその存在自体否定される事だったから…。

 

 

 

緑谷「確かに最初から上手くは行かないかもしれない…」

 

緑谷「けど…」

 

緑谷「皆ヒーローになりたい一心でここに来てるんだ!」

 

緑谷「それを…その覚悟をお前1人で勝手に踏みにじるのは許せないぞ……」

 

緑谷「イレイザーヘッドッッッ!!!」

 

ゴォッッ…!! !

 

互いの力がぶつかり合い、大きな衝撃波を生み出した。

 

地面には小さなヒビが1つ入り、木々が激しく揺れてざわついていた。

 

 

 

入学初日の大試練……

 

果たして僕は無事に何事も無く家に帰れるのか…?

 

………いやちょっと手遅れかな。

 




須井化ーです…はい。

第6話いかがでしたでしょうか?
原作じゃ出久ピンチの所ですがまぁここは安泰……

てしたら誰か犠牲になるじゃろが(後つまんね)
というわけで次回は相澤先生とガチンコバトルです。
地味にこの形式で真面目な戦闘シーン書くの初かも…
ちゃんと表現できるかどうか心配ですが頑張ってまります。



何か意見等ございましたら感想・メッセージで気軽にご相談ください
第7話の投稿は17日(火)までには完了させる予定です(とうとう曜日まで決めやがった…)
お楽しみに。

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