悟空「オラの?」緑谷「ヒーローアカデミア!」   作:須井化

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前回までのあらすじ

どこにでもいる無個性少年緑谷出久。

彼は将来の夢であるヒーローを目指すべく日々修行を積み上げていく!

遂に幕を開けた雄英体育祭!!予選・本選共に順調に突破していく緑谷少年!

体育祭の最後を飾る第3種目、その気になる内容は生徒16人による勝ち残りガチンコトーナメント戦!!

準決勝後半戦は緑谷少年VS拳藤少女。まだまだ未知数の彼女の実力や如何に!?

ああ、保健室?ごめん覚えていないや

更に向こうへ!PlusUltra!!!




第37話

リカバリーガール「…おーおー。お熱いねぇ」

 

リカバリーガール「思ったよりも女子にモテモテで驚いたよ。隅に置けない子さね、緑谷君も」

 

リカバリーガール「今の所、治療が必要な患者もいないし、私も観戦に勤しむとしようかn

ガバッ

 

八百万「ぜぇ…ぜぇ…」

 

リカバリーガール「…ん?何だい、百ちゃんもう起きたのか」

 

八百万「………」キョロキョロ

 

リカバリーガール(目が泳いでいるいる…まぁ試合中に気絶していきなり別の部屋に移動してて驚くのも無理はないねぇ)

 

八百万「…あの…リカバリーガール先生」

 

リカバリーガール「ん?」

 

 

八百万「先程、緑谷さんが女子の誰かとイチャイチャしているのを見かけませんでしたか」

 

リカバリーガール「………」

 

リカバリーガール「んん???」

 

 

 

 

 

 

 

拳藤「分かってんなら早く立ちな」

 

拳藤「さっきから身体がウズウズしてるんだよ。お前と()りたくて」

 

右腕をこちらに向けて伸ばしながら人差し指をクイクイッと上下させている。

 

相変わらず表情が笑顔のままブレなくて…彼女の発言は何処までが本気(マジ)で、何処までが冗談半分(おふざけ)なののかが全く判断がつかない。

 

気持ち悪いや。何考えてんのか見当もつかない。

 

 

ただ…それじゃ…

 

なんで僕もつられてニヤケそうになってるんだろうな。

 

 

緑谷「…やれやれ。今日は厄日か何かかい」

 

緑谷「何回蹴られ殴られを続ければいいんだか…」

 

僕はフラフラとよろけながらゆっくりと立ち上がる。拳藤さんは少しキョトンとした顔になりながら僕の独り言にツッコミを入れていく。

 

拳藤「驚いたのはこっちの方だぞ。景気付けに1発いいのを入れに行ってやったのに、ガードをするでも無くカウンターを狙う訳でもなく」

 

拳藤「ただモロにパンチ受けに行っただけだからビックリしたよ。反応に困るんだが…」

 

緑谷「け、景気付けにって…あんなフライング気味のスタートダッシュされても……」

 

拳藤「いやいやいや…さっきもそういうの多かったし、それに」

 

拳藤「無防備な格好で油断してたりボディーがら空きだったら誰だって空かさず攻撃しに行きたいもんだろ?」

 

緑谷「…じゃあなんで今僕が怯んでいる隙に追撃しなかったの?」

 

拳藤「これで場外にして後で【不意打ちしたから】なんて情けない言い訳されたくないからね」

 

拳藤「後なんとなく空気的に」

 

緑谷「クーキテキ…」

 

拳藤「あー…でも今は立ってる、かぁ」

 

 

拳藤「ならもう攻撃してもいいよな?」

 

彼女の膝が目前に迫ってきた時そんな台詞が聞こえてきた。

 

麗日「なっ…速!!」

 

蛙吹「あんなステージ端の近くじゃ…」

 

 

 

緑谷「よっと」

 

拳藤「おっ」スカッ

 

マイク「うおっ!?さ、サケタ!!!」

 

膝蹴りが顔に当たる寸前、咄嗟にしゃがんで彼女の攻撃を難なく回避した。つーかその手の攻撃が何度も通用すると思うなよ?拳藤さん!

 

さて、身体を支えている脚はコレで1本になった訳だが…

 

まぁ無難に蹴りますか。

 

緑谷「はっ!」

 

彼女の教え通り、下半身ががら空きだったので遠慮なくしゃがんだまま回し蹴りを繰り出した。

 

まぁまず彼女は僕が攻撃を避けた事に驚く事に必死で下に視界を向ける余裕など無く…

 

ガッ!

 

拳藤「わわっ…」ガクッ

 

両脚が地面から離れた事により後ろに倒れ込む拳藤さん。よっしゃ今度はこっちが攻撃を…

ガッ

 

ん、なんで同じSEが耳に入ってくるんだ?え?

 

 

拳藤「ひゅぅ…危ねぇ危ねぇ」ググッ

 

あ…片脚の次は片手で支えるんですか。すっごーい。

 

 

と感心してる間にまたもや拳藤さんの右脚が僕の顔に近づいてきた。今度は左頬ですか、そうですか。

 

緑谷「うおっ…!」ガシッ

 

拳藤「…マジか」

 

オールマイト「さっきの焦り様とは裏腹にちゃんと冷静に対処できてるじゃないか」

 

オールマイト「見事彼女の攻撃を防ぎ切っている。まぁ少女の方も大概だが…」

 

13号「僕のこんな格好じゃ転倒した時に咄嗟に逆立ちして回し蹴りなんてできないや…」

 

スナイプ「安心しろ。多分俺も今やれっつったら失敗すると思う」

 

頬に蹴りが当たる前に何とか彼女の動きを止める事に成功した。よし…距離を取るチャンス!

 

反射的に掴んだ彼女の右脚を後方に引っ張りながら立ち上がる。

 

まずはさっきのお返し1発目、360°回し投げだ!

 

拳藤「ちょ…わっ!?」グイッ

 

緑谷「どっこい…」

 

緑谷「しょぉっ!!」プンッ!!!

 

悟空「うひょぉ…これまた随分高く投げたなぁ!」

 

悟空「でもあんな高かったら場外出る前にステージに落っこちまうぞ」

 

相澤<それはそれで地面と衝突した時のダメージは大きくなりますけどね

 

悟空「それもそっか」

 

マイク「お前ら何平然と実況できんの?馬鹿なの?」

 

ズドンッ!!

 

マイク「What!?」

 

 

 

 

拳藤「ひー…投げ返された。危なっかしいったらありゃしねぇ」ズボッズボッ

 

拳藤「流石に私空を飛ぶのは無理だからな…場外になりかけたぞ」

 

マイク「」

 

強烈な衝撃音がしたと思えば、なんという事だろうか。2、30mはあったあの上空から()()()地面に着地したにも関わらず脚の痺れ1つ起こさず平然としているではないか。頑丈ってレベルじゃないよ。怖いよ拳藤さん。

 

因みにズボッというのは地面にめり込んだ脚を抜き取る時の効果音………あんたはウルト○マンか。

 

両手をパキポキ鳴らしながら再び彼女は攻撃態勢に入る。だけど拳藤さん、

 

緑谷「たまには僕にもさせてくれよ…!」

 

そう言うと僕は彼女の方へ向かい、走り始めた。彼女との距離は30m弱。こんなの2、3秒あれば追いつける。

 

拳藤「お、キタキタ!」

 

僕が攻めに行くと気づいた拳藤さんは急遽防御態勢に変更した。片腕は顔の手前に、もう片方は胴の手前に構え、どのような攻撃が来ても最低でも1本の手足でガードしカバーできる寸法だ。

 

…うーんと…この場合どうしよ。

 

 

 

 

 

それじゃ容赦無く顔面を

 

緑谷「よっ」バッ

 

軽く飛び上がり、拳藤さんの顔に向かって左脚を勢いよく伸ばしていく。いわゆる飛び横蹴りだ。

 

上鳴 峰田「「嫌ぁぁぁあ!美女の顔に傷はぁぁああ!!」」

 

蛙吹「つけてよし」

 

麗日「むしろつけろ」

 

耳郎「あー…結局そっち系なのね緑谷。察し」

 

尾白「なんなんだこいつらは…」

 

拳藤(来る…)スッ

 

勿論、僕の脚が顔に近づくと共に彼女も腹部辺りに添えていた腕を顔面の方へ上げていく。不安定なガードからようやく完全防御状態だ。

 

でもね、拳藤さん?流石に僕も女の子の顔を蹴るような大それた度胸は無い…

 

緑谷「よっ…」クルッ

 

拳藤「!?」

 

悟空「ははーん」

 

マイク「フェ、フェイント!?」

 

 

 

ガッ!!

 

 

拳藤「かはっ……」

 

シュタッ

 

緑谷「…」

 

攻撃を食らってから間も無くして、拳藤さんは咳き込みながらゆっくりと後退していく。

 

加減無しで鳩尾に蹴り入れたんだからな。そりゃまぁ効くに決まってる。

 

 

相澤<ふむ。相手の防御(ガード)を崩す為、極限まで相手の身体に近付き、当たるギリギリ手前の所で体を左に回転

 

相澤<更に右脚を上げる事により膝蹴りを相手の腹にモロに直撃させると。

 

悟空「回転の速度も相まって蹴りの威力も高まるっちゅう訳だ」

 

マイク(アレ…普通に解説してるよこの2人)

 

 

ガクッ

 

拳藤「けほっ…あぉっ…」

 

麗日「おお!膝ついた!」

 

口田(完全にさっきの再現だね…)ババッシュババッ

 

身体が地へ崩れ落ち、尚も咳をし続ける拳藤さん。アレ…そんな強めに打った覚え無いけど……

 

少し不安になったから恐る恐る近づいてみると…

 

拳藤「かはっ……ぁ…はっ…」

 

緑谷「………ん…?」

 

拳藤「はっ、ははっ…」

 

 

 

 

拳藤「あはははははっ!!」

 

緑谷「へ?」

 

「え?」

 

マイク「」

 

相澤<おい実況者。黙らずジョブしろ、ジョブを

 

 

思わずその場にいた人全員が目を大きく見開いた。そりゃそうだ。打撃で苦しんでるかと思ったらいつの間にか地面をバンバン叩いて、腹抱えて笑ってるんだから。

 

気でも狂ったのかと皆驚きを隠せなかった。

 

僕なんか心配して「大丈夫?」と声を掛けようと思った途端コレだ。反応に困る。

 

拳藤「くっははは…は、腹痛!笑いすぎて脇腹…ったはは…」

 

緑谷「…え、えっと…拳…藤さん?」

 

緑谷「僕、今何かおかしな事した?それとも変な事でも言った?」

 

ドギマギと戸惑いながら声を掛けると、ようやく彼女の馬鹿笑いも収まり、途切れ途切れながらも話し始める。

 

拳藤「いやっ…うん!おかしい!おかしいよお前!」

 

拳藤「()()()()()()()()()()!」

 

緑谷「………???」

 

【おかしい位に強い】…って…え?それってつまり、僕に好評価?高評価をくれているって事だよな?

 

それ自体は非常に嬉しいのだが…

 

緑谷「い、いやいやいや…タンマタンマ」

 

緑谷「すまないけど、それって今の行動と矛盾してるでしょ…」

 

緑谷「仮に戦っている相手が予想以上の強者だったら普通、警戒するか何かするでしょ…」

 

緑谷「なんで()()()()()笑っているんだい?」

 

拳藤「……」

 

 

 

拳藤「ぷっ」

 

緑谷「えちょっ!?」

 

 

僕の発言が不適切だったからか拳藤さんは思わず失笑してしまう。…今笑うような要素あったか?え?……

 

あーもう…さっきからこの人の思考回路が全く読めないぞクソ。

 

拳藤「ははっ…あー、そうだなぁ。つまり…」

 

 

 

拳藤さんはゆっくり両腕を顔の前に構え、一言

 

 

拳藤「こういう事だよ」

 

 

とだけ言った。

 

それを見るなり、僕も再び両手を構える。

 

緑谷(何だ…口じゃ伝えにくいので拳で語り合いましょ的な…?)

 

緑谷(実践するにしたって結果は同じ…)

 

緑谷「!」

 

 

 

 

拳藤「…」

 

 

先程までのご機嫌顔とは打って変わって彼女の眼光は鋭くなり、軽く睨むようにこちらを見つめていた。

 

本気で獲物を狩る目だなありゃ…

 

緑谷「…すぅ…はぁ……」

 

僕はまだ若干荒れていた呼吸を整える。

 

それでも尚、心臓はバクバク過剰に反応している。まだあの子には慣れないなぁ…さっきもちゃっかりボディタッチしたし…ぅぅ…

 

それにしても…さっき拳藤さんが笑ってたのはなんだ?()()()()()()()()()()()?全く訳分からん…………

 

 

 

…でも

 

そう不思議に思った事は過去に何度もあった気がする…

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「っ!」ダダッ

拳藤「っ!」ダダッ

 

マイク「同時…!?」

 

相澤<モーションまで同じだな

 

 

緑谷(いち…)グッ

 

拳藤(にの…)ゴォッ

 

 

緑谷 拳藤((さん!!))ガガァゥッ!!

 

芦戸「耳いった…」ビリビリ…

 

砂藤(パンチをぶつけ合うだけでこんな衝撃が普通来るかよ…)

 

悟空「…」

 

互いに相手から拳を離すと共にプンッと右脚を振り上げる。

 

緑谷「…だっ!!」

 

拳藤「ふっ!」

 

 

上段蹴り

 

 

バギィッッ!!

 

緑谷「…っ……」

 

拳藤「…へへ……」

 

ググッと脚と脚とを押し付け合い、相手を退けようとするがビクともしない。

 

 

…気が付けば双方同時に再び左腕を前方へ伸ばしていた。

 

緑谷 拳藤「「はっ!!」」

 

 

裏拳打ち

 

 

ガアッッ!!

 

 

緑谷「……」グ…ググッ…

 

拳藤「……」ググッ…

 

緑谷 拳藤「「はぁっ!!」」ブォッ…

 

バキッ!ドガッ!ズドッ!ガガンッ!!バゴッ!!ズドッ!バギッ!ガッッ………

 

 

無数の衝撃音が会場全体に鳴り響く。微塵もためらい無く()()()()()()()()()()()()()()僕らの姿に観客はとても目も頭も追いつかず、呆然と眺める事しか出来なかった。

 

あのおしゃべりな実況者、マイクでさえ感想を口にする余裕が無い。

 

マイク「………お、おお…すっごーい」

 

まともに解説出来そうなのはこの3人位だろう。

 

相澤<気持ち悪いくらいに仲良しですね。あの2人

 

悟空「ああ。すげぇ息が合ってるぞ」

 

オールマイト「…というか活き活きしてるじゃあないか!いつもよりも!」

 

 

そうして何秒、何十秒、何百秒もの間相手の攻撃を弾き返し合っていると…

 

 

 

緑谷「はぁっ!!」ブオッ!

 

拳藤「よっ…」スカッ…

 

緑谷「…!」

 

拳藤さんの顔面目掛けて正拳突きを繰り出すと、彼女はすぐにそれを察知。しゃがんで回避した。

 

死角となった真下の方からアッパーカットを仕掛けてくる。

 

拳藤「隙ありっ!」ゴォッ

 

緑谷「…」

 

 

クルッ

 

拳藤「!?」

 

緑谷(っぶねぇ…)ババッ

 

オールマイト「ナイス回避だ、緑谷少年!」

 

何とか顎に拳が当たる寸前にバック転で攻撃を避ける事ができた。急に攻め始めたからびっくりした…

 

拳藤「ふふ…!」ダダッ

 

…そろそろループは飽きたのかな?

 

拳藤「はっ!」プンッ!

 

緑谷「…!」

 

助走をつけてからの彼女の手刀を、僕は地面をダンッと踏み飛び空に逃避する。

 

そこで拳藤さんはこの試合初の個性発動を試みる。

 

プクッ…!

 

拳藤「骨風船?筋肉風船もどき!」

 

緑谷「げっ…まず…」

 

 

今急降下してるからこの速度で落ちると…

 

 

拳藤「ギガントブレス!!」ゴォッ

 

巨大化させた手を大きく開き、上空に向けて伸ばしていく。あー…ブレスって握り潰すって事ね。結構エグ…

 

緑谷(けどっ!)グオッ

 

拳藤「…?」

 

君がゴム人間で行くなら、こっちは人造人間で行かせてもらおう。確か悪○風脚(ディアブルジャンブ)だっけかな…

 

拳藤さんが僕の姿を捉え、指を動かした直後、僕は身体を横向きにして高速回転をかけた。そして次第に指が手のひらに近づいていき…

 

 

ガガッ!

 

拳藤「いっ…!」<シュタッ…

 

相澤<すれ違い様に蹴りを入れたな。確かに360°回転させときゃどこかしらに脚は当たる。

 

拳藤(逆に的がデカすぎたか…)シュン…

 

拳藤さんはすぐに個性を解除し、僕の姿を再び確認する。彼女の指を蹴ったついでに踏み台として利用させてもらった。お陰でかなり距離を置く事ができたよ。

 

さてと…

 

 

緑谷「…」クイクイッ

 

拳藤「…何だそりゃ。さっきまでの威勢はどうしたって顔だな」

 

ご名答。分かってるならさっさと来い。僕だって滾ってるんだから。

 

拳藤「へいへい、攻めりゃいんだろ……攻め

 

 

 

拳藤「りゃっ!!」ダダッ!!

 

オールマイト「さっきよりも更に早く…」

 

緑谷「………」

 

 

 

 

ドクン…

 

 

 

緑谷(そうだよ…()()()()()()()()()()()()()())

 

緑谷(もっと踏み込め、もっと乗り越えろ!)

 

走りながら拳藤さんは腰を捻り、右脚蹴りを繰り出す…

 

 

拳藤「ほっ…」グオッ…

 

緑谷「…」

 

 

……が………

 

 

ズザッ

 

 

拳藤「っと!?」スカッ

 

マイク(は、外れたぁ!?ほとんど動いてなかったじゃん!!)

 

悟空「攻撃ってのはただ相手に当たりゃいいってもんじゃねぇ」

 

悟空「相手の身体が自分の肌に触れるまでの緻密なやり取りが重要なんだ」

 

悟空「当たるかあたらねぇか際でぇ所で攻撃を放てば、()()()()()みてぇに避けずにみすみす攻撃当たりに行ってる…」

 

マイク「……!?」クルッ

 

マイク(え?俺の話?)

 

マイク(な、なんで俺の脳裏にまで語りかけてんだよコイツは…テレパシストかよ!?)

 

相澤<成る程、つまり奴は必要最低限(50mm)しか退いてねぇから…

 

 

緑谷「…」ゴォッ…

 

拳藤「っ!?」

 

相澤<至近距離で隙が狙えると

 

脚を振り上げているという状態で態勢が不安定な彼女の顔面に、僕は空かさずストレートパンチをお見舞いする…

 

 

グォッ…

 

峰田 上鳴((ヒィィァ!!今度こそ顔g

 

………が………

 

 

 

拳藤「よっ」フラッ…

 

緑谷「!?」

 

クルッ…

 

オールマイト「何と…わざと後ろに倒れかけ…」

 

オールマイト「どさくさに紛れて彼の腕に巻きつくようにバック転を!」

 

 

 

シュタッ

 

拳藤「……へへ〜」

 

緑谷「……へへっ」

 

 

 

 

緑谷 拳藤「「っ!」」ダダッ!!

 

先程までの攻防は、ただただお互いに相手の身体を殴り続けていただけだった。

 

だが今度は少し違う。

 

 

緑谷「ふっ!」プンッ

 

攻撃したら、

 

 

拳藤「おっ…と…」スカッ

 

避け、

 

 

拳藤「…ぉりゃ!!」グオッ

 

反撃して、

 

 

緑谷「ととっ…」

 

避けられて、

 

 

 

 

 

グオップンッゴォッズオッブォップンッ…

 

 

瀬呂(…なんてこった…今度は…)

 

麗日(攻撃が1発も当たっとらん!?)

 

常闇(しかも2人共、動きを最小限に抑えている…)

 

常闇(攻撃の当たる一歩手前で踏み止まっているぞ!)

 

 

 

相澤<……

 

相澤(()()()())

 

相澤(確かに熟練された格闘家同士が戦えば、両者共に実力で引けを取らず、中々決着を付けられずに戦いが長引く事もある…)

 

相澤(が、それはあくまで相手の隙などが捉えられず決定打が打てないからであって…)

 

相澤(こいつらのように全くジリ貧にならずに試合を長時間続けられるなんて()()は有り得ない)

 

相澤(孫さんは【息が合う】と評していたが、()()()()()()()()()()()()()…)

 

相澤(意思疎通だとか…以心伝心でもない……)

 

 

相澤(2人共、完全に思考回路が同じ構造でなきゃこんなモン説明のしようが無ぇよ…)

 

相澤<…ん。(チラッ

 

悟空「……」

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「はっ…はぁ…」ゴォッ…プンッ…

 

 

身体が熱い…もう何十分も動きっぱなしだったからか。蒸発するんじゃないかと自分でもビビる位に全身がヒリヒリする。

 

 

でも、何故か()()()()()()()

 

むしろ何だろう…さっきまでの疲れが取れたかのように身体がスルスル動いてしまう,

 

 

攻撃を打ち込む度に、

 

 

彼女の攻撃を防ぐ度に、

 

 

身体が読んで字の如く、ヒートアップしていくのだ。

 

 

 

 

…苦しくも無いのに、なんで僕の身体が徐々に紅く照っていくんだ?

 

 

 

もしかして、僕は無意識の内に体でこう感じているのか?

 

 

 

 

「…たのしい……」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悟空『なぁー!緑谷ぁ!たまには相手してくれよー!』

 

悟空『稽古つけてやっから!ほら!!』

 

緑谷『や、やめて下さいよ悟空さん!テスト勉強もあるのに〜!』

 

悟空『ぶー!けちんぼ!たまに手合わせ位したっていいじゃんか!!』

 

緑谷(何ママに駄々こねるみたいに挑戦状叩きつけてんだこの人は…)

 

緑谷『大体…その、なんで悟空さんは戦いに意義を見出だすんですか!?』<前カラツッコミタカッタケド!

 

緑谷『しかも悟空さんの場合、山1つ潰れるのがザラだから尚更危なっかしいんですよ!!』

 

悟空『えー。コレでもまだ1億分の1も本気出してねぇぞ』

緑谷『その繊細さをもっと他に使え!!』

 

悟空『なんだ?緑谷は戦うのが嫌なんかぁ?』

 

緑谷『そりゃそうでしょ!あんな身体や精神をお互いに徹底的に痛めつけ合って…』

 

緑谷『…い、痛いじゃないですか!デメリットしか無いし…』

 

悟空『……そうかぁ?』

 

悟空『()()()()()()()()()()()ともオラは思うぞ』

 

緑谷『………???』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝負ってのはいわゆる弱肉強食だ。詰まる所、強い者が弱い者の全てを踏みにじり、虐げ、破壊する。

 

幼児の頃から散々僕はコレを受け続け、嫌という程身体に染み付いている。だから僕は全てを暴力で解決し、思い通りするこのやり方がとても気に食わなかった。

 

悟空さんに鍛えられてからも、特にその思いを変える事は無かった。

 

【俺は強い。だから相手が弱くて踏み台になるのは仕方ない】とは皆言うがそんなものくそったれだ。全員が全員、敗者の事なんて考えてないに決まってる。自分の主観でしか物を考えることなどできないのだ。

 

 

少なくとも、以上のように僕が自分の主観的理論でしか話していないのだからそういうのが多数派なんだろう。

 

 

 

 

 

 

なんて浅はかだったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷 ( 戦いってこんなに面白かったのか!?自分が以前よりどれ程成長していたのか、それと同時に相手がどれ程の強さを誇っているのか!?相手の性格、状態…様々な情報が挙動の1つ1つに込められている。攻撃というのはなんて情報量の多いデータだ!それで持って相手から頂いた数々のデータを分析し、相手が次何時何処でどのように攻撃するのか或いは防御するのか、ならば自分は次何時何処でどのように攻撃すればいいのか或いは防御すればいいのか…互いに相手の攻撃を押し退け、いかにして自分の攻撃を相手の芯に届けるか。このシノギの削り合いを例えるとすれば…そう!将棋!オセロ!チェス!……そうか!こういう格闘技って肉体ありきかと思ってたけど本当は違うんだ!どれだけ相手を負かせるかの頭脳戦・心理戦()()ある訳だ!試合に備えての修行や鍛錬は前座に過ぎなかった!問題は実際に合間見えてからのその場の対応能力!いかにして体格的不利を補うのが、どんな攻め方でいけばいいのか、etc……戦う場面毎に臨機応変に対応しなくちゃならない!そう考えると格闘戦っていうのはいわゆる【身体的能力】、【知的能力】…これらが複雑に絡み合う駆け引きがあってようやく戦闘が成り立つ訳だ!一種のギャンブルみたいな…そんな一面もあるのか…………………

 

 

 

 

 

緑谷( あ あ … … … バ ト ル っ て こ ん な に 楽 し い も の な の か … … )

 

 

 

 

悟空「……」

 

相澤<どうしたんです孫さん?()()()()()顔なんかして

 

悟空「…いや……」

 

 

悟空「あいつがあんな()()()()()戦ってる所見んの初めてだったもんだから…よ」

 

相澤<…?

 

 

ブオッゴォッグオッ…

 

緑谷「ーーっーーー」

 

拳藤「ーーー!ーー」

 

 

気づけば既に試合を始めてから15分は経っていたらしい。僕らは息切れの1つもせずに10分以上もこの攻防を続けていたというのだ。

 

個性無しでただただ殴り合うだけの何の面白みもない試合の筈が、観客等は飽きる事なく…

 

それ所か試合が長く続けば続くほど、お客さんの反応にもある変化が起こりつつあった。

 

 

「…脚、腕のみならず互いの身体全体が華麗に交差し合い、一つの美を生み出している…」

 

「こりゃもう格闘戦ってかダンスだな。ラテンか」

 

「しかも2人共ブレる事なく動き続け、別々のモーションであるにも関わらず…」

 

「コレまた2人の動きが絶妙にマッチしとる」

 

「すげぇ……やってる事は地味な筈なのに…」

 

 

 

「なんか…拳闘ってすげぇ」

 

 

 

オールマイト(開始前のギクシャクムードは何処へやら…)

 

オールマイト(皆もう君らの観戦に熱中してしまっているではないか)

 

「兄ちゃーん!頑張れー!!」

 

「そこだ!一佳ちゃん叩き込目!!」

 

「イケェェエそばかすぅう!!気合いじゃああっ!」

 

ワァァァ…

 

緑谷「っおおおおお!!」ゴォォ…

 

拳藤「はあああっっ!!」ブァッ!

 

マイク「ま、また同時攻撃!?」

 

相澤<いや、パンチとキックじゃ脚の方がリーチが長ぇ

 

オールマイト「拳藤少女の蹴りの方が先に決まる!」

 

悟空「………」

 

 

 

さーて3度目の正直だ。いい加減真面目に顔面狙わせてもらいましょう。

 

ゴォォ…

 

ついさっきまでこの娘と何分間も拳を交えていたが…1つ分かった事がある。

 

 

この娘は多分、僕と同じ思考を持っているんだろう。

 

 

ここまで試合を長く引きずっておいて僕も彼女も全く傷ついていない。ダメージがあったような攻撃も、互いにお腹を殴られor蹴られた時の攻撃のみ…

 

…ォォ…

 

攻撃パターンも、動作も、さらに威力も僕が出してるソレと全く性質が変わらない。

 

世界には自分にそっくりな人が3人いると言うがそんな次元の話じゃない。運命的というか…何というか…

 

矛盾するようだが、強いてコレを言葉で表すのであれば、【必然的偶然】とでも言えばいいのだろうか。

 

うーん…本当に不思議だ。

 

 

緑谷「……」ゴォォ…

 

麗日「ちょ…デク君!?何目ぇつぶっとるん!?」

 

尾白「あのままじゃ拳藤の蹴りモロに直撃だぞ…?」

 

拳藤「……」…ォォ…

 

 

 

そりゃ当たり前だろ。()()()()()()()()()()()()

 

緑谷「…っっ!!」ダダァッ…

 

拳藤「!」

 

マイク「また加速したぁ!?」

 

相澤<成る程。畳み掛けににいったな。

 

相澤<()()はくれてやるからこっちも殴らせろと。

 

悟空「…いや、()()()()譲る気はねぇみてぇだぞ?」

 

 

 

距離はもう5mを切っていた。きっと目を開ければ目の前に、僕の顔面目掛け左脚を振り上げている拳藤さんの姿を拝める事だろう。

 

それ程までに僕は彼女に迫っていた。

 

僕は構わず頭部を前に突き出す。

 

耳郎「…あいつ…もしかしてカウンター狙い?」

 

緑谷「………」

 

 

 

 

ドガッッ!!

 

 

 

左耳に強い炸裂音が響いてきた。

 

左方向から何かしら強い力が頭に加わったみたいだ。

 

身体がガクッと右に傾く。

 

 

 

緑谷(…アレ…?正面からじゃなくて…左から…?)

 

 

 

拳藤「あー…すまんすまん。脚が滑って上手く当たらなかったわ。途中で軌道変更したけど」

 

 

オールマイト(真っ正面から顔面にぶつけると見せかけて…)

 

オールマイト(ワザと外してかかと落としの要領で後頭部付近を狙ったのか!?)

 

相澤<モロに受けたな。コレ頭蓋骨にヒビ入ってんじゃねぇの?

 

マイク「何無表情で怖い事言ってんの担任教師さん!?」

 

悟空「……」

 

 

 

 

グラッ…

 

緑谷「……」

 

 

 

 

 

 

緑谷「……」ピタッ

 

拳藤(止まった…?脚が動かな

緑谷「好機(チャンス)いただきまぁぁすっ!!」バキィッッ!!!

 

 

 

拳藤「ぅあっ…」ドサッ

 

 

緑谷「……っひゅー…」

 

 

「お、おおお…」

 

「また…膝付かせた!?」

 

「しかも…」

 

 

拳藤「痛ってて…っ」

 

拳藤「今のは来たわ…」ゴシゴシ…

 

 

 

唇が切れたのか…口を腕で擦り、垂れてきた血を拭き取る拳藤さん。今までどんな攻撃も物ともしていなかった彼女だが、今年の体育祭で初めてまともに負傷した瞬間ではなかろうか…

 

彼女はズボンについた砂を払いながらゆっくり立ち上がった。

 

 

拳藤「…いやー驚いたわ。お前の事だから私の蹴りを頭突きでもして倍返しすんのかと思ったよ…」

 

拳藤「まぁそこまでは合ってたみたいなんだけどさ」

 

拳藤「割と本気で骨を砕きに言ったつもりが…あまり効いてないってのはちとショックかな(^∇^)」

 

緑谷「うん。とりあえずニコニコしながらえげつない事言うのやめよ?後ちょっとで首折れそうだったんだから」

 

拳藤「ちぇっ。折れれば良かったのに(・ω・)」

 

緑谷「も、もー!( ´∀`;)冗談キツイよ!」

 

拳藤「ははは!悪い悪い!()()()()()お前の顔見てたらちょっといじりたくなって…」

 

緑谷「……」

 

拳藤「…ちゃんと笑えんじゃん。あんたのそんな幸せそうな笑顔、()()()見るよ」

 

緑谷「初めてって…さっきも言ってたけど僕そんなに雰囲気暗そうだった僕?」

 

拳藤「暗かったし、さっきまでの笑いは何というか卑猥な感じのニヤけ方だった」

 

緑谷「ヒワイナ!?」

 

緑谷「そ、それに君は僕と今日会ったばかりなんだから別に目新しいも何も無いんじゃ…」

 

拳藤「………ん?何言ってんのデク」

 

 

 

 

拳藤「随分前に会ってんじゃん。ほら、木に絡まった風船取った時」<女の子の

 

緑谷「……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって、え…

 

 

 

拳藤さんは僕の事…

 

 

『午前中の時より動きにムラがある。障害物競争の時はもっとこう無駄が無かったていうかスムーズにアクションできてた。特に切島戦の時は受け身ばっか取っててデクずっと攻撃してなかったよね?多分やろうと思えばもっと早くケリはつけられたと私は思うよ。後表情が少し暗い感じだったし…入試とか相澤先生と戦ってた時の方がよっぽど生き生きしてたぞ。楽

 

 

 

『入試とか相澤先生と戦ってた時の方がよっぽど生き生きしてたぞ。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

緑谷「…」

 

拳藤「入試の時だって同じ会場だったし…」

 

緑谷「…いや…その

 

拳藤「体力測定だってHR中こっそり撮ってたんだぜ?お前の勇姿」

 

緑谷「え、ちょっ待っ

 

拳藤「後対人訓練も特別に許可貰って見せもらったんだぞー」<お前のだけだけど

 

拳藤「『勝って!勝って君を超えたいんじゃないかバカヤロー!』」ブンブンッ

 

拳藤「くぅぅ!アレは痺れたね!」

 

緑谷「あの…だっ待って

 

拳藤「後々…あ!そうだ!あん時テレパスかけたのもデ

緑谷「 だ か ら 待 っ て っ て ば ッ !!!」

 

拳藤「…ク……?」

 

 

緑谷「はぁ…はぁ……っ!」

 

緑谷「…何だ?つまり君は…えー」

 

緑谷「随分前から僕を見ていた…って事?」

 

拳藤「そ」

 

緑谷「どの位前から?」

 

拳藤「だから風船の時…確かヘドロのアレもあったよな」<お前の

 

緑谷「何故?ただ背伸びして風船取ろうとした姿だけじゃ全く今の話と繋げよ

拳藤「カッコよかったから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑谷「…………???」

 

拳藤「だからさ、デクがカッコいいからって言ってんじゃん」

 

 

 

マイク「………」

 

相澤<………

 

オールマイト「………」

 

麗日「」

 

蛙吹「」

 

「………」

 

 

 

緑谷「…え、え?何それ…どういう」

 

拳藤「見知らぬ人でも困ってたら助けるって…」

 

拳藤「究極的にお人好しじゃん。普通にすごいと思うよ、それ」

 

拳藤「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

緑谷「…………」

 

悟空「……」

 

 

 

『…………そう…なんですかね』

 

『僕…みたいな人でも……』

 

『こんな無個性な人でも…救けられるんですかね…?』

 

 

悟空(…居たじゃねぇか。すぐ側に)

 

悟空(おめぇに応えてくれる奴が…)

 

 

緑谷「………」

 

『ヒーローみたいで私はカッコいいと思うけどな』

 

緑谷「……」

 

『ヒーローみたい』

 

緑谷「…」

 

『(デクが)カッコいい』

 

 

緑谷(今あの娘なんて言ったっ!?)

 

緑谷(え、ちょちょちょカカカカココカカカカ…)<カコカワ?

 

緑谷(今僕の事カッコいいって!?ヒーローみたいだって!?)

 

緑谷(一生あり得ない投げかけの台詞ぶっちぎり1位を今さらっと言われたぞおい!?か、カッコいいって…)

 

緑谷(あれ、カッコいいって意味何だっけ(困惑))

 

緑谷(しかも何…1年以上も前から見てたって……)

 

緑谷「……」

 

緑谷「…///…」

 

緑谷「…………( ・∇・)…………」

 

マイク「あ、ありゃ…緑谷構えていた両腕を突然下げて無防備状態…」

 

マイク「一体どうした!?コレも何かしらの策なのか?」

 

相澤<…いや

 

 

 

緑谷「( ・∇・)」プスプス…

 

マイク「」

 

 

 

相澤「ただ単にショートしてるだけですね」

 

麗日「デク君っ!!/」ブチブチ

蛙吹「緑谷ちゃん!!!」ブチィッ

 

芦戸「ひ、ヒィィ…がちぎれだぁ!」

 

葉隠「成る程…嫁候補1人追加と」カキカキ…

 

切島「…わわっ!?お、お前いつの間に帰って来てたのかよ!もう上鳴と轟の試合終わっちまったぞ?」

 

葉隠「デカイのしながら観戦してメモしてたから大丈夫大丈夫」

 

切島「ぁ…ぁぁそう?」<でかいの…

 

切島(……え、トイレにも液晶あんの?)

 

切島(あれ、肝心のツッコミ所を忘れてるような…まぁいいか)

 

尾白「お、おい緑谷っ!起きろ!!何やってんだ!!」

 

緑谷<ニョローン…( ・∇・)

 

拳藤「…おーい?デクー?まだ試合続いてるぞ?」

 

拳藤「……何だ?疲れて気絶しちゃったのかな?」<しかも立ったまま

 

麗日 蛙吹((誰のせいだと思ってるんだよ))ギリギリギリギリ…

 

芦戸<怖いよジロー…

耳郎<あーよしよし(ナデナデ

 

拳藤「しょうがねーなぁ」

 

 

 

 

 

拳藤「ほんじゃ眠気覚ましにイイもん食らわせてやるよ」

 

拳藤「最も、後味は悪そうだけど」

 

そう言うと拳藤さんは右拳を腰に添え、左腕を前に伸ばして狙いを定める。

 

標的()との距離はもう10mも無かった。外す事などあり得ないだろう。

 

 

試合開始時に放ったボディーブローを再び打ち込もうとしているのだ。

 

 

拳藤「まぁそれなりに楽しめたよ。ご苦労…」

 

拳藤「3」グッ

 

麗日「ヒィィ!」

蛙吹「緑谷ちゃん!」

 

拳藤「2」ググッ…

 

オールマイト「緑谷少年は一体何を…」

相澤<ゴクロー3…

 

相澤「1…!」ダダッ

 

悟空「…」

 

 

 

スドォッ!!

 

 

 

緑谷「っ…!」

 

拳藤「ふ〜…」グリッ…

 

 

 

最初に受けたものとは桁違いの拳打だった。

 

物凄くデカイ衝撃が僕のヘソ部から内臓を貫き、背中にかけて襲ってくる。コンクリートのように固く、それでいて綺麗な拳藤さんの右拳は僕のお腹へ見事にメリメリとめり込んでいく。

 

数秒して拳が腹部から抜かれると、僕は両手をお腹に抱え後ろによろめく。

 

 

緑谷「…」フラフラ…

 

拳藤「…」

 

麗日「デク君…」

 

蛙吹「緑谷ちゃん…」

 

 

 

緑谷「……プッ」

 

拳藤「?」

 

 

緑谷「プッハハハハハッ!!」

 

緑谷「ハハッ…ァァ…はッ…あは…」ドサッ

 

緑谷「やばっ…お腹…壊れる…はははっ!」バンバンッ!

 

「……???」

 

 

 

お 分 か り い た だ け た だ ろ う か

 

既視感ある光景に観客達は呆然とする他無かった。どういう事だ?何故この2人は揃いも揃って攻撃が直撃した途端、腹抱えて笑いだすのだろう…とでも言いたげな顔だな。

 

爆笑しながら転げ落ちる所を見ると、拳藤さんのパンチはノーダメージだったように思えるかもしれないが、実は結構効いている。というか滅茶苦茶痛い。つーか内臓抉られて嘔吐どころか吐血でもするかと思ったわ。さりげなく今唾吐いちゃってるし。

 

 

 

でもそんな事、今はどうでも良かった。

 

 

拳藤「…」<ハハハハ…

 

拳藤「何ぃ?()()私の真似でもしてるのか?」

 

拳藤「そんなに悦んで…そんなに私の攻撃が気持ちよかったの?」

 

緑谷「あ…ははっ…は…」

 

緑谷「そう…だね。気持ちいい、滅茶苦茶スッキリした」

 

緑谷「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

拳藤「モヤモヤ…したもの?」

 

緑谷「…そうだな……言うなれば()()ってトコかな」

 

拳藤「???」

 

 

1年間、激しい修行をし続けて僕は山1つなら吹き飛ばせる位まで強くなっていた…そう、十分すぎる程に。

 

だがその後いくら特訓しても今の今まで、自分が強くなったという実感が湧いたのかというと微妙な所だ。

 

気功波の修行で散々物を破壊し続けていったが『あ、壊れた、スゲー』としか思わないのである。頭の中で何か消化不良というか、違和感というか…

 

 

()()()()()()()とずっと突っかかっていた。

 

 

 

修行の出来には満足してるし、実際の所、それが学校で幾らでも応用できていた。入試の時も、体力テストの時も、対人訓練の時も、USJの時も————

 

 

 

何故か…いやだからこそなのかな

 

物寂しい気がしてならなかった

 

僕は心のどこかで淡い希望を抱いてたのかもしれない。

 

 

 

『もし…もしだ。もしももう一度だけあの娘と会えたとしたら…………』

 

 

 

緑谷(……彼女の瞳には、()()()がどんな風に映っているんだろう)

 

緑谷(拳藤さんは僕の事を【カッコよかった】と評してくれたが、あくまで1年前、初対面時の話)

 

緑谷(実際に僕と肌身を交えて…彼女はどんな人物像を思い浮かぶのだろうか)

 

緑谷(それを確かめるにはまだ情報不足だな———)

 

 

緑谷「…君には本当に、お世話になった」

 

緑谷「お陰で僕はここまで来れた」

 

拳藤「私の?お陰?」

 

緑谷「色々言いたい事は山程あるけど…まぁいいや」

 

緑谷「お礼も兼ねて教えてあげるよ。僕の今の限界、その一部…」

 

 

 

 

緑谷「1()()()()()()の修行の成果を————!」

 

 




どうも皆さん須井化ですよー。お久しプリーです…はい。

ようやく今日投稿できました。デク君対拳たん(勝手に命名)!
最初は8000字程度でいつもより少ない程度の量…
と想定してたら案の定軽く13000超えたよ。もうちょい頑張ったら14000行っちゃうよ
地の文が多く書けるようになったのはいいのですがこれからは節約が課題なのです。(とは言っても今回台詞多目にしたつもりではある)

37話(今回)も後々響きそうなパートでしたからね。かなり手がかかりまァスタ(謎のブラクロ便乗)
いかがだったでしょうか。とりあえず麗日さんと蛙吹さんが呼吸困難なので早く救助を…(使命感)
恐らくこの試合は次回でお終い?です。果てさて緑谷君はどんな技で戦うんでしょうかねぇ!?


あ、そうだ。この間Twitter始めました。(再開した?)
これから次話を投稿する毎にお知らせをしたいと思います。これで失踪しても炎上できるよ!やったねた○ちゃん!

ては皆さん、次回をお楽しみに!
じゃ!!













<オイ月初企画はどうしたんじゃゴラ…(八百万)
<E〜?nannokotokana〜?(ギリギリ

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